陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
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グーグル先生にお聞きください。
それでも、大丈夫な方はご覧ください。
Act.1 航空自衛隊 渡邉勇翔大尉・小貝高虎少佐
ガシャン――
金属同士が噛み合うような音がした。
少し間を置き、もう一度。
ガシャン――
「……ん……」
渡邉勇翔は、浅い呼吸とともに意識を取り戻した。
瞼は開かない。
身体も、まだ動かさない。
先に耳を澄ませる。
硬い車輪が床を転がる音。
足音は二人分。
さらに遠くから、短い呼び出し音と複数の話し声が聞こえている。
航空機の機関音ではない。
風切り音も、回転翼の振動もなかった。
身体の下にあるのは、UH-60JAの座席ではなく、柔らかく平らな寝台だった。
空気には、消毒薬に似た臭いがある。
病院。
そう判断しかけたところで、最後の記憶が断片的に蘇った。
UH-60JAの機内。
窓の外を切り裂いた青白い閃光。
機内へ響いた警報音。
操縦席から飛び交う搭乗員の声。
制御を失い、大きく傾く機体。
機体後部で何かが弾ける音。
小貝高虎。
蓮。
隼人。
衝撃に備えて身体を丸めた直後、視界が白く染まった。
そこから先は何も残っていない。
勇翔は、ゆっくりと目を開いた。
最初に見えたのは、白い天井だった。
見覚えのない照明器具。
天井の隅には、黒い半球状の装置が取り付けられている。
監視装置。
あるいは、何らかの観測装置。
勇翔は顔を動かさず、視線だけを巡らせた。
右腕には細い管が接続されている。
胸部と両腕には、小さな検査器具が貼り付けられていた。
包帯や固定具は見当たらない。
手足にも拘束具は装着されていなかった。
右手の指を一本ずつ動かす。
問題なく動く。
左手も同じ。
両足にも感覚がある。
呼吸時の胸部痛はない。
頭痛も、吐き気も感じなかった。
墜落した航空機から救助された直後とは思えないほど、身体は正常だった。
それが、かえって不自然だった。
勇翔は、自分の周囲を確認する。
寝台は透明な隔壁によって囲まれていた。
出入口は正面に一か所。
隔壁の外側には、灰色の制服を着た二人の警備員が立っている。
二人とも、勇翔の知らない形状の長銃を携えていた。
銃口は床へ向けられているが、弾倉らしき部品は装着されたままだ。
病室というより、隔離区画に近い。
武器。
無線機。
携帯電話。
身分証明書。
自分が所持していたものは、寝台にも室内にも見当たらなかった。
勇翔「……病院、かな」
呟いた声は掠れていた。
警備員の一人が反応し、隔壁越しに勇翔を見る。
敵意は感じない。
だが、明確に警戒されていた。
自分が拘束されていないのは、信用されているからではない。
身体が動かないと判断されている可能性もある。
勇翔は数秒間、呼吸を整えた。
自分の状態。
周囲の人数。
出口。
警備員の装備。
確認すべきものは多い。
だが、それ以上に確かめなければならないことがあった。
小貝高虎。
渡邉蓮。
渡邉隼人。
三人が、ここにいるのか。
勇翔は右手で寝台の手摺を掴んだ。
身体を起こそうと、腹部へ僅かに力を入れる。
その瞬間。
勇翔「――いっ!」
腰の奥へ、鋭い痛みが走った。
皮膚や骨の表面ではない。
背骨の左右を、内側から強く掴まれたような痛みだった。
右腕から力が抜け、勇翔の背中が寝台へ戻る。
勇翔「痛ったぁ……何だ、これ……」
透明な隔壁の外にいた警備員が、直ちに扉へ手を伸ばした。
金属製の固定具が外れる。
ガシャン――
先ほどから聞こえていたのは、この扉の開閉音だった。
警備員「目が覚めたのか。動くな!」
一人が室内へ入る。
もう一人は出入口の外側へ残り、廊下と勇翔の双方を監視していた。
室内へ入った警備員は長銃を背負ったまま、寝台の横へ近づく。
勇翔へ銃口を向ける様子はない。
勇翔「すみません。起きようとしたら、急に腰が……」
警備員「そのまま横になっていろ。医師を呼ぶ」
勇翔「分かりました。それと、一緒にいた人たちは――」
警備員「質問はあとだ」
勇翔「……はい。お願いします」
警備員が外側に残った同僚を見る。
警備員「ガミ、医師を呼べ! 意識が戻った!」
ガミ「了解!」
もう一人の警備員が廊下へ走り出す。
室内の警備員は、勇翔が再び起き上がらないよう寝台の横へ立っていた。
警備員「今、医師が来る。それまで動くな」
勇翔「そんなに危ない状態なんですか?」
警備員「それを調べるために医師を呼んでいる」
勇翔「それもそうですね」
警備員の口調は荒い。
しかし、勇翔の身体を乱暴に押さえつけることはなかった。
勇翔は無理に会話を続けず、天井へ目を向ける。
腰の痛みは残っている。
それでも、最初の鋭さは少しずつ弱まっていた。
足の痺れは感じない。
身体のどこを損傷しているのか、勇翔には判断できなかった。
複数の足音が近づいてくる。
先ほど出ていったガミ。
白い長衣を着た医師。
その後ろには、器材を載せた台車を押す医療要員が続いていた。
医師「意識が戻ったのですね」
医師は勇翔の頭側へ立ち、小型の照明器具を手に取った。
医師「私の声が聞こえますか?」
勇翔「はい。聞こえています」
医師「あなたの名前を言えますか?」
勇翔「渡邉勇翔です。航空自衛隊に所属しています。階級は大尉です」
医師「年齢は?」
勇翔は自分の年齢を答えた。
医師「最後に覚えている日付は?」
勇翔「二〇二一年五月二十九日です」
医師「ここがどこか分かりますか?」
勇翔「病院だとは思います。でも、それ以上は分かりません」
医師「最後に覚えている出来事は?」
勇翔「UH-60JAで移動していました。飛行中に青白い光を受けて、機体が制御を失いました。そこから先は覚えていません」
医師「自分が誰と一緒にいたか、覚えていますか?」
勇翔「小貝高虎少佐。それから、兄が二人。渡邉蓮と渡邉隼人です。ほかに、機体を操縦していた搭乗員もいました」
医師は記録用端末へ何かを入力した。
勇翔はその表情を見ていたが、同行者について知っている様子は読み取れない。
医師「記憶は保たれているようですね。目で、この光を追ってください」
小型照明が左右へ動く。
勇翔は指示に従った。
瞳孔反応。
左右の視野。
指の動き。
足先の感覚。
握力。
医師は一つずつ確認していく。
医師「腰以外に痛む場所はありますか?」
勇翔「今のところはありません。頭痛も吐き気もないです」
医師「足の痺れは?」
勇翔「ありません」
医師「腰のどの辺りが痛みますか?」
勇翔「真ん中から左右です。起き上がろうとした瞬間、内側を掴まれたような感じがしました」
医師「動かないでください。検査します」
勇翔「お願いします」
医療要員が、薄い板状の器具を勇翔の腰部へ差し込む。
寝台脇の表示装置に、白と灰色の立体画像が浮かび上がった。
骨格。
筋肉。
血管。
さらに、神経らしき細い線。
勇翔が知る医療用画像とは、表示方法が大きく異なっている。
大きな作動音はない。
身体へ何かが照射された感覚もなかった。
医師は画像を拡大し、腰部を確認する。
その手が止まった。
医師「……骨格に異常はありません」
勇翔「骨折はないんですね」
医師「はい。脊髄や靱帯にも、明らかな構造上の損傷は確認できません」
勇翔「それなら、何が痛んでいるんですか?」
医師はすぐには答えなかった。
画像の一部を切り替える。
腰部周辺の神経が、淡い色で表示された。
医師「神経の一部に、強い興奮状態が見られます。それに反応して、周辺の筋肉が急激に収縮した可能性があります」
勇翔「神経が、痛みを起こしている?」
医師「現時点では、そのように考えています」
勇翔「原因は墜落の衝撃ですか?」
医師「詳しい検査が必要です」
説明できないのか。
説明するつもりがないのか。
勇翔には判断できなかった。
医師が点滴の接続部へ、小さな透明容器を取り付ける。
淡い黄色の薬液が管の中へ流れ始めた。
医師「神経の興奮を抑える薬です。身体が熱く感じる場合があります」
勇翔「注射じゃないんですね」
医師「注射の方がよかったですか?」
勇翔「いえ。痛くない方でお願いします」
医師の口元が僅かに緩んだ。
数秒後。
右腕から肩へ、温かな感覚が広がる。
やがて、胸部から腹部まで熱が拡がっていった。
勇翔は僅かに眉を寄せる。
医師「苦しいですか?」
勇翔「少し熱いです。でも、大丈夫です」
医師「そのまま、ゆっくり呼吸してください」
腰の痛みが僅かずつ遠のいていく。
完全には消えない。
だが、身体を突き抜けた鋭さは失われた。
医師「痛みは?」
勇翔「かなり楽になりました。ありがとうございます」
医師「だからといって、起き上がってはいけませんよ」
勇翔「……やっぱり駄目ですか」
医師「少なくとも、再検査が終わるまでは禁止です」
勇翔「分かりました。今度は大人しくしています」
医師「今度は、ではなく、必ず守ってください」
勇翔「はい」
医師は記録を終えると、警備員へ視線を向けた。
医師「身体を起こさせないようにしてください。質問を受ける場合も短時間に」
警備員「分かった」
勇翔「待ってください」
部屋を出ようとした医師が振り返る。
勇翔「一緒にいた人たちは、ここにいるんですか?」
医師「私からは答えられません」
勇翔「答えられる人はいますか?」
医師「まもなく来ます」
勇翔「……分かりました」
医師と医療要員が部屋を出る。
透明な隔壁の扉が閉まり、固定具が掛けられた。
ガシャン――
勇翔は、その音を聞きながら室内を見渡した。
武器はない。
通信手段もない。
身体も満足には動かせない。
相手の組織も、目的も不明。
だが、治療は受けている。
警備員も医師も、勇翔へ不必要な危害を加えてはいない。
捕虜なのか。
保護されているのか。
現時点では、どちらとも断定できなかった。
廊下から、新しい足音が聞こえる。
一人。
歩幅は狭い。
足音が近づくにつれて、警備員二人の姿勢が変わった。
背筋を伸ばし、通路を空ける。
透明な隔壁の向こうに、白い軍服を着た人物が現れた。
小柄な身体。
目元を覆う銀色のバイザー。
外見だけなら、十代半ばの少年に見える。
しかし、二人の武装警備員は、その少年へ明確な敬意を示していた。
隔壁の固定具が解除される。
少年は一人で病室へ入った。
勇翔の寝台から二歩離れた位置で立ち止まる。
不用意には近づかない。
勇翔の手が届かず、それでいて会話には遠すぎない距離だった。
代理人「初めまして。渡邉勇翔大尉ですね」
自分の名前と階級。
勇翔の表情が僅かに変わる。
それでも、直ちに相手を問い詰めることはしなかった。
少年の姿勢。
両手の位置。
武器の有無。
警備員との関係。
それらを確認してから、穏やかに尋ねる。
勇翔「初めまして。……すみません。どうして僕の名前と階級を知っているんですか?」
少年は白い軍服の内側から、一枚のカードを取り出した。
航空自衛官身分証明書。
間違いなく勇翔のものだった。
代理人「あなたが所持していた物です。身元を確認するために内容を確認しました」
勇翔「ああ、これを持ってたんですね。なくしたのかと思いました」
代理人「勝手に確認したことは謝ります。ただ、あなたが誰なのかを知るために必要でした」
勇翔「事情が事情ですから、それは大丈夫です」
勇翔は身分証明書から少年へ視線を戻す。
勇翔「それで、あなたは?」
代理人「僕は、灰燼教会から権限を委任されている代理人です」
勇翔「灰燼教会……代理人……」
どちらも、勇翔の記憶には存在しない組織と役職だった。
勇翔「分かりました、代理人さん。聞きたいことはたくさんあります」
勇翔は一度言葉を切った。
口調は変わらない。
だが、表情から僅かな柔らかさが消える。
勇翔「でも、その前に仲間のことを教えてください。小貝高虎少佐と、僕の兄たちは無事ですか?」
代理人は勇翔を見た。
代理人「小貝高虎少佐は無事です」
最初に、その事実を伝えた。
代理人「あなたより少し早く意識を取り戻しました。検査は継続していますが、命に別状はありません」
勇翔の肩から、目に見えて力が抜けた。
勇翔「……よかったぁ」
強張っていた表情が緩む。
勇翔は右手で目元を押さえ、深く息を吐いた。
勇翔「本当に、よかった……」
小貝が生きている。
それを確認できただけで、胸の奥に詰まっていたものが僅かに軽くなった。
だが、まだ二人いる。
勇翔は顔を上げた。
勇翔「蓮兄さんと隼人兄さんは?」
代理人はすぐには答えなかった。
その沈黙によって、勇翔の表情が再び引き締まる。
代理人「現在までに、発見できていません」
勇翔「……そうですか」
代理人「あなた方が発見された場所と、その周辺は捜索しています。ただ、救助班が回収できたのは、あなたと小貝少佐の二人だけです」
勇翔「遺体は?」
代理人「見つかっていません」
勇翔「血痕や、二人の持ち物は?」
代理人「それも確認されていません」
勇翔は目を閉じた。
発見されていない。
遺体も、血痕も、所持品もない。
ならば、死亡したと判断する材料はない。
勇翔「それなら、二人は行方不明です」
代理人「はい。僕たちも、そのように扱っています」
勇翔「捜索を続けてもらえますか?」
代理人「すでに捜索班を出しています。あなた方が発見された場所を中心に、範囲を広げているところです」
勇翔「ありがとうございます」
勇翔は頭を下げようとして、身体へ力を入れかけた。
腰の奥に鈍い痛みが戻る。
勇翔「痛っ……」
代理人「動かない方がいいですよ」
勇翔「そうみたいですね。頭を下げるのも駄目か……」
勇翔は諦めて寝台へ身体を預けた。
代理人は、勇翔の身分証明書を寝台脇の台へ置く。
代理人「ほかの所持品も保管しています。衣服、通信機器、携帯電話、腕時計。それから、武器と思われる物がいくつか」
勇翔「武器は返してもらえませんよね」
代理人「今すぐには」
勇翔「まあ、そうなりますよね。僕でも同じ判断をします」
身元も所属も確認できない武装した人間が、見知らぬ場所へ突然現れた。
治療を施しても、武装解除と監視は続ける。
勇翔にとって、理解できない対応ではなかった。
勇翔「小貝さんに会えますか?」
代理人「医師の許可が出れば」
勇翔「まだ駄目ですか」
代理人「あなたは、目を覚ましてすぐに起き上がろうとしたそうですね」
勇翔「……聞いてたんですか?」
代理人「医師から報告を受けました」
勇翔「一度だけです」
代理人「一度でも十分です」
勇翔「代理人さんまで医師と同じことを言うんですね」
代理人「大切なことですから」
銀色のバイザーに目元を隠されているため、表情のすべては読み取れない。
それでも、声には僅かな呆れが混じっていた。
勇翔「分かりました。許可が出るまでは大人しくしています」
代理人「必ず守ってくださいね」
勇翔「努力します」
代理人「努力ではなく、守ってください」
勇翔「……はい」
代理人は小さく息を吐いた。
勇翔「それで、ここはどこなんですか?」
代理人「それについては、小貝少佐と一緒に説明します」
勇翔「僕たちが同じ質問をするからですか?」
代理人「それもあります。それに、言葉だけで説明するより、実際に見てもらった方が早いと思います」
代理人は、白い遮蔽板が下ろされた窓へ顔を向けた。
勇翔「外に、何かあるんですか?」
代理人「あります」
勇翔「日本じゃないものが?」
代理人は少しだけ間を置いた。
代理人「少なくとも、あなたが知っている日本ではありません」
勇翔は代理人を見る。
冗談を言っている様子はない。
予想していなかった答えではなかった。
警備員の制服。
見たことのない銃。
医療装置。
灰燼教会という組織。
外見十代半ばの少年へ、武装した警備員が示した態度。
ここが日本ではない可能性は、すでに考えていた。
だが、それを相手の口から明言されると、受け止め方は変わる。
勇翔「……そうですか」
代理人「驚かないのですね」
勇翔「驚いてますよ。ただ、今騒いでも場所が変わるわけじゃありませんから」
勇翔は困ったように笑う。
勇翔「小貝さんと会ってから、詳しく聞かせてください」
代理人「そのつもりです」
勇翔「お願いします」
*
それから、およそ一時間後。
再度の診察を終えた勇翔は、医師の許可を受けて寝台から車椅子へ移された。
自力で立つことは許されなかった。
腰部には幅の広い固定帯が巻かれ、点滴の容器も車椅子脇の支持具へ取り付けられている。
病院内で用意された服の上から、薄い毛布が掛けられた。
医師「腰を捻らないでください。痛みが強くなった場合や、足に痺れが出た場合は、すぐに申告してください」
勇翔「分かりました」
医師「自分で車椅子を動かそうとしないでください」
勇翔「右腕は動きますよ?」
医師「動かさないでください」
勇翔「……はい」
車椅子の後ろに立った医療要員が、その取っ手を握る。
代理人が先に病室を出た。
勇翔の左右には、先ほどと同じ二人の警備員が付く。
長銃は携行しているが、勇翔へ向けられてはいない。
一行は隔離病棟の廊下を進んだ。
床も壁も清潔に保たれている。
行き交う医療要員の服装には統一感があった。
しかし、壁に記された文字や案内表示は、勇翔の知る病院とは異なっている。
読める文字。
読めない文字。
複数の言語が、一つの案内板へ並べられていた。
その中には日本語と同じ表記もある。
だが、併記された他の言語には、勇翔が見たことのない文字も混じっていた。
通路の先にある昇降機へ入る。
代理人が最上階を選択した。
勇翔「上に行くんですか?」
代理人「屋上に、患者用の休養区画があります。そこで小貝少佐が待っています」
勇翔「小貝さんは歩けるんですね」
代理人「医師からは、短時間なら許可されています」
勇翔「僕より元気そうだなぁ」
代理人「小貝少佐も、同じようなことを言っていましたよ」
勇翔「何て?」
代理人「勇翔は自分より若いから、先に歩いているだろう、と」
勇翔は困ったように笑った。
勇翔「外れましたね」
昇降機が停止する。
扉の向こうから、風の音が聞こえた。
医療要員が車椅子を押し、屋上へ出る。
乾いた風が、勇翔の髪を揺らした。
空気には、僅かに煤と油の臭いが混じっている。
屋上の周囲には高い金属柵が設けられ、その内側へ植木と長椅子が並べられていた。
休養区画の奥。
金属柵の前に、一人の男が立っている。
病院から貸与された衣服。
左腕には、医療用の固定帯。
頭部に目立った傷はない。
背筋を伸ばして立つ、その後ろ姿を勇翔は見間違えなかった。
勇翔「あれ……小貝さん?」
男が振り返る。
小貝高虎の目が大きく開かれた。
小貝「勇翔!」
小貝はすぐに歩き出した。
だが、二歩目で僅かに足元を揺らし、同行していた医療要員から肩を支えられる。
医療要員「急に動かないでください!」
小貝「すまない」
勇翔「大丈夫ですか?」
小貝「お前に心配されるほどではない」
勇翔「今、ふらついてましたよ」
小貝「一度だけだ」
勇翔「僕も同じことを言いました」
勇翔の言葉に、小貝は一瞬だけ黙った。
それから、二人とも僅かに笑う。
小貝はゆっくりと勇翔の前まで来ると、無事な右手を差し出した。
勇翔も右手を伸ばす。
二人の手が固く握られた。
小貝「生きていたか」
勇翔「小貝さんも。顔を見たら、やっと安心しました」
小貝「ああ。俺もだ」
小貝の声は平静を保っていた。
だが、握った右手には強く力が込められている。
勇翔も、その手を握り返した。
小貝「腰を負傷したと聞いた」
勇翔「骨には異常がないらしいです。ただ、立とうとすると怒られます」
小貝「なら、立つな」
勇翔「小貝さんも、人のことは言えませんよ」
左腕の固定帯。
僅かに不安定な足元。
自分より軽傷に見えても、無傷ではない。
小貝は、勇翔の車椅子の横にある長椅子へ腰を下ろした。
その表情が変わる。
小貝「蓮と隼人は?」
勇翔「まだ見つかってません」
小貝が俯く。
小貝「……そうか」
勇翔「でも、死亡が確認されたわけじゃありません。遺体も、血痕も、二人の持ち物も見つかっていないそうです」
小貝「発見されたのは、俺たちだけか」
勇翔「はい」
小貝の右手が、膝の上で強く握られた。
小貝「俺は、あの機内で先任者だった」
勇翔「小貝さん」
小貝「異常が起きた時、もっと早く二人のところへ行けていれば――」
勇翔「それは違います」
勇翔の声から柔らかさが消えた。
声を荒らげたわけではない。
それでも、小貝の言葉を明確に遮った。
勇翔「あの揺れでは、席を離れることもできませんでした。操縦していた隊員たちも、最後まで機体を立て直そうとしていました」
小貝「だが、俺は二人の近くにいた」
勇翔「僕も同じ機内にいました。でも、何もできなかった」
小貝は答えない。
勇翔「誰か一人が悪かったから墜落したわけじゃありません。何が起きたのかさえ、まだ分かってないでしょう?」
小貝「……ああ」
勇翔「今は、できなかったことを数える時じゃありません。二人を探すのが先です」
小貝「まだ生きていると思うか」
勇翔「思います」
勇翔は迷わず答えた。
勇翔「蓮兄さんも隼人兄さんも、そう簡単に死ぬ人じゃありません。それに、二人が死んだ証拠は何もないでしょう?」
小貝「ああ」
勇翔「なら、勝手に死んだことにしたら、あとで二人に怒られますよ」
小貝の握っていた右手から、僅かに力が抜ける。
小貝「蓮には殴られるかもしれんな」
勇翔「隼人兄さんは、何も言わずに睨んできそうです」
小貝「それはそれで怖いな」
勇翔「でしょう?」
ほんの短い間だけ、二人の表情が緩んだ。
少し離れた位置で、代理人が二人の会話を聞いている。
勇翔が代理人へ顔を向けた。
勇翔「代理人さん。二人の捜索をお願いします」
小貝「俺からも頼む。俺たちと同じ航空機に搭乗していた者が、ほかにもいる。発見された者がいれば、直ちに知らせてほしい」
代理人「分かりました。搭乗員を含めて捜索は継続します。新しい情報が入り次第、二人にも伝えます」
勇翔「ありがとうございます」
小貝「感謝する」
代理人は頷いた。
それから、屋上の端へ向かって歩き出す。
代理人「では、二人がいる場所について説明します」
医療要員が、勇翔の車椅子を押す。
小貝も付き添いを受けながら立ち上がった。
三人が金属柵の前へ近づく。
それまで屋上設備に遮られていた景色が、勇翔の視界へ入った。
勇翔「……え?」
勇翔の声が止まる。
眼下に広がっていたのは、彼の知るどの都市とも異なる光景だった。
地平線近くまで続く建物。
無数の煙突。
複雑に入り組んだ鉄道。
空へ伸びる塔。
古い石造建築の隣に、巨大な工場が建っている。
蒸気を上げる列車の上空を、見たことのない飛行物体が横切っていく。
異なる時代。
異なる文化。
本来なら同じ場所に存在しないはずのものが、巨大な一つの都市へ押し込められていた。
そして、その遥か向こう。
都市と外界を分断する巨大な防壁が、空を切り取るように立ちはだかっている。
あまりにも遠い。
それでも、壁の上端を見上げなければならないほど高い。
勇翔は空へ目を向けた。
雲はある。
太陽もある。
だが、その下に広がるものは、彼が知る日本ではなかった。
隣に立つ小貝も、言葉を失っている。
小貝「……ここは、本当に地球なのか?」
代理人「僕たちは、ここを地球と呼んでいます」
小貝「俺たちがいた地球と同じなのかと聞いている」
代理人「それは、まだ分かりません」
代理人は二人の前へ立ち、眼下の都市へ視線を向けた。
乾いた風が、白い軍服の裾を揺らす。
代理人「改めて、二人を歓迎します」
勇翔と小貝が、その小さな背中を見る。
代理人「ここは、人類最後の要塞都市――Cityです」
勇翔は再び、巨大な防壁を見上げた。
兄たちの姿はない。
帰るべき場所も見えない。
自分たちが何に巻き込まれたのかさえ、まだ分からない。
それでも、小貝だけは隣にいる。
生きている。
今は、それだけが確かな事実だった。
はい。
今回は、短めなものです。
結構セリフを考えましたが、かなりダサイような...
とりあえずは、次回もがんばります!
お気に入り評価お願いします!
コメントもモチベーションアップのためお願いします...
※2026年8月26日リメイク完了
好きな子がいたら適当に投票どうぞ!
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HK416
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VSK-94
-
AK-12
-
AR-15
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アズールレーン 赤城
-
アズールレーン 加賀
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艦これ 赤城
-
艦これ 加賀
-
雷電
-
スカイレイダー
-
シュバァルベ
-
渡邉 蓮
-
渡邉 隼人
-
渡邉 勇翔
-
小貝 高虎