陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る   作:ゴーストライターとかした、素人小説書き

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注意

この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
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もし、この作品の元ネタアッシュアームズが分からない方は、ぜひブラウザバックの後。
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それでも、大丈夫な方はご覧ください。


Act.5 A-10...そのものに善も悪もなし。

Act.5 A-10――そのものに善も悪もなし。

 

 A-10の機首下部で、七本の砲身が回転する。

 

 照準器の中央。

 

 味方地上部隊から約六百メートル離れた場所を、複数の軽量型リセッターが前進していた。

 

 その背後には、地面を抉りながら進む大型の個体。

 

 小貝は、味方の位置と攻撃方向をもう一度確認した。

 

 射線上に友軍はいない。

 

 砲弾が目標を越えた場合も、その先は建物のない窪地になっている。

 

 攻撃可能。

 

小貝「BLUE 2、GUNS」

 

 操縦桿の引き金を押す。

 

 機体全体へ、低く連続した振動が伝わった。

 

 短い射撃。

 

 三〇ミリ砲弾が、地上へ一本の線を引く。

 

 先頭のリセッターへ着弾。

 

 絶縁層へ触れた砲弾の弾芯が、青白い光を放った。

 

 敵を覆っていた防護が連続して揺らぎ、後続の砲弾が黒い外殻を貫く。

 

 内部から橙色の光が漏れた。

 

 後続の二体にも砲弾が命中する。

 

 一体が横転。

 

 もう一体は前脚を失い、その場で動きを止めた。

 

 小貝は一秒余りで引き金から指を離した。

 

 敵が完全に沈黙するまで撃ち続ける必要はない。

 

 動きを止めれば、地上部隊が対応できる。

 

 限られた弾薬を、一つの目標へ過剰に使うべきでもなかった。

 

 A-10が目標上空を通過する。

 

 小貝は機体を上昇させ、対空射撃を警戒しながら左旋回へ入った。

 

小貝「BLUE 2、第一射終了。軽量型一体を撃破。二体を行動不能と推定」

 

勇翔『RED 1、上空からも確認しました。地上部隊前面の圧力が低下しています』

 

小貝「敵対空戦力は?」

 

勇翔『まだ反応がありません。存在を隠している可能性があります』

 

小貝「同感だ。二度目の進入は待つ」

 

 小貝は旋回しながら、地上へ視線を向けた。

 

 崩壊した貨物駅。

 

 屋根を失った倉庫。

 

 途中で途切れた高架線路。

 

 灰色の大地を、黒い外殻を持つリセッターが埋めている。

 

 味方地上部隊は、貨物駅周辺の廃墟を利用して防御線を形成していた。

 

 全滅寸前ではない。

 

 五人は、それぞれの役割を果たしながら戦線を維持している。

 

 それでも、数の差によって移動を封じられていた。

 

     *

 

 東部第七開拓区域。

 

 貨物駅跡。

 

 センチュリオンは、崩れた外壁の陰から敵の配置を確認していた。

 

 正面には複数の中型リセッター。

 

 その後方に、大型防衛種が二体。

 

 さらに左右の廃墟には、小型の敵が分散している。

 

 敵は無秩序に突撃しているわけではない。

 

 大型個体が正面から圧力を掛け、その間に小型個体が左右へ回り込もうとしていた。

 

センチュリオン「シャーマン。左側へ出すぎないでください。敵は、あなたを誘い出そうとしています」

 

シャーマン「分かってるよ! でも、このまま撃ってるだけじゃ押し込まれる!」

 

センチュリオン「だからこそ、今は動いてはいけません。航空支援が入るまで、火力を温存してください」

 

シャーマン「……了解!」

 

 M4シャーマンは不満を見せながらも、崩れた貨車の後方へ下がった。

 

 その反対側。

 

 Ⅷ号戦車マウスが、敵の正面へ立っている。

 

 巨大なARMSを地面へ固定。

 

 大型リセッターから放たれた攻撃を、重装甲で受け止めていた。

 

 装甲表面へ亀裂が走る。

 

 それでも、マウスは退かない。

 

マウス「ふん。この程度の攻撃で、わらわを動かせると思ったか!」

 

 主砲が火を噴く。

 

 砲弾が中型リセッターの絶縁層を揺るがし、正面外殻へ命中した。

 

 外殻の一部を砕く。

 

 だが、完全には破壊できない。

 

マウス「まだ立つか。ならば、次は跡形も残さぬ!」

 

センチュリオン「マウス。前進は禁止です。現在位置を維持してください」

 

マウス「わらわへ命令するとは、いい度胸だな」

 

センチュリオン「あなたが正面を支えているから、私たちは戦えています」

 

マウス「……そこまで理解しているならよい。特別に従ってやろう」

 

 マウスは前進せず、再装填へ移る。

 

 右側の排水路では、M18ヘルキャットが位置を変え続けていた。

 

 速度を生かして遮蔽物の間を移動。

 

 敵の側面へ一発だけ撃ち込み、反撃を受ける前に別の場所へ移る。

 

ヘルキャット「囲むつもりなら、もっと速いのを連れてきな!」

 

 敵の攻撃が、ヘルキャットの後方へ着弾する。

 

 土砂が跳ね上がった。

 

 装甲の薄いヘルキャットに、正面からの撃ち合いはできない。

 

 だが、敵も彼女を正確には捕捉できていなかった。

 

 中央後方。

 

 Ⅲ号戦車F型は、通信装置を両手で抱えている。

 

 近くへ攻撃が着弾するたびに、肩を震わせていた。

 

 それでも、通信から手を離さない。

 

Ⅲ号戦車「て、敵左翼部隊、排水路へ移動しています……数は四……い、いえ、五体です!」

 

センチュリオン「確認しました。ヘルキャットへ送ってください」

 

Ⅲ号戦車「は、はい!」

 

 Ⅲ号戦車は声を震わせながら、情報を伝える。

 

 怖がっている。

 

 だが、逃げてはいない。

 

 彼女が敵の位置を伝え続けているからこそ、ヘルキャットは包囲されずに済んでいた。

 

 上空から、再び低い音が聞こえる。

 

 巨大な灰色の航空機。

 

 先ほどの一度の射撃によって、味方正面へ迫っていた敵が止まっている。

 

 センチュリオンは通信回線を切り替えた。

 

センチュリオン「こちら地上部隊、センチュリオン。上空の航空機、聞こえますか?」

 

小貝『こちらBLUE 2。感度良好。地上部隊の指揮官か?』

 

センチュリオン「はい。地上隊の指揮を執っています」

 

小貝『味方の現在位置を送ってくれ。前進可能な線と、絶対に攻撃してはならない区域も必要だ』

 

センチュリオン「了解しました」

 

 センチュリオンはⅢ号戦車へ合図する。

 

 味方五人の現在位置。

 

 敵の推定位置。

 

 確認できている大型個体。

 

 射撃禁止区域。

 

 情報が、Cityの戦術回線を通じてA-10へ送られる。

 

 小貝の戦術表示へ、青い友軍記号と赤い敵記号が重ねられた。

 

小貝『受信した。正面の大型二体が、前進を止めている原因で間違いないか?』

 

センチュリオン「その二体だけではありません。敵後方に、対空型が潜伏していると推定しています」

 

小貝『位置は?』

 

センチュリオン「確認できていません。先ほどまで、航空部隊が低空へ入るたびに射撃していました。現在は攻撃を止めています」

 

小貝『俺たちを近づけてから撃つつもりか』

 

センチュリオン「その可能性があります」

 

小貝『了解した。位置を確認するまで、二度目の低空攻撃は行わない』

 

 地上の敵を少しでも早く減らしてほしい。

 

 そう求められる状況だった。

 

 だが、小貝は焦って突入しなかった。

 

 A-10は被弾に強い航空機であっても、無敵ではない。

 

 未知の対空兵器が待ち構える空域へ、確認もせず入るわけにはいかなかった。

 

     *

 

 高度四千五百メートル。

 

 F-3〈心神〉。

 

 勇翔は空対空捜索を継続しながら、地上の熱源情報を確認していた。

 

 敵航空部隊の残存四体は、雷電たちが東側へ押さえ込んでいる。

 

 すぐに地上攻撃隊へ到達する位置ではない。

 

 短い時間なら、地上捜索へセンサーの一部を割くことができる。

 

勇翔「RED 1よりBLUE 2。地上捜索へ移ります。上空警戒は継続します」

 

小貝『BLUE 2、了解。無理に探すな。敵航空型が戻れば、そちらを優先しろ』

 

勇翔「分かっています」

 

 勇翔は地上監視装置の範囲を広げた。

 

 建物。

 

 地面。

 

 破壊された車両。

 

 多数の熱源が重なっている。

 

 リセッターの内部にある発光器官は熱を放つ。

 

 だが、瓦礫の陰へ隠れた個体を、上空から完全に見分けることはできない。

 

 勇翔は、対空型そのものを探すのをやめた。

 

 代わりに、先ほどまで行われていた対空射撃の痕跡を探す。

 

 焼けた地面。

 

 周囲とは異なる温度。

 

 一定方向へ続く移動痕。

 

 北側の高架線路跡。

 

 その下へ、不自然に温度の高い場所があった。

 

 さらに南側。

 

 崩壊した工場の搬入口付近にも、似た反応がある。

 

勇翔「対空型候補を二体確認。北側高架下と、南側工場跡」

 

小貝『位置を受信した。北側は味方から離れている。南側は近いな』

 

勇翔「南側目標とⅢ号戦車さんの距離、約三百二十メートルです」

 

小貝『その距離では撃てない』

 

勇翔「はい。北側だけなら、友軍への危険を抑えて攻撃できます」

 

小貝『北側へ誘導弾を使う。照準情報をくれ』

 

 勇翔は北側の熱源へ監視装置を向けた。

 

 目標の輪郭は見えない。

 

 だが、移動痕は高架下へ続いている。

 

勇翔「まだ断定できません。攻撃は待ってください」

 

小貝『了解』

 

 勇翔は目標の周囲を観察し続けた。

 

 小貝も誘導弾の発射準備を進めながら待つ。

 

 数秒。

 

 十秒。

 

 北側の熱源が動いた。

 

 瓦礫に偽装されていた外殻が開く。

 

 上空を旋回するA-10へ、複数の発光器官が向けられた。

 

勇翔「対空型を確認! 北側高架下!」

 

 地上から、光弾が連続して放たれる。

 

小貝「BLUE 2、防御機動!」

 

 A-10が左へ旋回する。

 

 光弾が機体の後方を通過。

 

 小貝は高度を下げ、途切れた高架線路を敵との間へ入れた。

 

 レーダー警報とは異なる。

 

 敵は電波だけで照準しているわけではない。

 

 それでも、発射位置が分かれば攻撃できる。

 

勇翔「目標情報を送信。友軍は射線外です」

 

小貝「受信した。空対地誘導弾、選択」

 

 A-10が、高架線路の陰から再び上昇する。

 

 目標との距離。

 

 射撃条件。

 

 誘導装置。

 

 すべて正常。

 

小貝「BLUE 2、空対地誘導弾一発。発射」

 

 主翼下から誘導弾が離れる。

 

 推進装置が点火。

 

 高架下の対空型へ向かった。

 

 敵が二度目の射撃を始める。

 

 だが、誘導弾の方が速い。

 

 着弾直前、弾頭が青白く発光。

 

 絶縁層が一瞬だけ薄くなる。

 

 誘導弾が、対空型へ直撃した。

 

 爆発。

 

 高架の一部が崩れ、その下から黒い外殻が吹き飛ぶ。

 

勇翔「北側対空型、沈黙を確認」

 

小貝「残り一体」

 

 南側の対空型は、まだ工場跡から動いていない。

 

 その近くにはⅢ号戦車。

 

 少し離れた位置に、センチュリオンとシャーマンもいる。

 

 誘導弾や爆弾を使用すれば、味方を巻き込む危険があった。

 

小貝「センチュリオン。南側対空型へは、こちらから攻撃できない」

 

センチュリオン『確認しました。私たちで位置を変えさせます』

 

小貝「無理に破壊する必要はない。遮蔽物の外へ出せれば、航空隊が引き受ける」

 

センチュリオン『了解。ヘルキャット』

 

ヘルキャット『聞いてるよ』

 

センチュリオン『南側工場の裏へ回れますか?』

 

ヘルキャット『やっと走っていいんだね?』

 

センチュリオン『対空型の撃破ではなく、注意を引いてください。深追いは禁止です』

 

ヘルキャット『注文が多いなぁ。でも、任せて!』

 

 ヘルキャットが排水路から南へ移動する。

 

 敵の正面を避け、崩壊した建物の裏を通る。

 

 Ⅲ号戦車が、敵位置を伝え続けた。

 

Ⅲ号戦車『み、南側の小型二体が、ヘルキャットさんの方へ動いています!』

 

ヘルキャット『見えてる。あの程度なら追いつけないよ!』

 

センチュリオン『シャーマン。左翼の敵へ一斉射。ヘルキャットへの注意を逸らしてください』

 

シャーマン『待ってました!』

 

 シャーマンが遮蔽物から飛び出す。

 

 主砲を連続して発射。

 

 マウスも正面の敵へ砲撃を加えた。

 

 地上部隊全体が同時に動いたことで、敵の注意が分散する。

 

 ヘルキャットは工場跡の裏側へ到達。

 

 短く停止。

 

 隠れている対空型の側面へ砲撃した。

 

 砲弾が絶縁層を揺らし、外殻へ命中する。

 

 破壊には至らない。

 

 だが、対空型が工場跡から動き出した。

 

 攻撃方向を、ヘルキャットへ変える。

 

ヘルキャット『出てきた!』

 

センチュリオン『ヘルキャット、離脱!』

 

ヘルキャット『言われなくても!』

 

 ヘルキャットが急加速。

 

 直後までいた場所へ、対空型の攻撃が着弾した。

 

 工場跡から出たことで、敵とⅢ号戦車の間に距離が生まれる。

 

 それでも、A-10から誘導弾や爆弾を使うには近い。

 

 別の機影が低空へ入った。

 

IL-2M『こちらIL-2M。対空型を視認した』

 

小貝「BLUE 2よりIL-2M。味方は目標北西へ退避中。攻撃方向は南から北。北側へは撃ち抜くな」

 

IL-2M『分かっている。あいつを地上へ返してやる』

 

 IL-2Mが低空から接近する。

 

 対空型は、離脱するヘルキャットを追っている。

 

 上空から接近するIL-2Mへの反応が遅れた。

 

 IL-2Mが射撃。

 

 砲弾が対空型の上面へ集中する。

 

 絶縁層が薄れ、外殻へ亀裂が走った。

 

 敵が攻撃方向を変えようとする。

 

 IL-2Mは一度で仕留めようとせず、射撃を終えると直ちに上昇した。

 

IL-2M『装甲を割った。とどめを頼む!』

 

センチュリオン『Ⅲ号、撃てますか?』

 

Ⅲ号戦車『わ、私がですか!?』

 

センチュリオン『敵はこちらを見ていません。落ち着いて照準してください』

 

Ⅲ号戦車『……はい!』

 

 Ⅲ号戦車は通信装置を背部へ戻した。

 

 ARMSの主砲を、損傷した対空型へ向ける。

 

 砲口が震えていた。

 

 Ⅲ号戦車は一度息を止めた。

 

 それから、ゆっくりと吐く。

 

 照準。

 

 発射。

 

 砲弾が、IL-2Mの攻撃によって生まれた亀裂へ命中した。

 

 対空型の内部で、橙色の光が膨張する。

 

 外殻が内側から破裂した。

 

Ⅲ号戦車『あ……』

 

センチュリオン『命中です。対空型、撃破』

 

Ⅲ号戦車『わ、私が……倒した……』

 

ヘルキャット『やるじゃん、Ⅲ号!』

 

シャーマン『すごいよ!』

 

マウス『わらわが敵の主力を引きつけていたからこその戦果だが、まあ、褒めてやってもよい』

 

Ⅲ号戦車『あ、ありがとうございます……!』

 

 小貝は上空から、その一連の戦闘を見ていた。

 

 A-10が対空型を二体とも破壊したわけではない。

 

 F-3が発見。

 

 ヘルキャットが誘い出す。

 

 シャーマンとマウスが敵の注意を分散。

 

 IL-2Mが装甲を破壊。

 

 Ⅲ号戦車が仕留めた。

 

 誰か一人だけでは成立しない攻撃だった。

 

小貝「南側対空型の沈黙を確認。これより地上支援へ移る」

 

センチュリオン『地上隊、了解しました』

 

小貝「優先目標を指定してくれ」

 

センチュリオン『正面の大型防衛種二体です。あの二体が存在する限り、こちらは前進も離脱もできません』

 

小貝「味方との距離は?」

 

センチュリオン『近い方で五百五十メートル。現在、マウスが交戦しています』

 

小貝「マウスを後退させられるか?」

 

マウス『断じて否だ!』

 

 マウスの声が回線へ割り込んだ。

 

マウス『わらわが退けば、敵が前へ出るではないか!』

 

小貝「そのままでは、こちらも攻撃できん」

 

マウス『わらわへ当てずに、敵だけを撃てばよい!』

 

小貝「初めて会った相手の腕を、よくそこまで信用できるな」

 

マウス『わらわが選んだのだ。光栄に思え!』

 

 小貝は一瞬黙った。

 

小貝「センチュリオン。あれはいつもああなのか?」

 

センチュリオン『……概ね』

 

小貝「苦労しているな」

 

マウス『聞こえているぞ!』

 

 短いやり取りの間にも、敵は前進を続けている。

 

 小貝は目標と味方の位置を再確認した。

 

 大型防衛種の正面にはマウス。

 

 現在の距離では、爆弾を使用できない。

 

 攻撃方向を変えても、破片が味方へ届く可能性がある。

 

小貝「マウス。センチュリオンが示した貨車の後ろまで下がれ」

 

マウス『断る!』

 

小貝「そこまで下がれば、爆撃で敵の装甲を剥がせる。倒したあとは、好きなだけ前へ出ていい」

 

マウス『……本当だな?』

 

センチュリオン『マウス! 今は従ってください!』

 

マウス『分かった! この一度だけだ!』

 

 マウスが、地面へ固定していたARMSを解除する。

 

 重い装備を動かし、指定された貨車の後方まで下がり始めた。

 

 センチュリオンとシャーマンが援護射撃を行い、大型防衛種の前進速度を落とす。

 

 マウスが貨車の後方へ入る。

 

 敵と味方の距離が広がった。

 

 さらに貨車の残骸が、爆風と破片に対する遮蔽物になる。

 

小貝「RED 1。大型防衛種へ小型精密誘導爆弾を使用する。照準補助を頼む」

 

勇翔『RED 1、了解。目標を確認しました』

 

 F-3の光学装置が、大型防衛種を捉える。

 

 レーザー照射。

 

 A-10の兵装表示へ、目標位置が示された。

 

勇翔『目標照射を開始。周囲の友軍は遮蔽物へ退避。射線上に反応なし』

 

小貝「BLUE 2、攻撃進入」

 

 A-10が高度を下げる。

 

 照準表示。

 

 投下可能範囲へ入る。

 

 小貝は大型防衛種だけを見なかった。

 

 左右の小型敵。

 

 味方の位置。

 

 離脱方向。

 

 攻撃後に対空型の残存が現れた場合の回避経路。

 

 すべてを確認する。

 

小貝「小型精密誘導爆弾、一発投下」

 

 主翼下から爆弾が離れる。

 

 A-10は直ちに上昇へ移る。

 

 誘導爆弾が、勇翔の照射する地点へ落下。

 

 着弾直前、絶縁層へ干渉する起爆部が作動した。

 

 青白い光。

 

 直後。

 

 大型防衛種の背部へ爆弾が直撃した。

 

 爆発。

 

 黒い外殻が大きく変形する。

 

 背部装甲が剥がれ、内部構造が露出した。

 

 それでも、敵は倒れない。

 

 身体の一部を失いながら、前進を続けようとしている。

 

勇翔『命中。目標は大破するも、活動を継続』

 

小貝「硬いな」

 

マウス『ならば、最後はわらわの役目だ!』

 

 マウスが貨車の陰から前へ出る。

 

 大型ARMSを地面へ固定。

 

 主砲を、損傷した大型防衛種へ向けた。

 

マウス『わらわの前へ立ったことを、あの世で後悔するがよい!』

 

 発射。

 

 大口径砲弾が、誘導爆弾によって剥がれた装甲部分へ命中する。

 

 大型防衛種の内部で、橙色の光が消えた。

 

 巨体が地面へ崩れ落ちる。

 

マウス『見たか! これが、わらわの圧倒的な力だ!』

 

小貝「こっちの爆弾も当たっていたんだがな」

 

マウス『下準備としては悪くなかったぞ』

 

小貝「そりゃどうも」

 

 残る大型防衛種が進路を変える。

 

 正面突破を諦め、左側のシャーマンへ向かった。

 

シャーマン『こっちに来た!』

 

センチュリオン『シャーマン、後退! 正面から撃ち合ってはいけません!』

 

シャーマン『でも、逃げたら後ろへ抜ける!』

 

 シャーマンは退きながら砲撃する。

 

 砲弾は敵の絶縁層と正面装甲に阻まれた。

 

 大型防衛種が速度を上げる。

 

 小貝は目標を捉えた。

 

 だが、シャーマンとの距離は二百メートルを切っている。

 

 現在の位置では撃てない。

 

小貝「BLUE 2、攻撃中止。味方が近すぎる」

 

スカイレイダー『こっちからなら撃てるよ!』

 

 AD-1スカイレイダーが、戦闘区域西側から接近する。

 

 両翼には、複数のロケット弾。

 

 低空へ入ろうとしている。

 

小貝「待て。今撃てば、シャーマンまで巻き込む」

 

スカイレイダー『でも、あのままじゃ追いつかれる!』

 

小貝「地上隊と進路を合わせる。勝手に撃つな」

 

スカイレイダー『……了解。こういう時に待つのは、あんまりロックじゃないけどね』

 

小貝「味方を吹き飛ばす方が、よほど格好悪い」

 

スカイレイダー『それは確かに!』

 

 センチュリオンが、地上部隊へ指示を出す。

 

センチュリオン『シャーマン。北へ走ってください。ヘルキャットは敵の右側面へ』

 

ヘルキャット『任せて!』

 

シャーマン『北へ行けばいいんだね!』

 

 シャーマンが進路を変える。

 

 大型防衛種も追従。

 

 敵の側面が、ヘルキャットへ向けられた。

 

 ヘルキャットは高速で接近すると、一発だけ砲撃。

 

 砲弾を側面装甲へ命中させる。

 

 大型防衛種が、今度はヘルキャットへ向き直った。

 

 左右へ振り回され、進行速度が落ちる。

 

センチュリオン『シャーマン、離脱!』

 

 シャーマンが敵から距離を取る。

 

 味方と目標の間隔が広がった。

 

小貝「スカイレイダー。攻撃方向、南西から北東。ロケットは一斉射ではなく、二回に分けろ」

 

スカイレイダー『待ってました! スカイレイダー、攻撃に入る!』

 

 AD-1が低空へ入る。

 

 大型防衛種へ向け、最初のロケット弾を発射。

 

 複数の爆発が、敵の右側へ集中する。

 

 絶縁層が薄れ、外殻へ亀裂が入った。

 

 AD-1は一度上昇。

 

 旋回して、二度目の攻撃へ入る。

 

 残るロケット弾が、同じ場所へ命中した。

 

スカイレイダー『装甲を割った! 次、お願い!』

 

小貝「BLUE 2、引き継ぐ」

 

 A-10が降下する。

 

 照準器へ、大型防衛種を捉える。

 

 味方はすでに離れている。

 

 射線の先にも友軍はいない。

 

小貝「GUNS」

 

 三〇ミリ機関砲が、短く火を噴く。

 

 砲弾が、AD-1の攻撃によって損傷した右側面へ集中した。

 

 外殻が剥がれる。

 

 内部の発光器官が露出する。

 

 小貝は引き金を離した。

 

 そのまま目標上空を通過する。

 

 敵はまだ動いている。

 

 だが、速度は大きく落ちていた。

 

ヘルキャット『そこまで開けてくれれば、十分!』

 

 ヘルキャットが敵の側面へ回る。

 

 停止。

 

 照準。

 

 露出した発光器官へ砲撃する。

 

 命中。

 

 大型防衛種の橙色の光が消える。

 

 敵は数歩だけ進み、その場で倒れた。

 

ヘルキャット『大型、撃破!』

 

シャーマン『やった!』

 

センチュリオン『まだです。敵は残っています。隊形を戻してください』

 

 大型防衛種二体を失ったことで、敵地上部隊の動きが変わった。

 

 正面へ集中していた中型と小型のリセッターが、左右へ分散を始める。

 

 地上部隊を突破しようとしているのではない。

 

 戦線から離脱しようとしていた。

 

 それでも、一部の個体は攻撃を続けている。

 

 味方が追撃へ移れば、再び包囲される可能性があった。

 

代理人『こちらツェッペリン管制。敵航空型が再集結を始めています』

 

 勇翔が、地上監視装置を航空捜索へ戻す。

 

 東へ退いていた敵航空型が、再び一つの集団を作ろうとしている。

 

 数は八。

 

 完全に戦闘能力を失ったわけではない。

 

勇翔「RED 1より全機。確保した航空回廊は、残り二分です」

 

小貝「地上隊の離脱経路は?」

 

センチュリオン『確保できました。負傷者はいません。ARMSに損傷はありますが、全員移動可能です』

 

小貝「なら、深追いはするな」

 

シャーマン『でも、今なら追いつけるよ!』

 

センチュリオン『シャーマン。命令です。現在位置を維持してください』

 

シャーマン『……了解』

 

ヘルキャット『私なら追いつけるけど?』

 

センチュリオン『あなたもです』

 

ヘルキャット『分かったよ』

 

マウス『敵が逃げるというのなら、追撃して完全に消し去るべきではないか?』

 

小貝「敵航空部隊が戻ってくる。対空型が本当に二体だけだった保証もない」

 

マウス『む……』

 

小貝「今日の目的は敵を全滅させることではない。この場所を守り、あんたたち全員を帰すことだ」

 

 短い沈黙。

 

センチュリオン『地上隊、追撃を中止します』

 

小貝「それでいい」

 

 小貝は兵装と燃料を確認した。

 

 空対地誘導弾、残り一発。

 

 小型精密誘導爆弾、残り一発。

 

 ロケット弾、未使用。

 

 三〇ミリ機関砲弾、六割以上。

 

 戦闘を続けるだけの兵装は残っている。

 

 だが、航空優勢は失われつつある。

 

 地上部隊の離脱経路も確保できた。

 

 これ以上の攻撃は、任務達成のために必要なものではない。

 

 敵をさらに倒せるという理由だけで、戦場へ残るべきではなかった。

 

小貝「BLUE 2よりIL-2M、スカイレイダー。攻撃終了。高度を上げて離脱する」

 

IL-2M『まだ敵は残っている』

 

小貝「分かっている。だが、航空型が戻る」

 

IL-2M『……了解した』

 

スカイレイダー『もう終わり? こっちはまだ撃てるよ』

 

小貝「撃てることと、撃つ必要があることは別だ」

 

スカイレイダー『なるほどね。BLUE 2、なかなかロックなことを言うじゃん』

 

小貝「褒め言葉として受け取っておく」

 

 IL-2MとAD-1が上昇する。

 

 A-10も戦闘区域から離脱した。

 

 地上では、五人のDOLLSが互いの損傷を確認しながら、防御線を再構築している。

 

 戦闘開始時に三十六体いた地上型リセッター。

 

 破壊、または行動不能となったものは十八体。

 

 残る個体は東へ退いていく。

 

 その半数を、A-10が単独で撃破したわけではない。

 

 F-3。

 

 IL-2M。

 

 AD-1。

 

 地上の五人。

 

 全員が、それぞれの能力を使った結果だった。

 

     *

 

 F-3が、A-10の上空へ入る。

 

 勇翔は東側から接近する敵航空型を監視しながら、味方攻撃隊の離脱を援護していた。

 

勇翔「RED 1よりBLUE 2。地上部隊全員の生存を確認しました」

 

小貝「BLUE 2、了解」

 

勇翔「初めての実戦で、もう少し撃ちたがると思っていました」

 

小貝「俺を何だと思っている」

 

勇翔「A-10へ乗ると性格が変わる人です」

 

小貝「否定はしない」

 

勇翔「しないんですか……」

 

小貝「だが、帰るべき時くらいは分かる」

 

 小貝は、眼下の大地を見る。

 

 黒い残骸。

 

 砲撃によって抉られた地面。

 

 崩れた建物。

 

 A-10は、地上の目標を破壊するために作られた航空機だった。

 

 機首へ搭載された三〇ミリ機関砲。

 

 多数の兵装を搭載できる主翼。

 

 被弾しても帰還するための装甲と冗長性。

 

 そのすべてが、戦場で敵を破壊するために存在する。

 

 だが、機体自身が敵を選ぶわけではない。

 

 引き金を引く時機も。

 

 攻撃を中止する距離も。

 

 誰を守るために飛ぶのかも。

 

 決めるのは、操縦する者だった。

 

小貝「勇翔」

 

勇翔『はい』

 

小貝「さっきの目標照射、助かった」

 

勇翔『どういたしまして。小貝さんも、全員を無事に帰せましたね』

 

小貝「俺一人の戦果じゃない」

 

勇翔『はい。見ていました』

 

 勇翔の声には、僅かな笑いが含まれている。

 

勇翔『でも、小貝さんが待てと言わなければ、危なかった場面は何度もありました』

 

小貝「撃たない判断も、攻撃の一部だ」

 

勇翔『昔から、それを僕に教えていましたね』

 

小貝「教官が優秀だったからな」

 

勇翔『それも、何度も聞きました』

 

 勇翔は戦術表示を確認する。

 

 敵航空型は追ってこない。

 

 雷電たちも順次、離脱を始めている。

 

勇翔「RED 1より全機。帰投経路上に敵反応なし。東部航空基地へ帰還します」

 

雷電『雷電、了解しました』

 

シュヴァルベ『シュヴァルベ、了解』

 

ミーティア『ミーティア、帰投しますわ』

 

マスタング『了解! 帰ったら、今日の戦果をちゃんと報告してもらうからね!』

 

IL-2M『IL-2M、帰投する』

 

スカイレイダー『スカイレイダー、了解。帰ったらBLUE 2と話がしたいな!』

 

小貝「何か目を付けられたぞ」

 

勇翔『気に入られたんじゃないですか?』

 

小貝「俺の人徳だな」

 

勇翔『それはどうでしょう』

 

小貝「そこは肯定しろ」

 

 複数の機影が、Cityへ向かう。

 

 空の向こうには、巨大な防壁。

 

 その一部に設けられた航空用開口部が見え始めていた。

 

     *

 

 City東部航空基地。

 

 最初に収容されたのは、ARMSへ損傷を受けたDOLLSだった。

 

 雷電。

 

 シュヴァルベ。

 

 ミーティア。

 

 マスタング。

 

 続いて、IL-2MとAD-1。

 

 F-3とA-10は、その間も基地上空で待機した。

 

 負傷者と損傷機を優先する。

 

 全員の収容が確認されてから、勇翔が着陸進入を開始する。

 

『RED 1、着陸を許可します』

 

勇翔「RED 1、了解」

 

 F-3が滑走路へ接地。

 

 減速し、誘導路へ入る。

 

 その後方。

 

 A-10も着陸装置を下ろした。

 

『BLUE 2、着陸を許可します』

 

小貝「BLUE 2、了解」

 

 小貝は速度を調整する。

 

 滑走路端を越える。

 

 降下率、正常。

 

 機首上げ。

 

 主脚が滑走路へ触れた。

 

 続いて、前脚。

 

 制動。

 

 A-10が速度を落とし、無事に誘導路へ入る。

 

小貝「BLUE 2、着陸。機体異常なし」

 

代理人『帰還を確認しました。二人とも、そのまま指定駐機位置へ移動してください』

 

小貝「了解」

 

 駐機場では、すでに医療要員と技術要員が待っていた。

 

 二機が停止する。

 

 エンジン停止。

 

 電源遮断。

 

 兵装安全装置を確認。

 

 勇翔と小貝が操縦席から降りる。

 

 地面へ足を着けた直後、小貝は首を左右へ動かした。

 

 肩と腰に重さが残っている。

 

 新しい身体で行った、初めての実戦飛行。

 

 異常がなくても、疲労がないわけではなかった。

 

医療要員「小貝少佐。こちらへ座ってください」

 

小貝「歩ける」

 

医療要員「歩けるかどうかは聞いていません」

 

小貝「……分かった」

 

 近くでは、勇翔も別の医療要員に捕まっていた。

 

勇翔「腰は痛くありませんよ」

 

医療要員「検査してから判断します」

 

勇翔「はい……」

 

小貝「お互い、信用がないな」

 

勇翔「目を覚ましてすぐ動こうとした人間が二人いますからね」

 

小貝「お前だけだろう」

 

勇翔「小貝さんも屋上でふらついていました」

 

小貝「あれは一度だけだ」

 

勇翔「僕も同じことを言いました」

 

 そこへ、AD-1スカイレイダーが近づいてくる。

 

 ARMSの一部には被弾痕が残っていた。

 

 それでも、本人は疲労を感じさせない笑顔を見せている。

 

スカイレイダー「BLUE 2!」

 

小貝「小貝高虎だ。BLUE 2は作戦中の呼び名だ」

 

スカイレイダー「じゃあ、小貝! さっきはありがとう!」

 

小貝「俺は攻撃の順番を決めただけだ。大型の装甲を割ったのは、あんたのロケットだろう」

 

スカイレイダー「それでも、撃つのを待たせた判断は正しかったよ。あの時に撃っていたら、シャーマンまで巻き込んでた」

 

 スカイレイダーは、少し照れたように頬を掻く。

 

スカイレイダー「私は『不可能』って言われると、つい挑みたくなるんだ。今回は、ちょっと熱くなってたかも」

 

小貝「果敢と無謀は違う」

 

スカイレイダー「うん。次はもっとロックに、もっと上手くやるよ!」

 

小貝「その意気だ」

 

スカイレイダー「それと、今度飲み物を奢るね。何がいい?」

 

小貝「酒はあるか?」

 

スカイレイダー「代理人に怒られなければ!」

 

代理人「怒ります」

 

 いつの間にか、代理人が二人の近くへ立っていた。

 

スカイレイダー「まだ何もしてないよ!」

 

代理人「これからしようとしていました」

 

スカイレイダー「固いなぁ」

 

 スカイレイダーは笑いながら離れていく。

 

 入れ替わるように、IL-2Mが来た。

 

 表情は硬い。

 

 リセッターの残骸が映る記録板を、強く握っている。

 

IL-2M「小貝少佐」

 

小貝「何だ?」

 

IL-2M「南側の対空型。あんたが待てと言わなければ、私はそのまま攻撃していた」

 

小貝「味方が近かったから止めただけだ」

 

IL-2M「それでもだ」

 

 IL-2Mは小貝を正面から見る。

 

IL-2M「礼は言っておく」

 

小貝「こっちも助かった。あんたが装甲を割らなければ、Ⅲ号戦車は撃破できなかった」

 

IL-2M「次は、最初から完全に破壊する」

 

小貝「次も味方の位置を見てからにしろ」

 

IL-2M「……分かっている」

 

 IL-2Mは短く答え、その場を離れた。

 

 代理人は、二人が去ったあとで小貝を見る。

 

代理人「初めての実戦は、どうでしたか?」

 

小貝「質問が広すぎる」

 

代理人「では、A-10について」

 

 小貝は駐機場のA-10へ顔を向けた。

 

 技術要員が、機首下部の機関砲を確認している。

 

 砲口周辺には、発射による汚れ。

 

 主翼下では、使用した兵装と残弾数が記録されていた。

 

小貝「俺が知っているA-10と、ほとんど同じだ」

 

代理人「ほとんど?」

 

小貝「機体の応答が僅かに違う。こちらの考えを、先に読まれているような感覚がある」

 

代理人「ARMSとしての性質かもしれません」

 

小貝「便利ではある。だが、機体へ任せすぎるのは危険だ」

 

代理人「なぜですか?」

 

小貝「判断するのは、操縦者でなければならない」

 

 代理人は、戦闘記録を表示した端末を見る。

 

 そこには、小貝が攻撃を中止した場面も残されていた。

 

代理人「攻撃できたのに、撃たなかった場面が何度もあります」

 

小貝「味方が近かった。それだけだ」

 

代理人「A-10の火力を、怖いとは思いませんか?」

 

小貝「怖いに決まっている」

 

 小貝は、迷わず答えた。

 

小貝「あれだけの火力があれば、敵だけではなく、味方も民間人も簡単に殺せる。だから、撃つ前に何度でも位置を確かめる」

 

代理人「それでも、必要なら使う?」

 

小貝「使う」

 

 小貝は、A-10の機首を見つめる。

 

小貝「A-10そのものに、善も悪もない」

 

 航空機は、自ら戦場を選ばない。

 

 誰を敵とするかも決めない。

 

 どこへ砲口を向けるのか。

 

 いつ引き金を引くのか。

 

 いつ攻撃を止めるのか。

 

 どのような目的のために飛ぶのか。

 

 それを選び、その結果へ責任を負うのは、機体に乗る者だった。

 

小貝「人を守るためにも使える。何の罪もない人間を殺すためにも使える。善悪があるとすれば、使う側だ」

 

代理人「今日は、何のために使ったのですか?」

 

小貝「地上にいた五人を帰すためだ」

 

 小貝は代理人へ視線を戻す。

 

小貝「それ以外に、理由が必要か?」

 

 代理人は僅かに笑った。

 

代理人「いいえ。十分です」

 

 勇翔が、検査用の椅子へ座ったまま二人の話を聞いていた。

 

勇翔「だから、僕は小貝さんとなら安心して飛べるんです」

 

小貝「俺より先に飛んでいた奴が何を言っている」

 

勇翔「位置の話ではありませんよ」

 

小貝「分かっている」

 

 小貝は少しだけ照れたように顔を逸らした。

 

代理人「二人とも、正式な報告は検査のあとに行います」

 

小貝「了解した」

 

勇翔「分かりました」

 

代理人「それから、今回の出撃で二機がリセッターへ有効な攻撃能力を持つことは確認できました。ただし、まだ分からないことは多く残っています」

 

勇翔「敵も、僕たちの機体を見ました」

 

小貝「次は対策してくる可能性があるな」

 

代理人「はい。二度目も同じように戦えるとは考えないでください」

 

小貝「当然だ」

 

勇翔「次までに、今日の記録を全部確認します」

 

代理人「その前に休んでください」

 

勇翔「記録を見るくらいなら、座ったままできますよ?」

 

代理人「休んでください」

 

勇翔「……はい」

 

小貝「諦めろ。今のこいつに逆らっても無駄だ」

 

代理人「小貝少佐も休むんですよ」

 

小貝「俺もか?」

 

代理人「当然です」

 

 小貝は不満そうに息を吐いた。

 

 駐機場では、二機の愛機が整備を受けている。

 

 F-3。

 

 A-10。

 

 異なる空を飛び、異なる戦争で使われてきた航空機。

 

 この世界でも、兵器であることは変わらない。

 

 兵器そのものに、善も悪もない。

 

 だからこそ。

 

 それを扱う者は、冷静でなければならない。

 

 撃てるかではなく。

 

 撃つべきかを、選び続けなければならなかった。

 




はい。
チカレタ...
これ以外に、探すのが大変でした...
本当に疲れた...
次回は、ウマ娘の方を書きます!

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※2026年8月26日リメイク完了

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