陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る   作:ゴーストライターとかした、素人小説書き

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注意

この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
それがいやな方は、上にある矢印ボタンでブラウザバックを推奨します。
それでも、大丈夫な方はご覧ください...の前に少し一言...

今回小説の投稿を3週間遅れて申し訳ありませんでした...
決して失踪していたわけではないのです...
大学のテストで2週間勉強していました...
ですが、その報告をするのを忘れてしまいました...

自身の配慮が足りませんでした...
本当に申し訳ありませんでした...



第6話 孤独無縁でも、光は必ずあるものよ

第6話 孤独無縁でも、光は必ずあるものよ

 

 UH-60機内。

 

 開いた側面扉の向こうで、自然公園の丘が遠ざかっていく。

 

 ローターの轟音に混じって、断続的な銃声が聞こえた。

 

 蓮の89式。

 

 斜面を上がる私兵たちの小銃。

 

 両者の銃声が重なり、距離とともに小さくなっていく。

 

416「……戻って」

 

 416が座席の固定帯へ手を掛ける。

 

416「今すぐ引き返して!」

 

搭乗員「無理だ! 着陸地点にはまだ敵がいる!」

 

416「だから戻るのよ! 蓮が一人で残っている!」

 

搭乗員「機体にも被弾している! これ以上、あそこには留まれない!」

 

 搭乗員が機体側面を指した。

 

 UH-60の外板には、複数の弾痕が残っている。

 

 定員も限界だった。

 

 ここで引き返せば、蓮だけでなく、機内にいる負傷者と救出者全員を危険に晒すことになる。

 

 そんなことは、416にも分かっていた。

 

 分かっているからこそ、何もできない自分が許せなかった。

 

 416の右手には、二枚の認識票が握られている。

 

 左腕には、使い込まれた黒い手帳。

 

 つい先ほど、蓮本人から預けられたものだった。

 

416「……あんなものを渡しておいて」

 

 閉じた拳の中で、二枚の認識票が触れ合う。

 

 小さな金属音は、ローターの轟音に掻き消された。

 

416「何が『少し遠回りするだけ』よ……」

 

 最後まで笑っていた。

 

 自分の席を捕虜へ譲り、負傷した416や救出した者たちを先に乗せ、迫ってくる敵を前にしても、蓮は僅かに笑っていた。

 

 まるで、すぐ近くの道を歩いて帰るだけのように。

 

VSK「416さん」

 

 向かい側の座席にいたVSKが声を掛ける。

 

 服も身体も、戦闘と捕虜生活で傷ついていた。

 

 胸元には、最後の一発を撃ち切ったSV-98が抱えられている。

 

416「……何?」

 

VSK「固定帯を締めてください。今の状態で機体が揺れれば、座席から落ちます」

 

416「そんなことを言っている場合じゃないでしょう」

 

VSK「あなたが負傷していることも、今は考えなければなりません」

 

416「私は平気よ」

 

 416は立ち上がろうとした。

 

 だが、足へ力を入れた途端、視界が大きく揺れる。

 

 迫撃砲弾の爆発を受けた影響は、まだ残っていた。

 

 身体が横へ傾き、VSKが416の腕を掴む。

 

VSK「平気ではありません」

 

416「離して」

 

VSK「離しません」

 

416「……あなた、随分とはっきり言うのね」

 

VSK「蓮さんから、あなたを連れて帰るように頼まれましたから」

 

 416の動きが止まった。

 

VSK「G3さんを連れて帰れと、あなたにも言っていました」

 

416「聞いていたわ」

 

VSK「なら、今は生きて帰ることを考えてください」

 

416「それで、あいつを置いていけっていうの?」

 

VSK「いいえ」

 

 VSKは静かに首を横へ振った。

 

VSK「蓮さんは、帰ると約束しました」

 

416「……あんな状況で交わした約束を、本気で信じているの?」

 

VSK「信じるかどうかではありません」

 

 VSKが、416の手の中にある認識票を見る。

 

VSK「私たちは、彼が帰る場所を守らなければなりません」

 

 416は答えなかった。

 

 もう一度、側面扉の向こうを見る。

 

 自然公園は丘の陰に隠れ、蓮の姿は見えない。

 

 銃声も、すでにローター音の中から聞き分けられなくなっていた。

 

416「搭乗員」

 

搭乗員「何だ!」

 

416「一号機と連絡を取って。G3の状態を確認して」

 

搭乗員「了解した!」

 

 搭乗員が機内通信へ切り替える。

 

 短いやり取りのあと、416へ振り向いた。

 

搭乗員「G3は意識不明のままだが、容体は安定している! ブレンが付き添っている!」

 

416「……そう」

 

 最低限、蓮が自分へ託した者は守られている。

 

 それでも、胸の奥へ刺さったものは抜けなかった。

 

416「グリフィン司令部へ、緊急報告を送って」

 

搭乗員「内容は?」

 

416「日本人兵士一名が着陸地点に残留。氏名は渡邉蓮。緑色の戦闘服を着用し、89式小銃を所持。現在、レッドカンパニーの部隊と交戦中」

 

 416は黒い手帳を開いた。

 

 そこに記された氏名と識別番号を確認する。

 

416「最後に確認した位置は、自然公園の丘の反斜面。可能な限り早く、救出部隊を出すよう要請して」

 

搭乗員「すぐには出せないぞ。周辺にはまだ敵が――」

 

416「それを判断するのは、あなたじゃない」

 

 416の声が低くなる。

 

416「一字も変えずに送って」

 

搭乗員「……了解した」

 

 搭乗員が通信を始める。

 

 416は黒い手帳を閉じ、二枚の認識票と一緒に胸元へ抱いた。

 

VSK「きっと戻ります」

 

416「当然よ」

 

 返事だけは、すぐに出た。

 

416「あいつには、まだ礼も言っていない。勝手に死なれたら、私が困るわ」

 

 強い口調とは裏腹に、認識票を握る指は僅かに震えていた。

 

 頬を伝った一滴を、416は誰にも見られないよう袖で拭う。

 

416「……必ず連れ戻す」

 

     ◇

 

 自然公園、着陸地点。

 

 二機のUH-60が巻き上げた土煙の中で、蓮は89式の引き金を絞った。

 

 短い連射。

 

 斜面を上がろうとしていた私兵たちが、木の陰へ身を伏せる。

 

 命中させる必要はない。

 

 敵の頭を下げ、自分から視線を外させれば十分だった。

 

 蓮は射撃を止めると、すぐに場所を変えた。

 

 同じ場所から撃ち続ければ、数で囲まれる。

 

「右へ回れ!」

 

「一人だ! 逃がすな!」

 

「連絡将校を奪われた! 必ず生け捕りにしろ!」

 

 斜面の下から、私兵たちの怒声が聞こえる。

 

蓮「生け捕り、ね……」

 

 蓮は木の幹へ身体を寄せ、弾倉を確認した。

 

 残弾は多くない。

 

 市役所への侵入と脱出、その後の援護射撃で、携行していた弾薬の大半を消費している。

 

 ここで正面から戦い続ければ、いずれ押し潰される。

 

蓮「付き合ってやる義理はないな」

 

 西へ離脱した二機のUH-60を一度だけ見る。

 

 すでに機影は小さくなっていた。

 

 少なくとも、斜面の私兵が持つ火器で狙える距離からは離れている。

 

 蓮は89式を構えたまま、斜面を横切るように走った。

 

 敵から見れば、西へ逃走しようとしているように映る。

 

 木々の隙間を抜け、崩れた石垣の陰へ滑り込む。

 

 直後、先ほどまでいた場所へ弾丸が集中した。

 

 木の幹が削れ、乾いた破片が飛び散る。

 

 蓮は姿勢を低く保ったまま、石垣に沿って移動した。

 

 斜面の下には、雨水を流すための細い排水路がある。

 

 蓮は縁へ足を掛け、そのまま中へ降りた。

 

 膝下まで溜まった冷たい水が、戦闘服へ染み込む。

 

 排水路を西へ二十メートルほど進み、私兵から見える場所で泥の上へ足跡を残す。

 

 その先にある茂みを大きく揺らした。

 

 それから水路へ戻り、今度は来た方向へ引き返す。

 

 泥の上には、西へ向かう足跡だけが残った。

 

「足跡がある!」

 

「西だ! 森へ逃げたぞ!」

 

 複数の足音が遠ざかる。

 

 だが、蓮はすぐには動かなかった。

 

 一分。

 

 二分。

 

 三分。

 

 遅れてきた別の私兵が排水路を覗き込み、さらにヴェスピドの羽音が頭上を通過する。

 

 蓮は泥水の中へ身体を伏せたまま、呼吸を抑えた。

 

 やがて羽音も西へ移っていく。

 

 偽装で稼げる時間は長くない。

 

 足跡が途中で消えていることへ気づけば、敵は再び周囲を捜索する。

 

 蓮は水路を反対側へ進んだ。

 

 自然公園の東側。

 

 自分が脱出してきた市街地へ、再び戻る進路だった。

 

 敵は、蓮が救援の飛び去った西へ逃げると考える。

 

 ならば、今は東側の包囲が薄い。

 

 安全な場所へ進むのではない。

 

 敵の予想から外れる場所へ進む。

 

 それが今、生き残るために選べる道だった。

 

     ◇

 

「捜せ!」

 

 レッドカンパニーの私兵が、廃墟の間を走る。

 

「緑色の戦闘服を着た男だ! 日本製の小銃を持っている!」

 

 その横を、鉄血のヴェスピドが飛行する。

 

 羽音に似た音を響かせ、崩れた建物の窓や路地を捜索していく。

 

「見つけても殺すな! キングは生け捕りを命じている!」

 

「抵抗されたらどうする!」

 

「脚を撃て! 話せる状態なら、それで十分だ!」

 

 複数の足音が、通りを通過していく。

 

 その僅か十数メートル先。

 

 崩れた建物の地下に残された狭い空間で、蓮は息を潜めていた。

 

 身体の周囲には、砕けたコンクリートと折れ曲がった鉄筋が重なっている。

 

 外から見れば、人間一人が入れる場所には見えない。

 

 入口には細い金属片と小石を重ね、誰かが触れれば音が出るようにしていた。

 

 89式は胸元。

 

 P226は右手の届く位置。

 

 蓮は目を閉じる。

 

 完全に眠るつもりはない。

 

 十五分。

 

 長くても二十分。

 

 短い休息を何度か繰り返し、意識を保つ。

 

 銃声。

 

 ローター音。

 

 捕虜たちの叫び。

 

 416が自分の名前を呼ぶ声。

 

 それらが、浅い眠りの中で何度も繰り返された。

 

 次に目を開けた時、瓦礫の隙間から差し込む光は強くなっていた。

 

 蓮は腕時計を見る。

 

 最後に目を閉じてから十八分。

 

 この場所へ潜り込んでからは、およそ二時間が経過している。

 

 外から聞こえる足音はない。

 

 ヴェスピドの羽音も遠ざかっていた。

 

 入口へ仕掛けた金属片の位置も変わっていない。

 

 蓮は瓦礫を僅かに動かし、外の様子を確認した。

 

 路地に人影はなかった。

 

蓮「……腹減ったな」

 

 緊張が少し緩んだ途端、空腹を自覚した。

 

 最後にまともな食事を取ってから、かなりの時間が経っている。

 

 水筒も、ほとんど空だった。

 

 疲労。

 

 空腹。

 

 水分不足。

 

 このままでは、敵と遭遇する前に判断力が鈍る。

 

 蓮は瓦礫の下から這い出した。

 

 周囲を警戒し、建物の影から影へ移動する。

 

 市役所から離れる方向へ数百メートル。

 

 住宅地の外れで、比較的損傷の少ない民家を見つけた。

 

 二階建て。

 

 窓は数か所割れているが、外壁と屋根は残っている。

 

 周囲の建物と比べれば、雨風を防ぐには十分な状態だった。

 

 蓮はすぐには近づかなかった。

 

 通りを挟んだ廃店舗へ入り、窓の奥から民家を観察する。

 

 十五分。

 

 人の出入りはない。

 

 窓へ動く影も映らない。

 

 だが、玄関周辺の雑草だけが不自然に踏まれている。

 

 完全な無人ではない。

 

蓮「誰かが使っているな……」

 

 民家の裏手へ回る。

 

 勝手口の扉へ触れる前に、取っ手の下へ目を向けた。

 

 細いワイヤー。

 

 扉を一定以上開けば、壁際に固定された円筒形の物体からピンが抜けるように仕掛けられている。

 

 外装と表示から見て、閃光音響弾だった。

 

 侵入者を殺傷するためではない。

 

 動きを止め、家の中へ異変を知らせるための罠。

 

蓮「素人の仕掛けじゃないな」

 

 蓮はワイヤーへ触れず、家の周囲を一周した。

 

 裏側の窓枠は変形し、鍵が完全には掛かっていない。

 

 隙間から室内を確認する。

 

 見える範囲に人影はない。

 

 蓮は留め具を押し上げ、窓を僅かに開いた。

 

 室内の空気が流れ出す。

 

 火薬。

 

 銃器用の油。

 

 金属を削った時に出る微かな匂い。

 

 ここを使っている者は、武装している。

 

 蓮は89式を先に入れ、続いて自分も窓を越えた。

 

 着地する前に床を確認する。

 

 足元に罠はない。

 

 そこは台所だった。

 

 流し台には空の容器が置かれ、棚には未開封の飲料水が数本残っている。

 

 蓮は一本を手に取った。

 

 封が破られていないことを確認し、僅かに口へ含む。

 

 一度に飲みすぎない。

 

 喉を湿らせ、間を置いてからもう一口飲む。

 

 棚の奥には、軍用の保存食が入っていた。

 

 蓮が一つを取り出し、記載された日付を見る。

 

蓮「……期限切れか」

 

 袋を裏返す。

 

 膨張も破損もない。

 

蓮「まあ、死にはしないだろ」

 

 食事を開ける前に、家の中を確認する必要がある。

 

 蓮は89式を構え、台所から廊下へ出た。

 

 床には、二人分と思われる足跡が残っている。

 

 一階の居間には、地図と通信機が置かれていた。

 

 机の上には、手入れの途中らしい銃器部品。

 

 壁際には工具箱と、鉄血から回収したと思われる装備が並んでいる。

 

蓮「鉄血の拠点……ではなさそうだな」

 

 鹵獲品か。

 

 それとも、敵の装備を調べている別勢力か。

 

 二階から、小さな金属音が聞こえる。

 

 誰かいる。

 

 蓮は89式を身体へ寄せ、階段へ近づいた。

 

 上から聞こえるのは、不規則な工具の音。

 

 その合間に、女性の鼻歌が混じっていた。

 

???「ふふふ~ん……♪」

 

 蓮は一段目へ足を掛けようとした。

 

 その時。

 

???「動かないで」

 

 背後から、冷たい声が届いた。

 

 蓮は動きを止めた。

 

 振り返らなくても分かる。

 

 自分の背中へ、銃口が向けられている。

 

 民家を観察していた間、出入りはなかった。

 

 ならば、家の中にいる二人のうち一人を見落としていたことになる。

 

蓮「……いつから見ていた?」

 

???「質問する立場だと思っているの?」

 

蓮「思ってないから聞いてるのさ」

 

???「口を動かす前に、その小銃を床へ置きなさい。ゆっくりよ」

 

 声に迷いはない。

 

 距離も十分に取られている。

 

 蓮が振り返るより先に、引き金を引ける位置だった。

 

蓮「分かった」

 

 蓮は89式の銃口を下げ、床へ静かに置く。

 

???「拳銃も」

 

 P226をホルスターから抜き、89式の横へ置く。

 

???「ナイフ」

 

蓮「よく見てるな」

 

???「いいから」

 

 腰のナイフも抜き、床へ置く。

 

???「武器から三歩離れて。両手は見える位置へ」

 

 蓮は両手を肩の高さへ上げ、前へ三歩進んだ。

 

???「そのまま、ゆっくり振り向いて」

 

 指示に従い、身体の向きを変える。

 

 廊下の奥に、一人の少女が立っていた。

 

 黒い衣服。

 

 長い髪。

 

 手にしているのは、AR-15系統の小銃。

 

 銃床を肩へ確実に当て、照準は蓮の胸元から動いていない。

 

 見た目は少女でも、構えに隙はなかった。

 

蓮「その銃……AR-15か」

 

AR-15「銃の話なら正解。私の名前を聞いたつもりなら、それも正解よ」

 

蓮「名前?」

 

AR-15「ST AR-15。それが私の名前」

 

 銃の名称を、そのまま自分の名として名乗った。

 

 416。

 

 VSK。

 

 G3。

 

 ブレン。

 

 これまで出会った彼女たちも、同じように銃の名を名乗っていた。

 

 蓮には、その理由も事情も分からない。

 

 ただ、目の前にいる彼女がこちらへ銃を向け、強い警戒心を抱いていることだけは分かった。

 

蓮「変わった名前だな」

 

AR-15「余計なお世話よ」

 

蓮「それもそうか」

 

AR-15「あなたの所属は?」

 

蓮「先にそっちが名乗ったな。俺は渡邉蓮。日本の陸上自衛隊に所属している」

 

AR-15「陸上自衛隊?」

 

蓮「知らないなら、それでいい」

 

AR-15「ここで何をしていたの?」

 

蓮「飯と水を探していた。悪かったとは思ってるが、敵に追われていたんでな」

 

AR-15「それを信じろと?」

 

蓮「信じなくていい。ただ、俺を撃つ前に話くらいは聞いてほしい」

 

AR-15「その話を聞くために、生かしているのよ」

 

蓮「なるほど。そいつはありがたい」

 

 二人の視線がぶつかる。

 

 二階から聞こえていた工具の音が止まった。

 

 僅かに床板が軋む。

 

 上にいる者も、異変へ気づいたらしい。

 

AR-15「両手を頭の後ろで組んで、膝をつきなさい」

 

蓮「断る」

 

AR-15「撃たれたいの?」

 

蓮「その気なら、とっくに撃っている」

 

AR-15「試してみる?」

 

蓮「遠慮しておく」

 

 蓮はゆっくりと両手を頭の後ろへ回した。

 

 膝を曲げる。

 

 AR-15の銃口は動かない。

 

 床へ片膝をつく直前。

 

 蓮は横へ倒れ込んだ。

 

AR-15「ッ!」

 

 同時に、足元の保存食を蹴り上げる。

 

 AR-15は保存食へ視線を向けなかった。

 

 蓮の動きだけを追い、銃口を下げる。

 

 だが、蓮が狙っていたのは目を逸らさせることではない。

 

 開いたままになっていた冷蔵庫の扉を蹴る。

 

 扉が勢いよく閉まり、AR-15の小銃の銃身を横から叩いた。

 

 銃口が壁へ逸れる。

 

 蓮は床を蹴て距離を詰めた。

 

 AR-15は小銃を奪われまいと、無理に引っ張らなかった。

 

 即座に負い紐を外し、銃を手放す。

 

 空いた右手が腰の拳銃へ向かう。

 

 速い。

 

 蓮はAR-15の手首を掴もうとせず、拳銃を抜く腕の内側へ肩からぶつかった。

 

 AR-15の背中が壁へ当たる。

 

 それでも、動きは止まらない。

 

 膝蹴りが蓮の脇腹へ突き刺さった。

 

蓮「グッ……!」

 

 細い身体からは想像できない衝撃だった。

 

 息が詰まり、身体が浮く。

 

 AR-15が蓮を押し戻し、拳銃を抜く。

 

 蓮は廊下の椅子を蹴った。

 

 倒れた椅子へ、AR-15の踵が触れる。

 

 転びはしない。

 

 だが、拳銃の照準が僅かに遅れた。

 

 蓮はAR-15の腕を両手で押し上げる。

 

 銃口が天井へ逸れた。

 

 AR-15の指が引き金へ掛かるより先に、蓮は拳銃を握る手を壁へ押しつけた。

 

 AR-15の腕力に、蓮の両腕が押し返される。

 

 力では抑えきれない。

 

 蓮は抵抗する方向を変えた。

 

 AR-15が拳銃を下げようとする力に合わせ、腕を横へ流す。

 

 その勢いのまま身体を入れ替え、AR-15の肩を壁へ押しつけた。

 

AR-15「くっ……!」

 

 拳銃が床へ落ちる。

 

 蓮はAR-15の背後へ回り、右腕を首へ回した。

 

 左手で自分の右腕を固定し、逃げられないよう身体を密着させる。

 

 AR-15が蓮の腕を掴む。

 

 引き剥がそうとする力が強い。

 

 蓮の身体が壁へ何度も打ちつけられた。

 

蓮「大人しく……してくれれば……こっちも楽なんだがな……!」

 

AR-15「侵入しておいて……よく言うわ……!」

 

 AR-15が身体を捻る。

 

 蓮は背中から振り落とされそうになりながらも、腕を離さなかった。

 

 正面から力を掛けず、身体の向きへ合わせて位置を変える。

 

 AR-15の膝裏へ片脚を入れ、姿勢を崩す。

 

 二人が床へ倒れ込んだ。

 

 AR-15はなおも抵抗する。

 

 だが、次第に動きが鈍くなった。

 

 蓮は抵抗する力が完全に抜けたことを確かめてから、ゆっくりと腕を緩めた。

 

 AR-15の身体を仰向けにする。

 

 胸元が僅かに上下している。

 

 呼吸はある。

 

 頭部を床へ打ちつけた様子もない。

 

蓮「……悪い」

 

 返事はない。

 

 正当防衛だった。

 

 それでも、若い女性の首を絞めて意識を失わせた事実は、気分のいいものではなかった。

 

 蓮はAR-15の拳銃を拾い、弾倉を抜く。

 

 薬室に入っていた一発も外し、武器と弾薬を離れた場所へ置いた。

 

 続いて自分の上着を脱ぎ、床に横たわるAR-15へ掛ける。

 

蓮「少しだけ、そこで寝ていてくれ」

 

 二階から、短い足音が聞こえた。

 

 上にいる者は、先ほどからの物音を聞いている。

 

 すでに、蓮を待ち構えている可能性が高かった。

 

 蓮は自分のP226を拾う。

 

 銃口を床へ向けたまま、階段の下から声を掛けた。

 

蓮「上にいるんだろ」

 

 返答はない。

 

蓮「AR-15は生きている。殺すつもりもない」

 

 沈黙。

 

 蓮はしばらく待った。

 

 話し合う意思があるなら、相手から何らかの反応がある。

 

 だが、二階から声は返ってこなかった。

 

 蓮は壁へ身体を寄せ、ゆっくりと階段を上がる。

 

 上がりきった先には、閉じられた扉が一つ。

 

 その向こうに人の気配があった。

 

 蓮が扉の前へ近づく。

 

 突然、扉が開いた。

 

SOPⅡ「AR-15に何をした!」

 

 赤い瞳の少女が飛び出してくる。

 

 手には大型のナイフが握られていた。

 

 蓮はP226を向けなかった。

 

 突き出されたナイフを避け、銃を持った腕で少女の手首を受け止める。

 

 もう片方の腕を、背後から首へ回す。

 

SOPⅡ「離せ!」

 

蓮「落ち着け! AR-15は下で眠っているだけだ!」

 

SOPⅡ「信じられるわけないでしょ!」

 

 SOPⅡが激しく身体を振る。

 

 蓮の身体が持ち上がり、背中から壁へ叩きつけられる。

 

 それでも首へ回した腕を離さない。

 

 この距離で手を放せば、ナイフが自分の胸へ届く。

 

 SOPⅡはナイフを逆手に持ち替えた。

 

 背後にいる蓮へ、腕を振り下ろす。

 

 刃が蓮の左腿へ突き刺さった。

 

蓮「ッ――!」

 

 焼けるような痛みが脚全体を走る。

 

 身体から力が抜けかける。

 

SOPⅡ「離せ!」

 

 SOPⅡがもう一度、蓮を壁へ叩きつけた。

 

 蓮は歯を食いしばる。

 

 少女が腕の中から抜け出そうとする動きに合わせ、体重を横へ移した。

 

 二人の身体が床へ倒れ込む。

 

 ナイフが傷口から抜け、床を転がった。

 

 蓮はSOPⅡの手首を床へ押しつけ、首へ回した腕を維持する。

 

SOPⅡ「うっ……この……!」

 

蓮「頼むから……大人しくしてくれ……!」

 

 SOPⅡの手が、蓮の腕を掴む。

 

 指へ強い力が込められた。

 

 腕を引き剥がされそうになる。

 

 蓮は身体全体を使って押さえ込み、耐え続けた。

 

 数秒。

 

 十秒。

 

 それ以上に長く感じられる。

 

 やがて、SOPⅡの手から力が抜けた。

 

 蓮はすぐに腕を緩める。

 

 SOPⅡを仰向けにし、呼吸を確かめた。

 

 胸元が上下している。

 

 外から見える負傷もない。

 

蓮「……くそ」

 

 自分の左腿を見る。

 

 戦闘服が血に染まり始めている。

 

 蓮はP226を床へ置き、傷口を手で強く押さえた。

 

 指の間から血が滲む。

 

 鮮血が脈打って噴き出してはいない。

 

 それでも、傷は深かった。

 

 蓮は腰の個人携行救急品を開く。

 

 止血用ガーゼ。

 

 圧迫包帯。

 

 必要な物を床へ並べる。

 

 戦闘服の腿部分を切り開き、傷口へ止血用ガーゼを押し当てる。

 

 その上から両手で強く圧迫した。

 

 痛みを堪えながら、数分間そのまま待つ。

 

 出血が弱まったところで、さらにガーゼを重ねる。

 

 圧迫が緩まないよう包帯を巻き、固定した。

 

 足先の感覚を確かめる。

 

 指は動く。

 

 脚へ力を入れることもできる。

 

 だが、まともに走るのは難しい。

 

蓮「これで敵が来たら、笑うしかないな……」

 

 処置を終えた蓮は、廊下で意識を失っているSOPⅡを見る。

 

 このまま冷たい床へ寝かせておくわけにはいかない。

 

 彼女のナイフを遠ざけ、ほかに武器を持っていないことを確認する。

 

 それから両腕を背中と膝裏へ入れた。

 

蓮「よっ……」

 

 立ち上がった瞬間、左脚へ痛みが走る。

 

 蓮は一度動きを止めた。

 

 出血が増えていないことを確認してから、近くの部屋へ入る。

 

 中には二つのベッドが置かれていた。

 

 SOPⅡを片方へ横たえ、頭が枕の中央へ来るよう位置を直す。

 

 毛布を胸元まで掛けた。

 

蓮「悪かったな」

 

 眠っているSOPⅡへ、小さく謝る。

 

 次は一階のAR-15だった。

 

     ◇

 

 蓮は一階の居間から毛布を一枚持ち出した。

 

 AR-15を毛布の上へ移し、階段の下までゆっくり引いていく。

 

 頭が床へ当たらないよう、上着を折って下へ入れる。

 

 階段の前で一度休む。

 

 AR-15を運ぶには、左脚へ掛かる負担をできるだけ減らさなければならない。

 

 蓮は階段へ後ろ向きに腰を下ろした。

 

 AR-15の両脇へ腕を通し、上半身を自分の胸元へ引き寄せる。

 

 右脚と両腕を使い、一段ずつ身体を引き上げた。

 

 一段。

 

 息を整える。

 

 もう一段。

 

 左脚を不用意に踏ん張るたび、傷口から鈍い痛みが広がる。

 

 途中で何度も動きを止めた。

 

 それでも、AR-15の頭を段差へ当てないよう支え続ける。

 

蓮「二人揃って……見た目より重いな……」

 

 ようやく二階へ到着する。

 

 蓮はAR-15を毛布ごと引き、SOPⅡが眠る隣のベッドへ運んだ。

 

 静かに横たえ、首と頭の位置を整える。

 

 呼吸を確認する。

 

 苦しそうな様子はない。

 

 蓮は自分の上着をAR-15へ掛けた。

 

 二人が所持していた武器と弾薬は、一階の別室へ置く。

 

 弾倉を外し、薬室にも弾が残っていないことを確認する。

 

 それ以上は触れなかった。

 

 自分が入った窓を閉め、玄関と窓には空き缶と細い糸を使った簡単な警報を仕掛ける。

 

 勝手口の罠には手を付けない。

 

 侵入があれば、二階まで音が届く。

 

 そこまで終えてから、蓮はようやく台所へ戻った。

 

 先ほど見つけた保存食を開ける。

 

 一口食べ、顔を顰めた。

 

蓮「……まずい」

 

 期限が切れているからではない。

 

 おそらく、元からこういう味だった。

 

 それでも食べる。

 

 水と一緒に腹へ押し込み、動くために必要な分だけ胃へ収めた。

 

 食事を終えると、蓮は二階へ戻った。

 

 二つのベッドでは、AR-15とSOPⅡが眠っている。

 

 二人の顔に、苦しそうな様子はない。

 

 蓮は椅子を扉の近くへ移し、腰を下ろした。

 

 左脚を伸ばす。

 

 P226は手の届く位置に置くが、銃口は二人へ向けない。

 

 敵なのか。

 

 味方なのか。

 

 まだ分からない。

 

 先ほどまで、互いに相手を傷つけようとしていた。

 

 それでも、冷たい床へ放置する理由にはならなかった。

 

 蓮は、いつも認識票があった胸元へ手を伸ばす。

 

 今は何もない。

 

 代わりに、離陸するヘリの中から自分へ伸ばされた416の手を思い出す。

 

416『だったら……絶対に取りに来なさい』

 

蓮「……約束したからな」

 

 窓の隙間から、朝の光が差し込んでいる。

 

 細い光は床を横切り、二つのベッドの間まで伸びていた。

 

 蓮は二人の様子をもう一度確かめる。

 

 目を覚ましたなら、今度こそ銃を向け合う前に話をしなければならない。

 

 腕時計の振動式警報を十五分後に設定する。

 

 蓮は89式を抱えたまま、静かに目を閉じた。

 

蓮「取りに行かないとな……」

 

 薄暗い部屋の中で、朝の光だけが消えずに残っていた。

 




はい。

お久しぶりです。
何故ここまで遅れたかは前書きの通り。
大学のテストがあって集中するために、一旦休んでいました...
本当に報告もなしにやってしまい申し訳ありませんでした...

今後、何かあったら一言活動報告の方を書きます...
今回は、本当に申し訳ありませんでした...

次回は、M4とM16です...
お楽しみに。

※2026年8月27日リメイク完了

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