陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る   作:ゴーストライターとかした、素人小説書き

18 / 74
注意

この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
それがいやな方は、上にある矢印ボタンでブラウザバックを推奨します。
それでも、大丈夫な方はご覧ください。



第7話 心眼を持っているなら一人一発で十分でしょ?

第7話 心眼を持っているなら一人一発で十分でしょ?

 

 民家、二階。

 

AR-15「……ん……」

 

 AR-15が目を開けた。

 

 最初に見えたのは、見慣れない天井だった。

 

 首には僅かな圧迫感が残っている。

 

 頭を打ったような痛みはない。

 

 手足も動く。

 

 AR-15が身体を起こすと、胸元から濃緑色の上着が滑り落ちた。

 

AR-15「……これ」

 

 自分のものではない。

 

 腕には日の丸。

 

 胸元の標識には、英字で《JAPAN》と記されている。

 

 AR-15は上着を手にしたまま、隣のベッドへ目を向けた。

 

 SOPⅡが横たわっている。

 

 毛布を掛けられ、静かに眠っていた。

 

AR-15「SOPⅡ」

 

 ベッドを降り、すぐにSOPⅡの傍らへ移動する。

 

 呼吸は安定している。

 

 首や頭にも、目立った傷はない。

 

 床には血痕が残っていた。

 

 だが、その血はSOPⅡのベッドへ続いているのではない。

 

 部屋の入口から、扉の近くへ置かれた椅子まで続いていた。

 

蓮「……起きたか」

 

 低い声が聞こえた。

 

 AR-15が振り返る。

 

 椅子に座った蓮が、左脚を伸ばしている。

 

 太腿には圧迫包帯が巻かれ、その一部へ血が滲んでいた。

 

 P226は右腰のホルスターへ収められている。

 

 蓮の手は、拳銃から離れていた。

 

AR-15「あなた……」

 

蓮「身体の調子はどうだ。首に痛みはないか?」

 

AR-15「私より先に答えて。SOPⅡに何をしたの?」

 

蓮「二階へ上がったら襲われた。止めた方法は、お前の時と同じだ」

 

AR-15「その脚は?」

 

蓮「彼女に刺された」

 

 AR-15の視線が、包帯へ向く。

 

蓮「出血は抑えてある。今のところは動かさなければ大丈夫だ」

 

 AR-15はSOPⅡの寝顔を見る。

 

 自分を刺した相手でありながら、蓮はSOPⅡをベッドへ寝かせ、毛布まで掛けている。

 

 その気になれば、意識を失っていた二人を殺すことも、置き去りにして逃げることもできたはずだった。

 

AR-15「私たちの武器は?」

 

蓮「一階の別室だ。弾倉と薬室の弾は抜いてある」

 

AR-15「返して」

 

蓮「その前に話を聞いてくれ」

 

AR-15「まだ自分が有利だと思っているの?」

 

蓮「思っていない。お前たち二人ともう一度戦えば、今度こそ俺が負ける」

 

AR-15「だったら――」

 

蓮「だから、もう殴り合う前に話をしたいんだ」

 

 AR-15は答えず、蓮を見つめる。

 

 蓮は両手を見える位置へ置いたまま、椅子へ座っていた。

 

 拳銃へ手を伸ばす様子はない。

 

蓮「もう一度名乗る。俺は渡邉蓮。日本の陸上自衛隊に所属している」

 

AR-15「陸上自衛隊という組織は知らないわ」

 

蓮「俺も、グリフィンなんて組織は昨日まで知らなかった」

 

 AR-15の目が細くなる。

 

AR-15「どうしてグリフィンを知っているの?」

 

蓮「416から聞いた」

 

AR-15「416?」

 

蓮「ほかにもVSK、G3、ブレン、スコーピオンという女性たちに会った。市役所に捕らえられていた者たちを救出し、今朝、二機のヘリコプターへ乗せた」

 

 AR-15の表情から、僅かに余裕が消えた。

 

AR-15「G3を助けたの?」

 

蓮「ああ。脚を負傷し、意識を失っていた。今はブレンが付き添っている」

 

AR-15「416は?」

 

蓮「迫撃砲弾の爆発を受けて負傷したが、生きている。VSKとスコーピオンも一緒に脱出した」

 

AR-15「それなら、あなたはどうしてここにいるの?」

 

蓮「ヘリの定員が一人分足りなかった」

 

AR-15「それで、自分から残った?」

 

蓮「拘束した敵の連絡将校を置いていくわけにはいかなかったからな」

 

AR-15「敵のために、自分の席を譲ったの?」

 

蓮「武器を捨てて拘束された時点で、そいつは捕虜だ。こちらの管理下にある人間を、敵の目前へ放り出すことはできない」

 

AR-15「それだけ?」

 

蓮「ほかに何がある?」

 

 AR-15は蓮の顔を見つめた。

 

 嘘をついているようには見えない。

 

 だが、話が常識から外れすぎている。

 

AR-15「その話を証明できるものは?」

 

蓮「手帳と認識票があったんだが、416に預けた」

 

AR-15「よりにもよって、身元を証明するものを?」

 

蓮「戻った時に返してもらう約束をしたんでな」

 

AR-15「……随分と都合のいい話ね」

 

蓮「俺もそう思う」

 

 蓮が僅かに肩を竦める。

 

 AR-15は、手にしていた上着を見る。

 

 胸には、蓮が名乗ったものと同じ氏名が縫い付けられている。

 

 少なくとも、名前だけは一致していた。

 

AR-15「一つ聞かせて」

 

蓮「何だ?」

 

AR-15「416から、私たちが戦術人形だということも聞いた?」

 

蓮「ああ」

 

AR-15「私たちは人間ではないわ」

 

蓮「そうか」

 

 あまりにも短い返事に、AR-15が眉を寄せる。

 

AR-15「それだけ?」

 

蓮「ほかに何か必要か?」

 

AR-15「普通は、もっと驚くものよ」

 

蓮「昨日から、驚いてばかりなんでな。そろそろ慣れてきた」

 

AR-15「私たちが人形でも、何も感じないの?」

 

 蓮は眠っているSOPⅡを見る。

 

蓮「お前は自分の名前を名乗った。SOPⅡは仲間を助けるために俺へ向かってきた。二人とも意識を失っていたから、床ではなくベッドへ運んだ」

 

 蓮は再びAR-15を見る。

 

蓮「俺に分かるのは、それだけだ」

 

AR-15「……」

 

蓮「人形と呼ばれている理由も、身体の仕組みも、俺には分からない。だから、分からないものを勝手に決めつけるつもりもない」

 

AR-15「あなたは、随分と変わっているのね」

 

蓮「よく言われる」

 

 蓮は椅子へ手を掛け、立ち上がろうとする。

 

 左脚へ力が加わった瞬間、顔が僅かに歪んだ。

 

AR-15「どこへ行くの?」

 

蓮「お前の武器がある場所へ案内する」

 

AR-15「私に銃を返していいの?」

 

蓮「返さなければ、お前は納得しないだろ」

 

AR-15「その銃で、あなたを撃つかもしれないわよ」

 

蓮「その時は、俺の見る目がなかっただけだ」

 

 蓮が壁へ手をつく。

 

 一歩進むだけで、左脚へ痛みが走った。

 

AR-15「待って」

 

 AR-15が近づく。

 

 蓮は反射的に身構えた。

 

AR-15「肩を貸すだけよ」

 

蓮「信用したのか?」

 

AR-15「していないわ。でも、その速度で歩かれたら時間が掛かる」

 

蓮「素直じゃないな」

 

AR-15「一人で歩いて」

 

蓮「悪かった」

 

 蓮はAR-15の肩へ腕を回した。

 

 二人は階段を下り、一階へ向かった。

 

     ◇

 

 一階の別室。

 

 AR-15の小銃と拳銃は、机の上へ置かれていた。

 

 その横には、抜かれた弾倉と薬室から取り出された弾薬が並んでいる。

 

 SOPⅡの武器も、別の机へ置かれていた。

 

 AR-15は自分の小銃を手に取る。

 

 銃身。

 

 照準器。

 

 負い紐。

 

 弾倉差込口。

 

 順番に確認する。

 

 目立った損傷はない。

 

 分解された形跡もなかった。

 

AR-15「本当に弾を抜いただけなのね」

 

蓮「他人の銃を勝手に弄る趣味はない」

 

AR-15「私の首を絞める趣味はあるのに?」

 

蓮「それは誤解だ。できれば二度としたくない」

 

AR-15「どうかしら」

 

 AR-15は弾倉の残弾を確かめ、小銃へ装着した。

 

 薬室へ初弾を送り込む。

 

 蓮はその動きを止めなかった。

 

AR-15「この家に入ったのは、本当に食料と水が目的だったのね?」

 

蓮「ああ。敵の拠点なら、確認してすぐ離れるつもりだった」

 

AR-15「ここはAR小隊が使っている臨時の隠れ家よ。市街地を偵察するために、数日前から使っている」

 

蓮「二人だけか?」

 

AR-15「今はね。M4とM16は、別の経路を調べに出ている」

 

蓮「M4、M16……また銃の名前か」

 

AR-15「私たちの仲間よ」

 

蓮「帰ってくる予定は?」

 

AR-15「本来なら、もう戻っているはず」

 

 AR-15が窓から外を見る。

 

 市街地の上には、薄い煙と埃が漂っている。

 

 遠くから、散発的な銃声が聞こえた。

 

 単発。

 

 短い連射。

 

 少し間を置き、再び複数の銃声。

 

 蓮が顔を上げる。

 

AR-15「どうしたの?」

 

蓮「近いな」

 

 蓮は壁際に置かれていた双眼鏡を手に取った。

 

 窓の正面には立たない。

 

 壁へ身体を寄せ、僅かな隙間から外を見る。

 

 銃声は南東方向。

 

 民家から三百メートルほど離れた大通りだった。

 

 道路上には、横転した小型バスと複数の放置車両がある。

 

 その陰に、三人の少女が身を隠していた。

 

 周囲を、レッドカンパニーの私兵と鉄血のリーパーが取り囲んでいる。

 

蓮「三人いる。二人は小銃を持っている。もう一人は道路脇の障壁へ伏せている」

 

AR-15「見せて」

 

 蓮が双眼鏡を渡す。

 

 AR-15は窓の隙間から大通りを確認した。

 

AR-15「M4……M16!」

 

蓮「仲間か?」

 

AR-15「ええ。二人ともAR小隊よ」

 

蓮「もう一人は?」

 

AR-15「知らない子。でも、M4たちと一緒にいるなら敵ではないわ」

 

 AR-15が窓の近くで小銃を構えようとする。

 

 蓮は銃身へ手を添えた。

 

AR-15「何?」

 

蓮「ここから不用意に撃てば、この家の位置が割れる」

 

AR-15「だから見捨てろと?」

 

蓮「誰がそんなことを言った」

 

 蓮は大通りと周辺の建物を確認する。

 

 敵の配置。

 

 三人が使っている遮蔽物。

 

 射線。

 

 撤退に使えそうな路地。

 

蓮「撃つなら、先に退路と射撃位置を決める。無計画に始めれば、仲間がここへ戻る前に家を包囲されるぞ」

 

 AR-15は反論しなかった。

 

AR-15「どうするつもり?」

 

蓮「二階へ戻る。大通りを見下ろせる部屋は?」

 

AR-15「東側の部屋。窓が二つあるわ」

 

蓮「射撃位置は一つに固定しない。数発撃ったら場所を変える」

 

AR-15「この銃は狙撃銃じゃないわよ」

 

蓮「距離は三百前後だ。お前の腕が良ければ届く」

 

AR-15「簡単に言うのね」

 

蓮「一人一発で十分だろ」

 

AR-15「心眼を持っているなら、一人一発で十分でしょうね」

 

蓮「俺が見る。お前が撃つ。二人分の目があれば足りる」

 

 AR-15は蓮を数秒見つめる。

 

 やがて、小さく息を吐いた。

 

AR-15「分かったわ。観測はあなたに任せる」

 

蓮「了解した」

 

     ◇

 

 廃町、大通り。

 

 横転した小型バスの車体へ、弾丸が次々と命中する。

 

 窓ガラスが砕け、薄い外板に穴が開いた。

 

 その陰で、M16A1が小銃の引き金を短く絞る。

 

 銃口から炎が走り、道路の向こう側にいた私兵たちが車両の陰へ身を伏せた。

 

M16A1「右の路地に三! 正面にリーパーが四! 左は?」

 

M4A1「私兵が五人! その後ろにも増援がいます!」

 

 M4A1が道路標識の支柱から小銃を出し、単発で応射する。

 

 二発撃つと、すぐに銃口を引いた。

 

 直後、支柱周辺へ弾丸が集中する。

 

M16A1「派手に歓迎してくれるな!」

 

M4A1「増援の経路を、もっと早く見抜くべきでした」

 

M16A1「反省会は生きて帰ってからだ。それより、そっちの子は?」

 

 M4A1が道路脇のコンクリート障壁を見る。

 

 小柄な少女が、そこへ横たわっていた。

 

 M9。

 

 市街地を移動中に発見したグリフィン所属の人形だった。

 

 負傷と疲労のため、先ほどから意識が戻っていない。

 

M4A1「まだ目を覚ましません」

 

M16A1「置いていく選択肢はなし。となると、退路を作るしかないな」

 

M4A1「西側の路地へ移動できれば、建物を使って追跡を切れます」

 

M16A1「問題は、あそこまで二十メートルあることだ」

 

 横転したバスから西側の路地までは、遮蔽物が途切れている。

 

 M9を運びながら走れば、その間は満足に反撃できない。

 

 正面の私兵たちは、道路脇の車両を使って少しずつ距離を詰めていた。

 

 その後方では、二人の私兵が軽機関銃を設置しようとしている。

 

M16A1「機関銃まで持ち出してきたか」

 

M4A1「設置されたら、ここから動けなくなります」

 

M16A1「私が抑える。M4はその子を――」

 

M4A1「駄目です。M16姉さん一人では、左右から撃たれます」

 

M16A1「なら、何か名案はあるか?」

 

 M4A1は周囲を見る。

 

 残弾。

 

 敵の位置。

 

 M9を運ぶために必要な時間。

 

 迷っている間にも、包囲は狭まっていく。

 

M4A1「……発煙弾を使います」

 

M16A1「残り一個だぞ?」

 

M4A1「ここで使わずに全滅すれば、残しても意味がありません」

 

M16A1「よし。それでいこう」

 

 M16A1が迷わず頷く。

 

M16A1「私が先に正面を叩く。発煙後、M4がM9を運べ。私は後ろから続く」

 

M4A1「分かりました」

 

 M4A1は発煙弾を取り出し、安全装置へ指を掛ける。

 

 その時、障壁の陰でM9が小さく動いた。

 

M9「……うぅ……」

 

M4A1「M9?」

 

M9「ここ……どこなの?」

 

M16A1「いいところで起きたな。絶賛包囲中だ」

 

M9「包囲中!?」

 

 M9が慌てて身体を起こそうとする。

 

 頭上を弾丸が通過し、バスの外板へ命中した。

 

M9「ひゃっ!」

 

M4A1「頭を上げないでください!」

 

 M4A1がM9の身体を障壁の陰へ引き戻す。

 

M9「何でこんなことになってるの!?」

 

M16A1「説明は後だ。自分で動けるか?」

 

 M9が足を動かす。

 

 痛みに顔を歪めたが、立つことはできた。

 

M9「走れるけど、長い距離は無理かも……」

 

M16A1「路地まで二十メートルだ。それだけ保てばいい」

 

M4A1「無理はしないでください。私の肩につかまって」

 

 軽機関銃手が射撃姿勢を整える。

 

 隣の私兵が給弾ベルトを持ち、銃口がバスへ向けられた。

 

M4A1「来ます!」

 

 次の瞬間。

 

 大通りへ、乾いた銃声が一発だけ響いた。

 

     ◇

 

 民家、二階。

 

 AR-15は窓から一メートル以上離れた位置へ伏せていた。

 

 銃口を外へ突き出さない。

 

 丸めた毛布へ小銃の前部を預け、光学照準器越しに大通りを捉えている。

 

 その隣で、蓮が双眼鏡を構えていた。

 

蓮「距離、約三百十。風は左から僅か。最優先、バス後方の軽機関銃手」

 

AR-15「見えている」

 

蓮「撃て」

 

 AR-15が呼吸を整える。

 

 照準を合わせ、引き金を絞った。

 

 銃声。

 

 軽機関銃手が後ろへ倒れる。

 

 隣にいた私兵が給弾ベルトを放り、機関銃へ手を伸ばした。

 

蓮「次、隣」

 

 二発目。

 

 機関銃を掴もうとしていた私兵も、車両の陰へ崩れ落ちる。

 

「狙撃だ!」

 

「伏せろ!」

 

 周囲の私兵が一斉に身を隠す。

 

蓮「右奥。無線機を持っている男。周囲へ指示を出している」

 

AR-15「確認」

 

 無線機を持った私兵が、車両の陰から右腕を上げる。

 

 別の部隊へ合図を送ろうとした瞬間、AR-15が引き金を絞った。

 

 三発目。

 

 男がその場へ倒れる。

 

蓮「移動するぞ」

 

AR-15「三発で?」

 

蓮「十分だ。次は敵が、この窓へ撃ち返してくる」

 

 AR-15は小銃を抱え、窓の下を這うように隣の部屋へ移動する。

 

 蓮も双眼鏡を持って続いた。

 

 負傷した左脚を引きずっているため、動きは遅い。

 

 それでも窓の前では立ち上がらず、壁際を進む。

 

 二人が隣室へ入った直後、先ほどまで使用していた窓の周囲へ弾丸が集中した。

 

 窓ガラスが砕け、壁材が室内へ飛び散る。

 

AR-15「判断は正しかったようね」

 

蓮「珍しくと言わないのか?」

 

AR-15「今は言わないでおくわ」

 

 AR-15が別の窓から大通りを捉える。

 

蓮「左の路地。私兵が二人、建物沿いに回り込んでいる。後ろの男が発射器を持っている」

 

AR-15「どちらから?」

 

蓮「後ろだ。発射器を止める」

 

 AR-15が標的を捉え、引き金を絞る。

 

 四発目。

 

 筒状の発射器を持っていた私兵が、路地へ倒れた。

 

 前を進んでいた私兵が足を止める。

 

 後方を確認しようと、遮蔽物から身体を出した。

 

蓮「先頭、今だ」

 

 五発目。

 

 先頭の私兵も崩れ落ちる。

 

AR-15「一人一発」

 

蓮「心眼は本当にあったらしいな」

 

AR-15「あなたの観測が、思っていたよりは正確だっただけよ」

 

蓮「そいつは光栄だ」

 

 大通りでは、鉄血のリーパーが射撃方向を探していた。

 

 複数の銃口が、周囲の建物へ向けられる。

 

AR-15「リーパーがこちらを探している」

 

蓮「右端の一体が、ほかより前へ出ている。あれの武器を止められるか?」

 

AR-15「人間と同じ場所を撃っても、簡単には止まらないわ」

 

蓮「倒す必要はない。撃てなくすればいい」

 

 AR-15が照準を下げる。

 

 リーパーが保持している銃器と、その周辺へ狙いを定めた。

 

 一発。

 

 二発。

 

 着弾の衝撃で銃器が弾かれ、リーパーの銃口が道路へ落ちる。

 

 すぐには射撃を再開できない。

 

蓮「十分だ。敵の左側が止まった」

 

 蓮は双眼鏡をM4たちへ向ける。

 

 横転したバスの陰で、M4A1が発煙弾を構えていた。

 

蓮「仲間が動くぞ」

 

AR-15「通信を試す」

 

 AR-15が短距離通信を開く。

 

AR-15「M4。こちらAR-15。聞こえる?」

 

     ◇

 

M4A1「AR-15!?」

 

 雑音混じりの声が、M4A1の通信機へ届く。

 

AR-15『聞こえているなら、返事は短く。あなたたちの北西、約三百メートルから援護している』

 

M4A1「こちらM4A1。受信しています。M16姉さんと、救助したM9が一緒です」

 

AR-15『西側の路地を使って離脱して。正面と左側はこちらで抑える』

 

M4A1「敵の右側は?」

 

AR-15『M16が抑えられる?』

 

M16A1「もちろんだ。久しぶりだな、AR-15」

 

AR-15『挨拶は後よ』

 

M16A1「相変わらず冷たいな」

 

AR-15『三十秒後に移動を開始。発煙弾は、バスと西側路地の間へ落として』

 

M4A1「了解しました」

 

 M4A1が発煙弾の安全装置を外す。

 

 バスと路地の中間へ投げる。

 

 白い煙が噴き出し、道路上へ広がっていく。

 

M16A1「正面は頼んだぞ!」

 

 M16A1がバスの後部から身を乗り出す。

 

 右側の私兵へ向け、短い連射を繰り返す。

 

 私兵たちが車両の陰へ引っ込む。

 

M16A1「今だ!」

 

M4A1「M9、私の肩につかまってください!」

 

M9「分かった!」

 

 三人がバスの陰から飛び出した。

 

 M4A1が先頭。

 

 その肩を借りたM9が中央。

 

 M16A1が後方。

 

 白い煙の中を、西側の路地へ向かって走る。

 

「逃げるぞ!」

 

「煙の中を撃て!」

 

 私兵たちが立ち上がる。

 

 その一人が、煙の手前へ小銃を向けた。

 

 乾いた銃声。

 

 男が道路へ倒れる。

 

 別の私兵が小銃を構えようとする。

 

 続く一発が、身を乗り出した私兵の胴へ命中した。

 

 遮蔽物から出かけていた者たちが、再び車両の陰へ身を伏せる。

 

 誰かが狙っている。

 

 身体を晒せば撃たれる。

 

 それを理解させれば、三人が走り抜ける数秒を作れる。

 

 M4A1たちが煙を抜け、西側の路地へ入った。

 

M4A1「三名、路地へ到達!」

 

AR-15『そのまま直進しないで。次の角を南へ。その後、二つ目の路地から北へ戻って』

 

M16A1「追手を撒いてから隠れ家へ戻れってことだな?」

 

AR-15『そうよ。このまま来たら、敵まで連れてくることになる』

 

M16A1「了解。M4、まだ走れるか?」

 

M4A1「問題ありません」

 

M9「わ、私も大丈夫!」

 

M16A1「よし。もう一息だ!」

 

 三人は足を止めず、建物の間へ姿を消した。

 

     ◇

 

 民家、二階。

 

 蓮は双眼鏡越しに、三人の姿が路地へ消えたことを確認した。

 

蓮「三人とも抜けた」

 

AR-15「追手は?」

 

蓮「私兵が四人、動こうとしている。だが、指示役を失って混乱している」

 

 AR-15が小銃を構え直す。

 

蓮「待て。もう撃つな」

 

AR-15「追跡されるわ」

 

蓮「敵は、まだ射撃地点をこの一軒にまで絞れていない。撃ち続ければ、ここまで案内することになる」

 

AR-15「でも――」

 

蓮「お前の仲間は市街地の道を知っているんだろ?」

 

AR-15「ええ」

 

蓮「なら、あとは信じろ。俺たちが今やるべきなのは、追跡されていないことを確認し、迎え入れる準備をすることだ」

 

 AR-15は照準器越しに大通りを見続けた。

 

 追跡しようとした私兵たちは、狙撃を警戒して遮蔽物から出られずにいる。

 

 やがて、鉄血のリーパーを先頭に立て、慎重に移動を始めた。

 

 だが、その頃にはM4たちの姿は完全に消えていた。

 

 AR-15が小銃を下ろす。

 

AR-15「……分かったわ」

 

蓮「それと、この家も長くは使えない」

 

AR-15「分かっている。正確な位置までは知られていなくても、敵はこの一帯を捜索するでしょうね」

 

蓮「仲間が戻ったら、負傷者の状態を確認して移動を考えた方がいい」

 

AR-15「その負傷者には、あなたも含まれているわ」

 

 蓮は双眼鏡を下ろした。

 

 壁へ背中を預け、その場へ座り込む。

 

 左腿の包帯に、新しい血が滲んでいた。

 

AR-15「傷が開いているじゃない」

 

蓮「少し動きすぎたな」

 

AR-15「少し?」

 

蓮「説教なら後にしてくれ」

 

AR-15「動かないで」

 

 AR-15が蓮の前へ片膝をつく。

 

 圧迫包帯を外さず、血の滲み方を確認する。

 

 止血が完全に破綻している様子はない。

 

 AR-15は救急用品から新しい包帯を取り出し、既存の圧迫を緩めないよう上から補強した。

 

蓮「信用していない相手の手当てをするのか?」

 

AR-15「していないから、勝手に動けないようにしているのよ」

 

蓮「随分と優しい拘束だな」

 

AR-15「黙って」

 

 AR-15が包帯を固定する。

 

 蓮の顔が僅かに歪んだ。

 

AR-15「痛む?」

 

蓮「痛くないと答えたら、信じるか?」

 

AR-15「いいえ」

 

蓮「なら聞くな」

 

 AR-15は包帯を固定し、立ち上がる。

 

AR-15「M4たちが戻るまで、歩かないで」

 

蓮「分かった」

 

AR-15「本当に?」

 

蓮「善処する」

 

AR-15「それは、守らない人の返事よ」

 

 その時。

 

 隣の部屋から、ベッドが軋む音が聞こえた。

 

SOPⅡ「……うぅ……」

 

 AR-15と蓮が同時に振り向く。

 

 SOPⅡが毛布の中で動いていた。

 

 AR-15が急いで隣の部屋へ入る。

 

AR-15「SOPⅡ」

 

SOPⅡ「AR-15……?」

 

 SOPⅡがゆっくりと目を開ける。

 

 隣にいるAR-15の顔を見て、安堵したように息を吐いた。

 

 だが、扉の向こうにいる蓮を見つけた瞬間、勢いよく身体を起こす。

 

SOPⅡ「あっ! さっきの侵入者!」

 

AR-15「待ちなさい」

 

SOPⅡ「でも、そいつがAR-15を!」

 

AR-15「今は戦わなくていい」

 

SOPⅡ「どうして?」

 

AR-15「この人が、M4とM16を助けたからよ」

 

 SOPⅡが蓮を見る。

 

 続いて、包帯が巻かれた左腿へ視線を落とした。

 

SOPⅡ「……その怪我」

 

蓮「お前に刺された」

 

SOPⅡ「私が?」

 

蓮「ああ。見事に入ったぞ」

 

SOPⅡ「ご、ごめん……」

 

 先ほどまでの勢いが消え、SOPⅡが気まずそうに肩を落とした。

 

蓮「気にするな。先にお前の仲間を絞め落としたのは俺だ。お互い様だろ」

 

AR-15「普通は、それをお互い様とは言わないわ」

 

蓮「そうか?」

 

SOPⅡ「じゃあ、もう敵じゃないの?」

 

AR-15「まだ判断中よ」

 

蓮「随分と長い判断だな」

 

AR-15「あなたが怪しすぎるのよ」

 

 SOPⅡがベッドから降り、蓮の近くへ来る。

 

 先ほどまで殺し合う寸前だった相手とは思えないほど、遠慮なく顔を覗き込んだ。

 

SOPⅡ「あなた、名前は?」

 

蓮「渡邉蓮だ」

 

SOPⅡ「レン?」

 

蓮「ああ」

 

SOPⅡ「私はM4 SOPMODⅡ。SOPⅡでいいよ」

 

蓮「知っている。さっき散々呼ばれていたからな」

 

SOPⅡ「そうだったっけ?」

 

AR-15「あなたが飛び出す前に、私が呼んだのよ」

 

SOPⅡ「全然覚えてないや」

 

AR-15「はぁ……」

 

 AR-15が額へ手を当てる。

 

 蓮はそんな二人を見て、僅かに口元を緩めた。

 

 遠くの路地から、三人分の足音が近づいてくる。

 

 一定の間隔で止まり、周囲を確認してから再び進む。

 

 不用意に隠れ家へ駆け込まず、追跡されていないことを確かめながら接近していた。

 

AR-15「M4たちね」

 

 AR-15が窓の隙間から外を確認する。

 

 路地の奥に、M4A1、M16A1、M9の姿が見えた。

 

 三人とも傷ついているが、自分の足で歩いている。

 

AR-15「無事に戻ってきたわ」

 

SOPⅡ「M4! M16!」

 

 SOPⅡが階段へ向かう。

 

AR-15「待ちなさい。蓮が玄関に警報を仕掛けているわ」

 

SOPⅡ「あっ、そうだった」

 

蓮「今外す。勝手に触るなよ」

 

 蓮が壁へ手をつき、立ち上がろうとする。

 

AR-15「あなたは動かないで」

 

蓮「仕掛けたのは俺だぞ」

 

AR-15「場所を教えて。私が外す」

 

蓮「……玄関扉の内側。下から十センチほどの高さに、細い糸を張ってある。先は空き缶だ」

 

AR-15「分かったわ」

 

SOPⅡ「レン、ちゃんと待っててね!」

 

蓮「お前まで言うのか」

 

 AR-15とSOPⅡが階段を下りていく。

 

 先ほどまで敵だった少女たちは、もう蓮へ背中を向けていた。

 

 完全に信用されたわけではない。

 

 事情も、立場も、まだ何一つ整理されていない。

 

 それでも、少なくとも今は銃口を向け合う必要がなくなった。

 

 蓮は椅子へ座り直す。

 

 しばらくして、一階から玄関の扉が開く音が聞こえた。

 

M4A1「AR-15!」

 

M16A1「随分と派手な援護だったな!」

 

SOPⅡ「M4! M16! おかえり!」

 

 再会を喜ぶ声が、一階から響く。

 

 続いて、聞き慣れない足音が階段へ近づいてきた。

 

 完全に安心した足取りではない。

 

 途中で一度止まり、二階の様子を窺っている。

 

 蓮はP226へ手を伸ばさなかった。

 

 やがて階段の上へ、眼帯を着けた女が姿を現す。

 

 M16A1は、椅子へ座っている蓮を見る。

 

 その視線が、緑色の戦闘服、89式小銃、負傷した左脚へ順番に移った。

 

M16A1「……AR-15」

 

 一階へ向け、M16A1が呼びかける。

 

M16A1「説明してもらおうか。この男は誰だ?」

 

 蓮は小さく息を吐いた。

 

蓮「……次は、最初から説明し直しか」

 




はい。

前回言った通りM4とM16です。

スナイパーって意外に書きづらいですね....

次回は...少し、怖い物...と言うよりエグイ物を書きます!

お気に入り評価お願いします...

コメントもモチベーションアップのためお願いします...

好きな子がいたら適当に投票どうぞ!

  • HK416
  • VSK-94
  • AK-12
  • AR-15
  • アズールレーン 赤城
  • アズールレーン 加賀
  • 艦これ 赤城
  • 艦これ 加賀
  • 雷電
  • スカイレイダー
  • シュバァルベ
  • 渡邉 蓮
  • 渡邉 隼人
  • 渡邉 勇翔
  • 小貝 高虎
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。