陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
それがいやな方は、上にある矢印ボタンでブラウザバックを推奨します。
それでも、大丈夫な方はご覧ください。
第14話 その小隊、精鋭四名狂人一名の集団につき
S09基地、北西管理区。
臨時指揮所に隣接する避難者用食堂。
先行救援隊の出発まで、残り八分。
暗渠の保守台車と装備を準備している間、衛生要員は蓮へ食事を取らせていた。
出発後も、蓮は臨時指揮所から無線指揮を続けながら食べる予定だった。
目の前にある料理を、八分ですべて食べ切ろうとしているわけではない。
その切迫した状況には、あまりにも似つかわしくない音が響いていた。
ズゾッ。
モグモグ。
カチャ、カチャ。
ゴクッ。
再び、モグモグ。
AK-12「……私、お腹いっぱい食べていいとは言ったけれど」
AK-12が、長机の向こうに積み上がった空の食器を見る。
AK-12「限度まで食べていいとは言ってないのよ?」
簡易寝台へ背中を起こした蓮は、答える代わりにハンバーグを一口で半分ほど食べた。
蓮「モグモグ……何か言ったか?」
AK-12「飲み込んでから話しなさい」
食堂には、襲撃前に職員用として作られていた料理が残っていた。
パスタ。
ハンバーグ。
ステーキ。
シチュー。
カレーと炒飯。
担々麺と醤油ラーメン。
おにぎりが五つ。
大きなピザ。
ハンバーガー。
さらに、封を切られた高栄養価の野戦糧食が三袋。
それらが次々と蓮の胃へ消えていく。
数日まともに食事を取れず、負傷と戦闘で体力を消耗している。
衛生要員からも、可能な範囲で栄養を取るよう命じられていた。
だから、腹が減っていること自体は不思議ではない。
問題は、その量だった。
AK-12「それ、何人分だと思う?」
蓮「知らん。置いてあるから食ってる」
AK-12「少なくとも六人分よ。野戦糧食を含めれば、もっと」
蓮「そうか」
蓮は気にした様子もなく、カレーの皿へ手を伸ばす。
AK-12「そうか、で済ませるのね……」
食べる速度は速い。
だが、慌てて喉へ詰め込んでいるわけではなかった。
手は一定の間隔で動き、呼吸も乱れない。
腹部が苦しそうに張る様子もない。
どれだけ食べ進めても、手を動かす速度が落ちる気配はなかった。
もっとも、それを不自然だと口にする者はいない。
食事を取れなかった反動。
極度の疲労。
今は、その程度に考えられていた。
AK-12「あとでクルーガーへ請求しておくわ」
蓮「臨時協力中の負傷者から食費を取るな」
AK-12「私が奢るって言ったのよ。だから、会社へ回すの」
蓮「いい職場だな」
VSK「ボス。口元にソースが付いています」
VSKが布を取り、蓮の口元を拭う。
蓮「自分でできる」
VSK「左手でお皿、右手で地図を持っていますよ?」
蓮「……助かる」
AK-12「あらあら」
蓮「何だ、その顔は」
AK-12「別に?」
食堂の長机には、料理だけでなく基地周辺の地図も広げられていた。
破壊された第二水路橋。
停止した護送車列。
後方から接近する敵車両。
そして、現在の基地図から消された整備用暗渠。
食事をしながら、蓮はそれらを見比べている。
咀嚼が止まったのは、M4A1が新しい資料を置いた時だけだった。
M4A1「旧整備記録を確認しました。暗渠は完全には埋められていません」
蓮「出口は?」
M4A1「橋の南側、護送車列から約百二十メートル。外側の保守扉は閉じていますが、内側から手動で解放できます」
蓮「人は通れるな?」
M4A1「屈めば通れます。車両は無理です」
蓮はハンバーガーを一口食べ、地図へ指を置く。
蓮「なら、車両は捨てる」
VSK「資料車もですか?」
蓮「ああ。守るべきなのは車両じゃない。乗員、捕虜、資料原本だ」
護送車列は三両。
先頭と最後尾は装甲車。
中央が、監視兵と証拠資料を積んだ護送車両。
その中央車両は走行装置を損傷している。
無理に修理する時間はない。
M4A1「乗員を暗渠へ退避させ、徒歩で基地内へ収容するのですね」
蓮「負傷者は暗渠の点検台車で運ぶ。資料は防水容器へ移す。捕虜は拘束を維持したまま、歩けるなら歩かせる」
AK-12「敵が黙って見送ってくれると思う?」
蓮「思わん。だから、追ってくる車両を止める」
蓮の指が、外周道路の緩い曲線をなぞる。
道路の片側は排水路。
反対側は盛り土。
二台が横へ並ぶだけの幅はない。
蓮「NTW-20に先頭車両を止めさせる。後続はそこで詰まる」
M4A1「装甲車両を一発で止められますか?」
蓮「撃つ場所を選べばな。運転席を狙う必要はない。前輪、操向装置、吸気口。車種を見てNTW-20に決めさせる」
VSK「ブレンが下車した歩兵を制圧。私とG3が車列へ到達して、退避を誘導します」
蓮「ああ。お前は副隊長だ。現場では自分の目を優先しろ。こっちの地図と実際の地形が違ったら、お前の判断で変えていい」
VSK「了解しました、ボス」
VSKは嬉しそうに答えた。
蓮「何でそこで嬉しそうなんだ?」
VSK「初めて、副隊長として直接命令をいただきましたから」
蓮「責任も増えたんだぞ」
VSK「ボスと一緒なら問題ありません」
AK-12「それ、問題が二倍になるという意味じゃない?」
蓮「お前はどっちの味方だ」
◇
東側整備棟、地下保守区画。
低い天井の下へ、細い点検用レールが延びていた。
その上には、バッテリーで動く小型の保守台車が一両。
VSK、G3、ブレン、NTW-20が装備を確認している。
全員が、蓮の臨時特別小隊を示す仮識別票を付けていた。
正式な部隊章はまだない。
それでも、五人はすでに一つの小隊だった。
VSKが通信機を調整する。
VSK「こちら臨時小隊、通信確認」
蓮『こちら蓮。感度良好』
無線の向こうから、食器の触れ合う音がした。
VSK「ボス、まだ食べているのですか?」
蓮『腹が減ってるんだよ』
ブレン「戦闘中に食事とは、随分と余裕のある小隊長だな」
蓮『違う。食事中に戦闘が始まったんだ』
NTW-20「始まる前から襲撃されていたはずだ」
蓮『細かいことを気にするな』
NTW-20「評価を一つ戻した」
蓮『早くない?』
G3が笑いを堪えながら、自分の脚部状態を端末へ表示する。
G3「出力、接続、姿勢制御。すべて正常です」
VSK「痛みや違和感は?」
G3「ありません。ただし、医療班から連続全力走行は三分以内と言われています」
蓮『守れ。異常が出たらすぐに報告しろ』
G3「了解しました、ボス」
ブレンは予備弾薬箱を保守台車へ固定した。
ブレン「通常弾帯が四。徹甲弾帯が一。銃身交換部品もある。持続射撃は短連射を守れば十分以上」
蓮『撃ち続ける必要はない。敵の頭を下げさせて、味方が動く時間を作れ』
ブレン「分かっている」
NTW-20は大型の対物ライフルと、用途の異なる弾薬を確認する。
NTW-20「装甲車両用が三。通常弾が五。距離が千以下なら、選べる」
蓮『一発目で止めろ。二発目以降は歩兵か増援に残せ』
NTW-20「簡単に言う」
蓮『できないか?』
NTW-20「誰に言っている」
NTW-20の口元が、僅かに上がった。
保守台車の後部には、さらに二人が乗る。
AK-12。
AN-94。
二人は臨時特別小隊の所属ではない。
今回の作戦に限り、電子情報支援と護衛を担当する反逆小隊からの協力要員だった。
AK-12「敵の短距離通信は、こちらで拾うわ。通信内容と送信間隔から指揮車両を絞り込む」
AN-94「AK-12の護衛は私が行います」
VSK「こちらの指揮系統は理解していますか?」
AK-12「もちろん。作戦全体はM4A1。臨時特別小隊は蓮。現場では副隊長のあなた。私とAN-94は支援要員」
AN-94「指揮系統に異議はありません」
VSKが頷く。
同じ部隊へ編入するのではなく、互いの役割を明確にした上で協力する。
それなら、現場で命令が衝突することもない。
M4A1『全員、準備は?』
VSK「臨時小隊、準備完了」
AK-12「反逆小隊、支援準備完了」
M4A1『作戦を開始します。人命の救助を最優先。捕虜と資料は、可能な限り確保。維持できない場合も、回収のために味方の命を捨てることは禁止します』
VSK「了解」
保守台車の電動機が起動する。
小さな車輪がレールを噛み、暗渠の闇へ走り始めた。
◇
S09基地東側、第二水路橋。
破壊された橋の手前で、護送車列が停止している。
装甲車二両が前後を守り、その間に動けない資料車が挟まれていた。
後方の道路には、四両の敵車両。
先頭は軽装甲車。
その後ろに、武装した多用途車両が三両。
さらに、鉄血のガードが数体、車両の陰を進んでくる。
敵は機関銃を撃っていた。
だが、資料車へ直接当てることを避けている。
弾丸は護衛装甲車と道路脇へ集中していた。
護送隊長「頭を下げろ! 撃ち返せ!」
最後尾の装甲車が短い連射を返す。
敵の歩兵が伏せる。
しかし、弾薬は残り少ない。
負傷者が二名。
資料車の内部には、拘束されたレッドカンパニーの監視兵がいる。
監視兵「助けは来ないぞ」
護送兵「黙ってろ」
監視兵「橋は落ちた。後ろは塞がれた。お前たちが守っている物を渡せば、まだ交渉できる」
護送兵「お前の会社が、約束を守るとでも?」
監視兵は答えない。
その沈黙だけで十分だった。
車列の無線機が、一度だけ振動する。
『護送三。こちら救援隊。応答は一秒以内、送信一回のみ』
VSKの声。
護送隊長が送信機を押す。
護送隊長「護送三。聞こえる」
VSK『南側排水路へ、赤色煙幕を二。三十秒後に展開。乗員は資料と負傷者を移送準備。車両は放棄します』
護送隊長「了解」
通信を切る。
詳しい説明を求める時間はない。
護送隊長は部下へ命令を出した。
護送隊長「証拠資料を防水箱へ! 捕虜を立たせろ! 負傷者は担架へ移せ!」
◇
暗渠出口まで、残り二百メートル。
保守台車が速度を落とす。
前方の手動隔壁は、完全には閉じていなかった。
金属板が変形し、僅かな隙間ができている。
VSK「止めて」
台車が停止する。
VSKとG3が隔壁へ近づく。
手動開放ハンドルへ力を掛けるが、錆び付いて動かない。
G3「固着しています」
蓮『状況は?』
VSK「最後の隔壁が固着。開口は二十センチほどです」
蓮『蝶番は見えるか?』
VSK「こちら側に二つ」
蓮『ブレン。固定軸だけを短く撃て。跳弾に注意』
ブレン「了解」
全員が壁の陰へ下がる。
ブレンが床へ伏せ、軽機関銃を二脚へ預けた。
照準を蝶番の固定軸へ合わせる。
短い連射。
火花。
一つ目の固定軸が歪む。
二度目の連射で、下側の蝶番が外れた。
VSK「G3、一緒に」
G3「はい」
二人が隔壁へ肩を当てる。
金属板が、軋みながら外側へ倒れた。
冷たい外気が暗渠へ流れ込む。
同時に、銃声がはっきりと聞こえるようになった。
VSK「出口確保。小隊、展開」
◇
最初に外へ出たのはNTW-20だった。
排水路の斜面を上り、道路を見下ろせる盛り土へ伏せる。
距離、七百四十。
横風、弱い。
敵の先頭車両は低速で前進している。
装甲化された車体。
前輪は車体の外へ一部露出。
吸気口は右前方。
運転手を撃つ必要はない。
車両を止めればいい。
NTW-20「先頭車両を確認。右前輪と操向部を狙う」
蓮『任せる』
NTW-20「短い命令だ」
蓮『撃つのはお前だ。俺が余計なことを言う必要はない』
NTW-20が呼吸を止める。
照準が、車輪の内側へ重なった。
発砲。
対物弾が操向部を貫く。
軽装甲車の右前輪が大きく傾いた。
車体が道路脇へ流れ、盛り土へ斜めに突っ込む。
後続車両が急停止した。
狭い道路で、四両が一列に詰まる。
NTW-20「先頭車両、停止」
蓮『よくやった』
NTW-20「評価を戻す」
蓮『俺の評価なのかよ』
敵歩兵が車両から降りる。
その頭上を、ブレンの射撃が走った。
短い連射。
一度止める。
敵が顔を上げた瞬間、別の位置へ再び撃つ。
撃ち倒すことより、前へ出さないことを優先した射撃だった。
ブレン「制圧開始。敵歩兵、前進停止」
VSK「G3、行きます」
G3「了解」
二人が排水路を走る。
G3は全力を出さない。
脚部へ負荷を掛けすぎない歩幅を守り、それでもVSKから遅れず進んでいる。
資料車まで、百二十メートル。
護送隊が赤色煙幕を投げた。
濃い煙が道路と排水路の間を覆う。
敵から車列が見えなくなる。
同時に、救援側からも敵が見えにくくなった。
だが、NTW-20とブレンは煙幕の外側から敵を押さえている。
VSKとG3は、その内側を進んだ。
◇
臨時指揮所。
蓮は地図を見ながら、最後のおにぎりを食べていた。
M16A1「お前、まだ食べてるのか?」
蓮「これで最後だ」
AK-12「ピザの箱の下に、もう一袋あるわよ」
蓮「じゃあ、それも最後」
M16A1「見てるこっちが胸焼けしてきたぞ……」
AK-12は現場の受信情報を、臨時指揮所にも共有していた。
敵の短距離通信。
車両ごとの送信頻度。
移動中のため信号は不安定だが、一両だけ送信回数が多い。
AK-12『指揮車両は三両目の可能性が高い。断定はできないけれど、送信の七割がそこから出ているわ』
蓮「NTWへ送れ。撃つのはまだだ」
AK-12『どうして?』
蓮「指揮車両が通信を続ければ、敵の動きが分かる。目と耳を今潰す必要はない」
M4A1「敵の指揮を残したまま、通信を利用するのですね」
蓮「こちらが退避を終えるまではな」
蓮が新しい野戦糧食の封を切る。
M16A1「本当に食うのか……」
その時、敵通信の内容が変わった。
AK-12『敵指揮車から命令。二個分隊を南側排水路へ回す。暗渠の存在に気づかれた』
蓮「気づくのが早いな」
M4A1「VSK、南側から敵分隊が接近します。退避を急いでください」
VSK『了解。現在、車列へ到達しました』
◇
赤い煙の中。
VSKとG3が資料車へ駆け込む。
護送隊長「救援隊か!」
VSK「臨時特別小隊副隊長、VSKです。状況を報告してください」
護送隊長「負傷者二。歩行不能が一、補助があれば歩ける者が一。資料は防水箱二つ。捕虜は健在」
拘束された監視兵が、VSKを見る。
監視兵「たった二体で救援か?」
G3「小隊は全員来ています」
監視兵「見えないだけか」
VSK「あなたは歩けますね?」
監視兵「拒否したら?」
VSK「担いで運びます。ただし、あなたの快適さは保証できません」
監視兵「……歩く」
VSKが護送隊長へ指示する。
VSK「歩行不能者と資料箱を先に暗渠へ。G3が誘導します。残りは護衛しながら後退」
G3「私が負傷者を運びます」
VSK「脚の制限を忘れないで」
G3「担架を一人で持つのではなく、点検台車まで護送兵と運びます。負荷は許容範囲です」
VSK「分かりました。異常が出たら交代」
G3「了解」
G3は自分の状態を隠さなかった。
VSKも、彼女を必要以上に外さない。
確認し、できる範囲で役目を任せる。
小隊として初めて交わす判断だった。
資料箱が車外へ出される。
担架が続く。
煙の向こうで、鉄血のガードが姿を現した。
護送兵「敵!」
VSKが先に発砲する。
ガードの武器腕へ二発。
射線が地面へ逸れる。
G3が反対側から胴体の駆動部へ連射した。
ガードが倒れる。
二体目が煙から飛び出す。
VSKは射撃せず、車体の陰へ下がった。
ガードが追う。
その側面をG3が撃つ。
VSK「二体、停止」
蓮『南から歩兵も来る。接触まで一分を切る』
VSK「退避を続けます」
◇
排水路南側。
敵の二個分隊が、煙幕を避けて斜面を下りようとしていた。
その前方へ、AN-94が移動する。
AN-94「AK-12。敵分隊を確認しました」
AK-12「ここからは任せるわ」
AN-94「了解」
AN-94が射撃する。
一人目の武器を弾く。
二人目の足元へ撃ち込み、前進を止める。
敵が散開しようとした瞬間、別方向からブレンの弾丸が道路を削った。
逃げ場を狭める交差射撃。
反逆小隊と臨時小隊。
所属は違う。
だが、AK-12が見つけた敵の位置をAN-94が止め、ブレンが逃げ道を塞ぐ連携に無駄はなかった。
AK-12「南側分隊、停止。けれど敵の指揮車が新しい命令を送ろうとしている」
蓮『内容は?』
AK-12「増援要請。東へ退避路があると報告するつもりね」
蓮『今度は止めろ』
AK-12「通信そのものを?」
蓮『ああ。送信機を壊せるか、NTWに聞け』
AK-12が指揮車両の推定位置をNTW-20へ送る。
AK-12「三両目。屋根の後部に短距離通信アンテナ。距離八百十」
NTW-20「見えている」
NTW-20の照準器に、多用途車両の屋根が映る。
細いアンテナ。
その基部に、通信装置を収めた箱がある。
NTW-20「通信装置だけなら一発」
蓮『撃て』
発砲。
対物弾がアンテナ基部を破壊する。
指揮車両から火花が散った。
直後、AK-12の受信画面から強い信号が消える。
AK-12「敵指揮車、送信停止」
NTW-20「二発目、命中」
蓮『評価は?』
NTW-20「小隊長としては、もう一つ上げる」
蓮『まだ途中か』
NTW-20「人間としての評価は下がったままだ」
蓮『食事くらいで厳しくない?』
◇
暗渠入口。
最初の負傷者が点検台車へ載せられる。
資料箱二つ。
拘束された監視兵。
護送兵が次々と暗渠へ入る。
G3が最後の担架を押し込んだ時、右脚の警告表示が黄色へ変わった。
G3「右脚部、温度上昇。出力低下はありません」
VSK「G3、ここから点検台車へ乗って」
G3「まだ動けます」
VSK「動けるかではありません。報告を受けた副隊長として命令します」
G3は一瞬だけ迷った。
G3「……了解しました」
無理を隠さず、命令に従う。
それは臆病ではない。
次の戦闘にも生きて参加するための判断だった。
G3が台車へ乗る。
残るのはVSK、ブレン、NTW-20。
そして支援のAK-12とAN-94。
護送隊長「全員、暗渠へ入った!」
VSK「ブレン、後退。NTW-20も狙撃位置を離れて」
ブレン「了解」
NTW-20「移動する」
敵歩兵は、まだ車両の陰へ伏せている。
だが、制圧射撃が止まれば再び前へ出る。
VSK「AK-12、あと何秒抑えられますか?」
AK-12「通信を壊しただけよ。敵の足は止めていない。三十秒もあれば動き始めるわ」
蓮『なら、空の車列に最後の仕事をさせる』
VSK「何をするつもりですか?」
蓮『最後尾の装甲車は動くな?』
護送隊長「走れる。だが、運転手はもう暗渠だ」
蓮『遠隔操作は?』
護送隊長「直進と停止だけなら、整備用制御から可能だ」
蓮が地図上の道路幅を確認する。
蓮『全員が退避したあと、最後尾車を前進させて資料車へ斜めに当てろ。道路を完全に塞ぐ』
M4A1「無人車両二両を障害物にするのですね」
蓮『敵は資料車が空だと知らない。最初は強引に壊せない。確認に時間を使わせる』
AK-12「中身を無傷で取り戻せという命令が、今度は邪魔になる」
蓮『そういうことだ』
VSK「全員、暗渠へ。護送隊長、遠隔操作を」
最後の人員が暗渠へ入る。
護送隊長が携帯端末から装甲車を動かした。
無人の装甲車が前進する。
資料車の後部へ、斜めから接触。
二両の車体が道路を塞ぐ形で止まった。
その向こうでは、操向装置を破壊された敵軽装甲車も道を塞いでいる。
狭い外周道路は、両側から車両で閉じられた。
敵歩兵が車列へ到達する頃には、救援隊の姿は消えていた。
◇
暗渠内。
保守台車が基地側へ走る。
歩ける者たちは、その後ろを急いで進んでいた。
監視兵は両手を身体の前で拘束され、二人の護送兵に挟まれている。
資料箱は無事。
負傷者の容体も安定している。
VSK「こちら臨時小隊。護送隊全員を暗渠へ収容。資料原本二箱、捕虜一名を確保。基地へ帰投します」
M4A1『了解。東側整備棟で医療班と警備班を待機させます』
蓮『小隊の損害は?』
VSK「ありません。G3の右脚部に温度警告。現在は点検台車で移動中です」
G3「申し訳ありません、ボス」
蓮『謝るな。報告して命令に従った。それでいい』
G3「……はい」
蓮『VSK』
VSK「はい」
蓮『よく全員連れて帰った』
短い沈黙。
VSK「当然です。ボスからの最初の命令でしたから」
その声には、隠しきれない喜びがあった。
ブレン「甘やかすと、次からもっと張り切るぞ」
VSK「ブレン?」
NTW-20「すでに十分張り切っている」
AK-12「いい小隊になりそうね」
AN-94「構成人員のうち、四名は優秀です」
無線の向こうで、蓮が何かを噛む音がした。
AK-12「残る一名は?」
AN-94「評価を保留します」
NTW-20「私は保留しない」
蓮『おい。誰が何を言いたいのか、聞こえてるぞ』
AK-12「精鋭四名に、狂人一名」
蓮『待て。狂人って俺か?』
ブレン「他に誰がいる」
蓮『失礼な小隊だな!』
暗渠の中へ、初めて小隊全員の笑い声が響いた。
◇
七分後。
東側整備棟へ、護送隊の全員が収容された。
負傷者は医療班へ。
監視兵は警備班へ。
資料原本は、M4A1と基地情報担当者の立ち会いで封印状態を確認される。
回収時の記録。
運搬者。
開封の有無。
すべてが記録され、証拠の連続性が保たれた。
M4A1「護送三の救援、完了。死亡者なし。資料と捕虜も確保しました」
指揮官『確認したわ。よくやってくれました』
臨時指揮所で、その報告を聞いた蓮が息を吐く。
食堂の長机には、食べ終えた皿と包装が山のように積まれていた。
空の皿。
空の丼。
空の野戦糧食袋。
それだけ食べたにもかかわらず、蓮は苦しそうな様子を見せていない。
むしろ、先ほどより顔色が良くなっていた。
M16A1「本当に全部食ったのか……」
蓮「久しぶりに満腹になった」
VSKたちが帰投したという連絡が入ると、蓮は最後に残っていた水を飲んだ。
蓮「よし。迎えに行くか」
衛生要員「行きません」
蓮「まだ何も――」
衛生要員「寝台から降りるつもりでしょう?」
蓮「……よく分かったな」
衛生要員「同じ会話は二度目です」
食堂の扉が開く。
最初に入ってきたのはVSKだった。
その後ろに、G3、ブレン、NTW-20。
さらに、支援を終えたAK-12とAN-94が続く。
小隊の四人とも負傷していない。
G3だけは右脚部へ冷却材を巻いているが、自分の足で歩いていた。
VSK「ただいま戻りました、ボス」
蓮「お帰り。全員、無事だな」
VSK「はい。命令どおり、誰一人置いてきていません」
VSKが蓮の前へ立つ。
報告を終えたあとも、その場を離れない。
蓮「どうした?」
VSK「小隊として最初の任務ですから。ボスから直接、評価をいただきたいです」
蓮「そうだな……」
蓮は四人を見る。
VSKの判断。
G3の前衛と救助。
ブレンの制圧射撃。
NTW-20の二度の狙撃。
どれか一つ欠けても、全員を連れ帰ることはできなかった。
蓮「文句なしだ。四人とも、俺にはもったいないくらいの精鋭だよ」
VSKの表情が明るくなる。
G3「ありがとうございます」
ブレン「初回としては上出来だな」
NTW-20「小隊長の評価も、もう一つ上げておく」
蓮「全部でいくつあるんだ、その評価」
NTW-20「教えない」
AK-12「四人の評価は決まったわね」
そこでAK-12は、長机へ積まれた空の食器を改めて見た。
閉じていた瞼が、ほんの僅かに開く。
だが、その理由については何も言わなかった。
蓮「嫌な予感がするから、俺の評価は言わなくていいぞ」
AK-12「戦闘能力、判断力、責任感。どれも問題なし」
蓮「お、意外と――」
AK-12「食欲だけは問題しかないわ」
AK-12が空の皿の山を指す。
四人の視線が、一斉に食器へ向いた。
VSK「……ボス。これを全部?」
蓮「そうだけど?」
G3「六人分以上ありますよ?」
蓮「腹が減ってたからな」
ブレン「やはり狂人は一人で合っているらしい」
蓮「食事の量だけで狂人にするな!」
新しく編成された小隊。
精鋭四名。
そして、狂人一名。
彼らの最初の任務は、誰一人欠けることなく終わった。
長机の端に置かれた空の野戦糧食袋が、空調の風で小さく揺れる。
その時、臨時指揮所の警報が鳴った。
G11『中央管理棟から緊急短文……主司令部へ敵残存部隊が集中。中央階段の一つが突破された』
護送隊を追っていた敵車両から降りた傭兵。
基地内で退路を失った鉄血の残存機。
それらが、レッドカンパニーの連絡将校を収容している主司令部へ向かっていた。
M4A1が、戦術表示盤に残された最後の赤い印を見る。
M4A1「護送隊の救援は完了しました。残る目標は、中央管理棟の主司令部です」
VSKが蓮の隣へ立つ。
VSK「次の命令を、ボス」
新小隊の初任務は成功した。
しかし、S09基地を巡る戦いは、まだ終わっていなかった。
はい。
次回は、指揮官救助ですね。
戦闘シーンは次回が本格的になりますね。
ちなみに、AK-12達はサブキャラです。(悲報)
それではまた。
モチベアップのため、コメントなどもお願いします。
※2026年8月29日リメイク完了
好きな子がいたら適当に投票どうぞ!
-
HK416
-
VSK-94
-
AK-12
-
AR-15
-
アズールレーン 赤城
-
アズールレーン 加賀
-
艦これ 赤城
-
艦これ 加賀
-
雷電
-
スカイレイダー
-
シュバァルベ
-
渡邉 蓮
-
渡邉 隼人
-
渡邉 勇翔
-
小貝 高虎