陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る   作:ゴーストライターとかした、素人小説書き

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注意

この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
それが、いやな方は、上にある矢印ボタンでブラウザバックを推奨します。
この世界はアズールレーンと艦これが入っているため人物が分かりやすいようにアズールレーンはA 艦これはCと表記します。
それでも、大丈夫な方はご覧ください。


3-1 呉鎮守府 男性副提督の朝食

3-1 呉鎮守府――男性副提督の朝食

 

 呉鎮守府近海海戦の翌朝。

 

     ◇

 

 大日本帝国。

 

 帝都・東京、大本営。

 

 海軍元帥、近藤佐美子の執務室。

 

 広い執務室の中央で、二人の海軍将校が執務机の前へ立っていた。

 

 輪と舞。

 

 二人が提出したのは、呉鎮守府近海で発生した戦闘の暫定報告書だった。

 

近藤「……」

 

 近藤は黙ったまま、報告書を一頁ずつ確認している。

 

 敵艦隊の観測結果。

 

 呉鎮守府即応連合艦隊の損害。

 

 生還艦艇と、いまだ捜索中の航空要員。

 

 そして、敵艦隊が追撃を中止するまでの経緯。

 

 最後の頁まで読み終えた近藤の手が止まった。

 

近藤「……マジ?」

 

 元帥らしからぬ一言だった。

 

輪「一言一句、誇張を加えずに記載しています」

 

舞「呉鎮守府の戦闘詳報、沿岸監視所の記録、艦隊から回収された通信記録を照合しました」

 

近藤「本当に? 書き間違いじゃなくて?」

 

輪「はい」

 

 近藤は、報告書の中央へ記された項目をもう一度見る。

 

呉鎮守府近海海戦 暫定戦闘報告

 

敵艦隊観測戦力

 

航空母艦級 八隻

 

戦艦級 一隻

 

巡洋艦級 四隻以上

 

駆逐艦級 九隻以上

 

航空母艦級八隻のうち、六隻以上が航空機を運用。

 

確認戦果

 

敵主要妨害中枢 三隻へ損害

 

敵艦隊の通信、電探および妨害能力が一時低下

 

敵艦隊は即応連合艦隊への追撃を中止し、戦闘海域から撤退

 

敵艦艇の撃沈確認なし。

 

妨害中枢三隻の損害程度は不明。

 

敵航空戦力は、依然健在と想定する。

 

呉鎮守府側損害

 

沈没艦 なし

 

行方不明艦 なし

 

損傷艦 多数

 

第一航空戦隊および第二航空戦隊 攻勢任務継続不能

 

艦娘・赤城/KAN-SEN・赤城の航空隊 出撃六十六機、帰還八機

 

艦娘・加賀/KAN-SEN・加賀の航空隊 飛行可能状態での帰還四機

 

その他航空隊にも多数の戦死者、未帰還者および負傷者

 

戦死者および行方不明者の捜索を継続中。

 

本戦闘の成果は、敵艦隊の撃滅ではなく、損傷した即応連合艦隊を呉へ帰投させる時間の確保と判断する。

 

近藤「敵空母八隻。撃沈確認、なし」

 

輪「はい」

 

近藤「それなのに、敵は追撃を止めた」

 

舞「中央の大型空母級一隻と巡洋艦級二隻。合計三隻の妨害中枢が攻撃を受けた直後、呉側の通信と電探が回復しています」

 

近藤「敵を全滅させたわけじゃない。味方の航空隊も、ほとんど戦えない状態……」

 

輪「勝利と呼ぶより、壊滅を回避した戦闘と見るべきでしょう」

 

 全艦が呉へ戻った。

 

 だが、全員が帰ったわけではない。

 

 戦死者も、行方不明者もいる。

 

 多くの航空隊が、部隊としての機能を失った。

 

 数字だけを見て大勝利と喜べる報告ではなかった。

 

近藤「この状況で、よく全艦を帰したわね……」

 

舞「即応連合艦隊は最後まで損傷艦を見捨てず、救難信号を送り続けました」

 

輪「呉鎮守府側も、その信号を受け取るため、損傷した通信設備を復旧させています」

 

近藤「それで、この渡邉隼人という人が、通信をつなぎ直して妨害源を見つけた」

 

舞「小型無人偵察機を敵艦隊付近へ送り、敵の位置と編成、妨害源を確認しました」

 

輪「その後、《みらい》と呼ばれる装備から対艦誘導弾八発を発射。中央の大型空母級へ四発、巡洋艦級二隻へ二発ずつです」

 

近藤「目的は撃沈じゃなく、通信と妨害の停止……」

 

 近藤は、報告書へ添付された作戦図を見る。

 

 呉から遠く離れた三つの目標。

 

 そこへ延びる八本の射線。

 

近藤「剣子が副提督に任命した理由は分かったわ」

 

舞「正確には、呉鎮守府臨時副司令です。慣用上の呼称が副提督となります」

 

輪「任期は三十日。十日ごとに、本人と鎮守府双方で継続を見直す条件です」

 

近藤「昨日の戦果だけを理由にした、名誉職じゃないのね」

 

輪「防衛作戦の立案補助、情報統合、部隊再建、敵技術への戦術研究を担当します」

 

近藤「なるほど……」

 

 その時、執務室の扉が叩かれた。

 

 コンコン。

 

近藤「入れ」

 

「失礼いたします!」

 

 若い海軍将校が敬礼して入室する。

 

 手には、海軍の封印が施された大きな封筒があった。

 

「元帥閣下。呉鎮守府の好美剣子少佐より、臨時副司令任用報告書ならびに身元確認資料が届いております」

 

近藤「ご苦労。そこへ置いて」

 

「はっ!」

 

 若い将校は封筒を机へ置き、退室した。

 

 近藤は鋏で封を切る。

 

近藤「さて。未来から来た海上自衛官とは、どんな人なのかしらね」

 

 封筒から、数枚の書類と一枚の写真を取り出す。

 

 写真が書類の間から滑り、床へ落ちた。

 

近藤「あっ」

 

 近藤は写真を拾い上げる。

 

 そこには、左肩を固定された迷彩服姿の男性と、その隣へ笑顔で座る剣子が写っていた。

 

 男性は車椅子へ座ったまま、撮影の意図が分からないとでも言いたげな顔をしている。

 

近藤「……えっ」

 

輪「どうされました?」

 

近藤「男」

 

舞「報告書に書かれていましたが」

 

近藤「剣子が、男と二人で写真を撮ってる!」

 

輪「注目するところは、そこなのですか?」

 

近藤「だって、剣子が男性を副提督にしたのよ!?」

 

舞「臨時副司令です」

 

近藤「通称は副提督でしょう!」

 

 近藤は写真と任用報告書を交互に見る。

 

近藤「渡邉隼人……。戦果を盛らないところも含めて、一度会ってみたいわね」

 

     ◇

 

 呉鎮守府、地下救護所。

 

 負傷者用の個室。

 

隼人「……」

 

 窓のない部屋へ、天井の照明が淡い光を落としている。

 

 隼人は簡易寝台の上で眠っていた。

 

 左肩は固定されたまま。

 

 対艦誘導弾を発射した際の負担が、胸部と腰にも残っている。

 

 昨日は、戦闘詳報の確認、合同慰霊式への参列、祖父である渡邉竜との面会、そして臨時副司令への任用が続いた。

 

 軍医から勤務終了を命じられたあと、隼人はこの個室へ戻されていた。

 

 コンコン。

 

剣子「隼人さん。起きていますか?」

 

隼人「……はい」

 

 隼人が目を開ける。

 

 上体を起こそうとした瞬間、左肩から胸へ鈍い痛みが走った。

 

アイ『急激な起き上がりを推奨しません』

 

隼人「分かっている」

 

 右腕だけを使い、ゆっくり身体を起こす。

 

隼人「どうぞ」

 

 扉が開き、剣子と衛生員が入ってきた。

 

 衛生員は、折り畳まれた迷彩服の上衣と車椅子を用意している。

 

剣子「おはようございます。よく眠れましたか?」

 

隼人「おはようございます。途中で何度か目を覚ましましたが、昨日よりは眠れました」

 

剣子「痛みは?」

 

隼人「問題ありません」

 

アイ『左肩部、胸部および腰部に疼痛反応が残存しています』

 

隼人「……任務に支障があるほどではない」

 

衛生員「本日は、戦闘任務の予定などありません」

 

隼人「そういう意味で言ったわけではない」

 

剣子「軍医さんから、食堂まで車椅子で移動することを条件に、外での朝食を許可してもらいました」

 

隼人「歩行は禁止ですか?」

 

衛生員「昨日、四分十二秒で歩行試験を中止したことをお忘れですか?」

 

隼人「忘れてはいない」

 

衛生員「では、車椅子をお使いください」

 

 隼人は反論を諦めた。

 

 衛生員の助けを借り、迷彩服の上衣へ右腕だけを通す。

 

 固定された左肩には袖を通さず、上衣の左側を肩へ掛けた。

 

 それから車椅子へ移る。

 

剣子「朝食のあとは、副司令用の執務室と通信指揮所だけ案内します。ほかの場所は、身体が治ってからです」

 

隼人「鎮守府全体の配置を把握したいのですが」

 

衛生員「本日は二か所だけです」

 

隼人「……承知しました」

 

 衛生員が車椅子を押し、剣子と共に地下救護所を出た。

 

     ◇

 

 食堂へ向かう廊下では、戦闘の後片づけが続いていた。

 

 割れた窓は応急資材で塞がれ、焦げた壁の前では工作要員が配線を交換している。

 

 包帯を巻いた艦娘。

 

 損傷した艤装の一部を固定されたKAN-SEN。

 

 負傷者や工具箱を運ぶ者たちが、剣子と隼人へ敬礼して通り過ぎていく。

 

剣子「昨日は、本当に大変でしたね。慰霊式のあとも、任用覚書、装備の保管確認、それから写真撮影まで」

 

隼人「その写真について、一つ質問があります」

 

剣子「な、何でしょう?」

 

隼人「身元確認用の写真へ、なぜ好美提督まで一緒に写ったのですか?」

 

剣子「私も一緒なら、大本営が偽造を疑いにくくなるでしょう?」

 

隼人「撮影記録と公印があれば十分では?」

 

剣子「必要なの! この世界では必要なのです!」

 

隼人「そうなのですか?」

 

剣子「そうなのです!」

 

隼人「……この世界の身元確認は特殊なのですね」

 

剣子「あはは……そうかもしれませんねぇ……」

 

 剣子は笑ってごまかした。

 

剣子「元帥へ隼人さんを自慢したかったなんて、言えない……」

 

隼人「何か言いましたか?」

 

剣子「何も言っていません!」

 

 声が僅かに裏返っていた。

 

隼人「ところで、昨日の秘書官だった天城さんは?」

 

剣子「天城さんは、重桜の天城さんです。KAN-SEN側の秘書官として、昨日の任用手続きを手伝ってもらいました」

 

隼人「今日は別の方が担当するのですか?」

 

剣子「はい。秘書官は艦娘とKAN-SENから、仕事の内容に合わせて輪番で選んでいます」

 

隼人「本日の担当は?」

 

剣子「今日は確か……」

 

 剣子が考え込む。

 

剣子「あれ? 誰でしたっけ?」

 

隼人「ご自分の秘書官ですよね?」

 

剣子「昨日が忙しすぎて、当番表を見るのを忘れていました」

 

隼人「秘書官候補は、それほど多いのですか?」

 

剣子「呉に所属するKAN-SENが百三十四人ほど。艦娘が百六十人ほどです。その中から、適性と本人の希望を確認して当番を決めています」

 

隼人「合計で三百人近い……」

 

剣子「もちろん、全員が秘書官を務めるわけではありませんよ」

 

隼人「それでも、三百人近い所属員と戦力を管理しているのですね」

 

剣子「最初は大変でしたけど、慣れれば何とかなります!」

 

隼人「私も早く覚えられるよう、努力します」

 

剣子「うむ! よろしい!」

 

 剣子が得意そうに胸を張る。

 

 その直後、三人は大食堂へ到着した。

 

剣子「ここが鎮守府の大食堂です!」

 

 剣子が両開きの扉を押す。

 

 扉の向こうには、長机と椅子が何列も並んだ広大な食堂があった。

 

 艦娘とKAN-SEN。

 

 人間の整備員、航空要員、衛生員。

 

 多くの者が、朝食を取っている。

 

 戦闘翌日のため、空席も少なくない。

 

 医療区画や捜索任務から戻っていない者もいる。

 

 それでも、食堂には朝の活気が戻り始めていた。

 

金剛(艦娘)「いっただっきますネー!」

 

金剛(KAN-SEN)「いただきます。姉様、あまり慌てて食べると――」

 

金剛(艦娘)「ぐっ!? の、喉が詰まったネー!」

 

比叡(艦娘)「金剛お姉様! お水を――ひぇっ!?」

 

 立ち上がった比叡(艦娘)が足を滑らせる。

 

 ガッシャーン!

 

比叡(KAN-SEN)「比叡姉さん! 大丈夫ですか!?」

 

比叡(艦娘)「ひぇぇ……」

 

夕立(艦娘)「もぐもぐ! 間宮さんのご飯、おいしいっぽい!」

 

夕立(KAN-SEN)「確かにうまいな! これなら野菜を食べなくても――」

 

時雨(艦娘)「駄目だよ。野菜も食べないと」

 

時雨(KAN-SEN)「ぎくっ……。残してないよ。ただ、食べやすいように端へ移しただけだし」

 

時雨(艦娘)「……」

 

 時雨(艦娘)が、時雨(KAN-SEN)の皿の端へ積まれた野菜を見る。

 

時雨(KAN-SEN)「……あとで食べるよ」

 

神通(艦娘)「川内姉さん、起きていますか?」

 

川内(艦娘)「うぅ……深夜まで将棋を指しすぎた……」

 

川内(KAN-SEN)「まだまだだな。これで二百九勝、十九分け、無敗だぞ」

 

川内(艦娘)「くっ……夜戦演習だと、すぐへにゃへにゃになるくせに……」

 

川内(KAN-SEN)「誰がへにゃへにゃだ!」

 

隼人「……」

 

 隼人は、扉の前で言葉を失った。

 

剣子「おお。今日は大人しいですね」

 

隼人「これで大人しいのですか?」

 

剣子「普段なら、もっと大騒ぎですよ。昨日の疲れが残っているのかもしれません」

 

隼人「そ、そうなのですか……」

 

 呆然とする隼人へ、古い海軍軍服を着たKAN-SENが声を掛けた。

 

三笠(KAN-SEN)「む? 指揮官ではないか。おはよう。今朝はしっかり目が覚めているか?」

 

剣子「あっ、三笠さん! おはようございます! 今日はちゃんと起きていますよ!」

 

三笠(KAN-SEN)「うむ。早寝早起きは軍人の基本だからな」

 

 三笠(KAN-SEN)の視線が、車椅子へ座る隼人へ移る。

 

三笠(KAN-SEN)「して、指揮官の隣にいる彼が、昨日話していた例の人物か?」

 

剣子「はい! 昨日から呉鎮守府の臨時副司令になった、渡邉隼人さんです!」

 

隼人「初めまして。渡邉隼人と申します」

 

 隼人は車椅子から立とうとした。

 

衛生員「立たないでください」

 

三笠(KAN-SEN)「ははは! そのままで構わん。ここは戦場でも、式典会場でもない」

 

隼人「失礼します」

 

三笠(KAN-SEN)「随分と肩へ力が入っているな。長く戦場へ身を置いていたようだ」

 

隼人「……」

 

 穏やかに笑う三笠(KAN-SEN)には、長い年月と戦場を知る者だけが持つ静かな重みがあった。

 

 それを感じた瞬間、隼人の身体が無意識に緊張を取り戻していた。

 

三笠(KAN-SEN)「おっと。その気配は、ここでは出さない方がよい」

 

隼人「申し訳ありません。少し、力加減を誤りました」

 

三笠(KAN-SEN)「戦場で染みついた癖は、平和な場所で少しずつ直せばいい」

 

隼人「……善処します」

 

三笠(KAN-SEN)「うむ。それでは、朝食が冷めてしまうので失礼する!」

 

 三笠(KAN-SEN)は、自分の席へ戻っていった。

 

剣子「何か出していたんですか?」

 

隼人「あまり気にしない方がよろしいかと」

 

剣子「そうですか? まあ、いいか!」

 

 剣子はすぐに配膳口へ向き直った。

 

剣子「間宮さーん! 今日の朝食は何ですかー?」

 

 割烹着と大きな赤いリボンが特徴的な艦娘が、厨房から顔を出す。

 

間宮(艦娘)「今日は、塩鮭と赤味噌のお味噌汁、炊きたてのご飯、それから、だし巻き卵ですよ」

 

剣子「それを二つ、お願いします!」

 

間宮(艦娘)「はーい。ちょうど作り置きが切れたので、先に席へ座っていてくださいね」

 

剣子「分かりました!」

 

 三人は、空いている席を探して食堂を進む。

 

 車椅子へ座る男性。

 

 しかも、見慣れない迷彩服を着ている。

 

 隼人の存在に気づいた者たちの視線が、次々と集まった。

 

金剛(艦娘)「Oh……男の人がいるネー」

 

比叡(KAN-SEN)「本当ですね。軍人でしょうか?」

 

霧島(艦娘)「昨日噂になっていた、未来から来た男性では?」

 

榛名(艦娘)「く、クールで格好いいです……」

 

隼人「……随分、見られていますね」

 

剣子「あっ……そうだ!」

 

 剣子が足を止める。

 

剣子「まだ皆へ、隼人さんを紹介していませんでした!」

 

隼人「この場で行うのですか?」

 

剣子「詳しい説明は後で行います。でも、せっかく皆が集まっていますから、先に顔と名前だけでも覚えてもらいましょう!」

 

 剣子は食堂の中央へ移動し、パンパンと手を叩いた。

 

剣子「みんなー! 朝食中にごめんね! 少しだけ注目してくださーい!」

 

 食堂が、少しずつ静かになっていく。

 

 箸を止める艦娘。

 

 椅子から身を乗り出すKAN-SEN。

 

 整備員や航空要員も、隼人へ視線を向けた。

 

剣子「昨日付で、呉鎮守府の臨時副司令へ任命した渡邉隼人さんです! 私たちの呼び方では、副提督になります!」

 

 食堂の一角から、小さなどよめきが起きる。

 

剣子「任期は、まず三十日。詳しい役目や権限については、あとで各部署へ通達します!」

 

 剣子が隼人を見る。

 

剣子「それでは副提督、一言お願いします!」

 

隼人「事前に聞いていないのですが」

 

剣子「今、お願いしました!」

 

 三笠(KAN-SEN)が、自分の席から笑う。

 

三笠(KAN-SEN)「副提督となった以上、大勢の前で話す機会はいくらでもある。最初の訓練だと思って諦めたまえ!」

 

隼人「三笠さんまで……」

 

 隼人は一度、息を整えた。

 

 車椅子へ座ったまま、食堂にいる者たちを見渡す。

 

隼人「紹介にあずかりました、渡邉隼人です。本日より、呉鎮守府臨時副司令として勤務します」

 

 落ち着いた声が、食堂へ響く。

 

隼人「初めに、昨日の戦闘で失われた方々へ、哀悼の意を表します。いまも行方の分からない方々が、一人でも多く戻ることを願っています」

 

 食堂から、先ほどまでの軽いざわめきが消えた。

 

隼人「敵艦艇の撃沈は、確認されていません。敵の航空戦力も健在と想定すべきです。私たちが得たのは、敵を滅ぼした勝利ではありません」

 

 隼人は、包帯を巻いた者たちを見る。

 

隼人「損傷した艦と負傷者を、呉へ帰すための時間です」

 

 赤城たちとの戦闘詳報で述べたことと、同じだった。

 

隼人「私は、この鎮守府について知らないことが多い。艦娘とKAN-SENの能力も、この世界の制度も、これから学ばなければなりません」

 

 隼人は一度、言葉を切った。

 

隼人「まず、皆さんの名前と役割を覚えます。何ができて、どのような支援が必要なのかを確認します。その上で、航空隊と防衛体制を立て直します」

 

 剣子が、黙って隼人の言葉を聞いている。

 

隼人「勝利も、誰も死なせないことも約束できません。それでも、与えられた権限の中で、帰れる者を一人でも多く帰します」

 

 隼人は、動かせる右手を胸元へ添えた。

 

隼人「至らない点があれば、遠慮なく指摘してください。これから、よろしくお願いします」

 

 隼人は車椅子へ座ったまま、深く頭を下げた。

 

 短い沈黙。

 

 最初に拍手を送ったのは、三笠(KAN-SEN)だった。

 

三笠(KAN-SEN)「うむ。よい挨拶だ!」

 

 剣子も手を叩く。

 

 続いて、食堂の各所から拍手が広がっていった。

 

金剛(艦娘)「新しい副提督、歓迎するネー!」

 

夕立(艦娘)「よろしくっぽい!」

 

榛名(艦娘)「よろしくお願いします!」

 

隼人「……ありがとうございます」

 

剣子「詳しい説明は後ほど! 今は朝食が冷めちゃうから、みんな食事に戻ってー!」

 

金剛(艦娘)「そうだったネー! いただきま――」

 

金剛(KAN-SEN)「姉様。先ほど喉を詰まらせたばかりでしょう」

 

金剛(艦娘)「今度は気をつけるネー!」

 

 食堂に、朝の賑わいが戻っていく。

 

剣子「あっ、隼人さん。あそこが空いています!」

 

 剣子と衛生員が、車椅子を空席へ運ぶ。

 

 長机の向かい側には、隼人にとって見覚えのないKAN-SENが座っていた。

 

大鳳(KAN-SEN)「ふふ……初めまして、隼人様♡」

 

隼人「初めまして。渡邉隼人です。先ほどの挨拶を聞いてくださったのですね」

 

大鳳(KAN-SEN)「ええ。しっかり聞かせていただきましたわ。重桜所属、装甲空母・大鳳です」

 

隼人「大鳳さんですね。よろしくお願いします」

 

剣子「あれ? そういえば、艦娘の大鳳さんは今朝は一緒じゃないんですか?」

 

大鳳(KAN-SEN)「もう一人の大鳳さんは、避難中に怪我をしてしまいまして……。今は医療区画で安静にしていますわ」

 

隼人「怪我?」

 

 隼人の表情が変わる。

 

隼人「敵機は迎撃したはずです。まさか、鎮守府まで到達した機体が――」

 

大鳳(KAN-SEN)「いいえ。避難中に足を滑らせ、階段から転んでしまったのです」

 

隼人「……そうでしたか」

 

 敵機を取り逃がしたわけではない。

 

 それを知り、隼人の肩から僅かに力が抜ける。

 

大鳳(KAN-SEN)「命に関わる怪我ではありません。しばらくすれば、元気になりますわ」

 

隼人「それなら安心しました。お大事にとお伝えください」

 

大鳳(KAN-SEN)「ええ。必ずお伝えします♡」

 

 コトッ。

 

間宮(艦娘)「お待たせしました。朝食をどうぞ!」

 

 間宮(艦娘)が、二人分の朝食を長机へ並べる。

 

 焼きたての塩鮭。

 

 湯気を立てる赤味噌の味噌汁。

 

 炊きたての白米。

 

 丁寧に巻かれただし巻き卵。

 

剣子「ありがとうございます、間宮さん!」

 

隼人「ありがとうございます」

 

間宮(艦娘)「どういたしまして。二人とも、残さず食べてくださいね」

 

剣子「はーい!」

 

 間宮(艦娘)は、笑顔で厨房へ戻っていった。

 

剣子「それでは、いただきます!」

 

隼人「いただきます」

 

 二人は手を合わせ、朝食を食べ始める。

 

剣子「んんっ! おいしい!」

 

 剣子は頬を緩め、次々と箸を動かす。

 

 隼人は、最初に味噌汁を一口飲んだ。

 

隼人「……温かい」

 

 赤味噌の香りと出汁のうま味が、身体へ染み渡っていく。

 

 昨日までの食事は、救護所か艦内で取るものばかりだった。

 

 鎮守府の食堂で、所属する者たちと同じ朝食を食べる。

 

 それだけで、自分が本当にここへ着任したのだと実感できた。

 

 剣子は豪快に。

 

 隼人は、固定された左肩を動かさないよう、右手だけでゆっくりと。

 

 二人は、それぞれの速さで朝食を食べ終えた。

 

剣子「ごちそうさまでした!」

 

隼人「ごちそうさまでした」

 

 二人の膳には、米粒一つ残っていない。

 

剣子「間宮さんの料理は、本当においしいですね。もう満腹です!」

 

隼人「ええ。実に美味な朝食でした」

 

 以前の世界で食べた市ヶ谷の食堂より、明らかにうまい。

 

 そう思ったが、口に出すのはやめた。

 

剣子「それでは、食器を片づけてきますね」

 

 剣子が二人分の盆を重ねる。

 

隼人「私も――」

 

衛生員「車椅子から立たないでください」

 

隼人「……手伝おうと言っただけです」

 

剣子「これくらい私がやりますよ。隼人さんは待っていてください!」

 

隼人「では、お言葉に甘えます」

 

 剣子が返却口へ向かう。

 

 その直後、向かいへ座る大鳳(KAN-SEN)も箸を置いた。

 

大鳳(KAN-SEN)「ごちそうさまでした」

 

 口元を布で拭った大鳳(KAN-SEN)が、隼人を見る。

 

大鳳(KAN-SEN)「隼人様」

 

隼人「はい。何でしょうか?」

 

大鳳(KAN-SEN)「このあと、何かご予定はありますか?」

 

隼人「軍医の許可した範囲で、副司令用の執務室と通信指揮所を案内していただく予定です」

 

大鳳(KAN-SEN)「それが終わったあと、少しお話しできませんか? せっかくお会いできたのですから……」

 

隼人「構いません。ただし、軍医から救護所へ戻るよう命じられた場合は、別の時間にしてください」

 

大鳳(KAN-SEN)「ええ……。素晴らしいですわ。本当に、素晴らしいですわぁ……」

 

隼人「……?」

 

 一瞬だけ、大鳳(KAN-SEN)の瞳から光が消えたように見えた。

 

 しかし、瞬きをした時には、先ほどまでの柔らかな微笑みに戻っている。

 

剣子「へぇ。隼人さん、大鳳さんともう仲良くなったんですね!」

 

隼人「うおっ!?」

 

 盆を返し終えた剣子が、隼人の背後から会話を覗き込んでいた。

 

剣子「すっかり意気投合しているように見えました」

 

隼人「知り合ってから、まだ朝食一回分の時間も経っていませんが」

 

剣子「えっ? いや、そういう意味では……」

 

隼人「冗談です」

 

剣子「隼人さん、意外と意地悪ですね……」

 

隼人「今朝から驚かされてばかりでしたので、お返しです」

 

剣子「あはは……。それでは、そろそろ案内へ行きましょうか」

 

隼人「はい。お願いします」

 

 衛生員が車椅子の向きを変える。

 

隼人「それでは、大鳳さん。また後ほど」

 

大鳳(KAN-SEN)「はい。お待ちしておりますわ、隼人様♡」

 

 隼人は剣子と衛生員と共に、食堂を出ていった。

 

 三人の姿が扉の向こうへ消える。

 

 大鳳(KAN-SEN)は頬へ片手を添え、閉じた扉を見つめ続けていた。

 

大鳳(KAN-SEN)「ふふ……。とても、おいしそうなお方……♡」

 

 赤い唇から、細い舌が僅かに覗いた。




はい。

皆様。

あけましておめでとうございます!!

えー、今年もね!頑張っていきたいと思いますはい。

2022年もよろしくお願いします!!

次回は話が進まなくなる関係で紹介はハブらせてもらいます、ので次回は大鳳に会う所になります!

それでは、また!!

新年もコメントと投票よろしくお願いします!!

※2026年8月30日リメイク完了

好きな子がいたら適当に投票どうぞ!

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