陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
それが、いやな方は、上にある矢印ボタンでブラウザバックを推奨します。
この世界はアズールレーンと艦これが入っているため人物が分かりやすいようにアズールレーンはA 艦これはCと表記します。
それでも、大丈夫な方はご覧ください。
3-3 美しき赤色の女性が牙を付けた獲物は快楽を与える蛇である
呉鎮守府近海海戦から、七日後。
呉鎮守府、娯楽室。
広い室内には、将棋盤や囲碁盤、本棚、蓄音機、映像受像機などが置かれている。
負傷者や非番の者も利用できるよう、奥には畳敷きの休憩室が設けられていた。
娯楽室の入口で、隼人は足を止めた。
一週間前には身体の各所へ巻かれていた包帯も、すでに大半が外されている。
左肩の固定帯も、今朝の診察で不要と判断された。
墜落と対艦誘導弾発射によって負った傷は、骨折や内臓損傷には至っていなかった。裂傷は塞がり、強く残っていた打撲と筋肉の炎症も、日常動作を妨げないところまで治っている。
長く歩いた時や左腕を大きく動かした時には、まだ僅かな痛みが走る。
それでも、車椅子と救護所での生活は、今日で終わった。
執務と鎮守府内の移動は通常どおり。
軽い運動も許可された。
ただし、本格的な格闘訓練と《みらい》の装着、重量物の運搬だけは、次回の診察まで禁止されている。
アイ『隼人。軍医から受けた制限事項を、再度読み上げますか?』
隼人「必要ない。すべて覚えている」
アイ『記憶していることと、遵守することは同義ではありません』
隼人「今日は休憩しに来ただけだ」
アイ『記録しました』
剣子「アイさん、完全に隼人さんの扱いを覚えましたね」
隼人「誰のせいだと思っているのです?」
剣子「せっかくですから、私も一緒に休みます!」
隼人「提督は執務中では?」
剣子「昼休みです。大淀さんにも確認してきました!」
隼人「先回りして確認するようになったのですね」
剣子「私だって成長しますよ!」
先日約束した大鳳(KAN-SEN)との待ち合わせまでは、まだ二十分ほどある。
隼人は、その間だけ娯楽室で休むつもりだった。
その時、天井近くの拡声器から短い音が鳴った。
『間もなく、間宮販売所にて特製ラムネの販売を開始します。購入を希望する方は、売り切れにご注意ください』
放送が終わる。
剣子の目が輝いた。
剣子「ラムネ!」
隼人「お好きなのですか?」
剣子「間宮さんの特製ですよ! 月に何度かしか販売されないんです!」
剣子は、廊下の先にある販売所の方を見る。
続いて隼人を見る。
そして、もう一度、廊下の先を見る。
剣子「隼人さん。少しだけ、ここで待っていてもらえますか?」
隼人「まだ何も答えていません。それと、廊下は走らないでください」
前へ傾いていた剣子が、ゆっくり姿勢を戻す。
隼人「私の分も一本、お願いします」
剣子「任せてください! 必ず確保してきます!」
まるで重要任務を与えられたような顔で、剣子が娯楽室を出ていく。
今度は走らず、速足だった。
隼人「そこまで貴重な物なのですか?」
アイ『販売数が限られているため、販売開始前から列が形成されています』
隼人「なるほど」
隼人は室内を見渡す。
将棋盤の置かれた卓では、天城(KAN-SEN)と加賀(KAN-SEN)が向かい合っていた。
天城(KAN-SEN)「王手です」
加賀(KAN-SEN)「……待った」
天城(KAN-SEN)「待ったは、なしですよ」
加賀(KAN-SEN)「まだ指していない」
赤城(KAN-SEN)「加賀。駒から指を離していましたわ」
加賀(KAN-SEN)「赤城は、どちらの味方なの?」
赤城(KAN-SEN)「面白い方ですわ」
天城(KAN-SEN)が、袖で口元を隠して笑っている。
その周囲では、対局を見ていた者たちが小さくざわめいていた。
隼人「見学しても?」
アイ『本日の目的は休憩です』
隼人「見ているだけだ」
アイ『隼人が盤面を見た時の視線は、休憩中のものではありません』
隼人は、もう一度だけ将棋盤を見る。
加賀(KAN-SEN)の王将は、盤の端へ追い詰められていた。
どう見ても、あと数手で詰む。
隼人「……休憩室へ行きます」
アイ『適切な判断です』
隼人は将棋盤に背を向け、奥の休憩室へ入る。
室内には畳の香りが残っていた。
壁際へ布団が畳まれ、中央には低い卓が一つだけ置かれている。
隼人「少しだけ、横になるか」
隼人は自分で布団を一組敷くと、左肩を庇いながら仰向けになった。
身体は動く。
しかし、救護所を出た初日から午前中いっぱい執務を続けたため、思っていた以上に疲労が残っていた。
アイ『二十分後に起床を促します』
隼人「頼む」
隼人は襖を半分開けたまま、目を閉じた。
娯楽室から、将棋の駒を置く音が聞こえてくる。
ぱちり。
ぱちり。
それ以外は静かだった。
眠るつもりはなかった。
ほんの数分、身体の力を抜くだけのつもりだった。
しかし、畳の香りと遠くの話し声が、記憶の奥へ沈んでいく。
◇
木刀が風を切った。
蓮「せやあっ!」
庭へ踏み込んだ蓮が、木刀を横へ振る。
竜は半歩だけ身体を退き、その手首を取った。
渡邉竜「力が入りすぎじゃ」
蓮「なっ――」
竜が僅かに腰を落とす。
次の瞬間、蓮の身体が宙へ浮いた。
蓮「うおっ!?」
庭の土へ、背中から落ちる。
竜は木刀を持ったまま、楽しそうに笑った。
渡邉竜「まだまだじゃのう」
蓮「手首を掴んだだけだろ! 何で身体まで動かなくなるんだよ!」
渡邉竜「自分で動けなくしたんじゃ。腕だけで勝とうとするから、足も腰も死んでおる」
蓮「くそっ……もう一回!」
隼人「兄上。先ほどから同じ入り方をしています」
自分の声が聞こえた。
隼人は、縁側へ座って庭を見ている。
身体が小さい。
手も、足も。
着ているのは、幼い頃に使っていた稽古着だった。
蓮「見ているだけの奴は、好きに言えるんだよ!」
隼人「三回とも同じところを取られているのですから、四回目も同じです」
蓮「じゃあ、お前がやってみろ!」
隼人「私は先ほど終わりました」
渡邉竜「隼人は、投げられる前に降参しおった」
蓮「ずるいぞ!」
隼人「勝てないと分かっている相手へ、同じ方法で挑み続ける方がおかしいでしょう」
蓮「こいつ……!」
蓮が起き上がり、縁側へ近づいてくる。
だが、腹の鳴る音が先に響いた。
蓮「……腹減った」
渡邉竜「儂もじゃ」
隼人「お師匠様まで……」
台所の方から、食器の触れ合う音が聞こえる。
咲「皆さん。お昼ができましたよ」
母の声だった。
隼人が振り返る。
渡邉咲が、縁側の奥から顔を覗かせている。
記憶の中と変わらない、穏やかな笑顔。
蓮「やった! 今日、何?」
咲「唐揚げと、おにぎりです」
蓮「行くぞ、隼人!」
蓮が、隼人の襟を掴む。
隼人「ちょっと、引っ張らないでください! 伸びます!」
蓮「急がないと、勇翔と■■■■に全部食われるぞ!」
ザザッ――。
蓮の声へ、突然ひどい雑音が重なった。
耳で聞く音ではない。
頭の内側を、硬い物で擦られたような不快な響き。
隼人「……誰ですか?」
蓮「誰って、■■■■だよ」
ザッ――ザザザッ。
また、名前だけが消える。
蓮「おい。どうした?」
隼人「今、何と言いました?」
蓮「だから、早くしないと――」
蓮が口を動かす。
だが、その部分だけ何も聞こえない。
庭の色が、一瞬だけ薄くなる。
竜も、咲も、異変に気づいていなかった。
隼人は蓮に引かれ、家の中へ入る。
◇
食卓には、山盛りの唐揚げが置かれていた。
大皿を囲むように、いくつもの料理が並んでいる。
勇翔「兄上、隼人兄さん。遅いですよ」
エプロンを着た勇翔が、炊きたての米を運んでくる。
蓮「お前が作ったのか?」
勇翔「母上の手伝いをしただけです。唐揚げには触っていません」
蓮「じゃあ安心だな」
勇翔「どういう意味ですか?」
蓮は席へ座ると、唐揚げの横に置かれたレモンへ手を伸ばす。
隼人「兄上」
蓮「何だよ」
隼人「大皿へかけたら、怒りますよ」
蓮「うまいだろ、レモン」
隼人「自分の皿だけにしてください」
蓮「細かい奴だな」
勇翔「僕は、どちらでも構いませんけどね」
隼人・蓮「お前は黙っていろ」
勇翔「なぜですか!?」
食卓へ、懐かしい笑い声が広がる。
その時。
隼人の背後から、女性の声が聞こえた。
■■■■「隼人君のおにぎり、これでよかった?」
ザザッ。
声の最初へ、再び雑音が混じる。
隼人は、ゆっくり振り返った。
長い黒髪。
細い指。
自分より少しだけ年上に見える女性。
両手には、丸く握られたおにぎりが載っている。
その姿を見た瞬間、胸の奥へ懐かしさが込み上げた。
知っている。
この人を、自分は知っている。
それなのに、顔の中心だけが見えなかった。
目を凝らすほど、細かな砂嵐のようなものが表情を覆っていく。
隼人「貴方は……」
■■■■「どうしたの?」
優しい声。
その声まで、途中から雑音に飲まれる。
隼人「名前を……教えてください」
■■■■「名前?」
女性が、少し困ったように首を傾げる。
■■■■「隼人君は、知っているでしょう?」
隼人「分かりません」
■■■■「忘れたの?」
忘れた。
その言葉が、胸へ深く刺さった。
隼人は立ち上がろうとする。
だが、足が動かない。
手を伸ばしても、女性との距離が縮まらない。
蓮と勇翔は、何事もないように唐揚げを取り合っている。
咲は味噌汁を運び、竜はそれを待っている。
誰も、隼人の異変に気づかない。
隼人「待ってください。貴方は、誰なのですか?」
女性は、答えなかった。
手にしていたおにぎりを、隼人の前へ置く。
■■■■「また、一人で全部できるふりをしているの?」
隼人「え……?」
■■■■「誰かを守ることと、誰にも頼らないことは、同じじゃないよ」
幼い記憶の中にあるはずのない言葉だった。
今の隼人へ向けられた言葉。
女性の指が、隼人の頬へ近づく。
■■■■「一番でなくても、役に立てない日があっても――」
ザザザザッ――。
最も大切な部分を、激しい雑音が奪っていく。
隼人「聞こえません!」
隼人は、動かない右手を無理に伸ばした。
■■■■「――帰ってきてね、隼人君」
女性の指先が、頬へ触れる。
その瞬間、食卓も、家族も、女性の姿も暗闇へ沈んだ。
隼人「待ってくれ!」
◇
隼人の右手が、何かを掴んだ。
大鳳(KAN-SEN)「……隼人様?」
目を開ける。
畳敷きの休憩室。
見慣れない天井。
すぐ近くには、大鳳(KAN-SEN)がいた。
隼人の右手は、彼女の手首を強く掴んでいる。
大鳳(KAN-SEN)は身を乗り出した姿勢で止まり、驚いた顔をしていた。
隼人「……大鳳さん?」
大鳳(KAN-SEN)「はい」
意識が、急速に現実へ戻ってくる。
隼人は手を離した。
隼人「申し訳ありません。痛くありませんでしたか?」
大鳳(KAN-SEN)「この程度では、痛みませんわ」
大鳳(KAN-SEN)が掴まれていた手首を撫でる。
大鳳(KAN-SEN)「ですが、少し驚きました。眠っていらした隼人様へ触れてもよいか、声を掛けようとしたところでしたから」
隼人「触れる前だったのですね」
大鳳(KAN-SEN)「ええ。お顔が、とても苦しそうでしたので」
大鳳(KAN-SEN)「約束の時刻に参りましたら、襖が開いたままでしたので、外から何度かお呼びしました。ですが、お目覚めにならなくて……」
隼人「それで、様子を確かめようとしたのですね」
大鳳(KAN-SEN)「はい」
アイ『心拍数の上昇を確認しました。現在は低下傾向にあります。身体各部に新たな異常はありません』
隼人「夢を見ただけだ」
隼人は両手を畳につき、自分で上体を起こした。
左肩に僅かな張りを感じたが、動きを止めるほどではない。
壁へ背を預け、乱れた呼吸を整える。
大鳳(KAN-SEN)「本当に、もうお身体はよろしいのですか?」
隼人「はい。少なくとも、起き上がるのに手を借りる必要はありません」
大鳳(KAN-SEN)「少し残念ですわ。お支えするつもりでしたのに」
隼人「別の機会にお願いします」
大鳳(KAN-SEN)は、隼人の正面へ静かに座った。
大鳳(KAN-SEN)「先日は、お身体が良くなってから改めて、と仰ってくださいましたわね」
隼人「約束しましたから」
大鳳(KAN-SEN)「きちんと覚えていてくださったのですね♡」
大鳳(KAN-SEN)「先ほどの夢は、ご家族の夢ですか?」
隼人「どうして分かったのです?」
大鳳(KAN-SEN)「眠りながら、兄上と呼んでいらっしゃいました。それから、お師匠様とも」
隼人「そうですか」
隼人は、夢の内容を思い出そうとする。
庭。
祖父の竜。
母の咲。
蓮と勇翔。
山盛りの唐揚げ。
そして、黒髪の女性。
大鳳(KAN-SEN)「もう一人、誰かを呼ぼうとしていましたわ」
隼人「名前を言っていましたか?」
大鳳(KAN-SEN)「いいえ。何度か口を動かしていましたが、声にはなっていませんでした」
隼人は右手を見つめる。
夢の中で、あの女性へ伸ばした手。
現実では、大鳳(KAN-SEN)の手首を掴んでいた。
大鳳(KAN-SEN)「大切な方ですの?」
隼人「分かりません」
大鳳(KAN-SEN)「分からない?」
隼人「姿を見た時、知っていると思いました。あの食卓にいることも、声を掛けられることも、当たり前のように感じた」
隼人は、途切れた記憶を言葉にしていく。
隼人「ですが、名前だけが聞こえない。顔も見えない。思い出そうとするたびに、ひどい雑音が入る」
大鳳(KAN-SEN)「夢だから、ではなくて?」
隼人「それならよいのですが」
夢で見た女性の言葉は、あまりにも明瞭だった。
幼い日の記憶へ、現在の自分に向けた言葉が混じっていた。
ただの思い出ではない。
そう感じても、それを証明するものはない。
アイ『睡眠中の音声記録を確認しました』
隼人「何か残っていたか?」
アイ『蓮、勇翔、母上、お師匠様という発話を確認しています。それ以外に、同一の呼び掛けを三回試みていますが、音声として成立していません』
隼人「復元できるか?」
アイ『現時点では不可能です』
隼人は目を閉じる。
顔も、名前も思い出せない。
それでも、最後の言葉だけは残っている。
帰ってきてね、隼人君。
大鳳(KAN-SEN)「……少し、妬いてしまいますわ」
隼人「誰かも分からない相手に?」
大鳳(KAN-SEN)「誰かも分からないのに、隼人様をそれほど苦しませる方ですもの」
大鳳(KAN-SEN)は微笑んでいる。
だが、その瞳には冗談だけではない感情があった。
大鳳(KAN-SEN)「その方を思い出した時、隼人様は私を見てくださらなくなるのではありません?」
隼人「それは分かりません」
大鳳(KAN-SEN)「そこで、安心させることを仰ってくださらないのですね」
隼人「できない約束をしても、安心にはならないでしょう」
大鳳(KAN-SEN)「本当に、正直なお方……」
大鳳(KAN-SEN)が、隼人との距離を僅かに縮める。
畳へ手をつき、視線の高さを合わせた。
赤い衣装。
白い肌。
艶やかな黒髪。
柔らかな笑みの奥で、獲物を見つけた獣のような熱が揺れている。
大鳳(KAN-SEN)「では、今の隼人様は、私をどう見ていらっしゃいますの?」
隼人「出会ってまだ七日で、私へ強い関心を向けているKAN-SENです」
大鳳(KAN-SEN)「それだけ?」
隼人「美しい女性だとも思っています」
大鳳(KAN-SEN)の目が、僅かに見開かれる。
すぐに、唇へ嬉しそうな笑みが浮かんだ。
大鳳(KAN-SEN)「まあ……♡」
隼人「ただし、私は呉鎮守府の臨時副司令です。貴方は、その指揮系統に属している」
大鳳(KAN-SEN)「突然、難しいお話になりましたわね」
隼人「必要な話です」
隼人は、大鳳(KAN-SEN)の目から視線を逸らさない。
隼人「私の立場を使って、貴方へ関係を求めるつもりはありません。反対に、個人的な好意を理由に任務や評価を変えることもできない」
大鳳(KAN-SEN)「私は、命令されてここへ来たのではありませんわ」
隼人「分かっています。だからこそ、急がない方がよい」
大鳳(KAN-SEN)「隼人様は、私をお嫌いですか?」
隼人「嫌いなら、ここまで話していません」
大鳳(KAN-SEN)「では、お好き?」
隼人「まだ、貴方を知っている途中です」
大鳳(KAN-SEN)「ずるいお答えですわ」
隼人「正直な答えです」
大鳳(KAN-SEN)の顔が、さらに近づく。
互いの呼吸が分かる距離。
それでも彼女は、隼人の身体へ触れなかった。
大鳳(KAN-SEN)「では……口づけをしてもよろしいですか?」
先ほどまでの甘い声とは違う。
答えを待つ、真剣な問いだった。
隼人は数秒考える。
それから、首を横へ振った。
隼人「今は、駄目です」
大鳳(KAN-SEN)の眉が下がる。
大鳳(KAN-SEN)「理由を伺っても?」
隼人「私はまだ、貴方の気持ちへ同じ言葉を返せないからです」
大鳳(KAN-SEN)の笑みが消える。
拒絶された怒りではない。
隼人の言葉を、受け止めようとしている表情だった。
隼人「その状態で唇を受け取れば、期待だけを与えることになります」
大鳳(KAN-SEN)「隼人様は、どなたにも同じように慎重なのですか?」
隼人「恐らく」
大鳳(KAN-SEN)「では、いつか私以外の方へ惹かれることも?」
隼人「ないとは約束できません」
大鳳(KAN-SEN)の瞳が細くなる。
大鳳(KAN-SEN)「私は、隼人様に私だけを見ていただきたいのですけれど……」
隼人「それを望むことは、否定しません」
大鳳(KAN-SEN)「叶えては、いただけませんの?」
隼人「今の私には、誰か一人だけを見るという約束もできません。行方の分からない家族と仲間がいる。思い出せない女性まで現れた。貴方への気持ちも、まだ名前を付けられない」
隼人は、言葉を選びながら続ける。
隼人「それでも、私を知りたいと思うなら、止めません」
大鳳(KAN-SEN)は、隼人の顔をじっと見つめていた。
やがて、再び笑う。
今度の笑みは、先ほどよりも静かだった。
大鳳(KAN-SEN)「簡単に手に入らない方ほど、欲しくなるものですわ」
隼人「私は獲物ですか?」
大鳳(KAN-SEN)「ええ。とても魅力的な獲物です♡」
隼人「牙を立てる時は、相手をよく確認した方がよい」
大鳳(KAN-SEN)「まあ。なぜですの?」
隼人は、右手を大鳳(KAN-SEN)の前へ差し出した。
隼人「獲物のふりをした蛇かもしれません」
大鳳(KAN-SEN)が、差し出された手を見る。
大鳳(KAN-SEN)「これは?」
隼人「唇は、まだ渡せません。その代わり、手を取ることならできます」
大鳳(KAN-SEN)は、すぐには触れなかった。
大鳳(KAN-SEN)「触れても、よろしいのですね?」
隼人「はい」
大鳳(KAN-SEN)の両手が、隼人の右手を包む。
白い指先から、穏やかな温かさが伝わってきた。
彼女は隼人の手を引き寄せ、手の甲へ自分の額をそっと預ける。
大鳳(KAN-SEN)「今は、これで我慢いたしますわ」
隼人「意外と素直ですね」
大鳳(KAN-SEN)「隼人様が、ご褒美をくださったからです♡」
隼人「手を差し出しただけですが」
大鳳(KAN-SEN)「私にとっては、十分に甘いものですわ」
赤い女性は、獲物へ牙を届かせることができなかった。
代わりに差し出されたのは、拒絶ではないと伝えるための、僅かな温もり。
追う側だったはずの大鳳(KAN-SEN)は、それだけで先ほどより満たされた表情を見せている。
獲物だと思った男は、ただ食べられるのを待つ者ではなかった。
相手を傷つけず、期待だけを煽ることもなく、それでも次を望ませる距離を選ぶ。
甘い毒を与える蛇のように。
襖の外から、足音が近づいてくる。
剣子「隼人さん、お待たせしました! ラムネ、買えましたよ――」
剣子が、半分開いていた襖から顔を覗かせる。
大鳳(KAN-SEN)は、隼人の手を両手で包み、その上へ額を預けている。
隼人は壁へ背を預けたまま、彼女を見下ろしていた。
剣子「……私、何分いませんでした?」
アイ『三十一分二十七秒です』
剣子「三十分ちょっとで、何があったんですか!?」
隼人「夢を見て、起きたところに大鳳さんがいました」
剣子「そこから、この状態になるまでが抜けています!」
大鳳(KAN-SEN)「隼人様から、ご褒美をいただきましたの♡」
剣子「ご褒美!?」
隼人「手を差し出しただけです」
剣子「その説明で、余計に分からなくなりました!」
大鳳(KAN-SEN)が、名残惜しそうに隼人の手を離す。
大鳳(KAN-SEN)「本日は、ここまでですわね」
剣子「せっかく買ってきたラムネは?」
隼人「ここでいただきましょう」
剣子「絶対ですよ! 一本しか確保できなかったんですから!」
隼人「提督の分は?」
剣子「それが最後の一本でした……」
隼人「では、提督が飲んでください」
剣子「駄目です。隼人さんに頼まれて買ったものですから」
隼人「半分ずつにしますか?」
剣子「ラムネを半分……」
隼人「コップを二つ借りればよいでしょう」
剣子「あっ、そうですね!」
剣子は大切そうに硝子瓶を抱え、娯楽室に置かれたコップを取りに向かった。
大鳳(KAN-SEN)「まあ。指揮官も、隼人様から甘いものをいただくのですね」
剣子「今、ものすごく誤解される言い方をしませんでした!?」
休憩室へ、久しぶりに穏やかな笑い声が広がる。
隼人も、僅かに口元を緩めた。
しかし、胸の奥には夢の感触が残っている。
家族の食卓。
黒髪の女性。
思い出せない名前。
雑音に奪われた言葉。
誰かを守ることと、誰にも頼らないことは、同じではない。
そして――帰ってきてね、隼人君。
あの女性が、過去の記憶なのか。
失われた誰かなのか。
それとも、まだ出会っていない誰かなのか。
今の隼人には、分からない。
ただ一つ。
夢から覚めた時、伸ばした手は空を掴まなかった。
そこには、隼人の答えを待ちながら、自分の意思で手を取った大鳳(KAN-SEN)がいた。
思い出せない誰かの言葉を、すぐに理解することはできない。
それでも、一人で抱え込まないという選択は、もう始めることができる。
隼人は畳へ右手をつき、自分の力で立ち上がった。
左肩には僅かな痛みが残っている。
だが、その足で好きな場所へ行き、必要な相手に会い、自分の手で何かを選ぶことができる。
もう、誰かに運んでもらわなければ動けない身体ではなかった。
その右手にはまだ、大鳳(KAN-SEN)の温もりが残っていた。
はい。
隼人は基本どの人でも愛せるバイセクシャルという性格です。
何でそんな性格になったか…いずれ書こうかな…
後、新しい小説書こうかなと考えていますね。
とりあえず、初めては大鳳ですね…可愛いね!
次回は…鎮守府生活の一日書こうかな。
それでは!
コメントマイリス投票お願いします!
後、R17.9のタグ追加しますね…
※2026年8月30日リメイク完了
好きな子がいたら適当に投票どうぞ!
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HK416
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VSK-94
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AK-12
-
AR-15
-
アズールレーン 赤城
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アズールレーン 加賀
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艦これ 赤城
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艦これ 加賀
-
雷電
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スカイレイダー
-
シュバァルベ
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渡邉 蓮
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渡邉 隼人
-
渡邉 勇翔
-
小貝 高虎