陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
それが、いやな方は、上にある矢印ボタンでブラウザバックを推奨します。
この世界はアズールレーンと艦これが入っているため人物が分かりやすいようにアズールレーンはA 艦これはCと表記します。
それでも、大丈夫な方はご覧ください。
3-5 蒼き龍は、帰る場所を持たない男の隣に座る
同日、正午。
呉鎮守府、提督執務室。
能代(KAN-SEN)「午前中の処理予定分、すべて完了しました」
剣子「終わったぁ……」
剣子が机へ身体を預ける。
書類の山が消えたわけではない。
午前中に処理すると決めた分だけが、担当者と期限の明らかな仕事へ変わったのだ。
隼人は壁の時計を確認する。
隼人「正午です。続きは休憩後にしましょう」
剣子「隼人さんから休憩を提案してくれるなんて……!」
アイ『行動改善を確認しました』
隼人「大げさです」
能代(KAN-SEN)「今朝、空腹のまま働くなと私へ言ったのは副司令です。ご自分も守ってください」
隼人「分かっています」
能代(KAN-SEN)は、本日の副司令秘書官として最後の書類を閉じた。
能代(KAN-SEN)「私の当番は、ここまでです。午後の予定は、大淀さんから引き継ぎを受けています」
隼人「初めての当番、お疲れ様でした」
能代(KAN-SEN)「こちらこそ。遅刻から始まってしまいましたが……」
隼人「その件は、もう終わったはずです」
能代(KAN-SEN)「はい」
能代(KAN-SEN)は小さく笑い、一礼して執務室を出ていった。
入れ替わるように扉が叩かれる。
大淀(艦娘)「失礼します」
大淀(艦娘)が、封緘された書類袋を抱えて入ってきた。
その表面には、大本営作戦研究部の印がある。
剣子「もしかして、午後の仕事ですか?」
大淀(艦娘)「はい。ただし、開始は午後一時からです。昼食時間を削る必要はありません」
大淀(艦娘)は、先回りして釘を刺した。
隼人「内容は?」
大淀(艦娘)「敵高速機と敵空母部隊へ対抗するための、遠距離航空攻撃案です」
剣子が、机から顔を上げる。
大淀(艦娘)「敵の攻撃圏外から艦載機を発進させ、一方的に敵空母を攻撃できないか。大本営から、実現性を検討するよう求められています」
隼人「検討に参加する航空母艦は?」
大淀(艦娘)「蒼龍さんと飛龍さんです。お二人とも、艦娘側から参加します」
その名を聞き、隼人は以前の戦闘検討会を思い出した。
帰還できなかった蒼龍航空隊。
生き残りながら、すぐには飛べない搭乗員たち。
そして、その中にいた渡邉竜。
自分の祖父かもしれない、若い航空兵。
隼人「分かりました。午後一時に出席します」
大淀(艦娘)「よろしくお願いします」
剣子「その前に、ご飯です!」
剣子が勢いよく立ち上がる。
剣子「午後の会議が長引いても大丈夫なように、しっかり食べますよ!」
隼人「先ほどまで机へ倒れていた人とは思えませんね」
剣子「お昼は別腹です!」
隼人「使い方が違うと思います」
◇
午後一時。
呉鎮守府、作戦研究室。
中央の長机へ、海図、航空図、気象資料が広げられている。
参加者は、剣子、隼人、大淀(艦娘)。
航空母艦側から、蒼龍(艦娘)と飛龍(艦娘)。
記録と資料整理のため、大鳳(KAN-SEN)も同席していた。
蒼龍(艦娘)「お久しぶりです、渡邉さん」
隼人「数日前の検討会以来ですね。蒼龍さん」
飛龍(艦娘)「もう歩いて大丈夫なのですか?」
隼人「日常動作と軽い運動は許可されています。ただし、重量物の運搬と《みらい》の装着は禁止されたままです」
大鳳(KAN-SEN)「隼人様が禁止事項を破らないよう、アイさんと鎮守府全体で見守っておりますわ♡」
隼人「監視対象のように言わないでください」
アイ『過去の行動記録から、継続的な確認は妥当です』
飛龍(艦娘)「否定できていませんね」
蒼龍(艦娘)「ふふっ……」
蒼龍(艦娘)が口元を緩める。
初めて会った時よりも、その表情は柔らかかった。
だが、卓上の書類へ視線を移すと、すぐに航空母艦としての顔へ戻る。
大淀(艦娘)「それでは、検討を始めます」
大淀(艦娘)が、大本営から届いた案を読み上げた。
敵空母の推定攻撃圏外に味方空母を配置。
艦載機の最大航続距離を利用し、敵空母へ先制攻撃を実施。
攻撃終了後、敵航空隊が反撃へ移る前に離脱する。
書面の上では、味方だけが攻撃できる戦法だった。
剣子「どう思います?」
誰も、すぐには答えなかった。
隼人は海図ではなく、添付された計算表を確認する。
隼人「この航続距離は、増槽を含めた最大値ですか?」
大淀(艦娘)「はい」
隼人「戦闘、目標捜索、悪天候による迂回、着艦待機に必要な燃料は?」
大淀(艦娘)「一律の予備燃料として、計算されています」
隼人「一律では足りません。最大航続距離と、実際に攻撃へ使える距離は別です」
蒼龍(艦娘)「私も同意見です」
蒼龍(艦娘)は、自分の航空図を長机へ広げた。
蒼龍(艦娘)「発艦した場所へ、そのまま戻れるとは限りません。母艦も移動しますし、帰りに向かい風へ変わることもあります」
海図上の味方空母から、敵艦隊へ線を引く。
蒼龍(艦娘)「ここまで飛ぶだけなら可能です。でも、敵を探し、迎撃を受け、攻撃して、損傷した機体を連れて帰るとなれば、話は変わります」
飛龍(艦娘)「護衛戦闘機も必要です。攻撃隊だけを遠くへ出せば、先日の戦闘と同じことになります」
隼人「護衛機を増やせば、敵艦へ投じられる攻撃機は減る」
蒼龍(艦娘)「はい。それに、長時間の飛行は搭乗員を消耗させます」
蒼龍(艦娘)の指が、計算表の一行で止まる。
蒼龍(艦娘)「この案では、機体の航続時間しか見ていません。搭乗員が、その間ずっと周囲を警戒し、編隊を保ち、敵を探すことは計算されていません」
先日の戦闘から戻った航空要員の顔が、蒼龍の脳裏をよぎる。
負傷した者。
眠れなくなった者。
帰らない僚機の名を呼び続けた者。
機体が飛べることと、人間が戦えることは同じではない。
隼人「帰還できる余力を残さない攻撃は、片道攻撃と変わりません」
大淀(艦娘)「では、この案は実施不能と?」
隼人「原案のままなら、反対します」
蒼龍(艦娘)「私も反対です」
蒼龍(艦娘)の答えは明確だった。
飛龍(艦娘)も頷く。
大鳳(KAN-SEN)「ですが、敵空母の攻撃圏へ先に入れば、こちらが再び空襲を受けますわ。距離を利用する考え方そのものは、捨てるべきではないのでは?」
隼人「そのとおりです」
隼人は、原案の横へ新しい紙を置いた。
隼人「問題は、遠くから攻撃することではありません。最大距離を、そのまま安全な攻撃距離と考えていることです」
剣子「では、使える形に直しましょう」
検討の目的が変わる。
大本営案を採用するか否か。
その二択ではない。
何を満たせば、長距離航空攻撃を実施できるのか。
蒼龍(艦娘)が、必要な条件を挙げていく。
攻撃前の確実な敵情把握。
発艦後も目標位置を更新できる偵察手段。
帰投時の天候と風向を含めた燃料計算。
負傷機を誘導できる通信中継。
帰還先を失った場合の代替飛行場と救難配置。
搭乗員の連続勤務時間に上限を設けること。
飛龍(艦娘)「敵の防空戦力が不明なら、攻撃隊を全部出すべきではありません。母艦を守る戦闘機も残す必要があります」
大鳳(KAN-SEN)「敵がこちらの発艦を確認し、逆に空母へ攻撃隊を差し向ける可能性もございますわね」
隼人「防空戦力と第二次攻撃隊の予備を分けるべきです。一度に全てを投じれば、攻撃が失敗した時点で次の手がなくなります」
大淀(艦娘)が、条件を項目ごとに整理する。
剣子は、呉鎮守府が現在用意できるものと、できないものを分けていく。
隼人は未来の戦い方を、そのまま押しつけない。
この時代に存在しない装備を前提にすれば、計画ではなく願望になる。
蒼龍(艦娘)と飛龍(艦娘)は、現在の機体と搭乗員で実行できる限界を示す。
大鳳(KAN-SEN)は、異なる艦載機運用から見える問題を加える。
それぞれの知識が重なり、原案は少しずつ現実的な形へ変わっていった。
◇
検討開始から二時間が過ぎた。
蒼龍(艦娘)が、航空要員の編成表を開く。
蒼龍(艦娘)「一つ、条件へ加えてください」
大淀(艦娘)「何でしょう?」
蒼龍(艦娘)「搭乗員本人の申告だけで、出撃可能と判断しないことです」
大淀(艦娘)の筆が止まる。
蒼龍(艦娘)「生き残った者ほど、大丈夫だと言います。負傷を隠してでも、次は自分が行かなければならないと思うから」
蒼龍(艦娘)は、編成表の空欄を見る。
そこには、補充待ちと記されている。
だが、補充されるのは機体や数字ではない。
一つずつ、名前があった場所だった。
蒼龍(艦娘)「先日の戦闘でも、帰還した航空要員が、自分だけ休むわけにはいかないと言っていました」
隼人「覚えています」
蒼龍(艦娘)「渡邉さんが止めなければ、私も早く航空隊を再編しなければならないと考えていたかもしれません」
隼人「蒼龍さんだけの責任ではありません」
蒼龍(艦娘)「はい。ですが、私の航空隊です」
声は穏やかだった。
責任から逃げる言葉ではない。
だからこそ、隼人は軽く否定できなかった。
隼人「では、航空隊指揮官、軍医、整備責任者の三者が確認する。本人が出撃を希望しても、どれか一つが不適と判断すれば休養を継続する」
蒼龍(艦娘)「それなら、お願いします」
大淀(艦娘)「追記します」
紙へ、新しい条件が加えられた。
搭乗員の出撃可否は、本人の申告のみで決定しない。
それは小さな一文だった。
だが、その一文によって次の出撃から外され、命を残す者がいるかもしれない。
隼人は、記された文字を見つめる。
自分にも、軍医とアイが同じ制限を掛けている。
分かっている。
それでも、心のどこかでは早く《みらい》へ戻ることを考えていた。
蒼龍(艦娘)「渡邉さん?」
隼人「何でしょう」
蒼龍(艦娘)「いえ。少し、難しい顔をしていたので」
隼人「書類の内容を確認していただけです」
蒼龍(艦娘)「そうですか」
蒼龍(艦娘)は、それ以上追及しなかった。
ただし、納得した顔でもなかった。
◇
午後五時四十分。
作戦研究室。
大淀(艦娘)「大本営への回答案、作成完了しました」
書類の表題は、遠距離航空攻撃案に対する検討報告。
結論は、原案のままでは実施不能。
ただし、偵察、通信、救難、防空、搭乗員管理の条件を満たす場合、限定的な先制攻撃として研究を継続する。
単なる否定ではない。
実施するために何が不足しているのかを示した回答だった。
剣子「皆さん、お疲れ様でした」
飛龍(艦娘)「蒼龍、航空隊の様子を見に戻りましょう」
蒼龍(艦娘)「先に行っていてください。確認したい頁が一つ残っています」
飛龍(艦娘)「分かりました。あまり遅くならないように」
飛龍(艦娘)が資料を抱え、部屋を出ていく。
大鳳(KAN-SEN)「私も指揮官様と、明日の予定を確認してまいりますわ」
剣子「えっ、私もまだ仕事をするんですか?」
大鳳(KAN-SEN)「明日の予定確認だけですわ♡」
剣子「その言葉、朝も聞いた気がする……」
大鳳(KAN-SEN)に促され、剣子も部屋を出る。
大淀(艦娘)は完成した回答案を司令部へ運んでいった。
研究室には、隼人と蒼龍(艦娘)だけが残る。
蒼龍(艦娘)は航空図の頁を確認し、書類袋へ収めた。
蒼龍(艦娘)「渡邉さんは、このあとも仕事ですか?」
隼人「いいえ。医療所で診察を受けたあと、三十分の歩行訓練です」
蒼龍(艦娘)「歩行訓練?」
隼人「決められた範囲を歩き、痛みや呼吸に異常が出ないか確認します」
蒼龍(艦娘)「一人で?」
隼人「アイが監視します」
アイ『生体情報および移動経路を監視します』
蒼龍(艦娘)「それなら、海沿いを歩きませんか?」
隼人「海沿いを?」
蒼龍(艦娘)「私も戻る前に、少し風へ当たりたいんです。歩く速さは、渡邉さんに合わせます」
隼人は、すぐには返事をしなかった。
誰かを付き合わせる必要はない。
そう言いかける。
だが、午前中に能代(KAN-SEN)へ言われた言葉を思い出した。
艦も人も、燃料なしでは動けない。
自分だけを、その対象から外すべきではない。
隼人「診察で許可が出れば、お願いします」
蒼龍(艦娘)「はい」
蒼龍(艦娘)が、嬉しそうに笑った。
◇
午後六時十五分。
呉鎮守府、海岸沿いの歩道。
西の空へ、夕日の赤が僅かに残っている。
隼人と蒼龍(艦娘)は、海を右手に見ながらゆっくり歩いていた。
隼人の歩調は、以前より安定している。
それでも、長時間の執務を終えたあとの身体には、重い疲労が残っていた。
蒼龍(艦娘)「速くありませんか?」
隼人「問題ありません」
アイ『歩行速度、規定範囲内。心拍数、やや上昇しています』
蒼龍(艦娘)「問題がない人の報告ではありませんね」
隼人「運動をすれば、心拍数は上がります」
蒼龍(艦娘)「では、あそこまで歩いたら休みましょう」
蒼龍(艦娘)が、海岸へ設けられた木製の腰掛けを指した。
隼人は反論せず、その提案に従った。
二人が腰を下ろす。
波が岸壁へ触れる音。
遠くの工廠から響く、金属を打つ音。
帰投する哨戒機のエンジン音が、夕暮れの空を通り過ぎていく。
蒼龍(艦娘)は、肩へ掛けていた小さな袋から二本の瓶を取り出した。
蒼龍(艦娘)「鳳翔さんから、いただいてきました」
隼人「酒ですか?」
蒼龍(艦娘)「片方は。でも、渡邉さんはまだ飲めないでしょう?」
アイ『投薬期間中の飲酒は禁止されています』
蒼龍(艦娘)「なので、こちらです」
隼人へ差し出されたのは、冷えたラムネだった。
蒼龍(艦娘)は酒瓶を袋へ戻し、自分の分のラムネを取り出す。
隼人「蒼龍さんも、酒を飲まないのですか?」
蒼龍(艦娘)「一人だけ飲むのも、つまらないでしょう?」
玉押しで栓を開ける。
瓶の中へビー玉が落ち、澄んだ音を立てた。
蒼龍(艦娘)「今日の仕事、お疲れ様でした」
隼人「蒼龍さんも」
二本の瓶が、軽く触れ合う。
ラムネの甘さと炭酸が、乾いた喉へ広がった。
蒼龍(艦娘)「最初に会った日のこと、覚えていますか?」
隼人「雲龍さんが、私の膝で眠っていた日ですか?」
蒼龍(艦娘)「忘れようとしても、忘れられませんね」
蒼龍(艦娘)が笑う。
蒼龍(艦娘)「あの時、兄弟と仲間を探すと言っていました」
隼人「ええ」
蒼龍(艦娘)「それ以外にすることがない、とも」
隼人は、ラムネの瓶へ視線を落とした。
自分が口にした言葉を、蒼龍が覚えているとは思わなかった。
隼人「よく覚えていますね」
蒼龍(艦娘)「気になりましたから」
隼人「何がです?」
蒼龍(艦娘)「ほかにすることがない人には、見えなかったんです」
蒼龍(艦娘)は海を見る。
蒼龍(艦娘)「やらなければならないことを、いくつも抱えている人に見えました。それを全部終えるまで、自分のことは後回しにする人にも」
隼人「買いかぶりです」
蒼龍(艦娘)「今日も同じでしたよ」
隼人が顔を上げる。
蒼龍(艦娘)「生き残った搭乗員を、本人が大丈夫と言っても出撃させるな。そう決めてくれました」
隼人「必要な措置です」
蒼龍(艦娘)「では、ご自分が大丈夫と言っても《みらい》へ乗せないという判断も、必要な措置ですね」
隼人は答えなかった。
蒼龍(艦娘)「やっぱり」
隼人「何が、やっぱりなのです?」
蒼龍(艦娘)「他人へ休めと言うのは得意なのに、自分が休む理由を認めるのは苦手なんですね」
穏やかな声だった。
責めているわけではない。
だからこそ、簡単には受け流せなかった。
隼人「休んでいます」
蒼龍(艦娘)「軍医さんに決められた時間だけ?」
隼人「十分です」
蒼龍(艦娘)「失った人の分まで働けば、その人たちは戻ってきますか?」
隼人の指が、瓶を強く握る。
波の音が、僅かに遠くなった。
蒼龍(艦娘)「ごめんなさい。言い方が強すぎました」
隼人「いいえ」
隼人は、暗くなり始めた水平線を見る。
隼人「戻りません」
蓮。
勇翔。
小貝。
この世界へ来たのかさえ分からない三人。
さらに、その前に失った多くの仲間。
働き続けても、戦い続けても、死者が戻ることはない。
分かっていた。
分かっているからこそ、立ち止まることが怖かった。
隼人「何もしていないと、置いてきたように感じる」
言葉が、静かにこぼれた。
隼人「私だけが安全な場所で休めば、まだどこかで助けを待っている者を見捨てている気がする」
蒼龍(艦娘)は、すぐに慰めなかった。
大丈夫だとも、必ず会えるとも言わない。
確認できない希望を、事実のように語らない隼人へ、根拠のない言葉を返したくなかった。
蒼龍(艦娘)「私は、戦闘のあとから時々ここへ来ます」
隼人「ここへ?」
蒼龍(艦娘)「帰ってくる航空機の音を、聞くためです」
蒼龍(艦娘)は、海と空の境目を見つめた。
蒼龍(艦娘)「捜索が終わったあとも、エンジン音が聞こえれば、もしかしたらと思います。遅れて帰ってきたんじゃないかって」
蒼龍航空隊の多くは、戻らなかった。
帰還した者の中にも、以前と同じようには飛べない者がいる。
蒼龍(艦娘)「待っていても、帰らない人はいます」
声が僅かに震える。
蒼龍(艦娘)「でも、帰ってきた人が降りられる場所を残すことはできます」
隼人が、蒼龍(艦娘)を見る。
蒼龍(艦娘)「灯りを消さない。負傷した機体を受け入れる。帰ってきた人へ、もう一度飛べとは言わず、まず休ませる」
今日の会議で決めたことだった。
遠くまで飛ばす方法ではなく、帰ってくるために必要な条件。
蒼龍(艦娘)「探すことと、待つことは、どちらも必要なんだと思います」
隼人「待つだけでいいと?」
蒼龍(艦娘)「いいえ。一人で探し続けなくてもいい、ということです」
蒼龍(艦娘)は、隼人へ向き直る。
蒼龍(艦娘)「渡邉さんが動けない時は、私たちが探します。渡邉さんが遠くへ行く時は、私たちが帰る場所を残します」
隼人「なぜ、そこまで?」
蒼龍(艦娘)「私の航空隊を、数字ではなく人として見てくれたからです」
答えに迷いはなかった。
蒼龍(艦娘)「それに、渡邉竜さんのこともあります」
隼人の表情が僅かに変わる。
蒼龍(艦娘)「今日、治療区画で歩行訓練をしていました。負傷は順調に回復しているそうです」
隼人「そうですか」
短い返事。
それでも、隼人の肩から僅かに力が抜けた。
蒼龍(艦娘)「会いに行かないのですか?」
隼人「頻繁に近づけば、隠していることへ気づかれるかもしれません」
蒼龍(艦娘)「慎重ですね」
隼人「臆病なだけです」
蒼龍(艦娘)「では、会いに行ける日まで、私が様子を伝えます」
隼人「よろしいのですか?」
蒼龍(艦娘)「私の航空隊の人ですから」
蒼龍(艦娘)は、少し間を置いて続ける。
蒼龍(艦娘)「それだけでは、ありませんけど」
隼人「ほかにも理由が?」
蒼龍(艦娘)「今は、秘密です」
夕暮れの中で、蒼龍(艦娘)が笑った。
隼人は、それ以上問い詰めなかった。
アイ『歩行訓練の予定終了時刻まで、残り三分です』
蒼龍(艦娘)「もう戻る時間ですね」
隼人「ええ」
二人は腰掛けから立ち上がる。
長く座っていたため、隼人の右脚が僅かに強張った。
身体が傾くより早く、蒼龍(艦娘)が右手を差し出す。
蒼龍(艦娘)「どうぞ」
隼人「一人で立てます」
蒼龍(艦娘)「知っています。でも、使える手があるのに使わない理由はありませんよね?」
今日、隼人自身が現場で示した考え方だった。
誰が何をできるかを見極め、必要な力を借りる。
隼人は小さく息を吐き、差し出された手を取った。
隼人「ありがとうございます」
蒼龍(艦娘)「どういたしまして」
支えは、立ち上がるまでの短いものだった。
それでも、蒼龍(艦娘)の手の温度が残る。
二人は、来た道を並んで戻り始めた。
◇
宿舎へ続く分かれ道。
蒼龍(艦娘)「渡邉さん」
隼人「何でしょう?」
蒼龍(艦娘)「仕事の外では、隼人さんと呼んでもいいですか?」
唐突ではあった。
だが、冗談で尋ねている顔ではない。
隼人「構いません」
蒼龍(艦娘)「では、隼人さん」
確かめるように、その名を呼ぶ。
蒼龍(艦娘)「次にここへ来る時も、一緒にラムネを飲みませんか?」
隼人「次は、酒ではなく最初から二本ともラムネにしてください」
蒼龍(艦娘)「隼人さんの治療が終わったら、一本はお酒でもいいでしょう?」
隼人「その時に考えます」
蒼龍(艦娘)「約束ですね」
隼人「考えるとしか言っていません」
蒼龍(艦娘)「また一緒に来ることは、否定しませんでした」
隼人が言葉に詰まる。
蒼龍(艦娘)は、少し得意そうに笑った。
蒼龍(艦娘)「それでは、おやすみなさい。隼人さん」
隼人「おやすみなさい、蒼龍さん」
蒼龍(艦娘)が、自分の宿舎へ向かって歩き出す。
数歩進んだところで振り返り、軽く手を振った。
隼人も右手を上げて応える。
その姿が見えなくなってから、隼人は自分の宿舎へ向き直った。
アイ『本日の歩行訓練を終了します』
隼人「ああ」
アイ『心拍数が、休憩前より上昇しています』
隼人「歩いたからだ」
アイ『休憩中にも上昇を確認しました』
隼人「報告しなくていい」
アイ『了解しました。記録は継続します』
隼人「消せとは言っていない」
アイの返答はなかった。
隼人は夜の海を一度だけ振り返る。
探さなければならない者たちは、まだ見つかっていない。
その事実は変わらない。
だが、自分が立ち止まった時にも捜索を続ける者がいる。
帰る場所を残すと言ってくれた者がいる。
そのことを、今夜だけは信じてもよいと思えた。
一方、宿舎へ戻る蒼龍(艦娘)の手にも、先ほど触れた温度が残っていた。
戦闘のあと、帰らない航空機の音を待つために座っていた海岸。
今夜、初めて次に会いたい人を思いながら、その場所を離れた。
恋と呼ぶには、まだ早い。
けれど蒼龍(艦娘)は、次の約束をすでに楽しみにしていた。
はい。
…これ、R18小説だっけ?(勘違い)
さすがにちょっとガンガン体の付き合い持ち過ぎだし…さすがに、少し書き方変えたほうがいいな…と考える素人小説書きでした…
というか、こんな一日やばい過ぎ定期な気がしますけどね…
次の空自はウマ娘と新小説の準備に時間がかかりますので気長くお待ちください。
それでは…
コメントお気に入りお願いします!
※2026年8月30日リメイク完了
好きな子がいたら適当に投票どうぞ!
-
HK416
-
VSK-94
-
AK-12
-
AR-15
-
アズールレーン 赤城
-
アズールレーン 加賀
-
艦これ 赤城
-
艦これ 加賀
-
雷電
-
スカイレイダー
-
シュバァルベ
-
渡邉 蓮
-
渡邉 隼人
-
渡邉 勇翔
-
小貝 高虎