陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
この小説は、シリアスとギャグが少し入っています。
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グーグル先生にお聞きください。
それでも、大丈夫な方はご覧ください。
Act.12 一部屋三人で寝ましょう
午後七時五分。
黒十字帝国学連、第二試験飛行場。
医療区。
勇翔は車椅子に座り、退室前の説明を受けていた。
腰部には治療用の固定具。
右脚には、神経反応を測定する小型センサー。
上着の内側には、心拍数と体温を医療区へ送る監視装置が取り付けられている。
「今夜は居住区で休んでも構いません。ただし、一人での歩行は禁止です」
勇翔「立ち上がることも禁止ですか?」
「寝台や椅子へ移る時だけ、介助者がいる状態で許可します」
勇翔「分かりました」
「腰部の痛み、右脚の痺れ、感覚低下。そのいずれかが強くなった場合は、直ちに医療区へ連絡してください」
勇翔「はい」
返事をしながら、勇翔は説明書へ署名する。
四十八時間の飛行禁止。
歩行訓練も中止。
機体の整備作業は、座位で行える記録確認に限る。
F-3へ近づくことも、今夜は禁止されていた。
守るべき条件は多い。
だが、飛べなくなったわけではない。
二日間、身体を休めればいい。
そう考えられる程度には、勇翔も今の状態を受け入れていた。
医療区の扉が開く。
雷電「手続きは終わりましたか?」
勇翔「今、終わったところです」
雷電は着替えと生活用品を入れた鞄を持っていた。
彼女が車椅子の後ろへ回ろうとすると、勇翔は僅かに振り返る。
勇翔「自分で動かせますよ」
雷電「平らな場所なら、ですね」
勇翔「居住区まで、坂はありません」
雷電「途中に二つあります」
雷電は既に経路を確認していた。
勇翔「では、坂の所だけお願いします」
雷電「最初からお願いしてもよいのですよ?」
勇翔「動かせる間は、自分で動かしたいのです」
雷電は無理に押そうとしなかった。
雷電「分かりました。必要になったら呼んでください」
勇翔「ありがとうございます」
勇翔が車輪へ手を掛ける。
その時。
廊下の曲がり角から、軽い足音が近づいてきた。
「間に合った!」
紫色の髪。
黒いベレー帽。
黒十字帝国学連の制服を、自分なりに着崩した少女が走ってくる。
手には、三枚の居住許可証と部屋の鍵があった。
「渡邉勇翔大尉で間違いない?」
勇翔「はい。貴方は?」
Hs129「僕はHs129。黒十字側の居住区案内と、今夜からの生活補助を担当するよ」
Hs129は胸元へ手を当て、少しだけ姿勢を正した。
Hs129「よろしく、勇翔」
勇翔「Hs129……」
勇翔の表情が、僅かに緩む。
Hs129はそれを見逃さなかった。
Hs129「僕の名前、知ってるの?」
勇翔「ええ。知っています」
Hs129「もしかして、元の世界で会ったことがある?」
勇翔「会ったことはありません。ただ、Hs129は、僕が初めて興味を持った航空機なのです」
Hs129「初めて?」
勇翔「子供の頃に資料を読み、模型も作りました。双発の対地攻撃機。操縦席周辺へ装甲を集中し、地上目標へ接近して攻撃するための機体です」
口にしながら、勇翔は古い記憶を探す。
塗料の匂い。
小さな部品。
左右のエンジンを間違えないよう、説明書と見比べた時間。
完成した模型を机へ置き、何度も眺めた。
戦争より前に持っていた、数少ない子供らしい記憶だった。
Hs129「へえ……僕が、勇翔の最初だったんだ」
Hs129が嬉しそうに笑う。
だが、すぐに自分の制服を摘まんだ。
Hs129「でも、今ここにいる僕は、その模型とは随分違うでしょう?」
勇翔「当然です」
Hs129「迷わないんだね」
勇翔「航空機としてのHs129に興味を持ったことと、貴方を知ることは別です」
勇翔は、目の前の少女を見る。
勇翔「貴方は資料に載っていた兵器ではない。考え、話し、自分で役目を選んで、僕を迎えに来てくれた一人の人です」
Hs129は、何度か瞬きをした。
明るかった表情から、一瞬だけ冗談が消える。
Hs129「……そっか」
短く答え、再び笑った。
Hs129「じゃあ、模型じゃない僕のことも、これから覚えてよ」
勇翔「そのつもりです」
雷電が、二人の会話を静かに聞いていた。
勇翔が過去の誰かと、今ここにいる相手を分けて考えている。
そのことを、雷電は誰よりも理解していた。
Hs129「それじゃ、部屋へ案内するよ。勇翔は僕が押そうか?」
勇翔「平地は自分で進みます」
Hs129「じゃあ、最初の坂で交代ね」
雷電「そこは私が担当します」
Hs129「それなら、二つ目は僕」
勇翔「坂ごとに担当を決めなくても大丈夫です」
二人は聞いていなかった。
*
午後七時二十分。
第二試験飛行場、士官居住区。
勇翔たちは、三階の角部屋へ到着した。
Hs129が鍵を回し、扉を開ける。
Hs129「ここが、今夜から勇翔の部屋」
Hs129「正確には、四十八時間後の再検査が終わるまでの仮宿舎だね。今まで使っていた客室は医療区から遠いから、こちらへ移ってもらうことになったんだ」
室内は、想像していたよりも広かった。
窓際に寝台が一つ。
反対側の壁にも二つ。
三つの寝台の間には、天井近くまで届く可動式の仕切りが収納されている。
中央には、丸い卓と三脚の椅子。
壁際には個別の収納棚。
小さな洗面所と、共同の浴室。
扉の横には、医療区へ直通する有線電話が設置されていた。
勇翔は、三つの寝台を順番に見る。
勇翔「一つ、確認しても?」
Hs129「どうぞ」
勇翔「なぜ寝台が三つあるのですか?」
Hs129「三人で使う部屋だから」
勇翔「誰と誰と誰が?」
Hs129「勇翔と、雷電と、僕」
勇翔が黙る。
もう一度、部屋を見る。
三つの寝台。
三つの収納棚。
卓上には、三人分の食器まで用意されていた。
勇翔「聞いていません」
Hs129「今、伝えたよ」
勇翔「事前に、です」
Hs129「夕方に決まったからね」
Hs129が三枚の居住許可証を卓上へ置く。
勇翔。
雷電。
Hs129。
確かに、三人の名前が記されていた。
Hs129「黒十字側から一人、居住区の案内と緊急時の連絡を担当するDOLLSを同室へ置く。それから、勇翔は今夜、医療監視が必要。灰燼教会側の護衛である雷電にも同室をお願いした」
雷電「私は承諾しました」
勇翔「いつの間に?」
雷電「勇翔さんが検査を受けている間です」
Hs129「もちろん、勇翔が嫌なら医療区の個室へ戻ることもできるよ。これは命令じゃなくて、仮の部屋割りだから」
勇翔は許可証を読む。
夜間の急変に備え、一人にしないこと。
黒十字側と灰燼教会側から一名ずつ、緊急連絡担当を配置すること。
三人の私物と就寝場所は仕切りで分けること。
入浴と着替えは、扉の表示と施錠によって互いのプライバシーを守ること。
規則は明確だった。
勇翔「同じ寝台で寝る、という話ではないのですね」
Hs129「どうしてそうなるの?」
勇翔「寝台の数を確認するまで、少し不安でした」
Hs129「三人で一つの寝台なんて、寝返りを打ったら落ちるよ」
雷電「勇翔さんは、随分と大胆な想像をしたのですね」
勇翔「していません。しないために確認したのです」
雷電が僅かに笑う。
Hs129は仕切りを引き出した。
三つの就寝区画が作られる。
完全な個室ではない。
それでも、互いの姿を見ずに着替え、休むには十分だった。
Hs129「窓際が勇翔。医療電話に一番近いから。入口側が僕。何かあったら、すぐ廊下へ出られる」
雷電「私は中央ですね」
Hs129「うん。勇翔の監視装置に警報が出た時は、雷電にも聞こえるようにする」
勇翔「雷電が休めなくなりませんか?」
雷電「警報が出なければ眠れます」
勇翔「もし出たら?」
雷電「起きます」
あまりにも当然のように答えられ、勇翔は反論できなかった。
Hs129「部屋の規則、もう一つ追加していい?」
勇翔「何ですか?」
Hs129「助けが必要な時は、必要だと言うこと」
勇翔がHs129を見る。
Hs129「代理人から聞いたよ。勇翔は、自分でできることを増やそうとして、できないことまで一人でやろうとするって」
勇翔「随分、余計な説明まで受けていますね」
Hs129「案内役だからね」
雷電「私も、その規則には賛成です」
勇翔「二対一ですか」
Hs129「多数決で決まり」
勇翔「生活上の規則を、本人抜きの多数決で決めないでください」
Hs129「じゃあ、勇翔の意見は?」
勇翔は二人を見る。
雷電もHs129も、からかっているだけではない。
勇翔の自由を奪いたいわけでもない。
必要な時に手を貸せる場所へいたい。
その意思で、ここにいる。
勇翔「……努力します」
雷電「守る、ではないのですね」
勇翔「すぐに直せる性格なら、とっくに直しています」
Hs129「正直でよろしい」
部屋割りが決まる。
三人の共同生活は、最初の規則を一つ作ったところから始まった。
*
午後七時四十分。
第二試験飛行場、隔離格納庫。
小貝はA-10の右主翼下に置かれた椅子へ座り、損傷報告を書いていた。
外板の貫通箇所。
第一油圧系統の圧力低下。
右補助翼の応答遅延。
着陸時に感じた左右の揚力差。
記憶が鮮明なうちに、一つずつ記録する。
自分で工具を握ることは許可されていない。
それでも、操縦者にしか分からない情報を整備班へ残すことはできた。
「……いた」
規制扉の向こうから、小柄なDOLLSが姿を見せた。
背は低いが、足取りに幼さはない。
彼女は警備員へ許可証を示してから、規制線の手前で止まった。
小貝「俺に用か?」
ハっちゃん「貴方が、代理人から聞いた小貝?」
小貝「そうだ。君は?」
ハっちゃん「88mm FlaK 36。人間はアハトアハトって呼んでる。ハっちゃんでもいい」
小貝「ハっちゃんか。覚えやすくていい名前だな」
ハっちゃんが僅かに目を逸らす。
ハっちゃん「……そう言われるとは思わなかった」
小貝「嫌だったか?」
ハっちゃん「ううん。嫌じゃない」
短く答えると、ハっちゃんは部屋の鍵と折り畳まれた構内図を差し出した。
ハっちゃん「私は小貝の居住区案内を頼まれてる。部屋はもう用意されてるよ」
小貝「ありがたいが、この報告書を終わらせてからになる。それに、二十時から先約がある」
ハっちゃん「スカイレイダーとの約束?」
小貝「そこまで聞いているのか」
ハっちゃん「案内する相手の予定だから」
ハっちゃんは構内図の一角を指した。
ハっちゃん「待ち合わせが終わったら、この通路を使って士官居住区へ来て。部屋番号は二一四。A-10には、整備班の許可が出るまで触っちゃ駄目」
小貝「分かっている。今も工具は持っていない」
ハっちゃん「報告書だけなら問題なし。迷ったら、案内所へ連絡して」
小貝「ああ。迎えに来てくれて助かった」
ハっちゃん「それが私の仕事だから」
その時、格納庫の入口から別の足音が近づいてきた。
スツーカ「まだ、ここにいたのですね」
ハっちゃん「スツーカ。見学するなら規制線の外からね」
スツーカ「分かっています」
ハっちゃん「それなら、私は次の案内へ行く。小貝、また後で」
小貝「おう。またな、ハっちゃん」
ハっちゃんは一度だけ振り返り、小さく手を振って格納庫を出ていった。
規制線の外から、スツーカが声を掛ける。
小貝「報告書が終わっていない」
スツーカ「今夜、約束があるのでしょう?」
小貝「二十時だから、もう行く」
小貝は最後の項目へ署名し、報告書を閉じた。
スツーカは、A-10の機首を見る。
巨大な三十ミリ機関砲。
操縦者を帰還させた装甲。
被弾しながらも形を保つ主翼。
午後に見た時と同じ、悲しげな笑みが浮かんでいた。
小貝「一つ聞いていいか?」
スツーカ「何でしょう?」
小貝「さっき、この機体を見て誰かを思い出していただろう」
スツーカは否定しなかった。
スツーカ「ルーデル、という名前を知っていますか?」
小貝「ハンス・ウルリッヒ・ルーデル。急降下爆撃機乗りだ。俺の世界では、有名な男だった」
スツーカ「私の中にも、その名前が残っています」
スツーカは自分の胸へ手を当てる。
スツーカ「本人と会った記憶ではありません。誰かが残した記録。何度撃墜されても戻り、また出撃した操縦者の記録です」
小貝「A-10と俺に、そいつを重ねたのか?」
スツーカ「少しだけ」
スツーカは小貝を見る。
スツーカ「でも、貴方はルーデルではありません」
小貝「当たり前だ」
スツーカ「ええ。貴方は、撃てるから戦場へ残ったのではない。帰る必要があると判断して戻った。そこが違います」
小貝は、A-10へ視線を戻す。
小貝「俺は俺だ。この機体も、昔の誰かの機体ではない」
スツーカ「分かっています」
小貝「それでも記録が苦しいなら、話くらいは聞く」
スツーカ「優しいのですね」
小貝「違う。昔の誰かに重ねられる苦しさを、知っているだけだ」
小貝にも、失った者がいる。
斎藤。
同じ血を持ちながら、生きて会うことのできなかった兄弟。
勇翔から最期を聞き、墓前で初めて別れを告げた。
過去の誰かは、今いる者へ置き換えられない。
それでも、残された記録について話すことはできる。
スツーカ「ありがとうございます。ですが、今夜は行ってください」
小貝「いいのか?」
スツーカ「待っている方がいるのでしょう?」
格納庫の入口へ、スカイレイダーが現れる。
小さな鞄を肩へ掛けていた。
スカイレイダー「時間どおりだね」
小貝「報告書も終わった」
スカイレイダー「それじゃ、行こう」
小貝は立ち上がる。
小貝「スツーカ。また今度な」
スツーカ「ええ。また、機体の話を聞かせてください」
小貝とスカイレイダーは、並んで格納庫を出ていく。
スツーカは二人を追わなかった。
彼女がA-10へ感じたものは、小貝を奪おうとする恋ではない。
自分の中へ残された古い記録を、現在の誰かを通して見直したいという思いだった。
それに名前を付けられる日は、まだ遠い。
*
午後八時四十五分。
士官居住区、三〇七号室。
室内には、挽いた豆の香りが広がっていた。
Hs129が小さな器具へ湯を注いでいる。
黒十字帝国学連で配給されている豆を、自分で焙煎したものだった。
Hs129「はい。勇翔は砂糖なし、雷電は一つで合ってる?」
勇翔「僕の好みを、いつ聞いたのですか?」
Hs129「医療区からここへ来る途中。食堂の話をした時に言ってたよ」
勇翔「よく覚えていますね」
Hs129「案内役だから」
雷電「それは便利な言葉ですね」
Hs129「でしょ?」
三人分のコーヒーが卓へ置かれる。
勇翔は湯気の向こうにある黒い液体を見る。
香りは強い。
一口飲む。
苦みの後から、僅かな甘みが残った。
勇翔「おいしいです」
Hs129「本当?」
勇翔「ええ。元の世界で飲んだ物とも、少し違います」
Hs129「よかった。三人で暮らすなら、最初の一杯くらい成功させたかったからね」
雷電「まだ一晩目です」
Hs129「最初の一晩だから大事なんだよ」
Hs129は自分のコーヒーへ砂糖を二つ入れた。
黒い液面を匙で混ぜる。
Hs129「ところで、二人は付き合っているの?」
勇翔の手が止まる。
雷電は驚かず、Hs129を見る。
雷電「なぜ、そう思ったのですか?」
Hs129「ずっと近くにいるし、勇翔が雷電を見る時だけ少し顔が柔らかくなるから」
勇翔「そんなに違いますか?」
Hs129「違うよ」
勇翔は否定する言葉を探した。
だが、付き合ってはいないとだけ答えれば、雷電へ抱いているものまで否定するように聞こえる。
雷電が先に口を開いた。
雷電「まだ、恋人ではありません」
Hs129「まだ?」
雷電「互いを知っている途中です」
勇翔は雷電を見る。
雷電も勇翔を見る。
勇翔「僕も、同じ認識です」
Hs129「そっか」
Hs129は、それ以上からかわなかった。
Hs129「じゃあ、僕にも勇翔を知る時間はあるね」
勇翔「案内役として?」
Hs129「最初はね」
Hs129は笑って、コーヒーを飲む。
雷電はその言葉を聞いていた。
不快そうにはしない。
だが、聞き流してもいなかった。
Hs129は勇翔が初めて好きになった航空機の名を持つ。
それでも勇翔は、最初から彼女を過去の模型とは分けて見た。
ならば雷電も、Hs129を名前だけで判断するべきではなかった。
同じ部屋で過ごせば、互いを知る機会はいくらでもある。
誰が勇翔へ近づくかを決めるのは、武器の名でも、過去の記録でもない。
三人それぞれの意思だった。
*
午後九時三十分。
就寝準備が始まった。
浴室の使用順。
消灯時刻。
医療警報が鳴った場合の行動。
夜間に部屋を出る際の連絡方法。
生活上の細かな決まりを、三人で一つずつ確認する。
浴室はHs129、雷電の順。
勇翔は医療班から入浴を禁じられているため、洗面所で温かい布を使って身体を拭き、腰部固定具を付け直す。
介助は雷電が担当する。
Hs129は必要な器具を用意し、仕切りの向こうへ下がる。
できることと、見てよいことは別だった。
互いの境界を守ることも、同室で暮らすために必要な仕事だった。
全員の準備が終わる。
三つの仕切りが閉じられた。
窓際の寝台へ、勇翔が横になる。
腰部に負担が掛からないよう、膝の下へ小さな枕が置かれている。
中央の寝台では、雷電が医療監視装置の受信器を確認する。
入口側では、Hs129がベレー帽を収納棚へ置いた。
Hs129「勇翔」
勇翔「何ですか?」
Hs129「僕の模型、上手に作れた?」
仕切り越しの質問だった。
勇翔「子供が初めて作った物ですから、今見れば粗いと思います」
Hs129「それでも、完成させたんでしょう?」
勇翔「はい」
Hs129「大切にした?」
勇翔「何度か修理しました。主脚が折れた時も、部品を作り直して」
Hs129「そっか」
Hs129の声が、少しだけ嬉しそうになる。
Hs129「じゃあ、模型じゃない僕が壊れた時も、直してくれる?」
勇翔は、すぐに答えなかった。
勇翔「貴方が望むなら、直す手伝いをします」
Hs129「手伝い?」
勇翔「貴方は僕の所有物ではありません。勝手に触って、元どおりにしたつもりになることはできない」
Hs129は黙って聞いている。
勇翔「何が壊れたのか。どこまで直したいのか。まず、貴方自身に聞きます」
Hs129「……本当に、変な人だね」
勇翔「よく言われます」
Hs129「でも、嫌いじゃないよ」
小さな声だった。
雷電にも、はっきり聞こえていた。
勇翔が返事を探している間に、Hs129が続ける。
Hs129「おやすみ、勇翔。おやすみ、雷電」
雷電「おやすみなさい、Hs129」
勇翔「おやすみなさい」
部屋の灯りが落とされる。
窓の外では、飛行場の誘導灯が規則正しく並んでいる。
遠い格納庫には、損傷したF-3とA-10。
地下の隔離区画には、別の世界から二人を追ってきた可能性を持つ無人戦闘機。
解かなければならない問題は多い。
蓮と隼人の行方も分からない。
勇翔の身体も、完全には治っていない。
それでも今夜は、一人ではなかった。
中央には雷電。
入口側にはHs129。
同じ部屋にいても、互いの場所は分けられている。
誰かの代わりでもない。
所有物でもない。
それぞれ別の過去と意思を持つ三人が、同じ明日を迎えるために休んでいる。
勇翔は目を閉じた。
医療監視装置の表示は、緑のままだった。
三人で迎える最初の夜。
一部屋三人の生活は、静かな寝息から始まった。
はい。
どもども、テストが終わり誕生日も迎えられてよい一日を堪能した素人小説書きです。
次回は…う~ん…あの場所の一日でも書こうかな…
それでは!
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