陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
こどもはかわいいですね
でも、敵だからグチャグチャに殺しちゃうね?
お母さんを呼んでも無駄だよ?
ダ ッテ ミ ン ナ マト メ テ コロ サ レ タモ ン ネ
第24話 あぁ、お許しください平凡な子の肉を捧げるのでお許しくださいカ ミ サ マ
「嫌だ。死にたくない。……ママ」
声が、同じ場所を回っていた。
壁の色も、床へ落ちた銃の形も、見るたびに少し違う。
少年だけが、同じ姿勢で膝をついている。
「ママ。助けて。……神様」
なぜ、その名前を呼ぶ。
自分で殺した相手へ、なぜ助けを求める。
そう考えたことを、男は覚えていた。
いまも、同じ問いが浮かぶ。
答えを返す相手は、もういなかった。
銃声が、一度、響いた。
少年の声が消える。
その静けさへ、別の声が入った。
レン「……相変わらず、そこで止まってるんだね」
男は、振り向いた。
同じ顔が、立っていた。
よく知っている顔だった。
それでいて、自分なら絶対にしないような笑い方をしている。
蓮(空挺)「何をしに来た」
レン「手を借りに」
蓮(空挺)「貸さない。帰れ」
レン「早いなあ。まだ、誰に貸すかも言ってないんだけど」
男は、銃を下げた。
先ほどまであった壁が、遠ざかる。
少年も、見えなくなった。
消えたのか、見ないようにしたのかは、自分でも分からない。
蓮(空挺)「お前の軽口を聞くために、ここへいるわけじゃない」
レン「第一空挺団にいた頃の君は、本当に愛想がないね」
蓮(空挺)「愛想で戦争が終わるか」
レン「終わらなかったね。愛想がなくても」
男の目が、細くなる。
蓮(空挺)「助けられなかった仲間の名前を、お前は全部言えるのか」
レンの笑顔が、少しだけ止まった。
すぐに、また口元が動く。
レン「そういう話をしに来たんじゃないよ」
蓮(空挺)「なら、用を言え」
レン「いま、外にいる君を助けてほしい」
男は、黙った。
足元へ、別の音が届き始める。
連射。
ガラスの割れる音。
誰かが、下がれ、と言っていた。
自分の声に似ていた。
蓮(空挺)「今を生きている、俺か」
レン「そう。その君」
蓮(空挺)「俺に、何をさせる気だ」
レン「帰れるようにしてくれればいい」
男は、足元を見る。
暗い床の向こうに、廊下があった。
銃を持つ女と、柱へ身を寄せる男が見える。
男の左肩は、動きが悪かった。
蓮(空挺)「……面倒な身体を寄越すな」
レン「君の身体だよ」
背後で、足音がした。
二つの影が、立っている。
男が振り向くより先に、その手が腕へ掛かった。
蓮(空挺)「お前らまで――」
レン「ごめん。どうしても、今日は出てきてもらう」
蓮(空挺)「覚えていろよ」
レンは、返事をしなかった。
廊下の銃声が、近くなる。
男は、もう一度、少年のいた場所を見た。
いまは、何も見えなかった。
*
テム「まだ、追ってきます」
拳銃の音が、廊下へ響いた。
蓮は、銃を下げて弾倉を替えた。
使い終えたものを戻し、残りへ手を当てる。
予備は、二つ。
数を確かめる間にも、テムが撃った。
床へ落ちた影を、別の影が越えてくる。
蓮「止めた分だけ、後ろから増えてるな」
テム「それなら、下がり続けないと」
蓮「ああ。先へ進もう」
スプリングとロミアの姿は、曲がり角の向こうへ消えていた。
声を掛ければ、まだ返る。
だが、間へ入ってきた影のせいで、同じ角を使えなくなっていた。
蓮とテムは、横の廊下へ回っている。
内側の壁が繋がっていれば、先で、もう一度合流できるはずだった。
足元へ、金属の粉が落ちた。
蓮が、顔を上げる。
天井の奥で、何かが軋んだ。
蓮「……上?」
薄い板が、外れた。
次に、靴底が見えた。
AK-12「下、空け――」
最後まで言えなかった。
身体が、天井裏から落ちてくる。
蓮は半歩ずれ、右腕で彼女を受けた。
抱え切れず、二人で床へ膝をつく。
左肩から、胸へ痛みが走った。
蓮「……予告は、もう少し早く」
AK-12「したんだけど。床の方が、気が短かったみたい」
すぐに、立ち上がった。
AN-94が、開いた穴から顔を出す。
AN-94「AK-12! 損傷は?」
AK-12「増えてない。そっちは、ゆっくり下りて」
AK-15とRPK-16も、上にいた。
迂回に使った点検通路は、ダクトの下を通っている。
その床の一部が、四人を通す前に抜けていた。
テム「……敵?」
拳銃が、AK-12へ向きかける。
蓮「味方だ。いま探してた、四人」
テムは、銃口を戻した。
近づいてきた一体へ、撃つ。
AN-94が下りる間、RPK-16は穴の脇から廊下を押さえた。
AK-15も床へ下り、すぐ蓮の横へつく。
AK-15「肩を、打ったか」
蓮「前の傷が、文句を言ってる」
左手を、ゆっくり握った。
動く。
痛みは、残っていた。
AK-12「その言い方で、程度を省かないでね」
蓮「撃てる。長く抱えてると、辛い」
AK-12は、うなずいた。
こめかみのガーゼへ、軽く手を当てる。
彼女の傷も、残っていた。
蓮「そっちは?」
AK-12「通常処理で動いてる。深度演算は、止めたまま」
AN-94「再開は、帰ってからです」
AK-12「分かってるわよ」
最後に下りてきたRPK-16が、銃を持ち直す。
六人になった。
それだけでも、撃つ間と下がる間を、分けられる。
蓮「五・五六の弾、ある?」
AK-12「こちらの銃には使わないけど、回収した分なら」
袋から、弾倉を三つ出した。
AK-12「途中で倒れていた警備員の装備。残弾は確認してある」
蓮が、受け取る。
弾と弾倉の状態を見て、空いている場所へ収めた。
蓮「助かった」
AK-12「あと、庭は避けて。群れが、そっちから入ってきてる」
蓮「ロビーでも見た。スプリングと、もう一人は、東側へ先行してる」
テムへ目を向けた。
蓮「こちらはテム。一時的に、同行してもらってる。向こうにも、彼女の班員が一人いる」
AK-12「事情は、歩きながら聞くわ」
RPK-16の射撃が、二人の会話を切った。
角へ出ようとした影が、床へ落ちる。
その後ろにも、動くものがいた。
蓮「ここを少し押さえて、先へ抜ける。全滅させる必要はない。通れる間を作る」
AK-12「了解。私たちで受け持つから、あなたは――」
蓮の耳へ、別の声が入った。
『おい』
受信機の声ではなかった。
蓮は、目を止めた。
いつもの、軽い調子とも違う。
『代われ。あれは、俺が止める』
蓮(……お前は、誰だ)
『お前だ。いまのお前になる前のな』
左手から、感覚が遠ざかった。
蓮は、銃を握り直そうとした。
指が、思った通りに動かない。
声の主が、誰なのか。
理解するより先に、嫌な記憶が戻った。
蓮「待て。勝手に――」
膝が、折れた。
テムが、銃を下げて肩を支える。
テム「蓮!」
AK-15が、反対側へついた。
AN-94とRPK-16は、撃ち続けていた。
敵は、止まってくれなかった。
蓮は、顔を上げようとした。
それも、できない。
蓮(レン。何を、した)
返事の前に、視界が暗くなった。
柱の感触も、テムの手も、遠ざかる。
最後に残ったのは、銃声だった。
*
AK-12「……聞こえる?」
蓮の目が、開いた。
床と、両側から支える手を見る。
それから、顔を上げた。
蓮「手を、離せ」
声は、同じだった。
言い方が、違っていた。
テム「でも、いま、倒れて――」
蓮「立てる」
テムの手を外す。
AK-15も、彼が床を踏むのを確かめてから離した。
左肩へ銃の重みが戻る。
男の口元が、僅かに動いた。
痛みへ反応したのは、その一瞬だけだった。
蓮「機関銃。あの曲がり角を押さえろ。右側は、二人」
RPK-16が、AK-12を見る。
AK-12は、短くうなずいた。
AK-12「まず、ここを抜ける。指示の場所へ」
AK-15とAN-94が、右側へ移る。
男は、テムへ顔を向けた。
蓮「拳銃の残りは」
テム「予備が、あと一つ。いま入っている分も、少ないです」
蓮「では、近くまで来たものだけでいい。後ろも見ろ」
いつもなら、もう一言くらい、余計なことを言う。
言わなかった。
銃口を上げる位置も、下がる時の足も、少しずつ違っていた。
AN-94「AK-12。彼は……」
AK-12「分からない。話せる場所まで、先に動く」
そう言いながら、AK-12は変化を記録した。
顔は、蓮だった。
負傷も、そのままだった。
何が変わったのか、外から見えることだけでは、まだ答えが出なかった。
*
パトリアAMVの車内へ、無線の声が入った。
ブレンは運転席で、道路と表示を交互に見る。
着陸地点で、捕虜の収容が終わった。
救援四名は、屋敷へ向かった。
そこまでは、分かっていた。
ただし、当初の警備員だけが相手ではなくなっている。
M2HB「……E.L.I.D.の群れ、ですって」
車載機関銃の固定を、もう一度確かめる。
出発前に取り付けは済ませていた。
道の凹凸で緩んだところがないか、手を当てている。
MG42「数は、不明でしゅね」
ブレン「不明を、少ないという意味に取るなよ」
MG42「取りませんよ。むしろ、たくさん来そうでしゅ」
M2HB「嬉しそうに言わないで」
後部には、回収する人員のために空けた場所があった。
機材は側面へ寄せ、弾薬の箱も動かないように固定している。
空の席を見るたび、ブレンは、そこへ座るはずの顔を思い浮かべた。
蓮がいれば、まず、何か言う。
無事なら、文句でも冗談でも構わなかった。
ブレン「合流地点の変更に備える。外の情報も、拾っておけ」
MG42「了解でしゅ」
M2HB「ねえ。今日は、いつもの車より立派よね」
ブレン「回収したあとも、走って帰らなければならん」
M2HB「乗る人数も、いるしね」
MG42「乗る人が減るより、詰めて乗る方がいいでしゅ」
ブレンは、返事をしなかった。
その通りだった。
路面へ落ちた枝を避け、車を進める。
M2HBが、ハッチの方へ体を向けた。
MG42も、自分の火器を確かめる。
さっきまで車内にあった軽口は、少し減っていた。
屋敷のある森へ、車両は近づいていった。
*
蓮は、卓へ手をついた。
外の廊下は、見えない。
代わりに、見覚えのある徳利が並んでいた。
盃もある。
三つ目に、酒が入っていた。
蓮「……お前」
レンは、向かいに座っていた。
いまは、盃へ手を伸ばさなかった。
蓮「勝手に身体を取らない。そういう話だったろう」
レン「そうだね」
蓮「その返事で、済ませるな」
蓮は、卓を押した。
何も、動かなかった。
ここでは動く手が、外では動かない。
その違いが、腹立たしかった。
蓮「戻せ」
レン「いま戻したら、立ち上がった身体が、もう一度倒れる」
蓮「俺の身体だ」
レン「知ってる」
レンは、外の音が聞こえる方へ顔を向けた。
射撃が、続いている。
全員が、まだ動いている。
それを理由にする顔だった。
蓮「仲間を傷つけるな。撤収を変えるな。あいつを出したのなら、それは守らせろ」
レン「伝えるよ」
蓮「約束を破った奴の、伝える、は信用できん」
レンは、しばらく黙った。
レン「……分かった。僕も、見ている」
蓮は、座らなかった。
三つ目の盃を見る。
誰の分なのかは、もう分かっていた。
蓮「空挺団にいた頃の、俺か」
レン「そう」
蓮「いると聞いていた。でも、あいつだとは思っていなかった」
思い出したくなかった顔が、盃の中へ浮かぶ。
同じ顔だった。
自分の顔だからこそ、忘れられなかった。
蓮「お前と、あいつ。他にも、いるのか」
レン「君のほかに、僕を含めて五人。君まで数えるなら、六人」
蓮の目が、止まった。
蓮「……そんなに」
レン「全員が、ここへ座っているわけじゃない。今日、出てきたのは、あの一人」
蓮「何のために、出した」
レン「今日、帰るため。それと、この先のため」
レンは、今度は笑わなかった。
レン「また、大きな戦いが来る」
蓮「何が根拠だ」
レン「時期も、相手も、まだ分からない。でも、来る。君が知っている二つより、大きなものが」
第三次世界大戦。
日本国内戦。
蓮は、それを比べる物差しにしたくなかった。
レンの言葉が、予感なのか、別の何かなのかも分からない。
ただ、こちらを脅すためだけの顔には見えなかった。
蓮「だから、昔の俺が必要だと?」
レン「切り捨てた部分まで、使わなければならない時がある」
蓮「勝手に、役に立つ部分みたいに言うな」
蓮は、ようやく椅子へ腰を下ろした。
座らないままでは、目の前の顔へ手を出しそうだった。
レン「……どうして、あの頃から、いまの君になれたんだろうね」
返事は、すぐには出なかった。
外で、誰かが指示をしている。
自分の声だった。
短く、冷たい。
蓮「桶狭間」
レンが、顔を上げた。
蓮「あそこで、変わった」
レン「何があった」
蓮「いま、話すことじゃない」
卓の端へ、手を置いた。
自分の手だった。
いまは、誰にも触れられない手だった。
蓮「まず、全員で帰る。過去を並べるのは、それからだ」
レンは、うなずいた。
蓮は、信用したとは言わなかった。
外から来る銃声を、聞き続けた。
*
屋敷へ近づくにつれ、森の中にも倒れた影が増えた。
VSKは、銃を下げなかった。
倒れているものが、動かないとは限らない。
別の影が、木の向こうから来ることもある。
四人は、庭をまっすぐ横切らず、建物の陰へ回った。
門の奥では、まだ何かが動いていた。
裏の搬入口へ続く壁沿いには、いまは大きな群れがいない。
VSK「裏口です。ここから、AK-12たちが入りました」
416は、扉を見る。
閉まっていた。
枠が歪み、板の継ぎ目にも亀裂がある。
89式が、小さな観測器を取り出した。
扉へは、向けなかった。
その脇の、割れた明かり窓へ近づける。
残ったガラスの隙間から、室内の一部が見えた。
89式「二人、見えます。片方は、銃を持っています」
416「こちらを、見てる?」
89式「いいえ。奥の廊下です。もう一人は、壁に寄っています」
声が、扉の向こうから聞こえた。
「……次が来たら、そちらへ。銃口を、私の方へ向けないように」
416の目が、止まった。
知っている声だった。
その声を、最後に聞いたのは、出撃前の基地だった。
416「桜が散る時」
中の足音が、止まる。
「希望が生まれる!」
416は、銃を持つ手の力を少し緩めた。
416「スプリングね」
スプリング「……416ちゃん?」
声が、扉の近くへ来る。
416は、先に言った。
416「扉へ寄らないで。開けられる?」
スプリング「内側の留め具は外しました。でも、枠が曲がっていて……」
もう一度、扉が軋んだ。
開かなかった。
VSKが、416を見る。
持ってきた装備包へ、手を当てた。
416「開ける。二人とも、扉から離れて。中で隠れられる場所は?」
スプリング「壁の角があります。そちらへ移ります」
足音が、遠ざかった。
89式は、窓の隙間から見える範囲を、もう一度確かめる。
スコーピオンが、四人の背後を見る。
VSKが、扉を開く準備をした。
416は、内側へ声を掛ける。
416「そのまま、動かないで」
短い破裂音がした。
傷んだ扉が、枠から外れる。
埃が、こちらへ流れた。
416が、開いた場所へ入る。
奥を向いた銃が、一本、見えた。
その後ろへ、スプリングがいた。
背には、見覚えのある盾のケースが残っている。
スプリングが、銃を下げずに振り向いた。
スプリング「来てくれたのね」
416「迎えに。怪我は?」
スプリング「大丈夫。……でも、渡邉さんたちが、まだ奥にいます」
VSKと89式が、続けて入った。
スコーピオンは、開いた扉の脇へつく。
彼女の顔を見たロミアが、壁へ背を寄せた。
ロミア「……また、増えた」
スコーピオン「増えたよ。味方がね」
ロミア「僕にとっても?」
VSKの目が、男の袖へ向いた。
徽章が、見えた。
VSK「GMAの警備員ですか」
ロミアが、固まった。
ベネリM4を持つ手が、胸の前で止まる。
416は、その銃も見た。
416「その散弾銃は、どこで」
スプリング「渡邉さんが、貸しました。外の群れに追われていた二人と、一時的に協力しています」
ロミア「も、もう一人は、テムです。向こうに、残っています」
言葉を出すたび、喉が詰まった。
スプリングが、彼の横へ立つ。
スプリング「ロミアさんです。ここまで、勝手なことはしていません」
416は、男へ顔を向けた。
416「銃口を、そのまま下へ。こちらへ敵対するつもりは?」
ロミア「ありません。……外へ出たいだけです」
銃口が、さらに下がる。
VSKも、自分の銃を少し低くした。
男の腕と、こちらの間には、まだ距離があった。
416「では、一緒に動いて。離れる時は、勝手に走らずに言って」
ロミア「……殺さない?」
スコーピオン「それ、さっきの話で分からなかった?」
ロミア「確認、したくて」
416「あなたを撃ちに来たわけじゃないわ。落ち着いて」
ロミアの肩が、少し下がった。
銃は、まだ手放さなかった。
その銃を持て、と言った相手が、奥にいる。
いま、ここへ置いていく気にはなれなかった。
VSK「雇用先は、GMAで間違いありませんか」
ロミア「はい。屋敷の警備で……ほかには、SFCから来た班もいます。僕らは、全部同じ部隊じゃありません」
89式「GMAとSFCが、同じ場所を?」
ロミア「班同士で、仲は、よくなかったです。警備場所も別でした。誰が、どこまで命令を出しているのかは……分かりません」
VSKは、その言葉を記録した。
屋敷に異なる徽章があった理由の一つには、なる。
だが、それだけで全員の所属も、依頼主も決まるわけではなかった。
416が、奥の廊下へ顔を向ける。
416「続きは、歩きながら。スプリング、最後に蓮を見た場所は?」
スプリング「中央ロビーから、東側へ来ました。私たちが先行して、渡邉さんとテムさんが後ろを。その後、間の通路へE.L.I.D.が入ってきて……」
持っていた図を開いた。
指が、角を二つ辿る。
スプリング「こちらから、声は聞こえました。でも、同じ通路へ戻れなくなりました」
416「AK-12たちは?」
スプリング「私は、まだ会っていません」
VSKが、蓮を呼んだ。
受信音の向こうで、短い声がした。
位置までは、聞き取れない。
VSK『こちらVSK。スプリングと合流しました。聞こえたら、現在位置を』
雑音が、答えを隠した。
416は、スプリングの背へ目を向ける。
416「記録は?」
スプリング「袋にあります。盾も、持ち出しています。こちらは、もう使えませんが」
ケースを、手で示した。
VSKは、その留め具を確かめる。
蓮を守った装置が、同じ形のまま、壊れていた。
回収してくれたことへ、短く礼を言った。
416「持って帰る。重くて動けなくなったら、早めに教えて」
スプリング「ええ」
89式が、二人へ飲み物と手元の補給を渡した。
ロミアの散弾銃の残弾は、スプリングと一緒に確認する。
使った分は、戻らない。
予備の散弾も、出発した時より減っていた。
スプリングは、図を畳んだ。
ここへ残り続ける理由は、なくなった。
416が、奥を向く。
416「六人で動く。蓮とテム、それからAKの四人を探す」
男の名を聞いて、ロミアが顔を上げた。
スプリングも、銃を持ち直した。
後ろから、まだ銃声がしていた。
*
蓮は、倒れた影を踏み越えた。
次の角へ、銃口を向ける。
足音が、横から来た。
テムが、そちらへ撃った。
男は振り向かず、前へ出る。
RPK-16の射撃が、その横を通った。
廊下の先にいた数体が、身を崩す。
それを見て、AK-15が隣の部屋へ移った。
AK-15「こちらは、抜けられる」
蓮「なら、そちらへ。止まるな」
短い指示が、次の動きになる。
六人は、同じ場所へ留まり続けなかった。
撃つ。
下がる。
壁を挟んで、もう一度、銃口を向ける。
廊下へ入ってくる影は、相変わらず多かった。
だが、全部が同時に通れる幅ではない。
角と扉で、先頭が詰まる。
蓮は、その間へ踏み込んだ。
銃剣を、短く突き出す。
倒れかけた相手を、進路の外へ押し返した。
左肩へ、同じ負荷が掛かる。
傷を庇って動きを止める代わりに、握る位置を変えた。
負傷が消えたのではなかった。
その負傷へ、どこまで身体を使わせるかが変わっていた。
AN-94「左肩。布の端に、血が」
蓮「歩ける」
AN-94「歩けるかどうかだけでは――」
蓮「手当ては、止まれる場所でやる。先を見ろ」
AN-94は、銃を上げ直した。
それ以上、肩へ手を伸ばせなかった。
AK-12は、男の横へ来る。
AK-12「身体の確認も、こちらの仕事よ。勝手に省かないで」
男の目が、彼女へ向いた。
短い沈黙があった。
後ろの銃声が、その間を埋める。
蓮「……分かった。止まれる場所を、作れ」
AK-12は、その返事も記録した。
拒まれているのは、手当てそのものなのか。
それとも、身体へ触れられることなのか。
訊く余裕は、まだなかった。
テムの拳銃が、撃ち止まった。
最後の予備弾倉へ替える。
蓮は、その動きを見た。
蓮「後ろへ。次は、ANと代われ」
AN-94が、テムのいた場所へ入る。
銃声が、また続いた。
人を動かす声だけは、乱れなかった。
廊下の予備灯は、幾つか、消えていた。
残った光の下へ、小さな影が出てくる。
古い服を着ていた。
袖が、片方だけ短い。
子供の身体だった。
AK-15が、銃口を向けた。
その目へ、一瞬、服の模様が残る。
蓮は、同じ場所を見ていた。
小さな影が、腕を伸ばして走る。
男は、その動きへ合わせて撃った。
影が、倒れる。
蓮は、すぐに次へ銃口を向けた。
AK-15も、そこへ続いた。
迫る相手を止める必要はあった。
それでも、彼女の中へ、先ほどの一瞬が残った。
身体が小さいことへも、服へも、男は目を止めなかった。
いつもの蓮なら、何を見ていたのだろう。
そんなことを考えた自分が、戦闘の最中に余計なものを見たのかもしれなかった。
答えは、出なかった。
*
曲がり角を一つ越えたところで、足音が途切れた。
まだ、遠くには聞こえる。
目の前の廊下だけが、静かになっていた。
RPK-16が、壁の陰へ銃を下げる。
AN-94は、弾倉の残りを確かめた。
AK-15の外装にも、擦れた跡と小さな欠けが増えている。
AK-12は、こめかみのガーゼを替えた。
深度演算は、まだ再開しなかった。
テムが、息を吐く。
膝へ手をつきかけ、銃を持っていることを思い出して、壁へ寄った。
男だけが、廊下の奥を見ていた。
首の下に、汗が流れている。
防弾装備の下でも、呼吸が速かった。
それを、言葉へ出さなかった。
蓮「どのくらい、経った」
テム「……あなたが、立ち上がってから?」
蓮「そうだ」
時計を見る。
テム「十九分ほどです」
男は、うなずいた。
左肩の布へ手を当てる。
赤くなった端を見ると、押さえ直した。
AN-94が近づき、ずれた被覆材を整える。
今度は、腕を払わなかった。
長くは、待たなかった。
蓮「スプリングと合流する。先へ」
テム「少しは、休んだ方が」
蓮「追いつかれるまで待つ気か」
テムは、返事を止めた。
同じ顔へ、別の言葉を期待してしまっていた。
男は、廊下の先へ歩き出す。
肩を庇う動作が、ない。
庇わなければ傷が消えるわけではないことを、こちらは知っていた。
RPK-16が、テムへ目を向けた。
RPK-16「歩けます?」
テム「……はい」
銃を、持ち直す。
AN-94も、男の後ろへ続いた。
AK-15は、少しだけ立ち止まった。
先ほどの小さな影が、角の向こうに見えた。
もう、動かなかった。
AK-15「AK-12」
AK-12「何?」
AK-15「いまの彼は……私たちの知る蓮なのか」
AK-12も、前を見た。
男は、足を止めていない。
AK-12「顔も、身体も、同じよ」
AK-15「それを、訊いているんじゃない」
AK-12は、答えを急がなかった。
保存した記録には、命令と銃声と動作がある。
この問いへの答えは、まだなかった。
AK-12「……分からない。だから、見ておく」
AK-15が、銃を持ち直した。
蓮を、一人で行かせるわけにはいかなかった。
いつもの蓮なら、そう言ったはずだった。
いまは、その言葉を、こちらが守る番だった。
六人は、スプリングの進んだ方へ向かった。
別の通路では、416たちも、聞こえてくる銃声を追っていた。
まだ、互いの姿は見えていなかった。
やぁやぁ、どうもお久しぶりですね
素人小説書きだよ
いやー…どれくらい時間が経ったのだろうね?
もはや、分からないくらい長引いてしまったね
仕事上中々書けなくて申し訳ない
今後も長く待ってくれると嬉しいです!
コメントと修正書いてくれると嬉しいです!
2026年10月6日リメイク完了
ヒロイン
-
416
-
VSK-94
-
大鳳A
-
蒼龍C
-
雷電
-
スカイレイダー