陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る   作:ゴーストライターとかした、素人小説書き

66 / 79
あぁ、かわいいですね

こどもはかわいいですね

でも、敵だからグチャグチャに殺しちゃうね?

お母さんを呼んでも無駄だよ?

ダ ッテ  ミ  ン ナ  マト  メ テ コロ サ  レ タモ ン ネ


第24話 あぁ、お許しください平凡な子の肉を捧げるのでお許しくださいカ ミ  サ マ

第24話 あぁ、お許しください平凡な子の肉を捧げるのでお許しくださいカ ミ  サ マ

「嫌だ。死にたくない。……ママ」

 声が、同じ場所を回っていた。

 壁の色も、床へ落ちた銃の形も、見るたびに少し違う。

 少年だけが、同じ姿勢で膝をついている。

「ママ。助けて。……神様」

 なぜ、その名前を呼ぶ。

 自分で殺した相手へ、なぜ助けを求める。

 そう考えたことを、男は覚えていた。

 いまも、同じ問いが浮かぶ。

 答えを返す相手は、もういなかった。

 銃声が、一度、響いた。

 少年の声が消える。

 その静けさへ、別の声が入った。

レン「……相変わらず、そこで止まってるんだね」

 男は、振り向いた。

 同じ顔が、立っていた。

 よく知っている顔だった。

 それでいて、自分なら絶対にしないような笑い方をしている。

蓮(空挺)「何をしに来た」

レン「手を借りに」

蓮(空挺)「貸さない。帰れ」

レン「早いなあ。まだ、誰に貸すかも言ってないんだけど」

 男は、銃を下げた。

 先ほどまであった壁が、遠ざかる。

 少年も、見えなくなった。

 消えたのか、見ないようにしたのかは、自分でも分からない。

蓮(空挺)「お前の軽口を聞くために、ここへいるわけじゃない」

レン「第一空挺団にいた頃の君は、本当に愛想がないね」

蓮(空挺)「愛想で戦争が終わるか」

レン「終わらなかったね。愛想がなくても」

 男の目が、細くなる。

蓮(空挺)「助けられなかった仲間の名前を、お前は全部言えるのか」

 レンの笑顔が、少しだけ止まった。

 すぐに、また口元が動く。

レン「そういう話をしに来たんじゃないよ」

蓮(空挺)「なら、用を言え」

レン「いま、外にいる君を助けてほしい」

 男は、黙った。

 足元へ、別の音が届き始める。

 連射。

 ガラスの割れる音。

 誰かが、下がれ、と言っていた。

 自分の声に似ていた。

蓮(空挺)「今を生きている、俺か」

レン「そう。その君」

蓮(空挺)「俺に、何をさせる気だ」

レン「帰れるようにしてくれればいい」

 男は、足元を見る。

 暗い床の向こうに、廊下があった。

 銃を持つ女と、柱へ身を寄せる男が見える。

 男の左肩は、動きが悪かった。

蓮(空挺)「……面倒な身体を寄越すな」

レン「君の身体だよ」

 背後で、足音がした。

 二つの影が、立っている。

 男が振り向くより先に、その手が腕へ掛かった。

蓮(空挺)「お前らまで――」

レン「ごめん。どうしても、今日は出てきてもらう」

蓮(空挺)「覚えていろよ」

 レンは、返事をしなかった。

 廊下の銃声が、近くなる。

 男は、もう一度、少年のいた場所を見た。

 いまは、何も見えなかった。

     *

テム「まだ、追ってきます」

 拳銃の音が、廊下へ響いた。

 蓮は、銃を下げて弾倉を替えた。

 使い終えたものを戻し、残りへ手を当てる。

 予備は、二つ。

 数を確かめる間にも、テムが撃った。

 床へ落ちた影を、別の影が越えてくる。

蓮「止めた分だけ、後ろから増えてるな」

テム「それなら、下がり続けないと」

蓮「ああ。先へ進もう」

 スプリングとロミアの姿は、曲がり角の向こうへ消えていた。

 声を掛ければ、まだ返る。

 だが、間へ入ってきた影のせいで、同じ角を使えなくなっていた。

 蓮とテムは、横の廊下へ回っている。

 内側の壁が繋がっていれば、先で、もう一度合流できるはずだった。

 足元へ、金属の粉が落ちた。

 蓮が、顔を上げる。

 天井の奥で、何かが軋んだ。

蓮「……上?」

 薄い板が、外れた。

 次に、靴底が見えた。

AK-12「下、空け――」

 最後まで言えなかった。

 身体が、天井裏から落ちてくる。

 蓮は半歩ずれ、右腕で彼女を受けた。

 抱え切れず、二人で床へ膝をつく。

 左肩から、胸へ痛みが走った。

蓮「……予告は、もう少し早く」

AK-12「したんだけど。床の方が、気が短かったみたい」

 すぐに、立ち上がった。

 AN-94が、開いた穴から顔を出す。

AN-94「AK-12! 損傷は?」

AK-12「増えてない。そっちは、ゆっくり下りて」

 AK-15とRPK-16も、上にいた。

 迂回に使った点検通路は、ダクトの下を通っている。

 その床の一部が、四人を通す前に抜けていた。

テム「……敵?」

 拳銃が、AK-12へ向きかける。

蓮「味方だ。いま探してた、四人」

 テムは、銃口を戻した。

 近づいてきた一体へ、撃つ。

 AN-94が下りる間、RPK-16は穴の脇から廊下を押さえた。

 AK-15も床へ下り、すぐ蓮の横へつく。

AK-15「肩を、打ったか」

蓮「前の傷が、文句を言ってる」

 左手を、ゆっくり握った。

 動く。

 痛みは、残っていた。

AK-12「その言い方で、程度を省かないでね」

蓮「撃てる。長く抱えてると、辛い」

 AK-12は、うなずいた。

 こめかみのガーゼへ、軽く手を当てる。

 彼女の傷も、残っていた。

蓮「そっちは?」

AK-12「通常処理で動いてる。深度演算は、止めたまま」

AN-94「再開は、帰ってからです」

AK-12「分かってるわよ」

 最後に下りてきたRPK-16が、銃を持ち直す。

 六人になった。

 それだけでも、撃つ間と下がる間を、分けられる。

蓮「五・五六の弾、ある?」

AK-12「こちらの銃には使わないけど、回収した分なら」

 袋から、弾倉を三つ出した。

AK-12「途中で倒れていた警備員の装備。残弾は確認してある」

 蓮が、受け取る。

 弾と弾倉の状態を見て、空いている場所へ収めた。

蓮「助かった」

AK-12「あと、庭は避けて。群れが、そっちから入ってきてる」

蓮「ロビーでも見た。スプリングと、もう一人は、東側へ先行してる」

 テムへ目を向けた。

蓮「こちらはテム。一時的に、同行してもらってる。向こうにも、彼女の班員が一人いる」

AK-12「事情は、歩きながら聞くわ」

 RPK-16の射撃が、二人の会話を切った。

 角へ出ようとした影が、床へ落ちる。

 その後ろにも、動くものがいた。

蓮「ここを少し押さえて、先へ抜ける。全滅させる必要はない。通れる間を作る」

AK-12「了解。私たちで受け持つから、あなたは――」

 蓮の耳へ、別の声が入った。

『おい』

 受信機の声ではなかった。

 蓮は、目を止めた。

 いつもの、軽い調子とも違う。

『代われ。あれは、俺が止める』

蓮(……お前は、誰だ)

『お前だ。いまのお前になる前のな』

 左手から、感覚が遠ざかった。

 蓮は、銃を握り直そうとした。

 指が、思った通りに動かない。

 声の主が、誰なのか。

 理解するより先に、嫌な記憶が戻った。

蓮「待て。勝手に――」

 膝が、折れた。

 テムが、銃を下げて肩を支える。

テム「蓮!」

 AK-15が、反対側へついた。

 AN-94とRPK-16は、撃ち続けていた。

 敵は、止まってくれなかった。

 蓮は、顔を上げようとした。

 それも、できない。

蓮(レン。何を、した)

 返事の前に、視界が暗くなった。

 柱の感触も、テムの手も、遠ざかる。

 最後に残ったのは、銃声だった。

     *

AK-12「……聞こえる?」

 蓮の目が、開いた。

 床と、両側から支える手を見る。

 それから、顔を上げた。

蓮「手を、離せ」

 声は、同じだった。

 言い方が、違っていた。

テム「でも、いま、倒れて――」

蓮「立てる」

 テムの手を外す。

 AK-15も、彼が床を踏むのを確かめてから離した。

 左肩へ銃の重みが戻る。

 男の口元が、僅かに動いた。

 痛みへ反応したのは、その一瞬だけだった。

蓮「機関銃。あの曲がり角を押さえろ。右側は、二人」

 RPK-16が、AK-12を見る。

 AK-12は、短くうなずいた。

AK-12「まず、ここを抜ける。指示の場所へ」

 AK-15とAN-94が、右側へ移る。

 男は、テムへ顔を向けた。

蓮「拳銃の残りは」

テム「予備が、あと一つ。いま入っている分も、少ないです」

蓮「では、近くまで来たものだけでいい。後ろも見ろ」

 いつもなら、もう一言くらい、余計なことを言う。

 言わなかった。

 銃口を上げる位置も、下がる時の足も、少しずつ違っていた。

AN-94「AK-12。彼は……」

AK-12「分からない。話せる場所まで、先に動く」

 そう言いながら、AK-12は変化を記録した。

 顔は、蓮だった。

 負傷も、そのままだった。

 何が変わったのか、外から見えることだけでは、まだ答えが出なかった。

     *

 パトリアAMVの車内へ、無線の声が入った。

 ブレンは運転席で、道路と表示を交互に見る。

 着陸地点で、捕虜の収容が終わった。

 救援四名は、屋敷へ向かった。

 そこまでは、分かっていた。

 ただし、当初の警備員だけが相手ではなくなっている。

M2HB「……E.L.I.D.の群れ、ですって」

 車載機関銃の固定を、もう一度確かめる。

 出発前に取り付けは済ませていた。

 道の凹凸で緩んだところがないか、手を当てている。

MG42「数は、不明でしゅね」

ブレン「不明を、少ないという意味に取るなよ」

MG42「取りませんよ。むしろ、たくさん来そうでしゅ」

M2HB「嬉しそうに言わないで」

 後部には、回収する人員のために空けた場所があった。

 機材は側面へ寄せ、弾薬の箱も動かないように固定している。

 空の席を見るたび、ブレンは、そこへ座るはずの顔を思い浮かべた。

 蓮がいれば、まず、何か言う。

 無事なら、文句でも冗談でも構わなかった。

ブレン「合流地点の変更に備える。外の情報も、拾っておけ」

MG42「了解でしゅ」

M2HB「ねえ。今日は、いつもの車より立派よね」

ブレン「回収したあとも、走って帰らなければならん」

M2HB「乗る人数も、いるしね」

MG42「乗る人が減るより、詰めて乗る方がいいでしゅ」

 ブレンは、返事をしなかった。

 その通りだった。

 路面へ落ちた枝を避け、車を進める。

 M2HBが、ハッチの方へ体を向けた。

 MG42も、自分の火器を確かめる。

 さっきまで車内にあった軽口は、少し減っていた。

 屋敷のある森へ、車両は近づいていった。

     *

 蓮は、卓へ手をついた。

 外の廊下は、見えない。

 代わりに、見覚えのある徳利が並んでいた。

 盃もある。

 三つ目に、酒が入っていた。

蓮「……お前」

 レンは、向かいに座っていた。

 いまは、盃へ手を伸ばさなかった。

蓮「勝手に身体を取らない。そういう話だったろう」

レン「そうだね」

蓮「その返事で、済ませるな」

 蓮は、卓を押した。

 何も、動かなかった。

 ここでは動く手が、外では動かない。

 その違いが、腹立たしかった。

蓮「戻せ」

レン「いま戻したら、立ち上がった身体が、もう一度倒れる」

蓮「俺の身体だ」

レン「知ってる」

 レンは、外の音が聞こえる方へ顔を向けた。

 射撃が、続いている。

 全員が、まだ動いている。

 それを理由にする顔だった。

蓮「仲間を傷つけるな。撤収を変えるな。あいつを出したのなら、それは守らせろ」

レン「伝えるよ」

蓮「約束を破った奴の、伝える、は信用できん」

 レンは、しばらく黙った。

レン「……分かった。僕も、見ている」

 蓮は、座らなかった。

 三つ目の盃を見る。

 誰の分なのかは、もう分かっていた。

蓮「空挺団にいた頃の、俺か」

レン「そう」

蓮「いると聞いていた。でも、あいつだとは思っていなかった」

 思い出したくなかった顔が、盃の中へ浮かぶ。

 同じ顔だった。

 自分の顔だからこそ、忘れられなかった。

蓮「お前と、あいつ。他にも、いるのか」

レン「君のほかに、僕を含めて五人。君まで数えるなら、六人」

 蓮の目が、止まった。

蓮「……そんなに」

レン「全員が、ここへ座っているわけじゃない。今日、出てきたのは、あの一人」

蓮「何のために、出した」

レン「今日、帰るため。それと、この先のため」

 レンは、今度は笑わなかった。

レン「また、大きな戦いが来る」

蓮「何が根拠だ」

レン「時期も、相手も、まだ分からない。でも、来る。君が知っている二つより、大きなものが」

 第三次世界大戦。

 日本国内戦。

 蓮は、それを比べる物差しにしたくなかった。

 レンの言葉が、予感なのか、別の何かなのかも分からない。

 ただ、こちらを脅すためだけの顔には見えなかった。

蓮「だから、昔の俺が必要だと?」

レン「切り捨てた部分まで、使わなければならない時がある」

蓮「勝手に、役に立つ部分みたいに言うな」

 蓮は、ようやく椅子へ腰を下ろした。

 座らないままでは、目の前の顔へ手を出しそうだった。

レン「……どうして、あの頃から、いまの君になれたんだろうね」

 返事は、すぐには出なかった。

 外で、誰かが指示をしている。

 自分の声だった。

 短く、冷たい。

蓮「桶狭間」

 レンが、顔を上げた。

蓮「あそこで、変わった」

レン「何があった」

蓮「いま、話すことじゃない」

 卓の端へ、手を置いた。

 自分の手だった。

 いまは、誰にも触れられない手だった。

蓮「まず、全員で帰る。過去を並べるのは、それからだ」

 レンは、うなずいた。

 蓮は、信用したとは言わなかった。

 外から来る銃声を、聞き続けた。

     *

 屋敷へ近づくにつれ、森の中にも倒れた影が増えた。

 VSKは、銃を下げなかった。

 倒れているものが、動かないとは限らない。

 別の影が、木の向こうから来ることもある。

 四人は、庭をまっすぐ横切らず、建物の陰へ回った。

 門の奥では、まだ何かが動いていた。

 裏の搬入口へ続く壁沿いには、いまは大きな群れがいない。

VSK「裏口です。ここから、AK-12たちが入りました」

 416は、扉を見る。

 閉まっていた。

 枠が歪み、板の継ぎ目にも亀裂がある。

 89式が、小さな観測器を取り出した。

 扉へは、向けなかった。

 その脇の、割れた明かり窓へ近づける。

 残ったガラスの隙間から、室内の一部が見えた。

89式「二人、見えます。片方は、銃を持っています」

416「こちらを、見てる?」

89式「いいえ。奥の廊下です。もう一人は、壁に寄っています」

 声が、扉の向こうから聞こえた。

「……次が来たら、そちらへ。銃口を、私の方へ向けないように」

 416の目が、止まった。

 知っている声だった。

 その声を、最後に聞いたのは、出撃前の基地だった。

416「桜が散る時」

 中の足音が、止まる。

「希望が生まれる!」

 416は、銃を持つ手の力を少し緩めた。

416「スプリングね」

スプリング「……416ちゃん?」

 声が、扉の近くへ来る。

 416は、先に言った。

416「扉へ寄らないで。開けられる?」

スプリング「内側の留め具は外しました。でも、枠が曲がっていて……」

 もう一度、扉が軋んだ。

 開かなかった。

 VSKが、416を見る。

 持ってきた装備包へ、手を当てた。

416「開ける。二人とも、扉から離れて。中で隠れられる場所は?」

スプリング「壁の角があります。そちらへ移ります」

 足音が、遠ざかった。

 89式は、窓の隙間から見える範囲を、もう一度確かめる。

 スコーピオンが、四人の背後を見る。

 VSKが、扉を開く準備をした。

 416は、内側へ声を掛ける。

416「そのまま、動かないで」

 短い破裂音がした。

 傷んだ扉が、枠から外れる。

 埃が、こちらへ流れた。

 416が、開いた場所へ入る。

 奥を向いた銃が、一本、見えた。

 その後ろへ、スプリングがいた。

 背には、見覚えのある盾のケースが残っている。

 スプリングが、銃を下げずに振り向いた。

スプリング「来てくれたのね」

416「迎えに。怪我は?」

スプリング「大丈夫。……でも、渡邉さんたちが、まだ奥にいます」

 VSKと89式が、続けて入った。

 スコーピオンは、開いた扉の脇へつく。

 彼女の顔を見たロミアが、壁へ背を寄せた。

ロミア「……また、増えた」

スコーピオン「増えたよ。味方がね」

ロミア「僕にとっても?」

 VSKの目が、男の袖へ向いた。

 徽章が、見えた。

VSK「GMAの警備員ですか」

 ロミアが、固まった。

 ベネリM4を持つ手が、胸の前で止まる。

 416は、その銃も見た。

416「その散弾銃は、どこで」

スプリング「渡邉さんが、貸しました。外の群れに追われていた二人と、一時的に協力しています」

ロミア「も、もう一人は、テムです。向こうに、残っています」

 言葉を出すたび、喉が詰まった。

 スプリングが、彼の横へ立つ。

スプリング「ロミアさんです。ここまで、勝手なことはしていません」

 416は、男へ顔を向けた。

416「銃口を、そのまま下へ。こちらへ敵対するつもりは?」

ロミア「ありません。……外へ出たいだけです」

 銃口が、さらに下がる。

 VSKも、自分の銃を少し低くした。

 男の腕と、こちらの間には、まだ距離があった。

416「では、一緒に動いて。離れる時は、勝手に走らずに言って」

ロミア「……殺さない?」

スコーピオン「それ、さっきの話で分からなかった?」

ロミア「確認、したくて」

416「あなたを撃ちに来たわけじゃないわ。落ち着いて」

 ロミアの肩が、少し下がった。

 銃は、まだ手放さなかった。

 その銃を持て、と言った相手が、奥にいる。

 いま、ここへ置いていく気にはなれなかった。

VSK「雇用先は、GMAで間違いありませんか」

ロミア「はい。屋敷の警備で……ほかには、SFCから来た班もいます。僕らは、全部同じ部隊じゃありません」

89式「GMAとSFCが、同じ場所を?」

ロミア「班同士で、仲は、よくなかったです。警備場所も別でした。誰が、どこまで命令を出しているのかは……分かりません」

 VSKは、その言葉を記録した。

 屋敷に異なる徽章があった理由の一つには、なる。

 だが、それだけで全員の所属も、依頼主も決まるわけではなかった。

 416が、奥の廊下へ顔を向ける。

416「続きは、歩きながら。スプリング、最後に蓮を見た場所は?」

スプリング「中央ロビーから、東側へ来ました。私たちが先行して、渡邉さんとテムさんが後ろを。その後、間の通路へE.L.I.D.が入ってきて……」

 持っていた図を開いた。

 指が、角を二つ辿る。

スプリング「こちらから、声は聞こえました。でも、同じ通路へ戻れなくなりました」

416「AK-12たちは?」

スプリング「私は、まだ会っていません」

 VSKが、蓮を呼んだ。

 受信音の向こうで、短い声がした。

 位置までは、聞き取れない。

VSK『こちらVSK。スプリングと合流しました。聞こえたら、現在位置を』

 雑音が、答えを隠した。

 416は、スプリングの背へ目を向ける。

416「記録は?」

スプリング「袋にあります。盾も、持ち出しています。こちらは、もう使えませんが」

 ケースを、手で示した。

 VSKは、その留め具を確かめる。

 蓮を守った装置が、同じ形のまま、壊れていた。

 回収してくれたことへ、短く礼を言った。

416「持って帰る。重くて動けなくなったら、早めに教えて」

スプリング「ええ」

 89式が、二人へ飲み物と手元の補給を渡した。

 ロミアの散弾銃の残弾は、スプリングと一緒に確認する。

 使った分は、戻らない。

 予備の散弾も、出発した時より減っていた。

 スプリングは、図を畳んだ。

 ここへ残り続ける理由は、なくなった。

 416が、奥を向く。

416「六人で動く。蓮とテム、それからAKの四人を探す」

 男の名を聞いて、ロミアが顔を上げた。

 スプリングも、銃を持ち直した。

 後ろから、まだ銃声がしていた。

     *

 蓮は、倒れた影を踏み越えた。

 次の角へ、銃口を向ける。

 足音が、横から来た。

 テムが、そちらへ撃った。

 男は振り向かず、前へ出る。

 RPK-16の射撃が、その横を通った。

 廊下の先にいた数体が、身を崩す。

 それを見て、AK-15が隣の部屋へ移った。

AK-15「こちらは、抜けられる」

蓮「なら、そちらへ。止まるな」

 短い指示が、次の動きになる。

 六人は、同じ場所へ留まり続けなかった。

 撃つ。

 下がる。

 壁を挟んで、もう一度、銃口を向ける。

 廊下へ入ってくる影は、相変わらず多かった。

 だが、全部が同時に通れる幅ではない。

 角と扉で、先頭が詰まる。

 蓮は、その間へ踏み込んだ。

 銃剣を、短く突き出す。

 倒れかけた相手を、進路の外へ押し返した。

 左肩へ、同じ負荷が掛かる。

 傷を庇って動きを止める代わりに、握る位置を変えた。

 負傷が消えたのではなかった。

 その負傷へ、どこまで身体を使わせるかが変わっていた。

AN-94「左肩。布の端に、血が」

蓮「歩ける」

AN-94「歩けるかどうかだけでは――」

蓮「手当ては、止まれる場所でやる。先を見ろ」

 AN-94は、銃を上げ直した。

 それ以上、肩へ手を伸ばせなかった。

 AK-12は、男の横へ来る。

AK-12「身体の確認も、こちらの仕事よ。勝手に省かないで」

 男の目が、彼女へ向いた。

 短い沈黙があった。

 後ろの銃声が、その間を埋める。

蓮「……分かった。止まれる場所を、作れ」

 AK-12は、その返事も記録した。

 拒まれているのは、手当てそのものなのか。

 それとも、身体へ触れられることなのか。

 訊く余裕は、まだなかった。

 テムの拳銃が、撃ち止まった。

 最後の予備弾倉へ替える。

 蓮は、その動きを見た。

蓮「後ろへ。次は、ANと代われ」

 AN-94が、テムのいた場所へ入る。

 銃声が、また続いた。

 人を動かす声だけは、乱れなかった。

 廊下の予備灯は、幾つか、消えていた。

 残った光の下へ、小さな影が出てくる。

 古い服を着ていた。

 袖が、片方だけ短い。

 子供の身体だった。

 AK-15が、銃口を向けた。

 その目へ、一瞬、服の模様が残る。

 蓮は、同じ場所を見ていた。

 小さな影が、腕を伸ばして走る。

 男は、その動きへ合わせて撃った。

 影が、倒れる。

 蓮は、すぐに次へ銃口を向けた。

 AK-15も、そこへ続いた。

 迫る相手を止める必要はあった。

 それでも、彼女の中へ、先ほどの一瞬が残った。

 身体が小さいことへも、服へも、男は目を止めなかった。

 いつもの蓮なら、何を見ていたのだろう。

 そんなことを考えた自分が、戦闘の最中に余計なものを見たのかもしれなかった。

 答えは、出なかった。

     *

 曲がり角を一つ越えたところで、足音が途切れた。

 まだ、遠くには聞こえる。

 目の前の廊下だけが、静かになっていた。

 RPK-16が、壁の陰へ銃を下げる。

 AN-94は、弾倉の残りを確かめた。

 AK-15の外装にも、擦れた跡と小さな欠けが増えている。

 AK-12は、こめかみのガーゼを替えた。

 深度演算は、まだ再開しなかった。

 テムが、息を吐く。

 膝へ手をつきかけ、銃を持っていることを思い出して、壁へ寄った。

 男だけが、廊下の奥を見ていた。

 首の下に、汗が流れている。

 防弾装備の下でも、呼吸が速かった。

 それを、言葉へ出さなかった。

蓮「どのくらい、経った」

テム「……あなたが、立ち上がってから?」

蓮「そうだ」

 時計を見る。

テム「十九分ほどです」

 男は、うなずいた。

 左肩の布へ手を当てる。

 赤くなった端を見ると、押さえ直した。

 AN-94が近づき、ずれた被覆材を整える。

 今度は、腕を払わなかった。

 長くは、待たなかった。

蓮「スプリングと合流する。先へ」

テム「少しは、休んだ方が」

蓮「追いつかれるまで待つ気か」

 テムは、返事を止めた。

 同じ顔へ、別の言葉を期待してしまっていた。

 男は、廊下の先へ歩き出す。

 肩を庇う動作が、ない。

 庇わなければ傷が消えるわけではないことを、こちらは知っていた。

 RPK-16が、テムへ目を向けた。

RPK-16「歩けます?」

テム「……はい」

 銃を、持ち直す。

 AN-94も、男の後ろへ続いた。

 AK-15は、少しだけ立ち止まった。

 先ほどの小さな影が、角の向こうに見えた。

 もう、動かなかった。

AK-15「AK-12」

AK-12「何?」

AK-15「いまの彼は……私たちの知る蓮なのか」

 AK-12も、前を見た。

 男は、足を止めていない。

AK-12「顔も、身体も、同じよ」

AK-15「それを、訊いているんじゃない」

 AK-12は、答えを急がなかった。

 保存した記録には、命令と銃声と動作がある。

 この問いへの答えは、まだなかった。

AK-12「……分からない。だから、見ておく」

 AK-15が、銃を持ち直した。

 蓮を、一人で行かせるわけにはいかなかった。

 いつもの蓮なら、そう言ったはずだった。

 いまは、その言葉を、こちらが守る番だった。

 六人は、スプリングの進んだ方へ向かった。

 別の通路では、416たちも、聞こえてくる銃声を追っていた。

 まだ、互いの姿は見えていなかった。




やぁやぁ、どうもお久しぶりですね

素人小説書きだよ

いやー…どれくらい時間が経ったのだろうね?

もはや、分からないくらい長引いてしまったね

仕事上中々書けなくて申し訳ない

今後も長く待ってくれると嬉しいです!

コメントと修正書いてくれると嬉しいです!

2026年10月6日リメイク完了

ヒロイン

  • 416
  • VSK-94
  • 大鳳A
  • 蒼龍C
  • 雷電
  • スカイレイダー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。