陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る   作:ゴーストライターとかした、素人小説書き

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艦これはCアズレンはAと表記させていただきますのでお願いします。

クロスオーバーなので悪しからず

それではどうぞ


5-4 第一次呉鎮守府近海大規模演習報告

5-4 第一次呉鎮守府近海大規模演習報告

 演習当日、午後。

 呉鎮守府に係留された雲龍の格納庫では、帰投した艦載機の点検と、報告会の準備が並行して進んでいた。作業区画との境をロープで仕切り、空いた場所へ椅子を並べる。黒板には海図が掛かり、その脇へ観測艦の写真と各隊の行動記録が集められていた。

赤城(艦娘)「飛龍さん、黒板をこちらに。後ろの席からも見えるよう、お願いします」

飛龍(KAN-SEN)「うっす。……この辺りか?」

赤城(艦娘)「ええ。ありがとうございます」

 黒板の車輪が床を鳴らす。その向こうでは、夕立が積み上げた椅子を抱え、歩き出そうとしていた。

長門(艦娘)「椅子は、こちらへ運んでくれ」

夕立(KAN-SEN)「今、持っていくぞー」

吹雪(艦娘)「夕立さん、前が見えていませんよ」

夕立(KAN-SEN)「これくらいなら、まとめて――」

村雨(艦娘)「半分、こちらへ渡して。足元に線もあるから」

 言い終わるより早く、夕立の足が床の線へ引っかかった。慌てて踏み直したが、抱えた椅子の脚が傾く。

夕立(KAN-SEN)「あ」

吹雪(艦娘)「あっ」

 次の瞬間、格納庫に盛大な音が響いた。

夕立(KAN-SEN)「……悪い。ひっくり返した」

伊19(艦娘)「うわあ……これは、ひどいことになっているの」

伊19(KAN-SEN)「椅子まで大破判定にしないで。そっちを持ってくれれば、起こせるから」

 二人の伊19と村雨が手を貸し、倒れた椅子を一脚ずつ立て直した。艦娘の長門は絡まりかけた線を壁際へ寄せると、最後の列を整える。

長門(艦娘)「前が見える量で運べ。無事に戻ったあとで怪我をしては、笑い話にもならん」

夕立(KAN-SEN)「……次は、そうする」

 出入口から剣子が顔を出した。夕立の足元と、床に残った一脚を見比べる。

剣子「怪我人は?」

村雨(艦娘)「ありません。椅子も確認しています」

剣子「なら、よかった。準備の損害報告まで増やさないでね」

 剣子が机へ記録を置くと、長門(KAN-SEN)が控室の方を見た。

長門(KAN-SEN)「三笠様と副提督は、まだか?」

剣子「もう来てるよ。会場が整うまで、少し相談したいって」

長門(KAN-SEN)「また、演習の案かのう」

剣子「今日は一回で十分です」

天城(KAN-SEN)「提督が許可なさらなければ、二回目は始まりませんよ」

剣子「始まらなくても、案は増えるんだよ。まず、今日の分を終わらせよう」

 天城は小さく笑い、書類を机の上で揃えた。

     *

 格納庫脇の控室の扉を、隼人は三回叩いた。

三笠(KAN-SEN)「入ってくれ」

隼人「失礼します」

 三笠の前には、演習記録とは別に、硫黄島の奪還案と、上級司令部への回答事項が置かれていた。

三笠(KAN-SEN)「やあ、隼人君。どうぞ、掛けてくれ」

隼人「お疲れ様です」

 返事が、さっきより少し硬くなった。

 三笠は椅子を示したまま、その顔を見る。

三笠(KAN-SEN)「もう演習は終わっている。そう緊張しなくてもよいだろう」

隼人「……こちらへ座ると、改めて威厳を感じまして」

三笠(KAN-SEN)「私としては、随分と楽にしているのだがね」

隼人「自然と出てしまうものかもしれません」

三笠(KAN-SEN)「そういうことにしておこうか」

 笑いにつられて、隼人も少し口元を緩めた。

 向かいの椅子へ座ると、三笠は机の紙を手前へ寄せる。

三笠(KAN-SEN)「報告会の前に、今後のことを聞いておこう。早ければ一か月後、という案だったな」

隼人「はい。ただし、実施日が決まったわけではありません。昨日決まった回答日までに、出せる戦力と不足する条件を揃えます」

三笠(KAN-SEN)「その回答へ、今日の勝利をどう入れる?」

隼人「今日の結果だけで、実施できるとは答えられません」

三笠(KAN-SEN)「では、何を揃える?」

 隼人は机の地図を見た。演習海域から硫黄島へ指を移しかけ、途中で止める。島へ届けば、それで終わる任務ではなかった。

隼人「陸上部隊の参加範囲です。上陸地点を確保したあと、島の拠点を押さえ、保持する部隊が必要になります。輸送と揚陸の手段も、こちらの案だけでは揃いません」

三笠(KAN-SEN)「では、たった一か月を候補に置いて、陸と海をどうまとめるのだ? こちらの艦隊も、前の海戦で深手を負っている。要請を出すことと、部隊が来ることは別だ」

隼人「大陸方面の配置も、関わってきますか」

三笠(KAN-SEN)「ああ。深海棲艦がいるからといって、人間同士の警戒まで消えたわけではない。今、守っている所を薄くしてまで、こちらへ回せるかどうかだな」

隼人「海からの侵攻を受けていても、他国への警戒を解けないのですか」

三笠(KAN-SEN)「余裕がないからこそ、漁夫の利を恐れているのだ。陸軍にとっては、大陸での配置も捨てられない」

 隼人は地図の島だけを見ていた目を、大陸側へ動かした。知っている地名はあっても、この世界でそこにいる部隊の事情まで知っているわけではない。

隼人「……満州方面も、ですか」

三笠(KAN-SEN)「そうだ。資源と、それを守る配置がある。島へ何人出せるかは、そこにいる部隊の名前だけでは決まらん」

隼人「こちらの配置を、まだ十分に確認できていません。島の情報に目を寄せすぎていました」

三笠(KAN-SEN)「分からない所は聞けばよい。君の知識で埋めてしまう前にな」

隼人「どなたか、陸軍とのやり取りをご存じの方はいませんか。部隊へ照会する前に、確認すべきことを聞いておきたい」

 三笠は少し考え、机へ指を置いた。

三笠(KAN-SEN)「あきつ丸はどうだろう。輸送でのやり取りがある。こちらが何を用意しなければならないかも、本人から聞いた方が早い」

隼人「あきつ丸さん……陸軍の揚陸艦ですね」

三笠(KAN-SEN)「知っていたか」

隼人「艦のことは、少し。ですが、この世界で受け持っている任務までは分かりません」

 手帳へ、あきつ丸の名を書いた。その横へ、艦娘と添える。

隼人「帰路についているという報告は見ました。現在位置と帰着予定は、確かめます」

三笠(KAN-SEN)「港務へ照会しよう。本人が知っていることは聞ける。ただし、彼女一人に派遣を決めてもらう話ではないよ」

隼人「ええ。問い合わせる項目を揃え、提督から正式に照会していただきます」

 手帳へ、輸送、上陸、保持と書き込む。三笠は隼人が書き終えるのを待ってから、航空隊の欄を示した。

三笠(KAN-SEN)「こちらの艦隊も、今日、港へ戻れば元どおりというわけにはいかんな」

隼人「艦の修復と航空隊の再建は、分けて見ています。KAN-SENの大鳳さん、翔鶴さん、瑞鶴さんを中心に、三つの群へ分ける案を考えています」

三笠(KAN-SEN)「既存の機動部隊を、そのまま動かすのではなく?」

隼人「前の海戦で損失を受けた航空隊を、短い期間で元に戻せたことにはできません。参加可能な空母を軸に、どの艦と航空隊を付けられるか、組み直して確かめたい」

三笠(KAN-SEN)「三人を選んだから、三個艦隊ができるわけではないか」

隼人「はい。航空隊の機数と練度、護衛、補給の確認が先です。艦娘の大鳳さんの修復も続いています。そちらを、予定どおり参加できる戦力として数えるつもりはありません。護衛を集める場合も、呉と航路の警戒を残さなければ」

三笠(KAN-SEN)「航空隊の装備は、どうするつもりだ? 今日より強い相手が来ないとも限らんぞ」

隼人「現在使える機体で揃えられる部分と、補充や更新が必要な部分を分けます。新しい機体を要求するだけでは、出撃できる航空隊にはなりません」

 機体の補充要求にも、隼人は線を引いた。

 扱う人、整備、補給。海戦で失った人員の欄は、機体の数字を増やしても埋まらなかった。

隼人「不足しているものと、確認の期限を添えて出します。上陸支援まで含めた配置案は、その回答を受けてからです」

三笠(KAN-SEN)「君自身の配置も?」

隼人「……希望は、前衛です。ただ、今日の勝利を、そのまま配置の根拠にはしません」

 三笠は頷き、書類を一枚、隼人の方へ寄せた。

三笠(KAN-SEN)「そこを聞きたかった。私からも気づいたことを添えよう。勝った者一人に、足りない物を全部、背負わせるつもりはない」

隼人「ありがとうございます。……他人の回答を待たなければ動けないのは、歯がゆいものですね」

三笠(KAN-SEN)「君が一人で決めれば、早くはなるだろう。その決定を実行する者まで、一人で用意できるならばな」

隼人「……できませんね」

三笠(KAN-SEN)「だから、待つ前に、聞くべきことを揃えよう」

 手帳を閉じて息を吐くと、三笠はまだ隼人を見ていた。

隼人「……何か、顔についていますか」

三笠(KAN-SEN)「いや。先ほどまで、ずいぶん楽しそうだったからね。君の疲れた顔も、珍しいなと思って」

隼人「楽しいことでも、疲れはします」

三笠(KAN-SEN)「なるほど」

 納得したようで、視線は動かなかった。

隼人「そんなに、じっと見なくても」

三笠(KAN-SEN)「おや。少し恥ずかしいのか?」

隼人「……あまり、からかわないでください」

 隼人が少し顔を逸らすと、三笠は笑った。

隼人「記録には残さないでください」

三笠(KAN-SEN)「では、私だけ覚えておこう」

 廊下から、会場が整ったという声が届いた。三笠は立ち上がり、今度は演習の記録を取る。

三笠(KAN-SEN)「行こうか。皆の報告を聞く番だ」

     *

 格納庫の椅子は、ほぼ埋まっていた。修復の続いている艦も、出撃ではなく会議への参加として席に着いている。観測を担当した大鳳(艦娘)は鳳翔(艦娘)と記録を照合し、最後の一枚を剣子へ渡した。

 黒板には、各隊の通過位置と、観測側の判定が並んでいた。そこへ隼人の探知記録と装備の記録を重ねると、同じ海で見ていたものが少しずつ違っていたことが分かる。

剣子「帰港直後には、結果と安全上の問題を先に確認しました。ここからは各隊の記録を合わせて、経過を見ます」

 隼人は三笠の隣へ座った。腕部戦術タブレットから移した記録は、すでに机へ置いてある。

剣子「終了の判定は、対抗側旗艦、雲龍の模擬大破。隼人君の勝利です。対抗側の指揮を執った三笠さんと、判定上の旗艦は別に設定していました」

雲龍(艦娘)「……最後まで、伏せていたからね」

隼人「私が知ったのは、終了を告げられてからです」

剣子「そこも記録どおり。今日の大破や撃墜は、全て演習の判定です。継続できず攻撃を中止した機体もあるので、全部を被弾による撃墜として集計しないでください」

 加賀が立ち、第一波の配置を示した。

加賀(艦娘)「先頭に被弾判定が出たあと、離脱する機体と進入中の機体の針路が重なりました。間隔が足りず、後続も攻撃を続けられなくなっています」

 写真には、攻撃を中止した機体の位置も印されていた。隼人の対空射撃による判定と、その後の隊列の乱れは、違う色で分けられている。

加賀(艦娘)「最初の一機を失っても、後ろが進める形にしておくべきでした。接近する数ばかりを揃えて、離脱する場所を狭くしています」

隼人「こちらは、先頭の進入へ12.7mmを向けました。後続まで同じ方向へ流れたので、照準を大きく変えずに済んでいます」

加賀(KAN-SEN)「投下した物まで、同じ砲で落としていたのか?」

隼人「いいえ。そちらはVLSユニットの20mmバルガンです。航空機への射撃と、接近する投下物の迎撃は分けていました」

 加賀(KAN-SEN)はその箇所へ書き込んだ。二つの銃火を、一つの仕事として見ていたことにも、直す余地があった。

剣子「次は、水中からの接近」

伊8(艦娘)「航空隊へ注意が向いている間に回り込む予定でした。ですが、私たちが攻撃へ移る前に、対潜演習弾が来ています」

伊19(KAN-SEN)「潜望鏡を下ろせば分からなくなる、と考えていたわけじゃないの。ただ、あれほど早く、順に取られるとは思わなかった」

 伊8が示した進路へ、隼人は探知の印を重ねた。一つの反応を捕らえた時刻と、他の反応を確かめた時刻には差がある。離れられた艦もいれば、戦闘不能の判定を受けた艦もいた。観測側の命中判定は、一度に入ったものではなかった。

隼人「航空機を追っている間も、装置は水中の反応を処理していました。私が確認して、13式小型VLSから順に対潜演習弾を使っています」

伊8(艦娘)「一人の目が空を向いているから、水中を見る余裕はない。それだけでは測れなかった、ということですね」

隼人「はい。ですが、こちらも対潜兵装を使えば位置を知らせることになります。発射した場所へ、いつまでも残れるわけではありません」

伊19(KAN-SEN)「それで、岩場の方へ移ったのね」

 黒板の海図へ、沿岸側へ移動した経路が加わった。その間に対抗側が隼人の位置を揃えようとしていたことも、記録から見えてくる。

天城(KAN-SEN)「ここで、こちらの連絡が遅れました。演習用の通信に妨害が入ってから、各艦の状態を確認し直そうとしています」

長門(艦娘)「進む艦と、返事を待つ艦に分かれた。先の命令をどこまで続けるか、揃えていなかったな」

長門(KAN-SEN)「発光信号へ替えるにも、そこで相談を始めては遅い」

天城(KAN-SEN)「式神による伝令も、今回は演習通信の取り決めに従う条件でした。妨害を受けてから、使える手段を選び直しています。次は、連絡が途切れた時に続ける行動を、出港前に決めておかなければなりません」

剣子「実警戒と演習中止の回線は維持されていました。今回使えなくなったのは演習用の系統です。妨害すれば、あらゆる伝令が消えるという記録にはしないでね」

 赤城(艦娘)が、次の判定を示した。飛行甲板への125mm砲撃だった。

赤城(艦娘)「甲板が使用不能となって、航空隊の回収先を変更しています。船全体が行動不能になったわけではありませんが、発着艦を続けられなくなりました」

隼人「水上の反応は、もっと前から入っていました。ただし、探知できた全ての艦を、すぐ識別できていたわけではありません。岩場へ移って足を止め、確かめてから125mmを撃っています」

赤城(艦娘)「こちらが位置を伝え合っている間に、隼人さんは撃てる対象を確かめていたのですね」

隼人「その時間がありました。通信の立て直しが早ければ、同じようには狙えなかったでしょう」

 赤城(艦娘)は、隣の艦へ回収を頼んだ記録を開いた。甲板の判定だけでなく、回収先へ知らせる人と手段も残しておく必要があった。そのための代替経路を、天城が記録へ加える。

 黒板の写真が第二波へ替わると、加賀(KAN-SEN)が席を立った。

加賀(KAN-SEN)「今度は進入の間隔と離脱の合図を変えた。急降下だけでなく、低空の雷撃と、避けた先への戦闘機の攻撃も合わせている」

隼人「魚雷を避けたところへ零戦が来た時は、こちらももう一度、動かされました」

加賀(KAN-SEN)「それでも、被弾判定は取れなかったがな」

隼人「手間は違います。第一波と同じ結果だから、同じ攻撃だったとは思っていません」

 隼人は、自分の操作が遅れた箇所を開いた。13式高度演算装置の追尾は続いている。その横で、彼自身の確認に間が空いていた。

隼人「アイが反応を追うことと、私が必要な情報を確かめて決めることは別です。回避を続ける間、水上の更新を確認するのが遅れました」

天城(KAN-SEN)「演算を続けていても、あなたの判断まで増えるわけではないのですね」

隼人「ええ。こちらが選んで許可しなければ、攻撃は進みません。航空隊を退けながら艦の状況まで確かめる負担は、二度目の方が大きかった」

 三笠は、隼人の顔ではなく、その記録を見た。

三笠(KAN-SEN)「ただ、数を重ねるのでは足りなかった。別の仕事を同時にさせる形なら、手を取らせることはできたか」

隼人「はい。ただし、私の方も、その間に消費しています」

 電力と冷却の記録が、残弾の記録と並んだ。移動を続け、迎撃し、次の射撃に備える。海面では見えなかった消費が、その下に残っていた。

隼人「回避できたからといって、同じ速度で、同じ迎撃をいつまでも続けられるわけではありません。帰投に使う分を残して終える必要がありました」

加賀(艦娘)「なら、次に見るべきなのは、あなたに被弾判定がなかったことだけではないわね」

隼人「……その通りです」

 彼女は短く頷き、席へ戻った。悔しさは残っていても、確かめるものは、もう決まっていた。

剣子「最後に、対艦誘導砲弾の使用と、終了までの判定です」

 隼人が席を立った。黒板へ出すのは演習仕様の記録だけだった。

隼人「15式対艦複数目標小型誘導ミサイル砲弾の演習仕様を使用しました。事前に確認された装備で、使用の前にも観測側へ連絡しています」

剣子「観測責任者として許可したのは、演習設定での射撃です。実戦用の秘匿弾に必要な使用承認とは、別に扱っています」

 125mmの母弾から分かれた二十の小型誘導体。その表示へ、各艦の迎撃記録を重ねる。全てが命中したわけではなく、途中で迎撃判定を受けたものも、狙った区画へ届かなかったものもあった。

鳳翔(艦娘)「各艦へ入った判定は、こちらと大鳳さんの観測記録で照合しています。艦の数だけを見て、全艦撃沈とはしないでください」

大鳳(艦娘)「一つの区画が使えなくなった艦と、行動を続けられなくなった艦も、分けてあります」

 雲龍の記録が、最後に開かれた。

雲龍(艦娘)「私のところで、大破判定。そこで終わりだった」

隼人「はい。通常の砲撃だけで、同じ時間に同じ結果を出したわけではありません。最後の判定の多くは、この砲弾の使用によるものです」

天城(KAN-SEN)「こちらも、用意していた対処で受け切れませんでした。ですが、装備の差だけで、途中の判断を全て片づけるわけにはいきません」

三笠(KAN-SEN)「第二波で直したことも、通信が途切れて止まったことも、同じ記録に残る。次へ持っていくのは、どちらもだな」

 伊8は進入経路へ印を足し、加賀(KAN-SEN)は航空隊の記録を閉じた。勝てなかったという一言では、捨ててしまうものが多すぎた。

 剣子は残弾の記録を手元へ置く。

剣子「こちらの砲弾も、無限に用意できるものではありません。補給と整備、冷却と電力。それが揃って初めて、今日の装備を使える。隼人君は、その見込みを追記してください」

隼人「承知しました」

赤城(KAN-SEN)「隼人様」

 隼人が振り向くと、赤城は静かに彼を見ていた。

赤城(KAN-SEN)「ご自身へ来る攻撃を避けながら戦えることは、分かりました。ですが、味方の輸送艦へ向かった攻撃には、同じように避けることを選べますか」

 隼人はすぐに答えなかった。岩場へ移る時、自分の後ろには守る船がいなかった。引きつけて離れればよかった相手も、船団の前では、そのまま通すわけにはいかない。

隼人「……いいえ。私が避けても、後ろへ届けば護衛の失敗です。今日とは、引き受ける範囲が変わります」

赤城(KAN-SEN)「でしたら、その範囲を決める前に、お一人で全部を守れるとは、おっしゃらないでください」

隼人「言いません。前衛へ出たいという希望は変わりませんが、艦隊全体の防護ができたという結果にはできない」

剣子「硫黄島への配置は、保留です。敵岸の状況と射程、上陸輸送、補給、陸上部隊との連携。その確認を終えて、作戦全体で判断します。早ければ一か月後という案を、今日ここで出撃許可に替えることはありません」

 隼人は頷いた。赤城も、それ以上は重ねず席へ戻る。

剣子「各隊は、今日出た修正を記録へ戻してください。隼人君は、演習装備の運用と補給の見込み。それから、攻勢準備の案を別に出して」

隼人「二つ、ですね」

剣子「一つにすると、勝った話の後ろへ不足が隠れそうだからね。その回答には、両方が要ります」

隼人「……逃がしてはくれませんか」

剣子「逃がしていいなら、私が先に逃げたいよ」

 何人かが声を漏らして笑った。剣子も少しだけ口元を緩め、終了の判定書へ手を置く。

剣子「これで、今日の正式報告を終わります。皆、お疲れ様でした」

     *

 椅子を片づける音が戻った。夕立は今度、二脚ずつ運んでいる。剣子は提出された記録を揃え、椅子の背へ身体を預けた。

剣子「……終わった」

三笠(KAN-SEN)「今日は、かい?」

剣子「報告会が。仕事は、見ての通りです」

 机には、各隊の修正と照会先を書き込んだ紙が残っている。

三笠(KAN-SEN)「中間管理職は辛いな」

剣子「上から期限が来て、下から案が来ます。私にも、たまには何か減らしてくれる人がほしい」

三笠(KAN-SEN)「では、艦隊の照会は私も手伝おう。全部、君の机を通すより早いだろう」

剣子「……ありがとうございます」

 鳳翔(艦娘)が茶を運んできた。剣子は一口飲んでから、会場に隼人の姿がないことに気づく。

剣子「隼人君は?」

三笠(KAN-SEN)「甲板で風に当たってくるそうだ。追加する項目を確かめてから、出ていった」

剣子「なら、今日はこっちへ連れ戻さないでおこうか。書類の続きは明日でもいい」

三笠(KAN-SEN)「我々も、どこまで今日やるかを決めよう」

 剣子は頷き、急ぎの照会と翌日に回せる記録を分けた。机を空にするのは無理でも、終わりを決めることはできる。片づけの済んだ椅子が壁際へ運ばれ、格納庫の作業区画には点検の音が戻っていた。

     *

 飛行甲板へ出ると、海風が隼人の襟を通った。

 15式強化外骨格戦闘装備と兵装ユニットは、工廠へ預けてある。いま身につけているのは迷彩服だけだった。

 発着艦作業を終えた甲板の脇で、隼人は足を止めた。作業の通路を空け、内側の空いた場所へ腰を下ろす。

隼人「……風が気持ちいいな」

 雲の間に青空があり、港の水面は穏やかだった。

 沖には、演習へ出ず警戒を受け持っていた艦が見える。その向こうを、鳥が横切っていった。

 砲弾も、ミサイルも、こちらへ降りてくる機影もない。

 隼人は膝の上で手を開いた。兵装を操作していた指にも、書類を押さえていた指にも、しばらく何も持たせずにおく。

 講評では、次の仕事が決まった。

 それを始めるのは、明日でもよかった。

 背後から近づく足音が、すぐ近くで止まる。

大鳳(KAN-SEN)「こんなところに、いらしたのですね。隼人様」

隼人「大鳳さん」

大鳳(KAN-SEN)「あら。振り向く前に、お分かりになりましたか」

隼人「その呼び方は、分かりやすいですから」

大鳳(KAN-SEN)「うふふ。嬉しいですわ」

 大鳳は当然のように隣へ座り、隼人の腕へ手を添えた。

大鳳(KAN-SEN)「少し、お疲れでしょう。こちらへ寄り掛かってくださっても」

隼人「……随分、近くなりますね」

大鳳(KAN-SEN)「近い方が、お休みになれますわ」

 腕が引き寄せられた。肩が触れ、大鳳は離れるつもりもなく、こちらを見ている。

 隼人は返事をしかけ、彼女の肩越しへ目を向けた。

隼人「嬉しいお誘いですが、少し難しそうですね」

大鳳(KAN-SEN)「なぜですか?」

隼人「後ろ」

 指を少し上げる。

 大鳳が振り向いた先に、赤城が立っていた。

赤城(KAN-SEN)「……お早いこと。まだ、書類を確かめていたのでは?」

大鳳(KAN-SEN)「終わりましたので」

赤城(KAN-SEN)「私も、終わりましたわ」

 赤城の目が、大鳳の手元へ移った。

 笑顔のままなのに、隼人の肩まで冷えた気がする。

隼人「赤城さんも、こちらへどうぞ」

赤城(KAN-SEN)「その前に、こちらの方と少し、お話を」

大鳳(KAN-SEN)「でしたら、ここでできますわね」

 大鳳は腕へ添えた手を離さなかった。

 赤城の指が、懐の式神へ掛かる。

 隼人は、二人の間から腕を抜いた。

隼人「待ってください。式神は、しまって」

赤城(KAN-SEN)「隼人様は、少し離れていてくださいませ」

大鳳(KAN-SEN)「ご心配は要りませんわ。すぐに済みますもの」

 大鳳の手にも、扇子があった。

 赤城の背後へ艤装の輪郭が現れ、大鳳が開いた扇子も、手元から離れかける。

 隼人の視線が、その動きを一瞬追った。

 外骨格の接続を外してきたばかりの目には、何も背負っていなかった場所へ兵装が現れる光景が、やはり不思議だった。

 だが、眺めている場合ではない。

隼人「そこまで。ここは雲龍さんの甲板です。二人とも、艤装を――」

天城(KAN-SEN)「何をなさっているのかしら」

 後ろから、穏やかな声がした。

 赤城の手が止まった。大鳳の扇子も、動きを止める。

 隼人が振り返ると、天城が笑っていた。

 先ほど将棋を終えて会場へ入ってきた時より、ずっと柔らかい顔だった。

 その笑顔を見て、二人が揃って口を閉じた。

天城(KAN-SEN)「味方艦艇での戦闘は、ご法度ですよ。ご存じでしたね?」

赤城(KAN-SEN)「天城姉様。まだ、何も――」

天城(KAN-SEN)「それは、これからも何もなさらない、という意味で伺ってよろしいですね」

大鳳(KAN-SEN)「……もちろんですわ」

天城(KAN-SEN)「式神も扇子も、しまってくださいませ」

 式神が懐へ戻り、扇子が閉じられた。

 二人の背後に現れかけた艤装も引かれる。天城は最後まで見届けてから、近づいてきた。

 隼人が息を吐く。

天城(KAN-SEN)「副提督」

隼人「……はい」

天城(KAN-SEN)「止めてくださったことは、承知しています。ですが、途中で何をご覧になっていたのですか?」

隼人「艤装が出てくるところを、少し」

天城(KAN-SEN)「仕組みを聞くのは、二人が落ち着いてからでもできますね」

隼人「……その通りです」

 赤城と大鳳が、隼人へ目を向けた。

 そちらにまで責められる筋合いはない、と思ったが、口にはしなかった。

天城(KAN-SEN)「三人とも、こちらへ」

隼人「私も、ですか」

天城(KAN-SEN)「落ち着いてお話を聞いていただくためです」

 作業の通路から外れた場所を示され、三人は横へ並んだ。

 大鳳が先に膝を折る。赤城も、少し間を空けて座った。

 隼人は二人を見てから、同じように正座した。

隼人「……反省会は、終わったはずなのですが」

天城(KAN-SEN)「別の反省を増やしたのは、どなたでしょう」

 返す言葉がなかった。

 天城が三人の前へ立つ。

天城(KAN-SEN)「まず、目を覚ましていただきましょうか」

 隼人が顔を上げたところへ、拳が近づいた。

 ごつん、と、頭へ一つ。

 赤城にも、大鳳にも、一つずつ。

隼人「……そこは、全員同じなのですね」

天城(KAN-SEN)「お聞きになる準備は、揃ったようですから」

 天城の話は、短くは済まなかった。

 味方の艦で武器を構えないこと。甲板の作業を妨げないこと。相手を煽ってから、話をしていただけだと取り繕わないこと。

 最後のところで、大鳳が少し視線を逸らした。

 片づけを終えた雲龍が、出入口から顔を出す。

雲龍(艦娘)「……私の甲板で、第二回の報告会?」

隼人「そのようです」

天城(KAN-SEN)「議題は、演習後の過ごし方です」

雲龍(艦娘)「今度は、私を旗艦にしないでね」

 隼人は、思わず肩を揺らした。

 赤城と大鳳が彼を見る。天城までこちらへ目を向けたので、口元を押さえる。

隼人「……失礼しました」

     *

 話が終わる頃には、甲板へ差す光が少し傾いていた。

 膝を崩してよいと言われ、隼人はゆっくり足を伸ばした。赤城も大鳳も、もう武器へ手を掛けていない。

 頭へ手をやると、大鳳がこちらを見た。

大鳳(KAN-SEN)「お痛みになりますか?」

隼人「……覚えておくには、十分です」

赤城(KAN-SEN)「私も、よく覚えましたわ」

天城(KAN-SEN)「次は、思い出してから手を伸ばしてくださいね」

 赤城は頷いた。

 大鳳も、今度は手を膝へ置いている。

 雲龍が隣へ腰を下ろすと、五人の間を海風が抜けた。

 岸壁では、まだ荷車が行き来していた。沖の警戒艦は、ゆっくり針路を変えている。

 隼人は、海へ目を戻した。

 明日の机には、今日の記録が待っている。確認したいことも、聞いておくべきことも、なくなったわけではない。

 いまだけは、この海を、何も狙わずに眺めていたかった。




ハロー

お久です

海外訓練とても興味深い事を学んでさらに小説にリアリティを出せると思います

はい



久々ですので、本作を読んだ感想や指摘などお願いいたします



後、新キャラ募集は一時停止させていただきます

ご協力ありがとうございました。

2026年10月10日リメイク完了

兵器解説

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