陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
もし、元ネタを知らない方は
Google先生にアッシュアームズをぶち込んで検索するように。
もう知っている方はどうぞ。
検索して一応なんとなくわかった方もご視聴ください。
北方の辺境基地。
到着した翌朝、宿舎の窓には薄く氷が張っていた。
勇翔は地図を畳み、上着のポケットへ収めた。
昨日は、滑走路と宿舎と食堂を結ぶ道を覚えた。格納庫へ行くには、その途中で曲がる。
窓の外には、整備区画へ向かう人の列が見えた。
荷下ろしを終えた飛行船も、まだ基地に留まっている。
廊下へ出ると、小貝が肩を回していた。
勇翔「まだ、痛みますか」
小貝「少しな。昨日よりは楽だ」
勇翔「今日は、箱を運ぶ仕事を増やさないでください」
小貝「俺が好きで増やしてるみたいに言うなよ」
小貝は腕を下ろし、勇翔の手元を見た。
小貝「もう地図か」
勇翔「昨日、続きを案内してもらう約束をしましたから」
小貝「そうだったな。飯を食ったら、聞いてみるか」
食堂には、既に何人かの部隊員が来ていた。
スカイレイダーが小貝へ手を上げ、雷電は勇翔の隣に空いている席を示した。
二人が朝食を受け取ると、入口からシュヴァルベが入ってきた。
シュヴァルベ「渡邉大尉、小貝少佐。代理人から連絡です」
小貝「朝からか」
シュヴァルベ「お食事のあとで構いません。会議室へお越しください。昨日輸送した10式とSu-57について、説明があります」
勇翔は食堂の窓へ目を向けた。
ここから車両整備区画は見えない。
それでも、昨日運ばれていった低い砲塔の形は、はっきり覚えていた。
勇翔「分かりました。伺います」
シュヴァルベ「会議室までの道は、マルフーシャさんたちにお願いしています」
少し離れた席で、スネジンカが顔を上げた。
スネジンカ「今日の案内は、そちらからになります」
小貝「じゃあ、迷う心配はねえな」
マルフーシャ「地図にも書いておきます。あとで、自分で行けるように」
小貝は頷き、朝食へ戻った。
勇翔も匙を取る。
代理人が運んできた兵器を、昨日は離れたところから見送った。
今日は、その中まで見ることになるかもしれない。
*
基地内、会議室。
机には、二冊の資料が置かれていた。
一冊には10式戦車、もう一冊にはSu-57と記されている。
代理人が二人を迎え、シュヴァルベは入口に近い席へ腰を下ろした。
代理人「おはよう。昨日は、よく休めたかな」
勇翔「はい。宿舎も、暖かくしていただきました」
小貝「布団の中まで、外と同じ寒さじゃなくて助かった」
代理人「セルゲイ大佐に伝えておこう。座って。二人に話しておきたいことがある」
勇翔と小貝が向かいの席につく。
代理人は、写真のあるページを開いた。
代理人「飛行船では、同行する十八名に説明した。でも、君たちは先に飛んでいたからね。今日は二人に、実物を確かめてもらう前の説明をしたい」
10式の写真には、覆いのない車体が写っていた。
昨日見た砲塔と、同じ形だ。
その脇に、測定した寸法と重量が並んでいる。
代理人「10式は、勇翔君が覚えていた情報をもとに試作した車両だ。製作を終え、走行と射撃、通信の性能試験も済ませている。この数値は、その車両で確かめた結果だよ」
勇翔は資料を近くへ寄せた。
製作の記録に、自分が伝えた話が残されていた。
そのあとへ、試験の日付と結果が続いている。
自分の説明が終わった先でも、多くの人が手を動かしていた。
代理人「全備重量は約四十四トン。走行試験では時速約七十キロまで確認した。主砲は自動装填装置を備えた百二十ミリ滑腔砲。乗員は、車長、砲手、操縦手の三名だ」
小貝「お前の話から、ここまで造ったのか」
勇翔「僕も、昨日見て驚きました。記憶の中にあった形が、そのまま運ばれてきましたから」
代理人「形だけで終わらせないように、製作班と試験の担当が働いてくれた。北方では、その結果をもとに、雪の上での走行や低温での作動、現地との連携を見ていきたい」
代理人はもう一冊を開いた。
今度は、黒い機影が机の中央へ来る。
代理人「こちらがSu-57。強制着陸後に回収した時は無人仕様だったけれど、修復と並行して有人仕様へ改修した。操縦者が搭乗し、直接操縦できる状態になっている」
小貝が写真を見た。
機体の外観の次に、操縦席の写真があった。
代理人「改修後の地上試験と飛行試験も済んでいる。超音速巡航、高い機動性、低視認性。対空と対地の両方へ対応する装備も確かめている」
小貝「そっちは、誰かが乗って飛ばした結果ってことだな」
代理人「そう。今回運んできた機体で、操縦と各系統の作動を確認した記録だ。ここでは輸送後の再確認を済ませてから、北方での追加試験と運用評価へ進めたい」
代理人は資料から顔を上げた。
代理人「そこで、君たちに担当を頼みたい」
勇翔が筆記具を持つ。
小貝も、資料へ置いていた手を止めた。
代理人「勇翔君には、10式戦車を。小貝君には、Su-57を担当してもらう」
勇翔の筆記具が、紙へ触れる手前で止まった。
小貝は、自分の前にある写真を見直した。
勇翔「僕が、10式を?」
代理人「昨日、試験に立ち会いたいと言ってくれたね。それを、もう少し具体的な役割として頼みたい」
勇翔「確かに、言いましたが……」
勇翔は小貝を見た。
小貝もこちらを見ている。
二人とも、説明を聞いて協力するつもりではいた。
担当者として名前を置かれるとは、まだ考えていなかった。
代理人「記憶を提供したから、という理由だけじゃない。君には、陸戦と戦車戦の経験がある。地上で何を見るべきか、周囲の味方とどう合わせるか。それを踏まえて、10式の運用を評価してほしい」
勇翔は筆記具を下ろした。
試験の記録をもう一度見てから、代理人へ向き直る。
勇翔「陸上での判断も含めて、ということですね」
代理人「そう。走った速さや、撃てたという結果だけでは、ここでの使い方までは決まらない。車両と乗員、基地の人たちを合わせるところを頼みたい」
代理人は小貝へ視線を移した。
代理人「小貝君には、アグレッサーとしての経験を生かしてもらいたい」
小貝「俺が、あれを相手役として見るのか」
代理人「それも含めてだ。新しい機体が、こちらからどう使えて、相手にはどう見えるか。飛び方の違いや、空での組み合わせを考える時に、君の経験が必要になる」
小貝「アグレッサーをやってたからって、初めての機体まで、いきなり手に馴染むわけじゃねえぞ」
代理人「分かっている。今日はまず、二人自身に実物を見てほしい。そこで必要な人員と準備を出してもらってから、試験の予定を組む」
小貝は操縦席の写真へ目を戻した。
配置が、見慣れたものとは違う。
写真の小さな文字までは、この席からでは読み取れなかった。
小貝「なら、先に見せてくれ。外側だけで返事をするのは、ちょっとな」
勇翔「僕も、車内と役割の配置を確かめたいです」
代理人「うん。どちらも、担当を待たせている。まず10式の区画へ行こう」
シュヴァルベが資料の控えを二人へ渡した。
小貝はそれを閉じ、上着の内側へ収める。
勇翔も10式の記録を持って立ち上がった。
入口では、マルフーシャとスネジンカが待っていた。
スネジンカは二人の手元を見て、通路の奥を示す。
スネジンカ「車両の整備区画なら、こちらです」
小貝「今日は、読むものまで増えた」
勇翔「道は、忘れないでくださいね」
小貝「お前もな。戦車の方を見て、曲がるところを通り過ぎそうだ」
勇翔は返しかけて、やめた。
図星だった。
地図をポケットから出し、マルフーシャの説明を聞きながら歩いた。
*
車両整備区画。
暖房の音に、工具を置く金属音が重なっていた。
10式は、広く空けられた場所へ収まっている。
輸送に使った保護材は取り外され、車体のそばには確認を待つ部品と書類が並んでいた。
勇翔は入口で足を止めた。
昨日は覆いの下にあったものが、いまは見える。
砲塔の面。車体の低い輪郭。足回り。
記憶の中で見ていた形へ、整備区画の光が当たっていた。
小貝「……確かに、よく知ってる顔だな」
勇翔「僕の方ですか」
小貝「ほかに、誰がいる」
勇翔は少し笑い、代理人へ目を向けた。
代理人は整備担当へ声を掛ける。
代理人「こちらが、現地評価をお願いする二人。車両の確認は、勇翔君を中心に進めてもらいたい」
「承知しました。輸送後の点検は、この記録にあります。今日は車内の配置と、製作時に整理した操作資料からご説明します」
勇翔は差し出された記録を受け取った。
固定を外したあとの確認箇所へ、印がついている。
担当者が車体へ近づくと、勇翔もその隣へ立った。
説明は、外から見える部分から始まった。
勇翔は記憶と実物を見比べながら、確かめたいところを尋ねる。
自分の話をもとに造られた車両でも、実際の製作を担当したのは別の人たちだ。
知っている形だけで、その答えまで決めつけることはできなかった。
やがて、車内を見る準備が整った。
勇翔は案内された足場から上がり、開かれたハッチの内側を覗いた。
座る場所がある。
その前に、見るものと触るものが並んでいる。
人が入ると、写真で見た空間は随分狭くなるだろう。
勇翔は一度身を引き、担当者へ確認した。
勇翔「車長と砲手の位置を、順に見せていただけますか。操縦手の席も、あとで確認したいです」
「はい。役割ごとの操作は、こちらにまとめてあります」
勇翔は資料を見てから、車内へ入った。
車長の位置から、周囲の見え方を確かめる。
砲手の位置には、射撃に使う装置がまとめられていた。
その前に座る者へ、何を伝え、どの返事を受け取るか。
目線を移すたびに、隣にいるはずの乗員を考えた。
外では小貝が、ハッチから見える範囲へ顔を寄せていた。
小貝「どうだ」
勇翔「思っていたより、実物を見て確かめることが多いです」
小貝「お前の記憶から造ったのにか」
勇翔「僕の記憶には、ここで働く人の動きまでは入っていませんから」
勇翔は車内の説明を聞き、いったん外へ出た。
操縦手の席も確かめてから、地面へ降りる。
代理人は、車体の脇で待っていた。
代理人「見てみて、どうかな」
勇翔は資料を開いた。
乗員の欄には、会議室で聞いたとおり、三つの役割がある。
勇翔「まず、乗員を決める必要があります」
代理人「うん」
勇翔「車長、砲手、操縦手。僕を担当にしていただいても、残る二人が要ります。誰がどの役割を受け持つかも、ここで決めておかないと」
小貝が、車内へ目を向けた。
さっき勇翔が座っていた場所は、いま空いている。
小貝「自動で弾を入れてくれても、そっちは埋まらねえか」
勇翔「装填の作業は任せられます。でも、車両を走らせる人と、砲を扱う人、周囲を見て判断する人は必要です」
勇翔は車長の位置を指した。
勇翔「僕がここで指揮をするなら、砲手と操縦手を任せられる人が要ります。僕が操縦するなら、ほかの二つを受け持つ人が必要になります」
代理人「君一人を、三つの席へ置くわけにはいかないね」
勇翔「はい。操縦の確認だけをする場合と、乗員が連携して運用する場合では、必要な準備が違います。北方で使うことまで見るなら、乗員を揃えて、同じ手順を覚えないと」
勇翔はそこで言葉を止めた。
陸上で戦った経験がある。
戦車とともに動き、戦車戦を経験したこともある。
それでも、この車両の三つの役割を、一人で同時に引き受けられるわけではなかった。
勇翔「担当すること自体は、お引き受けします。ただ、乗員の確保と訓練の時間も、予定に入れていただきたいです」
代理人は頷き、シュヴァルベへ目を向けた。
彼女は、試験日程の欄とは別のところへ書き込む。
シュヴァルベ「乗員候補の選定、役割の確認、操作と車内連絡の習熟ですね」
勇翔「お願いします。僕も、製作と試験の担当の方から、実際に行った手順を教わりたいです」
代理人「分かった。地上型の皆にも話を聞いて、候補と役割を相談しよう。君の経験を頼るけれど、乗員の手配まで一人で背負わせるつもりはない」
勇翔は頷いた。
すぐに動かす予定を置かれなかったことに、少し肩の力が抜ける。
小貝が車体へ目を戻し、砲塔を見上げた。
小貝「一両届いたからって、乗る方まで揃ってたわけじゃねえんだな」
勇翔「はい。そこからです」
小貝「お前が三人分働くって言わなくて、よかった」
勇翔「言いませんよ。小貝さんこそ、何か一人で増やさないでください」
小貝「俺は一機だ。座るところも一つだろ」
代理人が、航空機の格納区画へ続く通路を見た。
代理人「次は、その一機を見ようか」
小貝は上着の内側から、Su-57の資料を出した。
操縦席の写真があるページを、歩きながら開く。
そこに写っている配置は、近くで見ても、まだ自分の機体のものとは重ならなかった。
*
航空機用の格納区画。
扉を抜けると、空気の匂いが変わった。
工具台の向こうに、Su-57が置かれている。
輸送枠から移され、機体の周囲には作業用の足場が組まれていた。
小貝は通路の端で立ち止まり、機首から後方へ目を動かした。
翼と胴体のつながり方。二つのエンジンの配置。尾翼の形。
A-10を見慣れた目には、それだけでも違うところが多い。
写真から受けた印象より、実物の方が、機体の広がりを強く感じた。
勇翔「どうですか」
小貝「外側は、悪くねえ。動いたところも見たくなる」
小貝は少し場所を変え、もう一度機体を見た。
その声には、会議室で指名を受けた時とは違う響きがあった。
どんな動きができるのか。
空で向き合った時に、何を見られ、何を隠されるのか。
性能試験の数字だけでは分からないところへ、先に目が行く。
機体の脇から、IL-2が出てきた。
手には、修復と改修の記録がある。
IL-2「二人とも来たか」
小貝「ああ。俺はこっちだそうだ」
Su-57を顎で示す。
IL-2は代理人を見た。
IL-2「担当を決めたのか」
代理人「現地評価の中心をお願いすることにした。今日はまず、実物を確かめてもらう」
IL-2「なら、操縦席を先に見ろ。記録は、修復の担当と合わせてある」
小貝は足場へ近づいた。
整備担当が、機体へ上がる前の確認を終える。
開かれた操縦席のそばで、有人化改修の箇所と、残された装置の説明が始まった。
搭乗して操作できるように整えられた席がある。
その前に表示装置があり、左右にも操作部が並んでいた。
小貝は渡された資料を見てから、機体の中を覗く。
有人仕様へ変えたことと、自分がそのまま使えることは、まだ別の話だった。
「改修後の試験は、この配置で行っています。操縦系統と表示の対応は、こちらの記録に」
小貝「分かった。中へ入っていいか」
「どうぞ」
小貝は座席へ身体を収めた。
足の置き方を確かめ、前方へ目を向ける。
そのあと、左右の操作部を見た。
いつもなら、見てから手を出すまでもない場所がある。
身体が先に覚えている距離と、指の動きがある。
ここでは、手を伸ばしかけたところで、一度止まった。
小貝「……そこか」
説明を受けた装置の位置を、目で追い直す。
自分が思った場所から、少しずれている。
隣の操作部にも、別の機能が割り当てられていた。
小貝は手を膝へ戻した。
もう一度、操縦席全体を見る。
小貝「配置から、覚え直しか」
担当者が、資料の図を指した。
小貝はその説明に従い、触れる前に位置を確かめていく。
どこに何があるかは、聞けば追える。
しかし、一つ一つ探してから動かす状態のままでは、飛行中の判断まで同じ調子では進められない。
視線が、操作部のそばにある文字へ止まった。
小貝「……おい」
勇翔が足場の上から顔を寄せた。
勇翔「何か、ありましたか」
小貝「ここの表示」
小貝は操作部に触れず、その横を指した。
そこには、ロシア語の表記が残されていた。
別の場所を見る。
そちらにも、同じような文字が並んでいる。
小貝「ロシア語じゃねえか」
勇翔も文字を見た。
写真では小さく潰れていたものが、目の前でははっきり読める大きさになっている。
はっきり見えることと、意味がすぐに分かることは、また違った。
代理人「機体に残っていた表示だ。試験に使った操作資料はある。こちらへも持ってきているよ」
小貝「資料があるのは助かる。けど、いま俺がここに座って、見ただけで分かるかっていうと、厳しいぞ」
小貝は前方と側面を交互に見た。
操作の配置が違う。
そこへ、見慣れない表記が重なっていた。
元の機体で覚えた手の動きを、そのまま持ってきて済ませられる部分は少ない。
小貝「A-10で覚えた位置に手を出したら、違うところへ行く。そのあと文字を見て、何の操作か考え直す。そんなことを、空でやりたくねえ」
担当者は頷き、試験に使った操作資料を開いた。
機体の写真に、各操作部の番号が付けられている。
説明のあるページへ、番号から辿れるようにしてあった。
小貝は資料を受け取った。
操縦席へ目を戻して、該当する場所を探す。
見つけると、少し口を結んだ。
小貝「いまは、こうやって一個ずつ探すことになるな」
勇翔「配置と表示を、両方覚える必要がありますね」
小貝「両方だ。どっちかだけ覚えても、手が止まる」
小貝は資料を閉じずに、膝へ置いた。
小貝「アグレッサーの経験を頼られたのは、分かった。でも、あれは相手を考える経験だ。初めて座った操縦席の文字まで、勝手に読めるようになるわけじゃねえ」
代理人「うん」
小貝「飛び方を考える前に、こっちの準備が要る。表示と警報の意味、操作手順、それから配置に慣れる時間。試験をした担当にも、直接説明してもらいたい」
IL-2が、記録の端へ印をつけた。
IL-2「機体にある表示と、資料の説明を照合する。確認するものは、いま出せ」
小貝「まず、ここから見えるもの全部を、資料と対応させたい。分かったつもりで飛んで、別の意味でしたってのは困る」
IL-2「分かった」
代理人は足場の下で、シュヴァルベから記録用の紙を受け取った。
代理人「試験担当との説明の場を設けよう。表示と警報、手順書の対訳も、小貝君が使う時に照合できるよう揃える。地上で配置と操作を覚える時間を、先に取る」
小貝「頼む。機体に文句を言ってるんじゃねえんだ。俺が使う準備が、まだできてない」
代理人「その準備を、ここで一緒に進めたい」
小貝は返事をして、操縦席へ目を戻した。
新しく整えられた座席には、収まれている。
表示も、操作するものも目の前にある。
あとは、それを自分の判断と動きへ結びつける必要があった。
勇翔は、横から見える範囲を確かめた。
小貝がいつも自分の機体へ乗り込む時には、これほど長く、手の置き場所を見てはいない。
いまは、先に説明を受け、そのあとに指を出す。
間違えないよう、動かすたびに目を戻していた。
勇翔「さっき、一機で席も一つだと言っていましたね」
小貝「乗員が増えねえとは言った。読むものが増えねえとは、言ってない」
勇翔は少し笑った。
小貝も、操縦席の中で息を吐く。
小貝「お前は、あと二人。俺は、操作を覚えて、読んで分かる資料を揃えるところからか」
勇翔「どちらも、今日すぐに揃うものではなさそうです」
小貝「だな。担当って名前をつけただけで、済むなら楽なんだけどよ」
IL-2が、操縦席の外から記録を示した。
IL-2「名前が決まったから、誰が何を覚えるかも決められる。次は、それをやれ」
小貝「分かってる。俺の名前の下へ、随分増えそうだがな」
小貝は資料を担当者へ戻し、操縦席から出た。
足場へ立って、もう一度中を見る。
今度は、さっき説明された位置から順に目を動かした。
まだ、自然には辿れない。
その場所を見つけるまでの間を、短くしていかなければならなかった。
機体から降りると、勇翔が待っていた。
勇翔「担当は、引き受けるんですか」
小貝「引き受ける。あれがどんな動きをするか、俺も確かめたいからな」
小貝はSu-57へ目を戻した。
小貝「その前に、座った俺が何をしてるか分かるようにしてくれ、って話だ」
勇翔「はい」
代理人は二人の前へ来た。
手元の紙には、確認中に出た項目が書かれている。
代理人「二人とも、ありがとう。10式は乗員を揃えることから。Su-57は、操作系統と表示への習熟から。今日見てもらった分を、次の準備へ回そう」
小貝は頷いた。
勇翔も、車両整備区画へ続く通路を見た。
どちらの場所にも、任されたものがある。
乗員を揃える相談も、操縦席の表示を照合する作業も、担当者と合わせて進めることになった。
*
昼前の会議室には、朝とは別の紙が並んでいた。
10式の方には、車長、砲手、操縦手の三つの欄。
Su-57の方には、試験担当からの説明、表示と警報の対訳、地上での習熟。
シュヴァルベは二人の報告を聞き、現地の整備担当と調整する項目へ印をつけた。
セルゲイも、受入側の予定を持って来ていた。
セルゲイ「見てきたそうじゃな。どうだったかの」
小貝「機体はある。乗る場所もある。けど、俺の手には、まだ馴染んでねえ」
勇翔「10式も、実物を見られました。まずは乗員の候補を相談し、役割ごとに説明を受けたいです」
セルゲイは机の紙を見て、頷いた。
セルゲイ「それなら、説明に使う場所を先に確保しよう。整備の担当にも、君たちと話す時間を取ってもらう」
代理人「お願いするよ。こちらの製作と試験の担当も合わせる。乗員の候補は、地上型の皆からも話を聞いて決めたい」
勇翔「僕がどの役割を受け持つかも、候補の方と相談させてください。三人で行う確認を、最初から組んでおきたいので」
代理人「分かった。君を中心に進めてもらうけれど、乗員の分担は、その相談を経て決めよう」
小貝はSu-57の資料を開いた。
操縦席の写真の端に、覚える項目を書き足してある。
朝、ここで見た時には気づかなかった文字にも、いまは目が行った。
小貝「こっちは、試験に乗った担当から話を聞きたい。操作の説明だけじゃなくて、実際に触った時に、何が違ったか」
代理人「その話も、聞けるようにする」
小貝「頼む。数字と、乗った感じが繋がると、考えやすくなる」
代理人は二つの資料を見比べた。
代理人「F-3とA-10の予定もある。今日決まった準備を、そちらと重ねすぎないように調整する。日程を置く前に、二人と担当者へ確認しよう」
勇翔「ありがとうございます」
シュヴァルベが、まだ空いている欄を二人へ示した。
説明の日付も、乗員の名前も、これから埋めるところがある。
シュヴァルベ「候補の方と、試験担当への連絡を進めます。決まり次第、お二人へお渡しします」
小貝「分かった。俺はその間、こいつを読む」
手元の資料を軽く上げた。
勇翔も、10式の車内配置があるページを開く。
勇翔「僕も、役割ごとの操作を整理しておきます。説明を受ける時に、聞きたいことを揃えておきたいので」
セルゲイが、少し笑った。
セルゲイ「着いたばかりなのに、もう机の上が増えたのう」
小貝「増えたのは、紙だけじゃねえけどな」
代理人も笑い、記録をシュヴァルベへ渡した。
話を終えると、セルゲイは基地の担当と会うために席を立った。
代理人も一緒に部屋を出る。
扉が閉まったあと、勇翔と小貝はしばらく資料を開いたまま残った。
小貝「お前が戦車で、俺がSu-57か」
勇翔「昨日、ここへ来た時には、そこまで考えていませんでした」
小貝「俺もだ。とりあえず着いて、飯の場所を覚えたところだったんだが」
勇翔は10式の乗員の欄へ目を落とした。
現地評価の担当として指名されたが、乗員の分担は、これから相談して決める。
車内を思い出し、ほかの二人と、どの役割を分担するかを考えた。
小貝は操縦席の写真を見ていた。
先ほど説明された場所を、紙の上でもう一度探す。
見つけると、その横へ小さく印をつけた。
小貝「まず、こっちの位置から覚えるか」
勇翔「僕は、三人がどう連絡するかを確認します」
勇翔は筆記具を取り、車内配置の脇へ質問を書いた。
小貝も次のページを開く。
窓の外から、整備区画へ向かう車の音が聞こえた。
しばらくして、扉が軽く叩かれた。
スネジンカが顔を覗かせる。
スネジンカ「お昼の前に、もう少し案内できます。お二人とも、行かれますか」
小貝が資料から目を上げた。
勇翔は書いていた質問を終え、筆記具を収める。
勇翔「お願いします。今日見た区画へ、自分で戻れるようにしておきたいです」
小貝「俺も。しばらく、何度も通うことになりそうだ」
スネジンカは頷き、廊下の方へ向き直った。
勇翔は地図と10式の資料を持つ。
小貝もSu-57の記録を閉じ、その上へ自分の書いた紙を重ねた。
扉の外では、マルフーシャが待っていた。
二人が出ると、彼女は次に覚える通路を示した。
勇翔はその角へ地図の印をつけ、小貝は格納区画へ戻る道を見てから、皆のあとへ続いた。
お久しぶりです。
私はゴーストライターとなった素人小説書きです
街頭につるされる時間もそう長くなさそうです。
感想お待ちしています。
兵器解説
-
アリ
-
ナシ