陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
もし、元ネタを知らない方は
Google先生にアッシュアームズをぶち込んで検索するように。
もう知っている方はどうぞ。
検索して一応なんとなくわかった方もご視聴ください。
北方の辺境基地、食堂。
昼食を終えた者が席を立ち始めても、勇翔は机に広げた紙を片づけずにいた。
10式戦車の乗員。
車長、砲手、操縦手。
自分がどこを受け持つにしても、あと二人が要る。
午前中に見た車内を思い出し、空いている欄へ目を戻す。
機械の配置は描ける。
そこへ座る人の名前は、まだ書けなかった。
スネジンカ「渡邉さん。お皿、もう下げていいですか」
声を掛けられ、勇翔は顔を上げた。
いつの間にか、マルフーシャとスネジンカが隣に来ていた。
勇翔「あ、はい。ありがとうございます」
勇翔は紙を寄せ、空になった皿を持った。
スネジンカへ渡そうとしてから、自分で下げるために立ち上がる。
スネジンカ「そんなに急がなくても、大丈夫ですよ」
勇翔「考えていると、ほかのものが目に入らなくなっていました」
マルフーシャ「戦車のことですか」
勇翔は頷いた。
皿を返し、席へ戻る。
姉妹も向かいに座った。
勇翔「乗員をどうするか、考えていました。代理人の部隊の方にも相談しているんですが、今の任務や、訓練に使える時間もありますから」
マルフーシャは紙の三つの欄を見た。
マルフーシャ「三人で、動かすんですね」
勇翔「はい。操縦の確認だけなら、その作業に合わせた準備でできます。でも、車両を運用するところまで見るなら、乗員を揃えて連携を覚える必要があります」
スネジンカ「一人が運転して、一人が砲を使って……」
勇翔「もう一人が、周囲を見て指揮をします。僕もどの役割を受け持つかは、候補の方と相談して決めるつもりです」
スネジンカは、空いている欄へ指を近づけた。
触れる手前で止め、勇翔を見る。
スネジンカ「では、まず二人に来てもらわないと」
勇翔「そこが、まだ決まりません」
勇翔は筆記具を持ち直した。
自分がこの基地で知っている人は、まだ少ない。
地上の仕事をしている者を見かけても、どんな経験があり、何を任せられるかまでは分からなかった。
マルフーシャ「私たちも、知っている人に聞いてみます。ただ、戦車に乗ったことがある人となると……」
彼女は少し考えて、食堂の入口へ目を向けた。
マルフーシャ「あ。ちょうど来ました」
入口から二人の兵士が入ってきた。
一人は食堂の様子を確かめ、まっすぐこちらへ歩いてくる。
もう一人は赤い髪を揺らし、マルフーシャを見つけると手を上げた。
アリビナ「いたいた。もう食べ終わった?」
マルフーシャ「はい。二人は、これからですか」
ライカ「勤務の引継ぎが済んだところです。少し遅くなりました」
ライカは、机に広がっている紙へ視線を落とした。
そのあと、勇翔を見る。
マルフーシャ「紹介します。こちらは渡邉勇翔大尉。昨日、基地へ来られた方です」
勇翔が立ち上がる。
勇翔「渡邉です。よろしくお願いします」
マルフーシャ「こちらはライカとアリビナ。私の友人です。ライカには、勤務でもいろいろ教えてもらっています」
ライカ「ライカです。地上の防衛勤務をしています」
勇翔は同じ名を受入基地でも聞いていた。
いま紹介されたライカは、マルフーシャと地上勤務を共にする兵士だった。
アリビナ「アリビナよ。あなたが、新しい飛行機で来た大尉?」
勇翔「はい。F-3で、こちらへ来ました」
アリビナ「遠くからでも目立ってたわ。あの機体なら、格納庫でもすぐ分かりそうね」
ライカ「アリビナ。通路を塞いでいます」
アリビナ「あ、そうだった。隣、いい?」
勇翔は資料を寄せ、二人が座れる場所を空けた。
ライカとアリビナは食事を受け取って戻り、姉妹の隣につく。
アリビナは席へ腰を下ろすと、さっそく紙を覗いた。
アリビナ「飛行機の話だと思ったら、戦車?」
勇翔「10式戦車です。試作された車両で、こちらで運用評価をすることになりました」
アリビナ「飛行機を飛ばした次は、戦車に乗るの?」
勇翔「担当には、指名されました。陸戦と戦車戦の経験を、生かしてほしいと。ただ、その前に乗員を揃えないと」
マルフーシャが、勇翔から聞いた話を二人へ伝えた。
車長、砲手、操縦手。
勇翔を含めた三人で、役割を分担する。
車両は届いているが、候補の選定と習熟はこれからだ。
ライカは食事の手を止め、三つの欄を確かめた。
ライカ「いま探しているのは、二人。役割は、その二人の経験も見て決めるということですね」
勇翔「はい」
ライカ「すぐに乗って動かせる人が必要なのですか」
勇翔「説明と訓練の時間は取ります。ただ、基礎のある方なら、その先へ進みやすいです。指示を聞いて状況を整理することや、ほかの乗員へ必要なことを伝える力も見たいと思っています」
アリビナは、車内配置の図へ目を向けた。
アリビナ「砲を使うところは、こっちね。見るものも、随分あるみたい」
勇翔「製作と試験の担当に、説明してもらったところです。僕も、まだ確認したいことがあります」
アリビナ「知らない車両なのに、乗れる人を探す方が先に来たのね」
勇翔「そうなんです。車両だけを見ていても、空いている席は埋まりませんから」
スネジンカは自分の勤務で顔を合わせる者を思い浮かべていた。
マルフーシャも、車両の近くで働いている者の名前を、いくつか挙げた。
ライカは、挙がった名前の持ち場と勤務の時間を確かめる。
アリビナは図を見て、勇翔へ尋ねた。
アリビナ「その人たちが引き受けられるかどうかは、まだ聞いていないのよね」
勇翔「はい。経験があっても、今の仕事から動けるかまでは」
勇翔は、紙の端に書いた候補の名前を見た。
名前が出るたびに、勤務の事情も増えていく。
この席にいる者が知っている範囲だけでは、まだ足りない気がした。
食堂の壁には、当番と連絡の紙が貼られていた。
昼食を終えた兵士が立ち止まり、自分の名前を確かめている。
勇翔はその様子を見て、筆記具を止めた。
勇翔「……基地内で、募集を掛けてみるのはどうでしょう」
姉妹が、同じように顔を上げた。
勇翔「こちらで知っている方に順番に聞くより、希望する方に名乗り出てもらうんです。車両を扱った経験や、射撃の経験も、その時に聞けます」
スネジンカ「ここに貼っておけば、食事に来た人にも見てもらえますね」
マルフーシャ「事務の窓口にも、掲示板があります」
ライカ「募集を出すなら、持ち場の調整も必要です。受入側に話を通し、応募の受付場所と説明の日時を決めた方がよいでしょう」
勇翔「セルゲイ大佐と代理人に、相談してみます」
アリビナが、紙の空いているところを示した。
アリビナ「二人を探していることは、大きく書いた方がいいわ。役割がまだ決まっていないことも。運転しかできないから、と読まずに通り過ぎる人がいるかもしれないし」
勇翔は頷き、募集の下書きを始めた。
10式戦車の乗員候補、二名。
経験を聞いたうえで、役割と習熟の予定を相談する。
応募する者には、仕事内容の説明を行う。
食堂へ来るまで白かった紙に、ようやく次にすることが書けた。
*
午後の司令室では、代理人とセルゲイが募集の下書きを見ていた。
代理人「基地の中まで、候補を広げるわけだね」
勇翔「はい。部隊の方への相談と並行して、こちらでも希望者を募れればと思います」
セルゲイ「戦車の仕事なら、興味を持つ者はおるだろう。だが、今の持ち場との調整は必要じゃ」
勇翔「応募の時に、そちらも確認していただきたいです。引き受けたあとで、両方の仕事ができなくなるのは困りますから」
セルゲイはソヴァへ下書きを渡した。
受付の窓口と、説明に使う場所を決める。
代理人はシュヴァルベと、製作・試験の担当が立ち会える時間を確かめた。
代理人「明日の午前に、最初の説明を入れよう。君も一緒に、応募した人の話を聞いてほしい」
勇翔「承知しました」
代理人「いきなり車両を動かしてもらう必要はない。経験を聞き、役割を説明してから、基礎を確かめる。何を見たいかは、担当と合わせよう」
勇翔は用意してきた紙を開いた。
車両を扱った経験。
射撃に関わった経験。
説明を聞いて確認すること、周囲の者と連絡を取ること。
乗員へ任せたい仕事を考え、その手前に必要なものを書いていた。
代理人は目を通し、頷いた。
代理人「うん。これなら、候補を比べる時にも話せる。分からないことは、こちらの担当にも聞いて進めよう」
募集の内容が整うと、勇翔は掲示する紙を受け取った。
マルフーシャとスネジンカが、最初の掲示板まで案内する。
アリビナは、紙が傾いていないかを横から見ていた。
アリビナ「もう少し右。……そこ。これなら、ちゃんと目に入るわ」
ライカ「読める位置なら十分です。受付場所の行が、ほかの紙に隠れていないかも見てください」
勇翔は一歩下がって確かめた。
食堂の入口、事務窓口、車両整備区画。
人の行き来がある場所へ、同じ募集を出していく。
作業を終える頃には、紙を見て立ち止まる者がいた。
「新しく来た戦車の乗員?」
「大尉と一緒に乗るんだって」
勇翔は足を止め、尋ねられたことへ答えた。
経験のある者も、ない者もいた。
応募するには、明日の説明へ来ればよいと伝える。
事務の窓口へ戻ると、既に数人の名前が寄せられていた。
スネジンカ「思っていたより、早いですね」
勇翔「はい。希望する方がいるなら、まず話を聞けます」
勇翔は名簿を受け取った。
今朝、車内で考えていた二つの空席を思い出す。
そのうち誰かが、同じ説明を受け、一緒に座ることになるかもしれなかった。
*
翌朝、基地内の説明室。
机に並んだ椅子へ、応募した者が座っていた。
勇翔は名簿と顔を照合し、全員が来ていることを確かめる。
代理人側の担当者も、10式の車内配置と試験の資料を持って来ていた。
マルフーシャとスネジンカは、入口で場所を尋ねる者を案内する。
ライカとアリビナも、勤務の合間に説明室へ顔を出していた。
ライカ「受付の控えは、こちらです。説明のあとに個別で話を聞く順番も、記入してあります」
勇翔「ありがとうございます」
アリビナ「図の控えは、机ごとに置いておいたわ。人数分、あるはず」
勇翔は頷き、部屋の前へ立った。
勇翔「来ていただいて、ありがとうございます。最初に、10式でどんな仕事をしてもらうかを説明します」
担当者が車両の写真を示した。
勇翔は、車長、砲手、操縦手の役割を順に話す。
自動装填装置があっても、周囲を見る者と、砲を扱う者、車両を走らせる者の仕事は残る。
機械が勝手に、三人分の判断を引き受けるわけではない。
応募した者たちは、写真と図へ目を向けていた。
何人かは、説明の途中で隣の者へ声を掛ける。
ライカが静かにそちらへ寄り、前の話を聞くよう促した。
勇翔「この車両の操作を、今日の時点で知っている必要はありません。説明と習熟の時間は取ります。その前に、皆さんの経験と、どの仕事を受け持てそうかを聞かせてください」
勇翔は机へ戻り、最初の応募者を呼んだ。
名簿の脇には、話を聞くための欄が用意されている。
午後には候補を絞り、その後の相談へ進められる。
その時は、まだそう考えていた。
*
最初に呼ばれた者は、車両を扱った経験があると答えた。
勇翔「どんな車両ですか」
「物資を運ぶものです。倉庫で使っています」
勇翔は、どの作業を受け持っていたかを聞いた。
押して運ぶ台車の扱いと、積荷の載せ方。
車両の運転を任されていたわけではなかった。
勇翔は記録へ書き込み、別の質問へ移った。
何かを覚える時、分からないところをどう確認しているか。
複数の人と作業をする時、どんな合図を交わしているか。
相手は答えようとして、何度か話を止めた。
問い方を短くし、具体的な作業へ置き換えると、ようやく答えが返る。
手足を使って働くことには慣れている。
しかし、説明を聞いて役割を整理するところでは、勇翔が思っていたより多くの補助が要った。
次の者は、射撃を希望していた。
「銃は撃っています。戦車の砲なら、もっと大きいですから」
勇翔「大きいから、というと?」
「当たれば、強いと思うので」
勇翔は主砲の威力の話をいったん置き、射撃の経験を尋ねた。
担当者が持参した確認用の記録と照らし合わせる。
本人が自信を持って話したほど、成績は安定していなかった。
どこで失敗したかを聞くと、相手は少し困った顔をした。
外れたことは覚えている。
その前に何をし、何を確かめたかは、話がなかなか繋がらなかった。
勇翔は、砲手に任せる仕事の説明をもう一度行った。
射撃だけに気持ちが向くと、ほかの乗員との連携が抜ける。
相手は頷いていたが、役割を自分の言葉で話してもらうと、今度も撃つことから話し始めた。
続く者には、机上で短い連絡の練習をしてもらった。
未知の機械の名称は使わない。
紙に描いた区画の図と、そこに置かれた印を見る。
自分が確かめたことを、別の位置にいる者へ伝えるだけの簡単なものだった。
図は、双方へ同じものを渡してある。
勇翔が短く説明すると、相手は大きく頷いた。
「分かりました」
しかし、伝える段になると、見たことと推測したことが混ざった。
聞き手の方から問い返されると、さらに別の場所の話へ移る。
勇翔は途中で止め、順に確かめ直した。
勇翔「ここで見えたものは、何ですか」
「この印です」
勇翔「では、最初はその場所だけを伝えてください」
そこからなら、話を進められた。
ただ、少し情報が増えると、また先ほどの混乱へ戻ってしまう。
勇翔は記録の端へ、必要になりそうな訓練を書いた。
連絡の仕方。
説明の聞き取り。
作業を一つずつ確認すること。
10式の装置を覚える手前で、整えなければならないものが、いくつもあった。
同じ確認を、ほかの者にも続けた。
車両の経験がなくても、説明をきちんと聞き、分からないことを尋ねられる者はいる。
その一方で、基礎の射撃技能が足りない者、話の途中で先へ手を出そうとする者、役割を説明しても自分のしたい作業だけを挙げる者が、予想以上に多かった。
車両の運転経験があり、質問にも明確に答えられた者が来た時は、勇翔も紙へ顔を近づけた。
だが、勤務の確認に進むと、継続して訓練に参加できる時間がほとんどなかった。
現在の持ち場で代わりを立てられるかは、別の相談が必要になる。
気づけば、午前の説明に使った紙の脇へ、確認事項が何枚も増えていた。
名簿に並ぶ人数は、足りている。
運用に必要な基礎技能と、訓練へ参加できる条件を合わせて見ると、候補はまだ絞りきれなかった。
その中でも、基礎技能が勇翔の想定より低い者が多かったことは、はっきりしていた。
最後の応募者を見送ると、勇翔は椅子へ深く座り直した。
マルフーシャ「渡邉さん」
勇翔「……はい」
返事が少し遅れた。
マルフーシャは机の端へ、残った資料を揃えた。
マルフーシャ「人数は、集まりましたね」
勇翔「はい。集まったんですが……」
勇翔は名簿を見た。
車両の乗員に必要なものを、自分の中で急に増やしたつもりはない。
知らない装置を操作できないのは、当たり前だ。
それより前の、説明を理解し、確認を返し、役割を分けるところで、何度も足が止まっていた。
勇翔「最初から教えることが、思っていたより多いです」
スネジンカ「これから、少しずつ覚えてもらうことはできませんか」
勇翔「できます。ただ、基礎を揃える時間と、車両の操作を覚える時間を、両方見ておかないと。募集した二人を、そのまま次の試験へ呼ぶようには進められません」
勇翔は三つの乗員欄を見た。
昨日と同じように、二人分が空いている。
募集すれば、経験のある者の中から選べる。
そう考えていた分だけ、どこから手をつけるかを、もう一度整理する必要があった。
担当者は、追加の確認をしたい応募者の紙を分けた。
勇翔も、今の勤務を調整できれば候補になりそうな者へ印をつける。
すべてを白紙へ戻すわけではない。
それでも、ここで二人を決められる見通しは、まだ立たなかった。
*
午後、勇翔は食堂の端の席へ戻った。
今度は食事の皿を置かず、名簿だけを開く。
マルフーシャとスネジンカが向かいに座った。
二人も、受付で受け取った控えを持っている。
スネジンカ「ほかの勤務の人にも、募集を見てもらえるようにしますか」
勇翔「それも考えています。ただ、人数を増やすだけで解決するかは、まだ分かりません」
マルフーシャは、勇翔の書いた確認事項を見た。
マルフーシャ「乗りたい人と、乗るための準備ができている人は、同じではなかったんですね」
勇翔「はい。僕も、もう少し基礎が揃った方が来ると思っていました」
勇翔は筆記具を机へ置いた。
応募した者たちに、やる気がなかったわけではない。
新しい戦車を見たい、仕事を覚えたい、そう言った者もいる。
その気持ちを受け取ることと、今の技能を確かめることは、別にしなければならなかった。
候補に残った者の訓練を、どこまで増やすか。
別の勤務から、基礎のある者を探すか。
勇翔は紙へ目を戻し、同じ二つの考えを行き来していた。
その横へ、説明室で使った図が置かれた。
ライカ「この控えも、返しておきます。受付で書き足したものは、別にしてあります」
顔を上げると、ライカとアリビナが来ていた。
勤務へ戻っていた二人が、手伝いの時に使った資料を届けてくれたのだった。
勇翔「ありがとうございました。お二人にも、手を借りてしまって」
ライカ「説明を聞きに来た者を案内するだけなら、できます。選ぶ方は、進みましたか」
勇翔は少し黙り、首を振った。
勇翔「まだです。基礎から確認することが、多くて」
アリビナ「そうね。さっきの連絡の練習は、図が同じだったのに、違う話になってたわ」
アリビナは、机に置いた図を引き寄せた。
印のある場所を、指で示す。
次に、聞き手へ渡した図の同じ場所を見る。
アリビナ「ここで見たものを、まずここだって伝える。別のところで起きていることは、まだ確認していないんだから、混ぜたら相手が困るでしょう」
簡単に言い、図を戻した。
午前中、勇翔が何度か言い直した内容を、彼女は一度聞いただけで整理していた。
ライカ「分からないところを聞き直せた者もいました。ただ、同じ説明を聞いていても、理解できたつもりで進んだ者には、もう一度確認が必要です」
ライカは受付の控えを示した。
ライカ「個別の説明の時に、追加で聞かれたことはここに記してあります。回答を担当へ確認するものと、その場で説明したものを分けてあります」
勇翔は控えを受け取った。
名前と質問の内容が揃い、誰に確認するかも分かる。
話を聞いた順番まで戻して探す必要はなかった。
勇翔「ここまで、まとめてくださったんですか」
ライカ「あとで確認する時に、分からなくなると困りますから」
勇翔は紙を読み、顔を上げた。
次に、アリビナへ目を向ける。
彼女は車内配置の図を眺めていた。
砲手の位置から車長の位置へ、指を動かす。
説明室で聞いた仕事を、図の中の場所へ結びつけているらしかった。
アリビナ「ところで、砲を使う人がこちらを見ている間は、周囲の話はこっちから伝えるのよね」
勇翔「はい。もちろん、見る範囲は役割だけで全部分かれるわけではありませんが、連絡して合わせる必要があります」
アリビナ「一人で全部見ていたら、忙しすぎるもの。分担しているなら、その連絡も仕事のうちになるわね」
勇翔は、すぐには次の言葉を出さなかった。
午前中から、候補者の記録ばかり見ていた。
その間、ライカは聞いた内容を正確に整理し、必要な確認を残していた。
アリビナは、図と説明を素早く結びつけている。
募集の受付を手伝う者として、二人の働きは見ていた。
乗員を探す時には、その二人を候補へ入れて考えていなかった。
マルフーシャが勇翔の視線に気づき、ライカとアリビナを見た。
マルフーシャ「二人とも、仕事では頼りになります。アリビナは射撃も正確ですし、座学の成績もよかったです」
アリビナ「そこは、もう少し大きく言ってくれていいのよ」
ライカ「ここは食堂です」
アリビナ「褒められた時くらい、いいじゃない」
スネジンカが少し笑った。
勇翔も口元を緩めたが、すぐに乗員の欄へ目を戻した。
射撃の基礎がある。
説明を聞いて、仕事を整理できる。
分からないものと確認済みのものを分け、次に必要な連絡を残せる。
10式に乗った経験があるかどうかとは、別のところで、二人には頼めそうなものがあった。
そこから車両の操作と連携を覚えてもらうことは、できないだろうか。
勇翔「ライカさん。アリビナさん」
名前を呼ぶと、二人がこちらを向いた。
勇翔「少し、お話を聞いていただけませんか」
ライカ「何でしょう」
勇翔は二人の前へ、10式の車内配置を置いた。
その脇に、車長、砲手、操縦手の欄がある紙を広げる。
勇翔「お二人に、10式の乗員候補として協力していただきたいんです」
アリビナの指が、図の上で止まった。
ライカも、紙から勇翔へ目を戻した。
アリビナ「……私たち?」
勇翔「はい」
ライカ「私たちは、募集に応募していません。それに、戦車の乗員経験をお話しした覚えもありませんが」
勇翔「分かっています。今の時点で操作を知っていると思って、お願いしているわけではありません」
勇翔は、ライカがまとめた受付の控えを示した。
勇翔「ライカさんは、説明の内容を正確に整理し、必要な確認を残していました。乗員の仕事でも、指示を聞き、分からないことを確かめ、ほかの二人へ伝える力が要ります」
ライカは控えへ目を落とした。
すぐには頷かず、話の続きを待っている。
勇翔はアリビナへ向き直った。
勇翔「アリビナさんは、図を見て、役割と連絡の関係をすぐに理解していました。射撃と座学の話も、マルフーシャさんから聞きました。その基礎を、車両の仕事へ繋げていただけないかと思ったんです」
アリビナ「射撃に自信はあるわ。でも、あの大きな砲を撃つのは、私も初めてよ」
勇翔「その装置の操作は、製作と試験の担当から教わります。僕も一緒に確認します。役割は、お二人の希望と、説明を受けたあとの様子を見て相談したいです」
ライカは紙へ手を置いた。
三つの役割を見てから、勇翔を見た。
ライカ「今の持ち場は、どうするのですか。説明を聞くことと、乗員として訓練に参加することでは、必要な時間が違います」
勇翔「そこは、セルゲイ大佐と代理人へ調整をお願いするつもりです。お二人の仕事を、僕の判断だけで外すことはできませんから」
ライカ「なら、その調整も含めて説明してください」
声は厳しかった。
ただ、席を立つ様子はない。
アリビナは、車内の写真を見直した。
砲塔の中と、座る場所。
新しい仕事を思い描くように見てから、勇翔へ目を向けた。
アリビナ「私を頼りにするのは、分かるわ。けど、何を覚えて、どのくらい通うことになるかは、ちゃんと聞きたい」
勇翔「はい。今日は、引き受けると決めてもらう前に、その話をさせてください」
勇翔は資料を開いた。
ライカとアリビナの間へ、二人から見える向きで置く。
マルフーシャとスネジンカは口を挟まず、隣で見ていた。
募集を手伝っていた二人が、今度は誘われる側として、資料の前へ座っている。
まだ、乗員の名前を書く段階ではなかった。
勇翔は二人の顔を見て、覚えてもらいたい仕事から、もう一度説明を始めた。
感想お待ちしてます。
兵器解説
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ナシ