陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
もし、元ネタを知らない方は
Google先生にアッシュアームズをぶち込んで検索するように。
もう知っている方はどうぞ。
検索して一応なんとなくわかった方もご視聴ください。
北方の辺境基地、航空機用の格納区画。
勇翔が10式の乗員を探している間、小貝はSu-57の操縦席へ通っていた。
試験担当からの説明が始まり、表示と警報の対訳も、機体の実物と照らし合わせて揃えられていく。
最初は紙の番号を辿っていた手が、確認を重ねるにつれて、該当する場所へまっすぐ伸びるようになっていた。
操縦席のそばに置かれた資料には、小貝自身が書き足した印がある。
写真の脇に、短い意味と、見落としたところ。
大きく丸をつけた箇所も、前より少なくなった。
「では、こちらの表示を」
担当者の声に、小貝は前方へ目を向けた。
今日は通電した状態で、地上で確認できる範囲の表示と操作を確かめている。
小貝は内容を読み、該当する系統と、確認する項目を答えた。
担当者が頷く。
次の項目へ進むと、小貝の手も、それに合わせて動いた。
前に座った時なら、まず資料へ目を落としたところだ。
いまは位置を確かめ、そのあとで、説明の控えと照合している。
「今のところまで、迷わず進められています」
小貝「こっちは、ようやく場所を覚えた。最初は、どこを見ても別の文字だったからな」
小貝は操作部の横を見た。
ロシア語の表記は、そのまま残されている。
文字が変わったわけではない。
見た時に浮かぶ意味の方が、少しずつ変わっていた。
最初は、意味を探すために視線が止まった。
いまは、そこに書かれた項目と、担当者から聞いた説明が繋がる。
全部の言葉を読めるようになったわけではないが、必要な表示には、目を向ける順番ができていた。
小貝「次は、こっちだな」
小貝は確認する場所を示した。
担当者は、資料の該当する欄へ印をつける。
「はい。ただ、こちらと似た表記が、別のところにもあります」
小貝「そっちは、まだ間違えそうになる。昨日も一回、見直した」
小貝は二つを見比べた。
意味を言い、何が違うかを確かめる。
そのあとで、手元の控えへ短く書き足した。
分からないところは残っている。
それでも、初めて座った時のように、何もかもを探し直す状態ではなくなっていた。
説明を受けるたびに、ひとつ前の確認へ戻る回数が減っている。
小貝は座席へ身体を落ち着け、左右の操作部を見た。
A-10で覚えた位置へ、無意識に手を出しかけることも、少なくなった。
こちらの配置を、こちらの仕事として覚え始めている。
小貝「なるほどな……」
「何か、気になるところが?」
小貝「最初に見た時は、よく分からねえ並び方だと思ったんだが」
小貝は、さっき確認した場所から次の場所へ、目を動かした。
小貝「何を見て、何を確かめて、そのあと何をするか。そこが分かると、この位置に置いてある理由も見えてくる」
操作部が少なくなったわけでも、表示が簡単になったわけでもない。
それでも、扱う内容を理解すると、ばらばらに見えていたものの間へ、順番が通る。
ただ慣れている配置と違う。
それだけで、扱いにくいと決めかけていたところもあった。
小貝はその違いを、指先の動きで確かめ直していた。
小貝「……よく考えてあるわ、こいつ」
担当者は、有人化の改修記録を近くへ寄せた。
「残されていた装置と、有人仕様に合わせて整えた部分があります。今回の説明は、その状態で行った試験の記録に合わせています」
小貝「分かった。いま目の前にある、こいつの話ってことだな」
「はい」
小貝は頷き、資料へ目を戻した。
回収時の無人仕様から、修復と改修を経て、人が座って操作できる機体になった。
その状態で、既に試験を終えている。
小貝は、この操縦席で確かめた動きと、試験担当の説明を繋げていった。
次の確認へ進む。
小貝は表示を見て、説明を返した。
担当者から問い直されると、資料を開き、必要なところを確かめる。
昨日より、話が速く通る。
小貝自身にも、それが分かった。
*
午前の地上確認が一段落すると、小貝は機体から降り、格納区画の脇にある机へ移った。
試験担当が、修復後の飛行記録を開く。
有人仕様へ改修した本機で、何を確認したか。
記録には、速度だけでなく、その時の燃料や搭載条件も残されていた。
小貝は説明を聞きながら、紙へ目を走らせる。
以前、代理人から聞いた性能が、ここでは実際の試験の条件と並んでいた。
小貝「ここが、超音速巡航を確かめたところか」
「はい。こちらの記録と合わせてご覧ください」
別の記録には、機動性の確認がある。
電子装備の作動と、管制との情報のやり取り。
低視認性に関する試験も、条件を分けて整理されていた。
小貝は、同じ数字を読む時でも、見る場所が変わっていることに気づいた。
最初に資料を渡された時は、どこまで動けるか、何を積めるかが先に目へ入った。
いまは、その性能を使う時に、操縦者が何を見ることになるかも考えられる。
小貝「戦闘機として空の相手を見ながら、地上の仕事も持っていける。機体の方は、その両方を繋げて使うつもりでできてるわけか」
「各装備の確認は、こちらにまとまっています。実際の任務でどう合わせるかは、今回の運用評価でも見ていただきたいところです」
小貝「うん。そこは、数字だけじゃ済まねえな」
小貝は、最大戦闘搭載量の欄を見た。
七千五百キログラム。
移動用の条件で確認した航続距離は、四千キロメートル。
その二つを、一つの飛び方へそのまま重ねるわけではない。
どれだけ持って行き、どこで使い、どこまで帰るか。
試験の条件を追うと、数字の横に、その時の機体の姿が浮かぶようになっていた。
小貝「これで、何でも一度にやれると思ったら、読み間違えるな」
「はい。搭載条件と飛行条件は、それぞれ残しています」
小貝「助かる。向こうがどんな条件を選んだかで、こっちの見方も変わる」
アグレッサーとして相手を見る時と、乗る側として装備を見る時。
同じ資料でも、先に考えるものが違う。
小貝はその二つを、何度か行き来していた。
見つけにくくする。
速く移動する。
動きの幅を持つ。
空でも地上でも、目的に合わせた装備を使う。
一つだけを大きくするより、相手が対処しにくいところを、いくつも合わせている。
操作の配置に見えてきた筋と、機体全体でしようとしている仕事が、少しずつ重なった。
小貝「……嫌な機体だな」
担当者が顔を上げた。
小貝は、その反応へ手を振る。
小貝「相手にいたら、って話だ。乗る側なら、ありがたい。よくも、これだけ繋げて考えたもんだ」
小貝は資料を少し引き寄せた。
それでも、万能だとは思わなかった。
機体の持つものをどう使うかは、乗る者と、周囲の者の判断にも左右される。
その準備を、いま自分が始めていた。
「この先の説明は、午後の担当と合わせて進めます。少し間が空きますので、こちらの控えを先に」
小貝「分かった。読んでおく」
担当者が席を離れ、格納区画の作業音が戻ってくる。
小貝は資料を閉じず、機体へ目を向けた。
昨日より、知らないところが減っている。
覚えることは、思っていたより順調に進んでいた。
それが、少し嬉しかった。
同時に、机へ並んだ性能と、目の前の機影が、昔の空を呼び戻していた。
*
乾いた機器音。
短く重なる無線。
目を動かした先へ、相手の姿が来る。
昔の空戦では、いまのように机の上で順に考える時間はなかった。
確認している間にも、相手が次の位置へ移る。
こちらが次にしようとすることを、先に潰そうとしてくる。
そのたびに、判断を変えなければならなかった。
ロシア空軍の精鋭とやり合った頃の感覚が、小貝の指先へ戻ってくる。
装置の性能だけを見ていたら、間に合わない。
向こうにも、こちらの飛び方を見ている人間がいた。
あの時、何を見落としかけたか。
どこで相手の意図を読むのが遅れたか。
帰ってから記録を見れば、別の考え方も浮かぶ。
空にいる間は、その考えへ届くまでの数秒が、どうしても長かった。
身体へかかる重み。
息を吐いても、次の息がすぐには入らない感覚。
手を動かし、機体を確かめ、もう一度外を見る。
同じことを続けているつもりでも、余裕のある時と、追い詰められた時では、見えているものが違った。
訓練なら、止めたあとで聞ける。
なぜそこで動いたのか。
何を見て、その判断にしたのか。
実戦では、相手がそれを教えてくれるわけではない。
説明を聞けば、筋が通っている。
記録を見直せば、意味が分かる。
それを、空の中で、自分に向けられた意図として読まなければならなかった。
小貝「……分かってからじゃ、遅え時もあるんだよな」
声は、格納区画の音に紛れた。
記憶の中の無線が、まだ耳の奥に残っていた。
そこにいた自分の呼吸も、指先の力も、思い出せる。
綺麗に説明できるようになった今でも、あの時の苦さまでは、紙へ直せなかった。
小貝は閉じかけていた手を開き、机へ置いた。
指が、資料の端を強く押さえていた。
いったん離すと、紙が僅かに持ち上がる。
目の前にはSu-57がある。
いまは飛んでいない。
外では整備の担当が声を交わし、こちらから質問すれば、返事が返ってくる。
小貝はその声を聞き、ゆっくり息を吐いた。
手元の控えを閉じる。
資料を閉じても、記憶の中の音は少し残った。
小貝は午後に聞くことを紙へ書き、筆記具を収めた。
まだ、次の説明まで時間がある。
机に残って同じ記憶を辿るより、少し外へ出ようと思った。
小貝が立ち上がると、通路の向こうをIL-2が歩いていた。
片手には書類、もう片方には畳んだ布がある。
頬の端には、黒い汚れが残っていた。
小貝はその顔を見て、少し口元を緩めた。
*
小貝「おう、IL-2」
呼び止めると、IL-2は足を止めた。
まず小貝の手元を見て、次に顔を見る。
IL-2「説明は終わったのか」
小貝「午前の分はな。次まで、ちょっと空いた」
IL-2「なら、資料を読め」
小貝「読んだ。聞くことも書いた。そんなに休憩へ仕事を足すなよ」
IL-2は短く鼻を鳴らした。
小貝は彼女の頬へ目を向け、顎で示す。
小貝「……あんた、顔にまで整備の印をつけるようになったのか」
IL-2「何だ」
小貝「そこの黒いの。確認済みって印かと思った」
IL-2は頬へ手を上げかけ、止めた。
自分の指を見る。
そちらにも、僅かに汚れが残っていた。
IL-2「作業の汚れだ」
小貝「知ってる。両側につけたら、何かの模様になるんじゃねえか」
IL-2「少佐は暇になると、くだらないことばかり考えるな」
小貝「頭の空いたところへ、ちょうどいい顔が来たんでな」
IL-2が目を細めた。
小貝は、さっきまで閉じていた口が、いつもの調子で動くのを感じた。
IL-2「人の顔で、時間を潰すな」
小貝「せっかくだ。休憩に付き合ってくれよ」
IL-2「私は、これを届けに行く」
彼女が書類を少し上げた。
小貝は行き先を聞き、格納区画から続く通路を見る。
小貝「なら、途中まで同じ方向だ。歩きながらでいい」
IL-2「静かに歩くならな」
小貝「それじゃあ、付き合ってもらう意味が半分なくなる」
IL-2は答えず、歩き始めた。
小貝も、その横へ並ぶ。
相手の顔を見ると、黒い汚れがまだ残っている。
彼女は布を持ち直し、頬の端を一度拭いた。
小貝「お。さすが。確認が早い」
IL-2「少佐の口を止める方が早いと思っている」
小貝「そっちは、整備しても元に戻るぞ」
IL-2「厄介な故障だな」
小貝は声を出して笑った。
IL-2は前を向いたまま歩く。
その歩幅は、小貝が横へ並べるままだった。
*
格納区画を抜けると、通路の窓から雪が見えた。
外を運搬車が通り、その後ろを人が歩いている。
小貝はしばらくそちらへ目を向けた。
IL-2「Su-57は、どうだ」
小貝「覚える方は、思ったより進んでる。最初は、座ったところから全部やり直しだと思ったんだがな」
IL-2「実際、覚え直しているだろう」
小貝「そうなんだけどよ。配置と意味が繋がると、こっちにも、ちゃんと筋があるって分かる」
小貝は、操縦席で手を動かした順を思い出した。
図を探すより先に、実物へ目が行くようになった。
その小さな変化が、思っていたより大きい。
小貝「よく考えた機体だ。空の相手に、いろいろ嫌なことができる。乗る側は、その分だけ覚えることもあるけどな」
IL-2「分からないところは」
小貝「ある。午後に聞く。ロシア語も、見慣れた項目が増えたってだけで、ほかの文章まで読めるわけじゃねえ」
IL-2は頷いた。
IL-2「なら、そのまま確認していけ」
小貝「はいはい。あんた、休憩中も短い説明が上手いな」
IL-2「無駄に長くする理由がない」
小貝「俺の軽口にも、その合理性を向けるのはやめてくれ」
IL-2「向けられるような口を使うからだ」
小貝は口元を緩めた。
さっき、機体の合理性に感心していたばかりだった。
こちらは、短い言葉で真ん中を突いてくる。
曲がり角の前で、IL-2が一度立ち止まった。
書類の宛先を確かめ、通路の先を見る。
小貝も止まる。
IL-2「少佐」
小貝「何だ」
IL-2「さっき、呼ぶ前に止まっていたな」
小貝は彼女を見た。
声を掛ける前、通路へ出たところで、少し足が止まっていたのだろう。
小貝「見てたのか」
IL-2「通路にいたからな」
小貝は一度、窓へ目を向けた。
雪の上には、新しい車輪の跡がある。
格納区画の音は、扉を隔てて少し遠くなっていた。
小貝「昔の空戦を、ちょっと思い出してた」
IL-2は黙って聞いた。
それ以上、顔を近づけたり、先を急いで尋ねたりはしなかった。
小貝「機体の資料を見てるとな。こういうのを、相手に使われた時もあったよなって。そっちは、あんまりいい思い出じゃねえ」
IL-2「そうか」
小貝「だから、いま暇なうちに、人の顔へ難癖をつけてる」
IL-2は小貝を見た。
少し間を置き、布を畳み直す。
IL-2「気晴らしの相手は、選べ」
小貝「選んでる。あんたなら、黙って聞き流さずに返してくれる」
IL-2「それで、私に来たのか」
小貝「おう。返事がある方が、こっちも楽だ」
IL-2は軽く息を吐いた。
呆れたような顔だった。
小貝は、その顔も少し可笑しかった。
IL-2「なら、こちらの用事にも付き合え」
小貝「話を聞かせたら、仕事になった」
IL-2「私は最初から、届け物の途中だと言った」
小貝「言ってたな。分かったよ」
小貝は手を差し出した。
IL-2は書類を渡しかけて、いったん止める。
IL-2「油がついていないか」
小貝「俺の手だぞ。あんたの顔じゃねえ」
IL-2の目が細くなった。
小貝は片手を上げて見せる。
汚れがないことを確かめてから、書類を受け取った。
小貝「ほら。任せろ」
IL-2「落とすな」
小貝「これくらいなら、腕にも来ねえよ」
書類を持つ手を軽く動かした。
受入基地で箱を運んだ肩も、いまは少し楽になっている。
小貝はIL-2の横へ戻り、一緒に歩き出した。
*
届け先では、係の者が二人を迎えた。
小貝が書類を渡し、IL-2が短く内容を確かめる。
用事は、長くかからなかった。
通路へ戻ると、小貝は両手を見せた。
小貝「これで、俺の整備は完了か」
IL-2「届け物が終わっただけだ」
小貝「つれねえな。もう少し褒めてもいいだろ」
IL-2「届け物ができたな、少佐」
平らな声だった。
小貝は一瞬黙り、それから笑った。
小貝「そういう褒め方を頼んだ覚えはねえ」
IL-2「何を頼んでいたか、詳しく説明するか」
小貝「やめとく。午後の分まで、説明が増える」
IL-2は小貝の手元にある資料を見た。
歩く間も、折れないよう持っていたものだ。
IL-2「試験の予定は、まだ調整中だ。時間のあるうちに、聞くことを揃えておけ」
小貝「揃えてる。覚える方が進んだ分、乗ってみる時に何を見たいかも、増えてきた」
IL-2「それも担当へ伝えろ」
小貝「分かった」
返事をすると、IL-2は頷いた。
そのあと、食堂へ向かう通路を見た。
IL-2「私は、少し休む。少佐も来るなら、口を動かす前に何か飲め」
小貝「お。ようやく休憩か」
IL-2「用事が終わったからな」
小貝「じゃあ、今度はちゃんと付き合ってもらう」
IL-2は歩き始めた。
小貝も横へ並び、その頬を見る。
さっきの黒い汚れは、ほとんど落ちていた。
小貝「……そっちは、綺麗になったな」
IL-2「まだ言うか」
小貝「確認だよ。今日、何度もやってきたからな」
IL-2は答えず、小貝へ一度だけ視線を向けた。
小貝は口元を押さえ、笑いを少し小さくする。
食堂で二人が席につくと、小貝は温かい飲み物を受け取った。
向かいでは、IL-2が畳んだ布を収めている。
資料を置く場所を空け、小貝はカップへ手を添えた。
昔の無線は、まだ思い出せる。
あの時の息苦しさも、綺麗には消えていない。
それでも、いま目の前には、こちらの軽口へ眉を動かす相手がいた。
小貝が口を開きかけると、IL-2が先にカップを示した。
IL-2「先に飲め」
小貝「はいはい」
小貝は湯気の向こうで笑い、一口飲んだ。
資料へ書いた午後の質問は、その横に置いたままだった。
感想お待ちしてます。
兵器解説
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