陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る 作:ゴーストライターとかした、素人小説書き
退院から、三日後。
基地の格闘訓練場で、蓮は肩を回していた。
左腕も、引っかからずに動く。
息を深く吸っても、胸は痛まない。
身体が治ったことは、もう何度か確かめた。
射撃も再開し、装具をつけて歩くことにも、問題はなかった。
ただ、分かっている動きへ身体がついてくる感覚は、まだ戻しきれていない。
寝台へ横になっていた時間の分まで、何もしなくても元通りになるわけではなかった。
今日は、その辺りを少し確かめるつもりだった。
蓮「……よし。じゃ、軽く頼む」
向かいで、VSK-94が頷いた。
VSK「はい。軽く、ですね」
蓮「なんだ、その確認」
VSK「あとで、違ったと言われないように」
蓮「言わんよ。鈍った身体を起こしたいだけだ」
VSKは、蓮の足元を見た。
それから、顔へ目を戻す。
VSK「準備は、よろしいですか」
蓮「ああ。いつでも」
マットを踏む音がした。
最初に動いたのは、蓮だった。
手を伸ばす。
VSKは、その手へ触れ、立つ位置を変えた。
掴めたと思ったところから、腕が外れる。
蓮は追いかけず、足を止めた。
VSKも、そこで一度離れる。
蓮「……ほう」
VSK「何か?」
蓮「いや。いい動きするなと思って」
VSK「ありがとうございます」
彼女は、さらりと答えた。
二度目は、VSKの方から来た。
蓮が腕を上げると、その腕へ手が掛かる。
強く押し込まれるわけではなかった。
それなのに、自分の肩だけが、思っていなかった方へ向く。
足を動かして立ち直った時には、VSKはもう横へいた。
蓮「おっと」
蓮は向き直った。
彼女の手が離れる。
いま、もう少し遅れていたら。
その先を想像し、口元が緩んだ。
VSK「……ボス?」
蓮「うん。思ったより、面白いな」
VSK「身体を確かめるのでは、なかったんですか」
蓮「ちゃんと、確かめてる」
言いながら、もう一度向き合う。
今度は、触れた手がすぐには離れなかった。
互いに腕を取り、相手が動くのを待つ。
蓮が押す。
VSKは、押された場所からずれる。
そのまま追えば、また肩を持っていかれる。
蓮は途中で動きを変えた。
VSKの目が、少し上がる。
今度は、彼女の足が一つ、余計に動いた。
蓮も、そこで止まった。
蓮「今のは、こっちだな」
VSK「まだ、倒れていません」
蓮「そりゃそうだが」
VSKは、すぐに腕を取り直した。
蓮が笑う。
次の瞬間には、笑った分だけ、余裕がなくなった。
VSKの手が、さっきとは違うところへ掛かる。
同じ動きが来ると思っていた蓮の腕が、空いた。
慌てて踏み直す。
マットの上で、靴底が短く鳴った。
VSKは、深く追い込む前に手を緩めた。
蓮は息を吐き、彼女を見る。
蓮「……止めたな」
VSK「軽く、と伺っていますので」
蓮「優しいことで」
VSK「もう少し、続けますか」
蓮は、右手を握り、開いた。
自分が止まってしまう場所が、少しずつ分かってきた。
傷が痛いから止まるのとは、違う。
相手を見てから動くまでに、僅かに遅れる。
覚えている動きへ入ったつもりで、次が噛み合わない。
それを確かめるのには、随分いい相手だった。
蓮「ああ。頼む」
VSKも頷く。
さっきより少しだけ、二人の間が詰まった。
*
VSKは、蓮の手ばかりを追ってはいなかった。
押されれば、その場所から身体を移す。
離れようとすると、その前に腕へ触れてくる。
どこへ行けば楽になるか。
こちらが考えた頃には、そこへ彼女の手があった。
蓮は一度、距離を取り直した。
蓮「警察にいた頃も、随分やってたのか」
VSK「はい。訓練でも、仕事でも」
蓮「なるほどな」
VSK「相手が、こちらの言う通りに動いてくださることばかりでは、ありませんでしたから」
そう言いながら、彼女は蓮の腕へ触れた。
蓮も、その手を取る。
今度は、すぐに振りほどこうとはしなかった。
動きを止めたところへ、VSKの力が掛かる。
互いに、少しずつ立つ場所が変わった。
蓮が抜ける。
VSKが追う。
その次には、蓮の方が彼女を追いかけていた。
マットを踏む音が、増えていく。
さっきまで間にあった言葉が、少なくなった。
VSKの息が、近くで聞こえる。
蓮も、口から短く息を出した。
腕が取られる。
今度は取らせたまま、向きを変えた。
VSKがついてくる。
押せば崩せそうで、崩れない。
彼女も同じことを思っているのか、目が、ずっとこちらから離れなかった。
蓮の口元に、また笑みが浮かぶ。
VSKも、それを見た。
VSK「……楽しそうですね」
蓮「お前もな」
VSK「そう見えますか」
蓮「かなり」
返事をする代わりに、彼女の手が伸びた。
蓮は受けた。
今度は、途中で止まらなかった。
*
訓練場の入口から離れたところで、二人が足を止めていた。
ロミアと、テムだった。
ロミアは、二人の組み手を見ていた。
何か言おうとしたところで、マットの上の動きが変わる。
蓮の腕が外れた。
その直後には、VSKの方が半歩、下がっている。
どちらかが離れると思うと、また近づいた。
ロミア「……すごいな」
小さな声だった。
テムは、頷いた。
テム「ご挨拶は、終わってからにしましょう」
ロミア「うん。……今は、入れそうにないね」
二人は、マットの外へ留まった。
蓮たちは、まだこちらを見ていなかった。
*
上着を掴んだ指へ、力が入った。
蓮が一歩動く。
VSKは、引かれた分だけ寄り、そのまま止まらずに回り込む。
さっきまでなら、そこで一度、腕を離していた。
今度は、蓮も離さなかった。
彼女の肩が、すぐ近くにある。
足音が、重なった。
身体が押される。
蓮は、一瞬だけ下がりかけた。
その時、VSKの顔が近くなった。
考えるより先に、身体が動いた。
掴んでいた腕を、離さない。
二人の向きが、変わる。
蓮の背へ、VSKの重みが乗った。
次の瞬間には、彼女の足がマットを離れていた。
蓮は、最後まで腕を支えた。
背負い投げ。
VSKの身体が、マットへ落ちる。
受け身の音が、訓練場へ響いた。
そこで、二人とも止まった。
蓮は、彼女の腕を支えたまま、顔を見る。
VSKも、目を上げた。
少しの間、呼吸の音だけが残った。
蓮「……一本、かな」
VSK「……はい。一本です」
VSKは、はっきり答えた。
蓮は手を緩め、立ち上がるのを手伝う。
彼女が足をついたのを確かめてから、手を離した。
蓮は一度、天井を見た。
息を吐く。
蓮「軽く、だったな」
VSK「はい。最初は、そう伺いました」
蓮「……お前も、途中から引かなかっただろ」
VSK「ボスも、離してくださいませんでした」
蓮はVSKを見た。
VSKも、蓮を見る。
どちらからともなく、少し笑った。
蓮「熱くなったな」
VSK「私も、最後は少し、勝ちたくなりました」
蓮「少しか?」
VSK「……かなり」
今度は、蓮が声を出して笑った。
VSKは、自分の上着を整えた。
負けたことを、ごまかす顔ではなかった。
VSK「今のは、途中まで追いついていたんですが」
蓮「ああ。俺も、途中まで取られたと思った」
VSK「最後のところで、遅れました」
蓮「次は、そこも見られるんだな」
VSK「はい」
返事は、すぐに来た。
蓮は笑いながら、マットの端へ下がった。
置いてあった水を取り、一口飲む。
身体が熱い。
息も、まだ少し速い。
使った腕と脚に、ほどよく重さが戻ってきている。
VSKも、隣で水を取った。
蓮「いい相手を頼んだな」
VSK「思ったより、軽くは済みませんでしたけれど」
蓮「それは、お互いということで」
VSK「そういうことに、しておきます」
彼女はそう答えたあと、蓮の顔を見る。
VSK「身体は、どうでしたか」
蓮は左腕を軽く動かした。
胸へ手を当てる。
蓮「ちゃんと、ついてきた。途中から、戻すとか確かめるとか、考えてなかったな」
VSK「夢中でしたからね」
蓮「お前に勝ちたい、だけになってた」
VSKの口元が、少し緩んだ。
VSK「では、次もお付き合いします」
蓮「次こそ、最初に決めたところで止めるか」
VSK「覚えておいてくださいね」
蓮は頷き、汗を拭いた。
その時、視線が入口の方へ動く。
二人、人影があった。
見覚えのある顔だった。
蓮「……おや」
ロミアと、テム。
こちらを見ていた二人が、蓮の目に気づいた。
ロミアが、少し背筋を伸ばす。
テムも、蓮へ顔を向けた。
蓮は右手を軽く上げた。
蓮「よう。来てたのか」
水を置き、マットから降りる。
VSKも、隣へ並んだ。
蓮は、二人の方へ歩いていった。
*
蓮「久しぶり。二人とも、元気そうだな」
近くへ来ると、テムが背筋を伸ばした。
ロミアも、それに続く。
テム「お時間、よろしいでしょうか」
蓮「ああ。ちょうど休憩だ。どうした?」
テムは、手に持っていた書類へ一度目を落とした。
テム「グリフィンからいただいていた、採用のお話についてです。手続きが終わりまして、私とロミア、二人とも正式な配属が決まりました」
蓮は、二人を見た。
蓮「……そうか。話、まとまったのか」
ロミア「うん。僕も、ここで働くことにした」
ロミアの声には、少しだけ緊張があった。
それでも、言葉ははっきりしていた。
テムが、続きを伝える。
テム「それから、配属先は、こちらの小隊です。予備要員として登録されました」
蓮「うちの?」
テム「はい。小隊長の部隊の、予備要員です」
小隊長。
その呼び方を聞き、蓮は少し口元を緩めた。
屋敷の廊下では、まだ、そういう関係ではなかった。
互いに違う組織から来て、同じ通路を抜けようとしていた。
今度は、所属が同じになる。
テムは、書類を差し出した。
VSKが受け取り、内容へ目を通す。
VSK「テム・ナイチンゲールさんと、ロミア・エルサさん。二人とも、予備要員として、ですね」
テム「はい。正式なご挨拶に伺ったのですが、こちらにいらっしゃると聞きまして」
蓮「それで、見てたのか。待たせたな」
ロミア「ううん。……あんなに動いてるところを見ると、終わる前には、声をかけられなくて」
蓮は、VSKへ目を向けた。
蓮「見学者を、待たせるほどだったらしい」
VSK「途中から、周りを見ていませんでしたね」
蓮「俺もだ」
テムは、マットの方を見た。
テム「軽い訓練、と伺っていましたが」
蓮「……最初は、そのつもりだった」
VSK「二人とも、途中で少し変わってしまいました」
ロミア「少し、なんだ……」
ロミアが、思わず呟いた。
蓮は笑いかけてから、テムへ顔を戻す。
蓮「屋敷で言った、ヘッドハンティングの話。ちゃんと帰ってから、聞いてもらえたわけだ」
テムの表情が、少し和らいだ。
テム「はい。あの時は、まず帰れるかどうかでしたから」
蓮「『帰ってから聞きます』だったな」
テム「覚えていらしたんですね」
蓮「言い出した方だからな。元の雇い先と違うところへ来る話だし、簡単には決められんだろうと思ってた」
テム「考えました。こちらからの説明も伺って、自分で決めました」
蓮は頷いた。
ロミアを見る。
彼も、顔を上げていた。
ロミア「僕も。あのまま帰れなかったかもしれない場所から、ここへ来て……その後、どうするかを考える時間をもらったから」
言いながら、少しだけ視線が下がる。
すぐに、蓮へ戻った。
ロミア「だから、今日は、ちゃんと伝えたかったんだ」
蓮は、先を急がせなかった。
訓練場の奥で、誰かが道具を動かす音がした。
ロミアは、その音が止むのを待った。
ロミア「助けてくれて、ありがとう。屋敷から、連れて帰ってくれて」
声は、大きくなかった。
蓮には、よく聞こえた。
ロビーへ飛び込んできた時の顔を、思い出す。
逃げる先を探していた二人。
銃を向けられ、言われるままに手を上げた姿。
あの時は、向こうも、こちらを知らなかった。
蓮も、二人を知らなかった。
その二人が、いまは、正面からこちらを見ている。
テムも、頭を下げた。
テム「私からも。武器を貸していただいたことも、最後まで、置いていかずにいてくださったことも。ありがとうございました」
蓮は、二人を見た。
蓮「……うん。無事に戻れて、よかった」
それから、少し頷く。
蓮「こちらも、助かったよ。テムが後ろを見てくれたし、ロミアもスプリングと一緒に動いてくれた。二人とも自分で動いてくれたから、一緒に抜けられた」
ロミアは、少し目を上げた。
ロミア「でも、あの銃を渡してもらえなかったら、僕は――」
蓮「ああ。あれが役に立ったのは、嬉しい」
ロミアの言葉が、止まった。
蓮は、その顔を見て続ける。
蓮「使って、生きて帰ってくれた。貸してよかったよ」
ロミアは、ゆっくり頷いた。
テムが、隣で小さく息を吐く。
ずっと形を整えていた表情が、少しだけ緩んだ。
テム「今度は、こちらの隊員として、お役に立てるようにします」
蓮「よろしく頼む」
短く答えてから、蓮は二人へ手を差し出した。
先に、テムが取った。
しっかりした手だった。
次に、ロミアが取る。
最初は少し力が入って、それから落ち着いた。
蓮「俺も、まだ、お前たちのことを全部知ってるわけじゃない。できることも、慣れてないことも、これから聞かせてくれ」
テム「分かりました」
ロミア「うん。……あ、はい」
蓮「無理に全部、変えなくていいぞ」
ロミアが、少し困ったように笑った。
テムも、彼を一度見てから、蓮へ目を戻す。
VSKは、書類を揃えた。
VSK「隊の中での動き方や、連絡のことも、お伝えしますね。分からないことは、そのままにせず聞いてください」
テム「ありがとうございます」
ロミア「お願いします」
蓮は、隣のVSKを見た。
屋敷から戻ったあとも、休んでいた間も、隊の仕事を進めてくれていた。
いまも、次に何を話せばいいか、彼女の方が少し早い。
蓮「頼む、副隊長」
VSK「はい。ボス」
VSKは、いつものように答えた。
蓮は、二人へ向き直る。
蓮「まず、隊の場所を案内するか。分かる?」
テム「場所は教わっています。ただ、まだ中へは」
蓮「じゃあ、ちょうどいい。俺らも、戻るところだ」
ロミアは、マットの方へ目を向けた。
ロミア「訓練は、もういいの?」
蓮「今日は、ここまで。これ以上やると、また軽くなくなる」
VSKが、蓮を見た。
VSK「続けるつもりは、あったんですね」
蓮「お前が、すぐ次も付き合うって言うからだろ」
VSK「次は、と申し上げました」
テムが、小さく笑った。
蓮はVSKと目を合わせてから、二人へ顔を戻す。
蓮「……よし。今のは、俺の負けだ」
ロミア「さっきは、勝ってたのに」
VSK「今のは、一本には数えませんよ」
蓮は、声を出して笑った。
蓮はマットの端へ戻り、置いていた水とタオルを取った。
VSKも、自分の荷物をまとめる。
戻ってくる二人を、ロミアとテムが待っていた。
蓮は、二人のそばで足を止めた。
蓮「あとで、隊の連中にも紹介する。今まで話せてない奴も、いるだろ」
テム「はい。お願いします」
ロミア「うん。僕も、ちゃんと挨拶したい」
蓮は頷いた。
訓練場の扉を開ける。
廊下から、少し涼しい空気が入ってきた。
汗ばんだ身体には、ちょうどよかった。
VSKが、書類を持ち直す。
二人の名前が書かれたところへ、一度目を落としてから、蓮の横へ並んだ。
蓮は、ロミアとテムを振り返った。
蓮「じゃあ、行こうか」
返事が、二つ戻ってくる。
四人で、隊の部屋へ向かった。
歩き始めると、ロミアがテムへ、小さく何かを話した。
テムが答える。
蓮が振り返ると、さっきの背負い投げの話だった。
VSKが、少しだけ蓮を見る。
蓮は笑って、次はいつにするかは、まだ口にしないでおいた。
感想お待ちしてます。
兵器解説
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アリ
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ナシ