陸自はドールズフロントライン、海自は艦これとアズールレーン、空自はアッシュアームズ三つの世界でバラバラになりながらでも生き残る   作:ゴーストライターとかした、素人小説書き

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敵でも笑顔で手をつなぎましょう


第29話 手を取り合って笑いましょう

基地、整備室。

 机の上に、布と手入れ用の道具が並んでいた。

 蓮は89式小銃へ目を落とし、拭き残したところを確かめていた。

 向かいでは、416が自分の銃を手に取っている。

 しばらく、二人とも何も言わなかった。

 道具を置く音がする。

 布が、金属の上を動く。

 蓮はその音を聞きながら、最後の確認を済ませた。

蓮「……よし」

416「終わったの?」

蓮「ああ。お前は」

416「もう少し」

 蓮は使っていた布を畳んだ。

 道具を元の場所へ戻す。

 416は一度、彼の手元を見てから、また自分の銃へ目を落とした。

416「最近、ちゃんと戻ってきてるわね」

蓮「どこから?」

416「訓練場から。時間どおりに」

蓮「俺を何だと思ってるんだ」

416「帰ると言いながら、用事を増やす人」

 蓮は少し考えた。

蓮「……否定しづらいところを、よく選ぶな」

416「見ていれば、分かるもの」

 蓮は笑い、椅子へ背を預けた。

 机の上には、二丁の銃がある。

 今日は、これを手に持って外へ飛び出す予定はなかった。

 416も、慌てて手を動かしてはいない。

 こういう時間に話せることを、蓮は少しずつ増やしていた。

 隊のこと。

 基地のこと。

 元の世界で、何をしていたか。

 話したいことを、全部話せるわけではなかった。

 それでも、聞かれた時に、いつも笑って終わらせるつもりはなくなっていた。

 416が、布を置く。

416「そういえば」

蓮「ん?」

416「前に話していた相棒のこと。思い出せた?」

 蓮の手が、止まった。

 忘れていたわけではない。

 その話を、416としたことも。

 崩れた家。

 向かいの椅子に座っていた、負傷した彼女。

 仲間なら、一人で背負わないで。

 そう言われ、昔、同じようなことを言った相手を思い出した。

 声は、知っていた。

 何度も一緒に戦ったことも。

 顔と、名前だけが、どうしても出てこなかった。

 蓮は、机の上の布を見る。

 いまは、浮かぶ。

 こちらへ何か言おうとして、振り向く顔。

 その時に、自分が呼んでいた名前。

416「……蓮?」

 顔を上げた。

蓮「ああ。思い出したよ」

 416は、すぐには次を聞かなかった。

 彼の顔を見ている。

蓮「少し前にな。話す機会を、探してた」

416「そう」

 短く答え、彼女は椅子へ座り直した。

416「どんな人だったの?」

 蓮は、息を一つ吐いた。

 笑おうとして、口元だけが先に動く。

蓮「……何から、話そうか」

416「名前から。そこが、思い出せなかったんでしょう?」

 蓮は頷いた。

 いまは、声に出せる。

 あの時、何度探しても出てこなかった名前を。

蓮「あいつの名前は――」

 整備室の上で、短い音が鳴った。

 蓮の目が、壁のスピーカーへ上がる。

ハル『こちら司令部、ハルです。渡邉蓮小隊長。司令部へ来てください。繰り返します――』

 声が、室内へ響いた。

 蓮は、しばらくスピーカーを見ていた。

 放送が終わってから、416へ目を戻す。

蓮「……ずいぶん、いいところで呼ぶな」

416「聞こえていたわけじゃないでしょうけど」

蓮「そうだろうが」

 蓮は椅子から立った。

 銃を収め、机の上を片づける。

 416も、自分の手元を整えながら彼を見た。

416「続きは、帰ってから?」

 蓮は頷いた。

蓮「ああ。今度は、ちゃんと話す」

416「分かった。待ってる」

 彼女は、それ以上、引き止めなかった。

 蓮は整備室の扉へ手を掛ける。

 振り返ると、416は、もう一度こちらを見た。

416「また、話すことを増やしてこないでよ」

蓮「それは、向こうの用事次第だな」

 そう答えてから、蓮は廊下へ出た。

     *

 司令部へ向かう途中、蓮は考えていた。

 呼び出された理由に、すぐ思い当たるものはない。

 昨日の報告は、出した。

 訓練の予定も、VSKへ伝えている。

 ロミアとテムのことも、隊へ案内して、必要な話を進めていた。

 そこで、足が少しだけ遅くなる。

蓮(……まさか、食堂か)

 この前、予定にない時間に顔を出した。

 誰もいないと思って、つい、飯を余分に食べた。

 声をかけてからにすればよかった、と、食べ終わってから思った。

 あれが、伝わったのか。

 蓮は歩きながら、食堂にいた時のことを思い返す。

 誰かに見られた覚えは、なかった。

 ただし、見られていない保証もない。

蓮(いや。そんなことで、基地放送まで使うか?)

 そう考えて、少し安心する。

 次に、名前をはっきり呼ばれたことを思い出した。

蓮(……呼ぶほど、だったか?)

 安心が、長続きしなかった。

 司令部の扉の前へ着く。

 蓮は、息を整えてから叩いた。

ハル「どうぞ」

蓮「失礼します」

 扉を開けた。

 中を見た瞬間、蓮は足を止めた。

     *

 VSKが、先に気づいた。

VSK「ボス。こちらです」

 その横に、G3がいた。

 ブレンとNTW-20もいる。

 ロミアとテムは、少し後ろの席へ並んでいた。

 自分の小隊の者が、揃っている。

 さらに向こうへ目をやると、キングがいた。

 隣にはクイーン13。

 その脇に、ポーン01も座っていた。

 M4とAK-12の姿まである。

 蓮は、もう一度、部屋の中を見た。

蓮(……何の集まりだ、これ)

 小隊の全員を呼ぶ用事。

 ほかの小隊の者も、いる。

 食堂の件にしては、話が大きすぎる。

 大きすぎる、はずだった。

 蓮は、少しだけ腹の辺りへ力が入るのを感じた。

ハル「蓮さん。来てくれてありがとう。空いているところへ」

蓮「……はい」

 蓮は椅子へ座った。

 VSKへ、少しだけ顔を寄せる。

蓮「何か聞いてるか」

VSK「私たちの小隊に関する話だと、伺っています」

蓮「小隊」

VSK「はい」

 VSKは、蓮の顔を見た。

VSK「何か、心当たりが?」

蓮「いや。……まだ、分からん」

 昨日の飯の量を、少し思い返した。

 自分一人の話で、隊まで呼ばれるものだろうか。

 向こうでは、キングが静かに座っている。

 クイーン13も、ポーン01も、特に困っている様子はなかった。

 それが、ますます分からなかった。

 ハルが、机の上の書類を閉じる。

ハル「全員、揃ったね。今日は、キング、クイーン13、ポーン01の三名について、伝えることがあります」

 蓮は、顔を上げた。

 自分の話では、なさそうだった。

 腹の辺りに入っていた力が、少し抜ける。

ハル「これまでの聴取と、提出された情報の確認を進めてきた。正式な所属についても、上級司令部の承認が下りました」

 蓮は、キングの方を見た。

 いつまでも、保護された客のままでいるつもりではない。

 そのことは、何となく分かっていた。

 ただ飯を食い続けるわけにもいかないし、何か仕事を始めるのだろう。

 知っていることも、できることも、少なくはない三人だった。

 蓮がそこまで考えたところで、ハルは続きを言った。

ハル「三名を、蓮さんの小隊の予備要員として編入します」

 静かになった。

 蓮はハルを見た。

 それから、キングを見る。

 もう一度、ハルへ目を戻す。

蓮「……うちに?」

ハル「そう。あなたの小隊へ」

 隣で、VSKも顔を上げていた。

VSK「三名とも、ですか」

ハル「三名とも」

 G3が、小さく息を呑む。

 ブレンの眉が動いた。

 NTW-20は、キングたちを見たまま黙っている。

 ロミアは一度口を開き、テムの方を見る。

 テムも、すぐには何も言わなかった。

 驚いていないのは、呼ばれた三人だった。

 キングは、落ち着いたまま、こちらを見ている。

蓮「……あんたたちは、知ってたのか」

キング「はい。こちらには、先にお話をいただいています」

クイーン13「配属の条件も、伺いました」

ポーン01「その上で、了承しています」

 蓮は、椅子へ座り直した。

 仕事に就くのだろうとは、思った。

 だが、自分のところとは思っていなかった。

 ハルが、M4とAK-12へ目を向ける。

ハル「二人にも、関係する小隊の代表として来てもらいました。今後、協同する時のこともありますし、この場で懸念を聞いておくべきかと」

 M4は、頷いた。

 AK-12は、机の上へ置いていた手を組む。

 蓮は、もう一度、三人へ顔を向けた。

蓮「先に、本人たちへ聞いていいか」

ハル「どうぞ」

蓮「あんたたち、本当にそれでいいのか。俺の小隊の予備に入るってことで」

 キングは、少しだけ口元を動かした。

キング「優秀な者の下につく方が、自分の能力を発揮しやすい。私は、そう考えています」

蓮「……随分、買ってくれるな」

キング「働きを見た上での評価です。あなたも、私たちが何をできるか、ある程度はご存じでしょう」

 蓮は、頷いた。

 保守鍵。

 通れる道。

 相手が何を捨て、どこへ動こうとするか。

 三人が教えたことは、その場で誰かを動かす助けになった。

 協力が、口約束だけで終わっていないことは知っていた。

キング「加えて、監視役としても、あなたの元なら問題ありません」

 蓮の目が、少し細くなる。

蓮「監視されることまで、込みか」

キング「それを抜きにして、ここで働く話はできないでしょう」

 声は、落ち着いていた。

キング「私たちの過去を忘れて、信用だけしていただきたいとは申しません。役に立つ部分を使い、必要なところは見ていただく。その役に、あなたは適していると思います」

 VSKが、キングを見た。

 キングは、その視線へも顔を向ける。

 笑ってごまかすことはしなかった。

     *

VSK「三名の情報が役に立ったことは、承知しています」

 VSKは、言葉を選びながら続けた。

VSK「ただ、同じ隊へ入れるとなると、話が変わります。仕事を任せながら、行動も見ていく。その責任を、ボスが持つことになります」

 蓮は頷いた。

 G3も、静かに口を開く。

G3「これまで助けていただいたことは、分かっています。でも、いざ一緒に動く時に、すぐに背中を預けられるかと言われると……まだ、難しいです」

 キングは、何も挟まなかった。

 ブレンが、椅子の背から身体を起こす。

ブレン「働くことには、反対しない。だが、小隊の予備要員なら、いずれ同じ場所へ出ることもある。以前は敵側だった相手を迎えるんだ。そこは、軽く決めたくない」

 NTW-20の目が、クイーン13へ向いた。

NTW-20「この隊に入ったあとの指揮は、誰に従うのかしら」

 クイーン13は、まっすぐ見返した。

クイーン13「この部隊の指揮です。その条件で、所属を受け入れています」

NTW-20「キングの判断と、部隊の指示が食い違っても?」

クイーン13「任務中に、別の指揮を立てるつもりはありません」

 キングも頷いた。

キング「私も、以前の立場をそのまま持ち込むつもりでは来ていません。ここで命令するのは、渡邉蓮です」

 蓮は、キングの顔を見た。

 簡単に言ったように聞こえた。

 けれど、その言葉で何を手放すかは、知らない相手ではないはずだった。

 ポーン01も、続ける。

ポーン01「私が担当した記録は、指示された形で残します。作業の確認も受けます」

 机の向こうで、AK-12が顔を上げた。

AK-12「それを実際に確かめる側も、ここにいるわ。配属されたから、情報へ自由に触れられるようになるわけではないのね?」

ハル「そこは変えません。必要な情報と、担当する仕事は限定する。他小隊の記録を、本人たちの判断で取りに行くことも認めない」

AK-12「なら、誰が何をさせたか、こちらにも追えるようにしてほしいわ」

ハル「その形で進めます。三人へ任せる仕事は蓮さんから指示して、実施したことを記録する。確認が必要なものは、これまでどおり、こちらと担当者で照合する」

 AK-12は、すぐには頷かなかった。

 キングたちの方へ、一度目を向ける。

AK-12「分かった。そこは、曖昧にしないでね」

 M4が、静かに続けた。

M4「もう一つ、確認させてください。今回の所属で、以前の責任の扱いまで変わることは、ありませんか」

 声は穏やかだった。

 それでも、キングから目を逸らしてはいなかった。

 あの町で何が起きたか。

 どこから命令が来ていたか。

 彼女が知っていることを、蓮も知っていた。

ハル「ありません。協力したことは評価する。所属も認める。ただし、過去の行動についての調査と、必要な責任の確認は続けます」

 ハルは、キングへ顔を向けた。

ハル「その点も、三人には伝えています」

キング「承知しています」

 短い返事だった。

 部屋の中で、誰も笑わなかった。

 蓮は、机の上へ置いた手を見た。

 自分の小隊へ来る。

 その言葉を聞いた時には、ただ驚いた。

 だが、驚いたままで、他の者の返事を待つわけにもいかなかった。

蓮「……俺からも、話していいか」

 ハルが頷く。

 蓮は、先に自分の小隊の方を見た。

蓮「全員が、いま納得してくれるとは思ってない。俺も、最初からこの三人を信用できると思ってたわけじゃない」

 VSKが、黙って聞いている。

蓮「ただ、何をできるかは見た。教えられたことを、その場で確かめて、実際に使った。助かったことも、俺たちが間に合ったこともある」

 ブレンが、少しだけ顎を引いた。

蓮「そこは、できる仕事として任せたい。まず、持ち帰った情報と、今ある記録を合わせるところからだ。現場で力を借りる時は、何をさせるか、誰と動くかを、その都度決める」

G3「最初から、今の隊員と全部同じように動く、ということではないんですね」

蓮「ああ。知らんことを、知ってる前提では任せない。俺が三人について知らんところも、まだある」

 キングが、小さく頷いた。

 蓮は、VSKへ顔を向ける。

蓮「仕事の指示は、俺が出す。何を任せたかは、お前とハルに伝える。動きを見て気づいたことは、隊で共有してほしい。俺が見えてないものを、お前たちが見てることもあるからな」

VSK「……ボスだけで、抱えるおつもりではないんですね」

蓮「ああ。引き受ける責任は、俺が持つ。ただ、お前たちの話を聞かずに、問題なしと決めるつもりはない」

 VSKは、蓮を見ていた。

 それから、ハルへ目を移す。

VSK「違和感があった時は、こちらからも直接、報告してよろしいですか」

ハル「もちろん。蓮さんを通さなければ話せない、という形にはしない。必要なら、私から仕事を止める」

 VSKは頷いた。

 ハルが、全員を見渡す。

ハル「三人の情報で、侵入者に二度、先回りできた。その後の協力も、確認している。できる仕事を持っている相手に、仕事を与えず置いておくつもりはありません」

 キングの手が、机の上で静かに重なる。

ハル「蓮さんは、その情報を受け取って、使えるかどうか判断した一人です。三人も、蓮さんの指揮と監督を受けることを了承した。働きぶりと行動を、一緒に見ていける場所として、この小隊を選びました」

 蓮は、小さく息を吐いた。

 随分、仕事が増える話だった。

 食堂の一件ではなかったが、それで気楽になるわけでもない。

 それでも、引き受けるつもりは固まっていた。

蓮「俺は、受け入れる。三人にも働いてもらう。その上で、まずいことがあれば止めるし、報告する」

 キングへ顔を向ける。

蓮「仕事ができるってのと、何をしてもいいってのは、別だからな」

キング「理解しています。そこまで含めて、あなたの下で働くつもりです」

蓮「なら、こっちも、それを見ていく」

 キングは、頷いた。

 蓮は、自分の小隊と、他の小隊の代表へ目を戻した。

蓮「いま無理に、三人を好きになれとは言わん。まずは、どんな仕事をしたかを見てほしい。引っかかったところは、そのままにしないでくれ」

 しばらく、返事はなかった。

 M4が、先に口を開く。

M4「……分かりました。調査と監督が続き、任務の範囲も確認できる。その条件での編入には、同意します」

 そこで、一度言葉を切る。

M4「ただ、すべて納得できたという意味ではありません」

蓮「うん。それでいい」

 AK-12も、息を一つ吐いた。

AK-12「こちらも、条件は確認したわ。その形なら、承認する。ただし、確認の時は遠慮しないわよ」

キング「その方が、話が明確です」

 AK-12は、その答えへ笑い返さなかった。

 ブレンが、蓮を見る。

ブレン「……受け入れる方針は、分かった。手放しで歓迎する気には、まだなれん」

蓮「分かってる」

ブレン「指示と報告は、頼むぞ。知らないうちに、別の仕事をしていたということにはするな」

蓮「ああ」

 NTW-20も、頷いた。

NTW-20「条件どおりに進むなら、反対はしないわ。判断は、その後の動きを見てからにする」

 G3は、三人の顔を見た。

G3「私も、すぐに慣れるとは言えません。でも、お仕事をされるところは、ちゃんと見ます」

 VSKは最後に、蓮へ目を向けた。

VSK「……副隊長として、引継ぎを進めます。気づいたことは、ご相談します」

 蓮は頷いた。

 ロミアとテムも、同じ机の向こうで聞いていた。

 二人は顔を見合わせる。

テム「私たちも、指示を確認して動きます」

ロミア「うん。……分からないことは、聞く」

 それぞれに、まだ硬い顔だった。

 誰も、いきなり打ち解けたわけではない。

 それでも、話は前へ進められるところまで来た。

     *

 ハルは、全員の顔を確かめてから、書類を蓮の方へ向けた。

ハル「では、この方針で進めます。編入の通知と、仕事の範囲はこちらからも回す。日々の指示と、隊の中での引継ぎは、蓮さんとVSKにお願いします」

蓮「了解」

VSK「承知しました」

 キングたち三人が、立ち上がった。

キング「改めて、よろしくお願いいたします。小隊長」

 蓮は、その呼び方へ目を上げた。

 少し前に、テムからも同じように呼ばれた。

 今度は、キングだった。

 これで、予備要員は五人になる。

 新しい相手を受け入れるたび、分かっているつもりで済ませられないことが増える。

 蓮も立った。

蓮「ああ。よろしく。まず、何を任せるかと、何を報告してもらうかを、一緒に確認する」

キング「分かりました」

 クイーン13も、ポーン01も頷いた。

 向こうでは、M4がハルへ短く何かを確認していた。

 AK-12も、自分の手元へ書き込んでいる。

 話が決まったからといって、警戒が消えるわけではない。

 蓮は、その様子を見たあと、自分の隊へ顔を戻した。

 G3は、まだ少し困った顔をしていた。

 ブレンとNTW-20も、いつものような軽口は挟まなかった。

 蓮は、一人ずつ目を合わせる。

蓮「……あとで、隊でも話そう。ここで言いきれなかったことも、聞く」

 VSKが頷いた。

VSK「はい。先に、全員で戻りましょう」

 椅子を引く音が、重なった。

 ロミアとテムが立つ。

 キングたちも、荷物をまとめる。

 蓮は、ハルへ挨拶して、扉へ向かった。

 廊下へ出たところで、ようやく大きく息を吐く。

 食堂の件では、なかった。

 その一点については、助かった。

 代わりに、抱えて帰る話が随分増えた。

 VSKが、隣へ来る。

VSK「ボス。これから、確認することがいくつかあります」

蓮「ああ。分かってる。順番にやろう」

 返事をして、歩き出しかける。

 そこで、整備室を出た時のことを思い出した。

 待ってる。

 416は、そう言っていた。

 話すと決めた相棒のことを、忘れたわけではない。

 今度は、本当に思い出している。

 ただ、戻るまでに、もう少し用事ができた。

 蓮は、後ろから来る足音を聞いた。

 前からの隊員と、新しく入る予備要員。

 振り返れば、それぞれ、まだ違う顔をしている。

蓮(……また、話すことを増やしてきたな)

 416に言われた言葉を思い返し、蓮は小さく頭を掻いた。

 それから、隊の部屋へ続く方を向く。

蓮「じゃあ、まずは戻って、机を囲むか」

 VSKが、隣で頷いた。

 蓮は、増えた仲間と一緒に歩き始めた。




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