『少女世界攻略記録』   作:100110110011(2)の民

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101◇私だけの異世界流離譚

◇

 

「……ナ!…ハナ!」

 

誰かの呼び声が聞こえる。

 

「だ…れ?」

 

目を開けるとそこには白銀色の髪の少女がいる。

どうやら私に呼び掛けているらしい。

彼女と私はどんな関係なのだろうか。

…自分の記憶を探るが目の前の人物と一致する記憶は出てこない。

 

「私だよ…アリス、だよ?」

 

どうやらこの少女はアリスという名前らしい。

私は…?

 

「ハナ?どうしたの?」

 

私の名前はハナというらしい。

私は……おそらく、人間だろう。

だから両親や家族がいるはずなのだけど……

全く記憶に出てこない。何も思い出せない。

私の記憶はどこを探しても真っ暗な闇であり何処からも救いの来ない闇である。

 

どうやら記憶喪失らしい。

何やら事情を知っていそうな少女…もといアリスさんに聞いてみよう。

 

「アリス…さん?」

 

「ハナ……嘘だよね?」

 

「私は一体何をしていました?」

 

「ハ、ナ…」

 

「…ハナは私と話してる時に突然倒れた。それから1時間位」

 

「ここは何処ですか?」

 

「ここは…王宮。ハナの仕事場でもあって…私の家でもある場所」

 

アリスさんは王宮にすんでいるらしい。

もしかして王族の方?

だとしたらアリスさんと呼ぶのは不味いかもしれない。

 

「アリス様、私は何をすれば…」

 

「…………待って…」

 

それから5分程待たされた。

…その間に少しずつ記憶が戻る。

私の名前は片瀬ハナ。15歳で…貴族だった…はず。

何やら息を切らしてアリス様が戻って来た。

 

「『記憶蘇生魔術』!」

 

…アリス様がどうやら記憶を思いだす様に魔法をかけてくれたらしい。

 

「アリス様?」

 

「…何で?何で効かないの?」

 

そう言って呆然とするアリス様に私がかけられる言葉は一つもなかった。

何か出来ないかと自らの記憶を再度漁る。

 

深い闇の中を漂い、自らの記憶を探す。

360°闇に囲まれた様に見えるがよく見るとほんのりと光の兆しがある箇所がある。

あくまでイメージの上でだがその光に手を伸ばす。

 

されど返される返答はなく、無意味に手を翳すだけに終わる。

 

──一体、私は誰なんだろう?

私の中にある知識は私自身の正体を欺瞞に陥れる。

高層ビルが乱立し、コンクリートが敷かれた大都会の記憶と、剣や弓矢が飛び交い貴族が蔓延る魔法世界の記憶。

どちらも私の中に在り、そしてそのどちらも私を作り上げる根幹に関わっている。

どちらかなしでは、今の私は存在しない。

だからこそ、私の正体がわからない。

 

周りを見てもそのヒントになるものはなく、視線はただただ空を切る。

 

目の前にいるアリス様はわかる。

ここにいて、私を心配してくれる。

その2つの事象から、大まかな関係性が推測できる。

アリス様と私以外誰もいない豪華な部屋が、ここが魔法世界であることを象徴する。

アリス様が使った魔術が大都会の存在を和らげる。

 

──これは、異世界転生というものなのだろうか。

生憎、というべきか私にはその手の知識がある。

だからもし、これが本当に異世界転生なら、この世界の私が突然前世の記憶に覚醒して、今の私に乗っ取られたというパターンだろう、と結論付けられる。

そうなると今までの交遊関係にヒビが入りそうだなぁ。

だって突然、人格や思想が変わるわけだ。

肉体が変わらずともそれは紛うことない別人だろう。

 

それにしても、異世界転生だとしたら前の世界での自分の名前や死因ぐらい覚えていても不自然ではないのだけど……

それに、異世界転生したのに日本人らしい黒瞳黒髪。

何なら金髪とか赤髪とかでもよかったと思うんだけど……まあ、前世が日本人じゃない可能性もあるから何とも言えないんだけど。

いや、でも私がこうして話してるのは日本語だよね?

言語翻訳は異世界転生報酬的なのかもしれないけど……まあわからないことを気にしても仕方ない。

 

折角異世界転生したんだし……もしかしたら主人公とかになれるんじゃ……

 

『別に主人公は天才でなくてもあらゆる人を凌駕する必要もない』

 

『お伽噺の主人公に必要な素質はたった一つ』

 

『最終的にハッピーエンドを手繰り寄せる力』

 

…これは私の記憶?

そもそも何で私は記憶喪失になったの?

 

そもそも私は────

 

《─────────!》

 

 

 

◇◆

 

ここは……?

私はなんでここに?

異世界転生…違う!異世界転移に…そんなことない!

これは───

アリスとかセリアが?

私にはまだ未練が!やることが!

なんであんなのに壊されなくちゃいけないの!?

何の話をしているの?意味がわからない……

矛盾、違う。この世界は最初から…何を?

繰り返しで───そんなことない。

介入?増幅?なんでそんなことを─────

妹、?そんなの私にはいない。何の話が?

遺物と蘇生術?そんなこと私の知識にはない。

ならなんの─────お伽噺、

 

 

 

───片瀬、花奈。

ああ、そうか、そうだね。やっぱり…

 

『何言ってるんですか?私が死にかけていたとしても、私が私の意思でハナさんを護ろうと思って行動したことです!だからハナさんは悪くありません。むしろ私が回復させてもらった事を感謝しなきゃいけません!だから謝罪は受け取りません!』

 

◆◇

 

全て思い出した。

私は異世界転移者だった。

この世界に転移してすぐゴブリンに襲われた。

セリアの買い物に付き合った。

エネステラ相手に時間稼ぎした。

セルグヌを元に戻した。

魔銅との因縁を断ち切った。

アリスは私の親友。

そしてあの神に会った。

全て…全て、全て思い出した!

 

「アリス!」

 

「ハナ……?」

 

アリスはどうやらまだ疑ってるらしい。

まあ突然記憶が戻った、なんて都合の良い話信用しないよね、普通。

 

「全属性魔術…人類は進化してない…神は干渉する…これで証拠になる?」

 

直前の話をアリスに披露しながら自分自身に思考を向ける。

自分の記憶を確認しながら考える。

変な記憶はない。

私の記憶が欠けていることも、余分な記憶が混濁していることもない。

正真正銘、私だけのもの。

 

「ハ、ナ…戻ったの?」

 

「アリスのお蔭で完璧に戻った。本当にありがとね」

 

アリスやセリアがいなかったら恐らくこの記憶は戻っていなかったと思う。

アリスとの、もしくはセリアとの……そのどちらかの思い出がなければ私は今もあの『代償』を受け続けていただろう。

…あ、そういえば新しく増えた奴はどんな効果だろうか。

 

嬉し泣きしてるアリスを宥めながら確認する。

やばくなさそうな順番で確かめていく。

 

『協奏曲(コンツェルト)』

競合。相手のhpを自分の最大hpまで減らす分のダメージを相手に与える。消費mpはダメージ分。競合し得る者を減らし最後に残るのは己のみ。

 

『秘神朝見』

この世界に秘匿されるべき『創世の秘神』の本体の一部に出会う。

強く願えば再開叶う。 

その機会を喜ぶ物は─かそれとも…?

 

『廻遡宙の基底世界』

創世の秘密の一端を知る。それにより基底が定義され他者により廻り遡る事はなくなった。

ならば傲慢をここに示せ。

己が世界を創り替え廻し遡らして望む真実を見つけ出せ。

 

『創世の廻臨(アトラス・オルビス)』lv1

自身の最大hp-1の値だけhpを、自身の最大mpの値だけmpを消費し時間を1時間だけ巻き戻す。

注意:自身のhpやmpは回復しません

注意:使用後168時間は全ての魔法、呪域、神域が使用不可になり全ステータスが1になる。

注意:再度使用まで最低240時間必要です

注意:使用すると自身の経験値の5割を消費しその分の経験値を取得するまで再使用不可。

注意:使用すると強制的に『秘神謁見』が発動する。

注意:他者がこれについて鑑定すると最大hpの50%のダメージが入ります。

 

 

…最後の奴は本当に最終手段。

…最終手段っていうとワイエルシュトラウス変換を思い出す。

ワイエルシュトラウス変換って強そうじゃない?名前的に。

『秘技!ワイエルシュトラウス変換!』

……みたいな。

やっぱりまだ、本調子じゃないか。

 

閑話休題。

 

後、『協奏曲(コンツェルト)』は普通に便利そうだね。何か入手時期が時期なだけに使うのを遠慮しちゃうけど。

というかその論理に従うと【重複魔術(マルチスペル)】も使えなくなるよね。

じゃあ気にしなくてもいいのかね。

まあ戦闘しなきゃいいんだし、平穏に生きようか。え?他? 

他は…うん、見なかった。

私は何も見てない。

 

今日はもう寝よう。

そう、疲れてるんだ。

元の世界に確実に帰る方法が見つかり…それでテンションが爆上がりして喚んじゃいけない者を喚んで…記憶を一時的に失う。

うん、イベントが多すぎる。

アリスに寝る事を伝えてこの部屋を去…

 

「…ハナ…お願いがある…」

 

「…今日は…今日だけは…私の部屋で寝よ?」

 

私は口では返答せずに行動を以てその要望に答える。

もちろん向かう先は私の部屋。

この限りなく広い王城の一角に築かれた私の部屋。

 

ゆっくり、本当にゆっくり歩き、アリスに……そして、セリアに話しかける。

 

「アリス、セリア。二人のおかげだよ。本当にありがとうね」

 

何を言ってるんだろう、という顔をされるけどそれでいいの。

なんでもないよ、とは言えずに意味深に微笑んでから自分の部屋に入る。

近くにあるベットに寝転がりながら私は言う。

 

「こっちこないの?」

 

それじゃあ今日もお疲れ様、そしてお休みなさい、二人とも。

 

 

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