『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
明けない夜はない、だから朝になる……なんてね。
昨日の騒ぎが嘘みたいに静まった部屋だ。
といっても『騒ぎ』というのは比喩表現で本当にうるさかったわけじゃないけどね。
というか、珍しくアリスもセリアもまだ起きていない。
さて、学校に行くにはまだ早い。
二人が起きるまで……少し考え事をしよう。
私は…あの『神』に会ってから起きるまでに何か悪夢を見た様な気がする。
そう、酷い悪夢……
それはもし私と二人の間にある『何か』がなければ現実になり得た悪夢だ。
内容はぼんやりとしか思い出せないがそんな感じがした。
その『何か』の正体は判らないけどこれから大事にしていこうと思う。
さて、湿っぽい話はここまで!
こっからは良い意味でテンションを上げてくよ!
「二人とも、起きて?」
「…おはよう……」
「おはようございます……」
寝起きだっていうのに二人とも可愛い。
異世界の人って美人補正でもかかってるのかな?
……なんかこれ毎回言ってない?くそう、我ながら僻みがひどいなぁ。
「おはよう。ちょっと日課の散歩行ってくる」
「…私も行く…」
「あ、私も勿論行きます」
パッと着替えて散歩もとい王城散策を始める。
ん、ふにゅ?というか昨日お風呂入ってなくね?
まああれだけゴタゴタしてたんだからしょうがないとはいえ……なんかやだよね。
あれ?というか……
「セリア、ヘスティアさんとテレスさんは?」
もしかして放置とかしてないよね?セリアのことだからしてないとは思うけどさ。
確認はしなきゃね。
「二人ともちゃんと帰しましたよ。安心して下さい。というか私としては全人類四属性化計画?というものが気になっているのですけれど……」
ああ、そういえばそんな話題もあったなぁ。
セリアにはすごく申し訳ないんだけどその後の印象が強すぎて、完全にかませ犬してたんだよなぁ。
「取りあえずアリスに認めさせるとこまではいったけど……どうなの?」
折角、本人がいるので直接訊いていこう。
いくら前座かませいぬとはいえ、気にならないわけじゃないからね。
「……流石に全員に、っていうのは辛い」
まあそうだろうね。
あの情報が漏れただけでこの国……どころか諸々が変わるからね。
「待って。じゃあヘスティアさんやテレスさんは…」
アリスのことだから『知られたからには生かしておけないなぁ』みたいなこと言わない?
……流石に言わないか。
「情報統制のためのあれそれは出した」
何かアリス説明はしょってない?気のせい?まあいいか。
「ということは現状維持って感じ?」
「……大雑把には」
ほむほむ……ならそれで手が滑って受賞!とかはないわけね。安心安心?
と、そんな感じで雑談をしていると全員の支度が終わる。
「…場所は決めてる?」
一瞬なんのこと?って思ったけど、散歩先のことか。
「いや、特に考えてないけど」
「…普段は?」
「その場の直感と雰囲気」
「…ふーん…」
そんな感じで他愛もない雑談をしていると国王にばったり会った。
朝の散歩で国王と会うことちょくちょくあるなぁ。
「こんな所で会うとは…珍しいな」
この発言は私ではなく、アリスに向けてのものだ。
ちなみにセリアは二、三歩下がったところで直角お辞儀している。さすセリ。
「……じゃあ…」
そう言ってアリスは立ち去ろうとする。
幾らなんでも冷たくない?
あれか。反抗期ってやつ?まあアリスも15歳だから良い年頃だよね。
私も年齢的には人のこと言えないけど……
……まあ、今の状況では反抗する相手がいないしね。
アリスの反抗期は是非とも解消してあげたいけど、他所様の家庭事情まで文句は言えないし…
「……」
「……」
何か気まずい。
というかアリスみたいな天才でも私ぐらいの年なら反抗期なのかな?
え、私?は元の世界でどうだったのかって?
そりゃあ…ねぇ……ふつーよ、ふつー。
まあ私の事情は置いといて…
「国王様は何してたんですか?」
気まずい雰囲気を晴らすために一応聞いておく。
「ん?気分転換がてらの散歩だな」
この国の人は(私もそうだけど)皆散歩が好きだなぁ。
「そっちこそ…『夢幻空間』はいつものか」
『夢幻空間』…?
あ、私の異名か。初めてその名前で呼ばれた気がする。
昨日までの出来事と比べるとそんな呼ばれ方でも何も思わない。
…何か異世界に毒されてきたかも。
帰ったら中二病を治すのが大変そう。
それに私が朝、散歩してるのは国王にまで広まってるのか。
まあこないだのやつを『いつもの』って表現してるだけかもしれないけど。
あ、そういえば。
ご存知の通り私は宮廷魔術師だけど、そんなに『魔術師』って感じじゃない。
本来は『
最近は『
一応この国には
「そういえば何で私は宮廷魔術師何ですか?」
「ん?どういう事…ああ、何故物魔混合の方じゃないのかって事か。それならアリスの方から言い出した…」
「…魔法が使える戦士なんていないし…」
まあそれもそうか。
この世界では魔法が使えるってだけで割りと魔術を極めた感が出る。
あれ?私が宮廷魔術師になった頃はまだ魔法覚えて……まあいいか。
アリスのことだから、何かしら理由があるんでしょう。
2、3分そんな感じで話してからふわっと話を切り上げて、散歩を再開する。
「あ、そう言えばアリスって楽器出来るの?」
「…一応は……そんな上手くはないけど…」
アリスの『そんな上手くない』程信用できない物はない。
「セリアはどう?」
「私はバイオリンを少しだけ、ですね」
少しだけ……私と同じかそれ以上なんだろうなぁ。
「アリスは何の楽器できる?」
「…ピアノ、バイオリン、ハープ、フルート、トランペット…だけかな?」
それを普通『だけ』とは言わない。
十分多いわ。
「今度聴かせてよ」
「……暇な時にでも…ね」
来た!言質は取った。
こっからはアリスを丸め込むだけだ!
「今、暇だなぁ…学校まで1時間半はあるなぁ」
実際現在時刻的にはそんな感じ。
お風呂入って、上がってアリスの部屋に行って…それでも1時間…か45分くらいは残るでしょ。
「……」
「凄く暇だなぁ。誰か音楽とか聴かせてくれないかなぁ。セリアもそう思わない?」
「そうですね。折角だから聞いてみたいです」
よし、セリアも乗ってきた。
「……」
「綺麗な音色だったら思わず元の世界について口が滑りそうだなぁ」
「…後で私の部屋…行こ…」
よし、折れた。
代償として元の世界の知識か…
何かあるかな?
あ、日本の歴史でいっか。
うろ覚えだけど概要くらいはいけるでしょ。