『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
「後…セリアに一つ話しておきたい事がある」
私はそう言って話を切り出す。
アリスですら話の内容が予想できないらしく、こっちを見て何?と目で問いかけてくる。
私はそれを目で制して話を始める。
さっきギルマスに聞いたところ、幸いにもこの部屋は防音な上滅多に人が来ない。
話を切り出すのに一番最適な場所だろう。
「な…わかりました」
これから話される事が余程
「これから話すことは本当に誰にも言っちゃダメ」
「……話したら…多分セリアでも命の保証がなくなる…」
「セリアには勝手に押し付けて悪いとは思ってるけど…隠し事はしたくないから」
私はそう言って自身の境遇を話す。
一気に全て言うと確実に混乱するのでまずはこの世界出身ではないことを話す。
そして順々に話していく。
勿論この話は魔銅の事件の帰りでした。
だからセリアは少しばかり混乱している様子だ。
そりゃそうだ。何やら真剣な話だと思ったら一度聞いたことある話だったのだから。
「ハナさん、それ…」
「判ってる。問題はここから」
前の時私は『異世界』出身でありその『異世界』がどんな所かについて強調した。
そして敢えて転移の詳細やその珍しさ、あり得なさ…そして私自身の事はぼかした。
だから今こそそれを話す。
「前は、異世界転移って普通に使ってたからわからなかったかもしれないけど、私の世界では本来異世界転移なんてあり得ないの」
そう。そもそもあの世界で転移、なんて物理法則を根底から覆す真似はできない。もし出来たとしても、それは周囲に甚大どころじゃ済まない影響を与えるものだろう。
「そうなんですか?」
まだ何が言いたいのかがわかってない様子だ。
「そう、普通なら異世界転移なんて絶対にあり得ない。私の世界は異世界転移が出来る程技術は進歩してない」
ブラックホールやらホワイトホールやらを使えばなんとかなるのかもしれないけど……私は科学者でも発明家でも専門でもないからわからない。
でも現時点で実現不可能だ、というのだけはわかる。
つまり───
「だから…絶対この世界側に原因がある」
「それは…こちらの世界の人として申し訳ないですけど…」
そういってセリアは謝るが、そういう話じゃない。
というかこれで謝るって本当に性格が神がかってるなぁ。どんな感じで育てば貴族なのにこんな感じになるのか興味が出てきた。
閑話休題。
「そして実は私以外にももう一人異世界出身者がいる」
そう、私以外の異世界出身者。
「誰ですか?」
「天整統霧生、太古の文明を破壊した張本人」
「彼がいなければこんな魔術中心の世界にならない可能性もあった。皆が魔法を使える世界だった可能性もあった」
私はあの日、教皇が集めた情報から見つけてしまった。
ティーミール家の不幸…
セリアの家の不幸を。
「セリアの祖父母…そして兄弟」
「何でその事を!」
そう。
セリアの祖父母と兄弟…6人は同時に亡くなっている。
セリアやその家族は事故死と捉えているらしい。
セリアは受験で忙しかったころ、その6人は旅行に行った。まあ旅行って言っても視察がメインだけどね。
それに別にそんなに物珍しい所じゃない。
何ならセルグヌ領地から3、4時間の所だ。
そんなに遠い場所じゃないし安全な筈だった。
でも偶然、その場所にエネステラが現れた。
幸運にも、そして不幸にも、そのエネステラはあまり動かないタイプのエネステラだったらしい。
それ幸いと6人は道を外れて逃げる。
道を外れたそこにあったのは『巨大な金属の塊』だった。
そしてそれを街に報告しようとした6人だけど……全員無残な状態で発見される。
まるで何か曝された様に。
まるで許容量を突破した量被
ここまで言えばわかるだろう。
その『金属の塊』は巨大ロボットであり、そこから不可視の害を周りに与え続けていたのは放射線だ。
どう考えてもあれは全て天整統霧生のせいだ。
この世界になんて放射線持ち込めるのは私か彼しかいない。
もしかしたら天整統霧生の時代の人が何かしたのでは?と思うかもしれない。
私もそう思いたかった。
でもその巨大機械にはこう英語で書いてある。
『from another world』
…異世界より。
確かにこれを作ったのは天整統霧生であろう証拠が出てしまった。
そしてあの時、私はもうひとつ重大な事を思い出した。
天整統、その特徴的な名字に聞き覚えがある。
そして彼の妹、白雪…何か聞き覚えがある。
どこでだ?
結論は…親族だった。
去年、年始めの親族同士の集まりで天整統という名字を見てそして『しらゆきちゃん』と遊んだ記憶が残っている。
つまるところだ。
私の血縁の人がセリアの家族を壊してしまった訳だ。
私がやった訳ではないがセリアには恨まれても文句は言えない。
「天整統霧生は私の…」
「そういう事ですかっ!」
「私も色々調べましたよ!何の魔法に依るものか、何の魔術にかかったのか、何の影響なのか。でも何にもわかりませんでした!」
「手掛かりすら掴めなかった…当たり前ですよね…だって『異世界の物』なんですもの…」
「しかもハナさんの関係者?それは何の巡り合わせですか?」
「そこまでして異世界の人は私の家を潰そうとするんですか!?」
「だからセリアには…」
私は誠心誠意謝ろうと、頭を下げていた。
嫌われても仕方ない、絶交になっても仕方ない……
いやだけど、いやではあるけれど……私は異物だから、私のせいで不幸になるなら───
「…………こういう風に言うと思ってたんですか?」
「え?」
「私がハナさんを恨むと思ってましたか?」
「そもそも意味が判りません…何でハナさんの関係者の方がやらかしたことでハナさんを恨む必要があるんですか?」
「確かに悲しかったですよ…少なくとも犯人を見つけたらどうやって痛め付けて苦しめてやろうかと思う位には…」
セリアはセリアらしくない事を言う。
でも逆にそれほど辛い出来事だったんだろう。
「でも私はその犯人以外には……そしてその犯人にも復讐したいとは思いません」
「例えそれが犯人の親や配偶者だったとしても」
「私…いや、この世界ではそれが当然の考えだと思います。何故なら血縁で責任を取っていたらこの世の人全員が恨み恨まれの関係になってますよ」
「ハナさんは今はこちらの世界の住人です」
「異世界の責任の取り方は辞めて私達の世界にももう少し慣れて下さいね?」
……有り難さと同時に恥ずかしさが噴出する。
私の世界では…私の生きてきた世界では親が、家族がやらかしたら必ず子供や血縁の人も責任を取らされてた。
例えば犯罪者の親を持てばその子供は絶対に普通の会社に入れないだろうし逆に犯罪者の子を持つ親は未来永劫責められつづけるだろう。
…この異世界ではそうではない。
何故かはわからないけどした事は全てした本人が責任を取る。
他の人には影響しない…かぁ……
ある意味理想の世界だなぁ。
恐らく世間的な事情で日本よりも自立という考えが早く生まれるんだろうなぁ。
…アリスもなに言ってるのコイツ?みたいな目で見ている。
ずっと悩んでた私がバカみたい。まあ真剣に考えたほうが良い内容ではあったからいいんだけどね。
はぁ…これならもっと早めに言ってもよか…
「…ハナ……その考え方はセリアだけだよ?」
え?
「…下手したらハナはここで刺されてたよ?」
やっぱり、か。
…セリアの善人性に助けられた。
さて、思い残したこともなくなった。
それじゃあ改めて職業を確認しよう。
私は残り2人と同時にその水晶を触る。
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選択可能主職業一覧表
魔術師
軽戦士
料理人
重戦士
女優
予測者
既死者
不思議之住人
異界者
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…変わってない。
もしかして変化ないのかな?
因みにこの表示は二人には見えていない。
「あ!ハナさん、アリスさん、聞いてください!」
「どうしたの?」
「見たことない職業があります!」
「セリアって水晶触るの初めて?」
「はい、それで【救聖女】が…」
一番真っ先に反応したのはアリスだった。
「…それ本当?…なら選ぶときは気を付けて…」
「え?もう選んじゃいま…し……た…」
そう言ってセリアは倒れる。
「アリス!どういうこと?」
「特殊職業は選ぶ時に意識が飛ばされて試練がある」