『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇◆セリア・ティーミール視点◆◇
目を覚ますと、何もない白い空間にいました。
……ここは何処でしょうか?
特殊職業である【救聖女】を選んだと思ったのですけれど……
これが噂に聞く『試練』というものなのでしょうか。
しかし、『試練』は
まあ起きてしまったものは仕方ありません。
目の前で何が起きてもその場で対応していきましょう。
そんなことを考えていますと、どこからともなく声が響きます。
『汝が救えた者を答えよ……』
私が救えた人ですか?
……残念な事にいません。
私が救いたいと思っていた人達は両親と私を遺して全員いなくなってしまいました。
『汝が救いたい者を答えよ…』
ハナさんとアリスさん、家族や友達の皆さんです。
ハナさんとアリスさんは二人とも私が守ってあげる必要がない位、立派ですけれど…出来ることなら私が守ってあげたいです!
『汝の覚悟…見せて貰う!』
その声が聞こえた瞬間に、目の前に二人の負傷者が現れます。
その風貌は確かに、ハナさんとアリスさんです。
二人とも治せ、という注文なのでしょうか。
どちらにせよ、これが夢だとしても二人を見捨てるなんてあり得ません。
私に出来る限りの最善を尽くして救います!
まずは「ヒール」でhpを回復させます。
これで一時的な延命治療にはなるでしょう。
ハナさんは…両腕と両足が存在していません。
アリス様は…腹部が思いっきり切り裂かれています。
案の定、ともいうべきか二人とも意識がない様です。
さて、アリスさんとハナさん、どっちが重症でしょうか。
いや、違いますね。
これは意図的に同じ位の重さの怪我になっているのでしょう。
つまり、私に2人の内一人だけ選べ…ということですね?
なら私が選ぶ選択肢はただ一つです。
「私は【救聖女】になります!そのために二人も救えないわけないじゃないですか!」
親友二人すらも救えないなら、私は他の誰を救えたとしても自分を【救聖女】だと誇れません!
◇
私の数少ない知識と経験を総動員して、なんとか二人を治しました。
治しました……とは言いましても、完治しているわけでも動ける状態になったわけではありません。
何もしなくても悪化はしない……つまり、専門の人を呼ぶ時間を稼げるくらいには、という意味ですが。
致命傷から重症に改善した二人の体が消えていきます。
……流石にこれだけ、ということはないでしょう。
特殊職業というものは資格を所持して初めて『スタート地点』に立つことになる、と誰もが知っている事実です。
その証拠に選択可能な職業に特殊職業が出ても、それを選択しない人が多いです。
それは特殊職業というものが人生の成功を意味しないことを表すからでしょう。
大半は……それこそ半分以上の人は選んだ瞬間に死んでしまうといいます。
恐らくその理由はこの『試練』での失敗でしょう。
もちろん失敗への…つまり、死への恐怖心がないわけではありません。
それでも私はハナさんやアリスさんの隣に立ち続けるために心を決めています。
「なので、どんな試練でも私は歓迎します。盛大に私をもてなして下さいね」
『救済と破滅を背負う聖女はその身に何を映すのか』
『第一幕』
『救済の命を我が心に』
そう告げられるとともに、私の目の前に大量の軽傷者が現れます。
それぞれが軽傷…かすり傷や切り傷を負っていますが、先ほどのアリスさんやハナさんとは違い、致命傷になりそうな人はいません。
ならゆっくりと治していきま────
「早く治してくれ!」「緊急なんだ」
「早く治療しろよ」「力があるのに使わないのは卑怯じゃないのか」「見てわからないのか、この重症だぞ!?」「いい加減にしてくれよ」
……やっぱり急ぎましょう。皆さんが速やかに治してほしいと言っています。私なんかが治療させてもらうのですから、なるべく要望には答えてあげませんとね。
「わかりました。急ぎますから一列に並んで下さいね」
「私が先だ!」「俺が先に決まってるだろ」「おま、割り込みするなよ」「あんたのは重症じゃないだろ?どっかいけよ」「ああもう、じれったいなぁ」
試練で作り出された虚像ではありますが、この人達には各々事情があるのでしょう。
子供がいるから、仕事が貯まっている、皆が待っている……だから、一見すると醜い自己中心的な考えに見えるかもしれませんが、内心は他人のために、そして愛する人のためにこうしているのでしょう。
だから私がすることは排除でも、拒絶でもありません。
「わかりました。それじゃあ少しだけ待ってて下さいね」
──優先順位は普通、つけれません。
しかし、一人だけこの中で優先順位が極端に低い人がいます。
言わずもがな、勿論私ですね。
私は皆さんの善意につけ込んで【救聖女】になろうとしている偽善者です。
【救聖女】になろうとしているのも、ハナさん達に並ぶため。
だから、私が苦労を背負うかわりに皆さんが助かればそれでいいのです。
私のもう1つの固有魔術を使います。
「『
私なんかが『
だから私は自分のために……利己的な目的のために、この魔術を振り撒きます。
この魔術の効果は極めて単純です。
『回復魔術についてのみ詠唱不要かつmpのかわりにhpを使えるようになる』
一つの魔術で2つの効果がある優れものです。
「ヒール」
周りに示すためにそれを言い、その後は無詠唱で回復させていきます。
私のhpを、私のmpを全てつぎ込んで回復させていきます。
その甲斐もありまして、徐々に私に回復を頼む人は減っていきます。
そして最後の人を回復させ、私のmpがなくなり、hpも残り1になったと同時に全員分終わりました。
そして全員助けられたという達成感と私のために作り出された人達に罪悪感を抱いていると、心地よい風が流れ、私は耐えきれずに目を閉じます。
◇◆ハナ視点◆◇
意識がなくなったセリアをアリスと協力して横にあったベットに運ぶ。
「…ハナ…私も新しい職業があった…」
「え?でもアリスはもう【大賢者】だから…」
「違う、その【大賢者】からの派生職業」
「…だから私はそれを選ぶ…後は宜しく」
そう言ってアリスは自らベットに行き目を閉じる…
名前位教えてくれてもよくない?
流石に情報が少なすぎる。
2人が目覚めるまで何してようと考えた時だった。
《魂の位階の成長を確認!》
《試練生成中…》
《『──の試練』…開始!!》
あ…よりによってこのタイミングか…
そう呟きながら私の意識は呑まれる───
◇
──今回は記憶がきちんとあるね。
ここは異世界、そして試練中。
よし、大丈夫大丈夫。
目の前に広がるのは森である。
どこか見覚えのある森……
そして見覚えのある光景……
10m程先の所にファンタジーの定番、ゴブリンがいる。
なるほど?
次に私はステータスを確認して予感が確信へと変わる。
~~~~
名前:?
種族:人類種
lv1(ボーナスポイント:+10)
職業:無職
hp…10/10
mp…10/10
str…5
vit…5
dex…5
agl…5
luc…2
「特殊技能《ユニークスキル》」
【
称号
『唯一之取得者』
~~~~
懐かしさに溢れたそれを見て……
今回の試練のコンセプトがわかった。
これは当時の再現だ。
私はこの世界に来た当初ゴブリンに追われた。
確かあのときは…一回殴られたんだっけ。
まあまた殴られるつもりは一切!ないけどね。
『第一幕』
『初心は春の風と共に』
そんな洒落た始まりじゃなかった気がするんだけどね。
まああの時とやることは変わらない。
ボーナスポイントを全てaglにふって、私は今となっては使いなれた技を使う。
「『
これでゴブリンを撒く。
それでこの後はレントルさんに合って王都にいれて貰うんだっけ。
そこまで考えたところで再度意識が途切れる。
◇◆アリス視点◆◇
…大丈夫。
【理断友】という【大賢者】の進化系であろう職業を取るんだから試練は予想通り。
この手の試練によくある記憶喪失もない。
何をさせられる?
知恵比べ?それともお題を出される?
そこまで考えた所で自身のステータスに違和感を覚える。
『第一幕』
『大賢者の誕生』
…そういうこと。
私のステータスは【大賢者】を取得したばかりの時と全く同じになっている。
確かこの時は……そうだ。
父上や家臣にバレたくなかったから子供らしく疲れて寝た事にしたんだっけ。
「どうしたアリス、急にたおれて心配したんだぞ?」
「ねむかったの…だめ?」
そう言って私は目を閉じる。
確かこの時はこれだけ……でも、これで終わりな訳がない。
さっき第一幕って言ってた。ならあの時と同じ。
この難易度だ。かなり長くなるよ?