『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇◆片瀬花奈視点◆◇
目が覚めるとそこはセリアとの買い物帰り…そういうことか。
これが私の因縁の始まり……
『第二幕』
『奇章は融合人形より導かれる』
……ここまで言われたなら来るのは決まってる。
確かこの時はまだセリアさん呼びだった筈。
「セリアさん、ちょっと逃げててください」
「え?どういう…」
地面からゴロゴロと音がする。
生憎エネステラは待ってくれないらしい。
せっかちは女子に嫌われるよ?
『
『避難勧告!危険度───Euclides』
『討伐対象───』
『──融合人形エフェミルドール!!』
久し振りに見たけど相も変わらず気持ち悪い見た目だ。
生者を呪う視線、気味の悪い視線、脳が本能的に拒否する異形。その全てが再現されて帰ってくる。
……でも前回とは違う。
私はこの時から成長した。
お決まりの技をあの時と全く同じ分量で使い、相手と、そして他でもない私自身に向けて宣言する。
「今度はお前が沈む番だよ……この死に損ない!」
一度見たことのある突進を避けて、知識通り腕で逃げ道が塞がれる。
あの時を思い出して再現しながら、猛攻を避けつづける。
魔銅よりも人間を無視した動きがない。魔銅より素早くない。アリスより変幻自在な行動をしない。シガムさんみたいに理不尽な数の暴力もない。
それに、二度目だから───
「よっ!と…」
初回では苦し紛れに「ウィンド」を使った初見殺しも余裕をもって対処できる。
おかしい。これだけで試練が終わる筈ない。
第一幕の難易度が簡単だった、ということを考慮しても簡単すぎる。
『
つまり、私の言いたいことは一言に集約される。
───こんな簡単な筈ない。
そんな私の気持ちに応えるようにアナウンスが流れる。
『奇章は融合人形から─』
『されど二度目があるならば──』
『唯一の方法で、変幻たるその力を以て、致命傷を与える──』
やっぱりそのままなんて許されなかった。
つまり二度目なんだから倒せって言うこと。
ステータスを見る余裕がないので当時の私の手札を思い出す。
当時の私が使えてかつダメージソースになりそうなのは「ファイヤーボール」だけ。
そしてmpもあまりなかった筈…
あの紙によるとこいつのhpは88888。
とてもじゃないけど倒しきれる数値じゃない。
どうする?魔術は直接当てても削りきれない。
なら間接的に使うまで!
私はエネステラの攻撃を避けながら少しずつ誘導する。
この空間はご丁寧に敵だけじゃなくて周りの風景や住人まで再現してくれている。だからそれを活用していこう!
戦いの場所はあの日の王都。
ならどう活用する?
ここは嬉しいことに試練の中…つまり夢の中。
そしてこの舞台の主催者からの要望は一人でこれを倒せってことだけ。
つまり被害を気にしなくてもい、幾ら建物を壊しても問題ない、ということ。
という訳で近くにある建物の中に入る。その建物の内部は私の記憶にない場所だからか中は人がいない…でも内装はある?
そういうことか。
私がこの劇をやるにあたって必要な場所や人だけ再現されるのか。
だから『セリア』は再現されるしあの警報も再現される。
一方私が関与しなかった箇所…つまり舞台裏はボロが出ない程度に偽装されてるだけ。
でも逆に言えばボロが出ない程度には偽装されてる…つまり、内装があるからこんなこともできる!
私はその建物の二階に登り上に有った本棚をエネステラ目掛けて落とす。
勿論これくらいじゃあ88888のhpは削り切れないから直ぐに別の建物に移る。
「ア、ア”ッ!」
いつまで経っても聞きなれない雑音を横目に、エネステラの攻撃を回避する。
次は…どの建物に…いや、あそこにしよう。
私が目指す場所はこの王都にいるならほぼ何処からでも見えるこの街の中心地…王城!
あそこなら散々歩き回ってるから内部構造はわかる!
後は残り5分の時間制限…もとい『
そして王城まで誘導してまず武器庫へと向かう。
取りあえず数個取り出して投げつけるがたいして削れてなさそう…まあstrはあの時も、そして今もゴミだし知ってた。
そして私はその流れで火薬庫に向かう。
残り時間はもう1分も無いけど…まあ間に合うでしょ。
私は火薬庫に入り頑丈そうなロッカーを見つける。その中に入ってた爆発物を全て外に撒き散らし自分は中に入る。
そしてエネステラが入ってきたタイミングで「ファイヤーボール」を使い……
耳をつんざく様な大音量の爆発音と焼け焦げた匂い、そしてとても強い熱気を感じながら私はボロボロになったロッカーから出る。
そこには今にも崩れそうな…だが回復しつつあるエネステラがいる。
でも知ってる。舞台主の要望は倒すことじゃあない。
「王国第四軍団団長メルケルトが来たから安心しろ!」
あくまで致命傷を与えることだ。
あの時の再現でメルケルトさんたちが圧倒する。
「今だ!『
そして消え行く最初のエネステラに向かって私は勝利宣言をする。
「2回目は私の勝ちだね…これが知識の差だよ」
そして再度私は意識が暗闇に呑まれる。