『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇◆片瀬花奈視点◆◇
『第四幕』
『超えるべき試練』
…まだある。どこまで続く?
『最終幕』と出てこない以上まだ続くんだろう。
さあ、今回のお題は…言うまでもなかった。
その答えは場所が全てを示す。
周りを見ると何処までも昏い闇。
この世界の光全てを呑み込んでなお暗い闇。
それはあの『神』との謁見の場。
されどここはあの時とは別である。
そう直感する。
何故なら…あの時感じた悪意も呪祟も悪寒も何も感じない。
ここに拡がるは唯の虚無である。
何もなく何処までも無限に拡がる虚無の草原。
その中心にこの空間ににつかわしくない宮殿がある。
……いや、こう言おう。
王座がある。
その王座は座るべき物を未だに待っている。
私は自然にその王座に引き寄せられる……
座ることが試練である。
座れば試練が終わる。
そう自然と錯覚し考えとは逆に足はすくみ動かない。
前に進め。
いやだ、進みたくない。
あの椅子に座るだけだ。
いやだ、座りたくない。
脳と体で乖離が進み何もできなくなる。
…何時間経っただろうか。
もしかしたら…数瞬かもしれない。
その感覚は『孤神の球体破片』に見つめられた時と同じだが今回は自身が問題で時間の経過がわからなくなる。
漸く体が言うことを聞いて自由に動ける様になる。
『超えるべき試練─』
『それは一度目の焼き直しではない──』
『未知への挑戦、憧憬、恐怖───』
『その全てを統べ、決して超えられぬ試練を超えよ!』
『自らの手で王位を簒奪せよ!』
自由になった体を使い玉座へと歩みを進める。
一歩進む毎に懐かしくも忌々しい呪祟がなだれ込む。
元の位置から10歩程歩いたところでその呪祟の圧力により動けなくなる。
「神域『
呪いには神を、負には正を。
神域を使い周りの呪祟を押し退ける。
そしてまた10歩。
再度進めなくなる。
呪いには呪いを、目には目を。
「神呪『
これで神と呪が揃い─私の最大火力がここに顕現する。
それでも─神呪の力を以てしてもその王位は遠く、更に15歩の所にある。
残り5歩。
遂に進むことが不可能になる。
この状態でも周りから呪祟が絡み付き行動を阻害してこようとする。
恐らく私の呪域『
本体から出された訳じゃないこの程度の呪祟に突破されてしまうのだから。
だけれども今の段階ではこれ以上の成長は出来ないししたくもない。
恐らく呪域『
『孤神の球体破片』との事件のせいか、それともあの秘神のせいか、それともその両方か。
…兎も角あれからこれの範囲が広がった気がする。
前は25m程だった初期半径が30m程ある。
でも私はこの技能の成長を望んでないだからこの場面ではどうしようもない。
だから私はアプローチを変える。
呪祟を押し退けるんじゃない。
その呪祟の一部を受け入れよう。
私は歩みを1歩進める。
痛み…諦感…怒り…様々な感情が、様々な呪いが私を襲う。
なんで私だけが?
何でワタシだけがこんなにも苦しいの?
不埒な考えを脳から追い出せ。
今この瞬間もアリスとセリアが試練を受けてる。私だけが辛いなんてことはない。
私は1歩だけ歩き出す。
私だけが苦しい訳じゃない。
どうせ私なんて…
何で私はこんなにも無力……
余分な事を考えるな。
私はセルグヌの住民を魔銅から救えた。
私はアリスにも認められた。
私は無才でも無能でも無力でもない。
私は1歩王座に近付く。
ズルッ…ズルッ…
何かを引き摺る音がする。
ひた…ひた……
何かが近付く音がする。
ガァ…ギェッ…ゴアァ…
何者かの呻き声が聞こえる。
とうとう試練は万策尽きて単純なホラーに成り下がったらしい。
こちとら元の世界で散々ホラー映画を見させられたんだよ!
心霊現象?正体不明?奇々怪々?
何でもかかってこいや!
歩みを更に2歩すすめる。
そして王座に目を向けて…
私は思わず後退りしたくなる。
私は思わず負の感情に支配されそうになる。
其処に表れたのは本物の王。
前回よりも更にその威圧感を増やし…されど私の限界を見極め壊れないギリギリの圧力を出す。
「どう、して…?こ、こに…?」
声も途切れ途切れになるが恐る恐る質問する。
──から、召集──
え?何て言った?
─我の居城を模倣した彼奴を排除せんがため
……我の居城を模倣した彼奴を排除せんがため?
つまり、この王宮もどきを作った人を排除する…ってことだよね。
この空間を作った人…だれだ?
クロルマ?天整統?
わからないけど少なくとももう死んでるはず。
「も…う、死んで、る…」
この神が夢の世界にいるからこそ…
現実では秘匿されてるからこそ世界は無事に存在している。
なのに現実に出てもらったら問答無用で大惨事…いや、全宇宙滅亡エンドになる。
相手は万物を創造せし創世神。
どんな神であろうとどんな天才であろうと闘う相手にすらならないだろう。
そういえば創世神っていうんだから万能っぽいイメージあるけど知らないってことは万能じゃない?
…まあそんなこと言っ……あれ?
でも流石に他者の心くらいは読める…あっ…
──────。
無言の圧力って怖くない?
まあその圧力だけでこの模造空間は悲鳴をあげている。
所々に罅が入り呪祟が外から…いや、本物から乱入してくる。
まずい!
模造の呪祟であんなに苦労してたんだ。
本物なんて取り込んだ暁には精神が木っ端微塵になる!
「座、ら…せて…」
──模造とはいえ我が玉座に座らせろ、と。
模造とはいえ…やっぱり?
でもここで言わないとダメ。
私はアリス達の所に戻りたいしそれに元の世界に帰りたい!
こんな模造の試練で死ぬわけにはいかない!
──面白い、…その前に…
そこで神は一度言葉を区切る。
そしてその不定形をぐにゃりと歪ませて口らしき部分を創る。
──その前に一つ技を見せてやろう。
──今後の参考にするといい。
──『
──
──
──
─
それだけ言い残して神は帰る。
特大爆弾を色々残してない?
まず…ってそんな事考えてる場合じゃない!
速く座らなきゃ!
『王位簒奪失敗…』
は?
『王位継承成功…』
あぁ…
『試練は歪み、世界は廻る』