『少女世界攻略記録』   作:100110110011(2)の民

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118◇機自摂世と私の正体

◇◆アリス・フォン・トラウィス視点◆◇

『第四幕』

『超えるべき試練』

 

超えるべき試練?

何か他にあった…?

そう思い私は眼を開く。

そこには何よりも明るく、何よりも幻想的な空間が広がっていた。

その世界は光に包まれ中心には木の椅子がある。

足を動かそうとするがその神聖さに呑まれて動くことが出来ない。

 

「『魔術-0-0-1(魔術世界)』『魔術-0-0-2(魔法神の祝福)』」

 

魔術を2つ発動し自身に有利な…言いたくはないが魔術よりの神聖さのない世界を作る。

よし、これで動ける様になった。

 

『超えるべき試練─』

『それは一度目の焼き直しではない──』

『未知への挑戦、憧憬、恐怖───』

『その全てを統べ、超えられぬ試練を超えよ!』

『自らの手で世界を統べよ!』

 

注文は兎も角真ん中の椅子に向かおう。

直感だけど真ん中の椅子に行けばこの世界に順応出来る気がする。

 

一歩ずつ、一歩ずつ中心へと歩みを進める。

その椅子に近付くに連れて周りの風景も更に幻想さ、神聖さ共に増していく。

ハナの世界の空想の本に登場する妖精らしき存在も宙を舞う。

そして様々な色の光の球…ハナは精霊って言ってたはず…が私の回りに集まっては離れる。

周りに木が沢山生えて森の中にいる気分になる。

清々しい気分。

少しでも気を抜くと永久にここの虜になり永住してしまいそうになる。

この幻想空間を楽しみながらも気は引き締める。

その椅子まで後5歩という所になる。

その瞬間世界は大きく変わり精霊や妖精という存在が消える。

 

光に─されど今までのとは違い心地の悪い光に包まれる。

そして思わず瞬きをしてしまう。

眼を開けるとそこは未知の世界だった。

いや、それは正確な表現じゃない。

私はこの光景を一部だけ見たことがある。

私はこの世界の一部を見せてもらったことがある。

 

そうだ、何を隠そう──ハナの『追憶の世界(ロスト・ワールド)』で見たことがある。

巨大な建造物が空をも支配下に置こうと背を伸ばす。

四方八方から強く目に悪そうな光が私を照らす。

空を見上げるが星は見えず空に昇るは煙と人工的な光のみ。

遥か彼方の空には未知の物体が空を飛びながら赤い光を放つ。

そして周りを見ても小型の飛行物体が私を取り囲む。

何処を見ても土はなく、何処を見ても地平線が見渡せない。

地面は硬い何かしらに覆われ何処を向いても建造物に視界を閉ざされる。

 

 

 

これがハナのいた世界……?

そして場違い感を出しながら樹の椅子は未だにそこにある。

 

私は1歩近付く。

すると周りの飛行物体が何やら音を出し始める。

これは…何かが回転してる音?

その音を鳴らしながら椅子へと物体は向かう…

違う!

あれは……木を切るための物だ!

 

私は急いで椅子へと駆け寄る。

魔術を使おうとするが上手く発動しない。

何で?

ハナのいる世界では魔術の存在は許されないから?

使えない物を悩んでもしょうがない。

 

ここでハナの言葉を思い出す。

 

─元の世界の機械は大半精密機器だからね、ちょっと叩いたり落としたりするとすぐ壊れるんだよ

 

もしハナが本当の事を言ってるなら……信じるよ!

 

私は拳を振りかぶり木に接近していた飛行物体を殴り付ける。

するとそれは異音をたてながら地面に墜落する。

後2個…同じ風にすればいける。

私はそれらを殴り墜落させる。

そして世界で異彩を放つ椅子に座ろうと腰掛け……その直前で違和感に気付く。

 

おかしい。

よく考えればなんであの飛行物体は……

急いで立ち上がり椅子を確認する。

 

やっぱり。

その椅子を思いっきり殴り付けると何かが乱れて徐々に元のゴツゴツとしたパーツを晒け出す。

私はその機械椅子の上に立つ。

 

さて何をすれば……

 

『世界統制達成!』

『試練は進み、世界は変わる』

『乗り越えられた試練を踏み台に…』

『其方は遂に登り遂げる』

 

強い光に包まれ思わず眼を閉じる。

 

 

 

『最終幕』

『あなたは何者?』

『問いに今、返答の機会を!』

『自身の尊厳を、自身の存在を示せ!』

 

私が眼を開けるとそこは円形の闘技場だった。

そして目と鼻の先には鏡がある。

その鏡は私を写す。

だけれども。

鏡に写る私は私ではない。

それは過去の私。

信頼出来る人も悩みを打ち明けられる人もいなく、周りからの期待にただ答える人形。

私は過去の私と決別する。

この分岐を以て過去と今の私は道を違えそれぞれの方向へと向かう。

気付けば闘技場は消えこの世界には私と鏡の2つのみが残る。

 

『私は苦しんでなんかいない』

『私は期待を背負う』

『私は第二王女だから、私は【大賢者】だから、私は優秀だから、だからだからだからだから…私は全ての期待に答えなきゃいけない、私は誰にも弱味を見せちゃいけない、私は感情を表に出してはいけない、私は、私は、私は…個性なんていらない…自我なんていらない』

 

私は過去の悩みに相対する。

それは確かに私の悩みだがそれはもう過去の物だ。

今の私は違う。

 

「私は苦しみを受け入れる」

「私は期待を受け入れる」

「私は第二王女である前にアリス、私は【大賢者】である前に一人の人、私が幾ら優秀で期待を乗せられていたとしても『私』を認めてくれる人がいる」

 

「全ての期待になんか答えなくていい、弱味を見せてもいい、感情を表に出してもいい」

 

「私は自我を得て、個性を得て、それを親友へと、友達へと、信頼出来る人に晒け出す」

 

「弱点も、感情も、個性も、自我も全て!」

 

鏡が歪み始める。

それに伴いその中の私も歪む。

 

『私は誰?私は何?私は…』

 

「私はアリス、トラウィス国第二王女で【大賢者】でもあるアリス」

 

『私は人形?私の存在は?私は…』

 

「私はエゴを持つ、私には親友がいる」

 

『私は……』

 

鏡の湾曲が限界を迎え割れ始める。

 

『私は…あなたは何者?』

 

「私はアリス、あなたと同じ」

 

そう答えきった瞬間に鏡と一緒に世界が砕ける。

私はゆっくりと目を閉じ──

 

「────────」

 

『【理断友】は理を断ち切り友を得る』

『これにて『魂の試練』は閉幕です』

『引き続き次の演劇をお楽しみ下さい』

 

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