『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
ある程度の距離を保ち、即死の危険を限りなく減らしてもなお有り余る確率をくぐり抜け、私はこうして立っている。
ここまでで一ミスもしてないのは正直奇跡だと思う。
そして次の瞬間16本の剣が同時に襲ってくる。
その存在を確認した瞬間に鉄骨を放ち、2本消失させる。
まっすぐ頭、胸、足に飛び込んできた3本の内、それぞれをクレルモン、呪祟濃度の引き上げ、足での踏みつけによって壊す。
そして次に右と左から飛んでくる3本ずつの…計6本の剣を対処することになるけど……
──私の周辺に魔素が集まり始める。
それは即死の爆発が起こる合図であり、当初脳内で組み上げていた方針を変更しつつも左へと全速力で進む。
右から飛んできていた3本はひとまず無視。
そのかわり私の速度と剣自体の速度が合わさり、体感では普段の何倍も速くなっている3本を対処しなきゃいけない。
一本をダメージを許容した凪ぎ払いで、一本は左手に収まっているクレルモンをぶつけて、そして一本は姿勢を変えることによってなんとか避け───
そして、私の後ろで図ったように爆発が起きる。
避けた一本が爆発の影響で方向転換し、私の左足に刺さる。
「うっ、痛っ……」
痛覚が麻痺しているのか、予想よりは痛みが回らない……けれど、順調にhpは削れる上、今も私を追う残りの5本は対処しなきゃいけない。
『
つまり、私にはhpの回復手段がないわけだ。
だから被弾は死への一直線なわけで───
呪祟濃度を上げ、クレルモンで凪ぎ払い、さっき姿勢を低くした時に拾ったミニ粗大ゴミを投げつけて一本消失させる。
残り二本の炎と土の剣をお互いにぶつけることで対消滅させる。
さて、私がダメージを与えられない拮抗ともよべない危うい状態。
この状態が続くことかれこれ15分になる。
アリスのmp切れを期待していたけど、一向にmpが尽きる気がしない。
でも、なんだかんだこの15分は無駄に終わった訳ではない。
私が斬りかかると、謎の力でアリスの肌に刃がたたなくなる。
それに属性剣がたまに斬撃を飛ばして来るようになった。
この膠着状態が続くのもいやだ。
ここは一発大きい『魔法』使っちゃおう。
失敗したら戦闘に敗北することになるけど……ここまで来たんだ。多少のリスクは許容しよう。
それに今を逃すとこれ以降はmpが足りなくなるしね。
さて、このアリスに恐怖っていう感情があるかわからないから『
じゃあ魔銅をも融かし尽くした『
でもアリスは普段の行動的に氷属性を得意としてるっぽい。
だから炎は簡単に溶かされそうだし、それと同じ理由で『
なら新しく作るしかないか。
状態異常かぁ……麻痺は……うん、だめだな。
麻痺してようと魔術は基本無詠唱だから使えるだろうしね。
思考を麻痺させる、とかならいいかもしれないけどmp消費が50000とかじゃ済まなくなりそうだし。
うーん、ダメージを与える状態異常で炎や氷でもなくてあんまりアリスと関係なさそうな……
あっ…あるじゃん!
状態異常といえばこいつみたいのが。
飛んできた雷と土砂崩れを同時に避けながら剣を鉄骨で撃ち墜としつつ考える。
そう、毒だ。
この世界で毒の魔術や状態異常はまだ見たことない。
ならアリスもあんまり対策を持ってない筈…
私はアリスの周りに魔素を集めていく。
詠唱も魔法名も全部即興で考えながら私は口ずさむ。
「疫病の王よ、命蝕む毒の王よ」
土砂崩れを跳んで避け、雷を無理やり体を回転させて避ける。
無理な回転が祟り着地に失敗し、即撃雷にも当たる。
hpが危険領域に舞い戻ったので、遠慮せずにヒールを無詠唱で使う
無詠唱の際に生じる僅かな隙を見逃さないと言わんばかりに属性剣が飛んでくるのでそれらを呪祟を用いて落とす。
呪祟を込めるにはある程度の集中力が要される。
だからあまり使いたくはないけど……
呪祟を使った反動と無事に発動した気の緩みで集中力が少し落ち、自身の周りに魔素が集まるのに気が付くまでが一瞬遅れた。
ここが中距離だっていうのもあって油断してた。
かなり無理矢理になるけど自分の方向に壁を作り自分を押し出して貰う。
こうすれば壁の破片は刺さるけど爆発の影響は直撃しなくてすむ。
その間に死角から放たれた属性剣の斬撃がおもいっきり右腕に当たり半分切れかける。
その他にも体中が痛いけど我慢する。
「その権能が一つをこの場に示せ」
戦いの最中かつ集中力が常に必須なため詠唱の内容がかなり疎かになる。
でも詠唱に集中すれば被弾がとても増えることになるから気にしない。
そして気付いてない風を装ってるけどアリスは自分の周りに魔素が集まっていることに気付いてる。
だから私が魔法名を宣言すると同時に動いて避けるつもりなんだろう。
わかってる引っ掛け程扱い易い物はない。
私は剣を弾き魔素をよりアリスに近付けて宣言する。
「命奪の毒触!」
アリスが全力で避ける。
よし、掛かった!
驚いた顔をするアリスを横目に私は魔素を移動させ、本当の『魔法名』を宣言する。
私のこの状態異常系統の魔法は全て他者をその状態異常で『縛る』イメージを大事にしている。
だから魔法名もそれに従ってる。
私は新しい想像補完魔法を使う。
イメージはそう、全てを蝕み溶かしていく蛇。ずる賢く狡猾に体内に侵入し宿主の体を少しずつ蝕み喰い荒らし最後には我が物とする蛇。
私はアリスに左手を伸ばしその名前を宣言する。
「『
毒の蛇は白銀の天使を喰い千切ろうと襲い掛かる。
対抗する天使は神秘の術を使い抵抗しようとするが物質を作ろうとするとどこからともなく現れた呪祟によって阻まれる。
天使は黒く穢れ地へと堕ちる。
地に堕ちて尚、彼女は誇り高く魔術を発動させようとする。
全てを蝕む毒が回っているというのに。
毒により全身が悲鳴を上げているというのに。
私のmpは残り僅かになりあれだけ長く取った『
これは形勢が決まったし勝負付い───
待って!
私は『問いかけ』に答えてない!
試練は別にアリスと戦えとは一言も言ってない!
なら私は何をすれば…?
そして──『私を見つけて』
私はアリスの『言葉』を思い出す。
どういうこと?
どこに『私』はいる?
周りを見るがそこにはあるのは二人で産み出した混沌のみ。
もとの純白な空間は影も形もなくなっている。
何処?どこ?ドコ?
アリスは、『アリス』はどこにいるの?
私の親友は───
違う。見つけるんじゃない。
最初からここにいる。
別に隠れてなんかない。
そうだ、あれは本当に『模造』?
あれは偽者?
確かめる術は?
反証できるの?
そうならば──
私は穢れ堕ちた天使へと駆け寄る。
『何を──』
《まだ…》
【やはりあなたは異常…】
[私は人?私は──]
この戦いが始まってから初めてアリスは声を出す。
でもそれは『言葉』じゃない。
それはまやかしの戯言であり
それこそが模造だ。
なら本物はどこにいる?
私は既にボロボロで所々骨が見える体を動かしアリスを抱きしめる。
「見つけた」
そう言うと今まで混沌していた世界が元の白紙の空間に戻る。
あの問いかけを今一度返す。
「アリスは何者?」
「私はアリス、トラウィス国第二王女で【大賢者】でもあるアリス」
「アリスは何がしたい?」
「私はエゴを持つ、私には親友がいる」
「アリスは私とは違う?」
「私はアリス、あなたと同じ」
「────────?」
「────────」
『最終幕─終劇─』
『あなたは何者?』
『返答に今、最大の感謝を!』
『貴女の返答をわたしは受けとる』
『試練は終わり──終幕と共に物語は動く』
◇
『試練に問われ、世界は花開く』
『問いは返され、劇は花開き、残るはあなたのみ!』
『春風に乗せられ、友を救い、怨念を解放し、世界を見る』
『わたしはなにもの?』
『答えはその手の中に…』
『あとはその手を開くだけ……』
気付けば破れかけだった服も、ボロボロだった体もすっかり治り、私はただ思ったことだけを口から紡ぐ。
「私は──、────の──」
「されど────────」
「────────────六────」
「セルグ───────────」
「───転移─────」
「──────数─と──────…」
「趣────と─ー────」
「─────片瀬花奈」
「自──彩─花───、───を──奈────」
「つまり、私は──────!」
『自由の少女は再び世界へと舞い戻る』
『これにて『根源の試練』は閉演です』