『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇◆
そう聖女は言い放ち、それが鍵となり、試練の世界は崩壊する。
まるでその答えが最初から最適解だったかのように、崩れ果てていく……
だが。
降り積もる雪は解け、聳える山々は
夢幻の如く螺旋を描く階段も行き場を失くし、重力に従っていく。
全てを覇する竜種は己が役割を十全に努め、巣穴へと還る。
されど。
しかし、それは認めない。
生命と破滅を司り、この世界で最もそれらを愛するその存在は彼女を認めない。
生命とは、相反するものである。矛盾するものである。反旗を翻すものである。流動するものである。
つまり、それが意味することは───
『信用出来ないなぁ』
ただ、それだけである。
矛盾せず成立し、混沌を生まずに秩序立ち、相反せずに真っ向から立ち向かう彼女が信じられない。
成立は、秩序は、相対は、強意思を伴わない。
善に、正に、法に縛られたそれらでは彼らは、彼女らは満たされない。
特殊職業という存在を作ったものとは別ではあれども、得意
「人間とは欲で生きる生物。だから貴女のそれは綺麗事に決まっている。ここまで隠し通せたのは驚いたけど……もう、試練も関係ない。それに私も誰にも言
その発言は質問の体を取ってはいるものの、その内実は脅しであり、命令である。
上位者よりもたらされた至福の玉音は甘言のように彼女の心の隙間に侵食し、疑念をゆっくりと、そして確実に蝕んで行く。
それは言葉遣いや声色を所以に持つ技能ではなく、そして上位者に与えられた権能でもない。
それは定義である。
これが発する言葉が、態度が、存在こそが甘言であり、悪魔の囁きでもある……絶対精度の精神操作である。そう、
感情操作や恐怖魔術。それらはこの定義を元に構築された、謂わば定理のようなものである。
演劇に強制介入した
『それに知恵のやつが見ている【大賢者】も近くにいるでしょ。だから少し過剰だと思うのよ』
そして遂に次代【救聖女】は口を開く。
「【大賢者】……アリスさんは完璧ではありません。学業も武芸も…それこそ、なんでも出来ますけれど、それでも一人の女の子です。全ての負担をアリスさんに負わせるわけには行きません!」
『それでも均衡が崩れるよ?それぐらいはわかるでしょ?』
「だからといって、アリスさんやハナさんを放置は出来ませんよ」
『なるほど、ならそれについてはいいや。で、本心は?』
「私みたいな人は、誰にも負担をかけずに生きるので精一杯、それどころかその最低限すらも達成できていません。だから本心も何もありません。ただ、誰にも迷惑をかけないために私は【救聖女】に成ります」
『ふむ…』
生滅を司るそれは何を思ったのだろうか。
その歪んでいる、とも取れるそれに矛盾を見いだしたのか。
はたまた、その願望に正の狂気を感じたのか。
そう。
人間とは、生物とは、万物は他の物に対して干渉せずに生きることは不可能である。それ故、彼女の願いは……
『わかったよ、それを認めよう。……それにしてもおかしい話だよね』
「何がですか?」
『ここまで集まることが、かな。【大賢者】には知恵のが、【救聖女】には私が、そして……ああ、ダメか。ならしょうがない』
「どういうことですか?」
『なんというべきかな…まあ、変なのがついただけだ。気にしなくていい』
「すごく気になるんですけど……」
『ちょっと対処が面倒で私達でも手に負えないだけだから気にしなくていいよ』
「えっ?本当に気に───」
『まあ色々騒がせたお詫びにちょっとだけ前払いしとくよ。じゃあ頑張って』
「……あなた達にも何か事情がありそうですし、仕方ありませんか。
……あなたの人生にも活力が溢れますように」
『ははっ、
再生の源……活力の供給が途切れ、壊れかけの世界は完全に崩壊する。
完成に崩壊し、原型がなくなり、全てが失われた世界は────
「綺麗、ですね」
全てを優しく包みこむ白い光があたりを照らし、その光は破片と化した世界で乱反射し、幻想的な風景を作り出す。
秩序が、成立が、相対が一編の曇りなく極められたその場所は─────
『世界の頂上にて聖女は救われる』
『廻り遡る世界の破片は其の小さき手に託された』
《特殊職業:【救聖女】に就任しました!》
《以下の専用技能が解放されます!》
《『