『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
「それより…」
私は当然の事実を言うために話題を変える。
「それより?」
何かありましたか?と言わんばかりに首をかしげるラスティリア。
「ここから早くでない?」
ここ、すなわち《永鎮》の中にはとあるものが──
「…!今気付きました…放射線が出てますね!」
───忘れているかもしれないけど、そう。放射線が充満しているのだ。
「…って早く出ないといけないじゃないですか!」
「あ、後この巨大ロボット自体が私の敵なんだけど…」
「え、なんでですか?」
「いや、ちょっと魔法…でわかる?」
ラスティリアが作られた当時は魔法という概念があったのか謎なので聞いてみる。
「『魔法』…?ああ、天整統様達が言っていた架空の…」
…あ、知らなそう。
「じゃあ3npでわかる?」
エネステラ関係の資料やら何やらでよく見る
「な、なんでそれを知ってるんですか?」
…え?知っていたら不味かった?
確かに知っている人は少ないかもだけど……あっ。
そうか。ラスティリアからしたら天整統達が負けたことすら知らないのか。
だから当時の最高機密 (であろう) 3npについて知っている私がおかしい…というかエネステラ側だと思われてもおかしくないのか。
理解。
「あ…実はね…負けた…の」
先ずはそこの説明から。
「負けた?どういうことですか?」
正直負けたかどうかは微妙な所だけど、一応負けた換算にしておく。
というわけで自分の中で整理しながらラスティリアに説明する。
「これはあくまで私の推測だけど…」
天整統率いる科学文明はAIを良いところまでは追い詰めて封印?みたいな事をして時間稼ぎををしたんだろう。
そして魔法文明の人が…って感じ。
そしてやっぱり問題なのが魔法文明勢がきちんと倒したのかっていう問題。
まあそれはそれとして……
「そう…ですか……思いだしました…」
「私がいくら残っても…マスター達がいなきゃ意味ないんですよ…」
悲しげにラスティリアは呟いて、愚痴を漏らす。
「どういうこと?」
「私がここに閉じ込められる時の話をさせて下さい」
「その時はまだ感情を抑制されてませんでした…」
─────
────
──
─
荒れ果てる大地と今も辺りを飛び続ける砲火。
億を越えようとしていた人類はたった一つの機械により遺された人の数は既に百を下回る。
そんな中、それでも尚、戦線を抑え込めていたのは2人の天才によるものだった。
天整統霧生とアンガラ・ジーンルット。
彼達が新しい兵器を、新しい武器を、新しい避難所を作り…逃げ続けていたからこそ未だに人類は存続していた。
しかしその
彼等に残された場所は2つ。
一つは…この巨大な稼働型防衛機械、《永鎮》。
もう一つは後の人類最後の砦にして文明の墓場となる《詠歴》。
そして今永く人類を護る筈だった《永鎮》はその役目を果たそうと……いや、終わらせられようとしている。
「今から自壊覚悟で《永鎮》に最後の特攻をさせます!時間を稼ぐので《詠歴》の方に逃げてください!」
天整統が他の人に指示を出すなかジーンルットは最奥へと向かう。
固く閉ざされ他の人には動力室だと説明していた部屋を自身の…いや、自身しか持たない鍵を使い開ける。
通信機を使いもう一人の天才へと連絡を取る。
「ごめん、多分ここで死ぬ」
『何言ってるんだ!まだ《詠歴》がある!あそこは《三永》の中でも一番……』
この地獄が始まってから何時聞いたか数えられない、天整統の声が無線機越しに響く。
「違う…私はここに残る必要がある」
だが、それをジーンルットはばっさりと切り捨てる。
例えこの世が滅んだとてその決意は揺るがない、と言わんばかりに強い意思を乗せた声を顔の見えない親友へと届ける。
「私は『彼女』を護らなくてはいけない」
……『彼女』。ここでそれを意味するモノが何かがわからないほど天整統は愚鈍ではない。
そして長年の付き合いからジーンルットが決して引かないことも直感的にわかっていた。
『『彼女』…わかった…だが死ぬことは許さない!絶対に《詠歴》で落ち合わせてもらう!』
「わかった、約束する」
そう言って通信を切る。
今からこの《永鎮》な過剰起動状態になる。
それでも今の『あれ』との直接対決をすれば10分も持たないだろう。
だが逆に10分もある。
10分もあれば私は…最期の願いを果たせる。
本来はあんな無骨な名前を付けたくはなかったが…
当時は形式上はそうしないと国が許してくれなかった。
まあ今となってはその許す国すらないのだが……
私は皮肉気に笑いながら作業を始める。
作業ついでに今までを回顧する。
霧生にああ言ったとはいえ私の墓場はここになるだろう。
これはある意味走馬灯のような物だ。
国が悉く滅び、最後に残ったルナエン王国が陥落した時真っ先に旗頭を取ったのはわたしを含めて3人だった。
天整統霧生、カルタス・シーリーン、そして私だ。
最初は順調だった。
しかしシーリーンが《泳穹》にて自身の身を犠牲にして『あれ』から他の人を逃げさせてから変わった。
人々は絶望し先の見えない避難生活に嫌気がさしてくる。
そんな中でも霧生は様々な機械を、ゲームを、遊び道具を作り盛り上げてきた。
彼がいなかったら今頃難民内部から反乱が起きていただろう。
彼は本当に尊敬出来る人だし人格者だ。
それなのに私は今ここで自身の願いを優先している。
人類にも、そして霧生にも申し訳ないがこれは私の最期の我が儘だ。
許してほしい…いや、許してもらわなくていい。
それでいつか、霧生が寿命か何かで死んで死後の世界で私を殴りにくればいい。
いや、もしかしたら霧生は天国、私は地獄に行くから会えないかもしれない。
そもそも天国や地獄など存在し得ない可能性もある。
そんな事を考えている内にそれは完成する。
「…マスター、現在の状況は…なるほど、判りました!それでは私が…」
そして有無を言わさずに一つ余分なパーツを加える。
「え、マス、ター…?何を……」
人の様に輝いていた表情が失われ機械の様な物になる。
自身の最高傑作を自分で壊す様でいやだが仕方ない。
「君は今後、何者かに危害を加えられるまでここを動いてはいけない」
「わかりました」
抑揚のない声で機械は答え、その眼を閉じる。
それを聞き機械の、そして部屋の電源を強制的に落とし外に出る。
「この状態から私に何が出来るかはわからないが…」
『それ』は彼の目の前に立つ。
「私は何に代えても護らなくてはいけないものがある」
「罪滅ぼしも兼ねてここは通さない!」
「そして…霧生、約束は果たせそうにない」
そこまでを機械は認識し…記憶部分が停止させられ…記録を終える。
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──
───
────
◇◆ 視点◆◇
さて、最終局面…と言ったところだろうか。
私達人類の存亡の危機をそのように表現するのは少し不謹慎かも知れないが……
ああは言ったものの、ジーンルットが生きて《詠歴》に来ることはないだろう。
幾ら彼が天才だとはいえ、彼と《永鎮》だけであのAIを止められるなら世界はここまで壊滅していない。
……理論的にはわかってはいた。
あそこに彼女の
それでも…‥それでも、だ。
動揺と悲しみが押し寄せてくる。
……私が不安を見せるわけにはいかない。
まだ人類の舞台は終わっていない。
ゲームオーバーになるにはまだ早い。
この世代では無理でも、次も、そしてその次もある。
あの作戦が成功していれば、次の次で出てくる。
最早正否を確認する方法するないが、その望みにかけるしかない。