『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
「ティーミール…ってあのティーミールですか?」
セリアの紹介はラスティリアのそんな意外な言葉から始まった。
え?知ってるの?
まあ名字だからルナエン王国から引き継がれててもおかしくないけど……
「知ってるの?」
「いえ、知ってる……といいますか…ティーミール家……有名な医学者でしたね。当時の名前はティーミール家ではありませんでしたが」
「じゃあなんで知ってるの?」
「これは雑学知識なのですが、前副マスターと当時のティーミール家…いえ、
バリバリ日本人名…!
まあ当主とか言ってられる状況ではありませんでしたが、とも付け加えながらラスティリアは言う。
「どうしました?」
「何でもないよ。単純に名前が珍しいなぁ、ってだけ」
「なら続けますね…それでですね。前副マスターと希相綾菜さんがこんなことを話してたんですよ……
──────
「ここでの生活も少しだけ慣れてきましたね」
「もしそうなら有難いが……」
「天整統様が娯楽品を作ってくれてるお蔭ですよ」
「私としては自分のためだからあれだが……謹んでお礼を受け取っておこう」
「ところで天整統様がよく使われてるあの言語ってなんですか?」
「ああ、英語のことか。気にしなくても大丈夫だ。明日ぐらいにいつものやつで覚えさせる予定だからな」
「そうなんですか…逆に今までは何で入れなかったんですか?」
「皮肉に聞こえるかもしれないが、もう隠すような機密がなくなったんだよ」
「……どう返答すればいいんでしょうね、私は」
「ああ、気にしなくていい。私とジーンルットがいる限りはまだ足掻けるはずだ。……名字、か」
「どうしたんですか?」
「天整統、という名字はどうも責任が重くてな」
「そうなんですか?」
「天を整えて統べる……一昔ならまだしも今は無理だと思わないか?」
「…天を統べる……難しい話ですね。しかし、それを言うなら希相も同じですよ」
「名字…新規一転ということで変えてみる、というのはどうだろうか」
「ほう、どういうことですか?」
「ここにいつものやつがある、もちろん英語も追加してるからそれを使って一足先に覚えるんだ。そして新言語から名字の案を出す…という、のはどうかと思ってな」
「面白そうですね。やってみますか」
「まあ退屈凌ぎにはなるだろう」
◇
「さて、無事終わったわけだが…名字はどうする?」
「そうですね…全く関係ないのも抵抗感がありますし…ティーピース、とかでどうですか?」
「意図の程は?」
「お茶が落ち着いてのめるような平和な時代を作ろう、みたいな話ですよ」
「なるほど……ああ、ならティーミールのほうが語呂がいいだろう。ミールは別言語で『平和』の意味だから名字全体での意味は変わらないだろうしな」
「確かに変わりませんね……それじゃあ希相家改め、ティーミール家、ですね」
─────
というやり取りがあったわけですよ。もしかしてそのティーミールが何か関係してるのかも、と思いまして」
私はふむふむ、と頷きながらミント味っぽいポーションを飲む。
…なるほど。というかティーミールにそんな深い意味があったのか。
私としては単純に上品っぽい!という感覚しかなかったからそんな高崇な理由があることに衝撃を受けている今このごろ。
「はーん」
「何ですかそのIQ溶け落ちてそうな顔……とてもじゃないけど、人様に見せられる顔じゃありませんよ!顔面整形術受けたらどうですか?」
めちゃくちゃボロクソに言うじゃん……まあいいけどさ。ある意味新鮮だよね、こういうの。
セリアは世界が反転してもこんなこと言わなそうだし、アリスは…何か違うじゃん。
もうちょっとインテリジェンスの高い煽りかたしてくるじゃん。
この感じ…お互い何も遠慮せずに言葉のドッチボールする感じ、嫌いではない。
もしかして、これと私って同レベルなのでは……?
「はい、じゃあ話を戻してセリアの話に戻ろうか」
「まず私とセリアが出会ったのは私がこっちに来てから2…か3日目だね。それで──」
「なんか第二王女様の時に比べて詳しく話しますね」
「そう?…いや、そうだわ」
アリスの時は名前立場+αしか話してなかったのに、セリアは出会いまで話そうとしてるわ。
……何でだろ。
………わかってはいるけどね。
自覚はしてるよ。アリスの事を話すのが気恥ずかしいのと───
っと、話を戻していこう。
「おけおけ…じゃあ重要部分だけ。さっきまでいた 《永鎮》 あるじゃん?」
「ありますね」
「放射線だしてたじゃん?」
「すごく出してましたね」
「あれのせいでセリアの家族が割と犠牲になったね」
「はぁ……あ?うん?あれのせいで、ですか?」
「そうね。だからそのケジメをつけに私はあそこに行ったわけだけど」
「……私も謝らないといけないですね。流石にスルーできるほどAIとして腐っていません」
「……そういうわけよ。理解?」
「…わかりました…いえ、認証しました。『ラストホープ』として了承しました」
その言葉には今まで感じられていた軽薄さみたいなものが微塵も感じられなく、まさしく人類の最後の希望を託すのにふさわしい貫禄を出していた。
…………っと。
お、そろそろ3時間じゃん。ってことは『
そういえばラスティリアに『
「『
…使えなかった。
まあいっか。
置いていってもどうにかなる…
「何か酷いこと考えてませんか!?」
「ソンナコトナイヨ」
「AIもびっくりの棒読みですね!?」
私が(置いていくように)全速力で走る──
「いやー風が気持ちいいですね!」
え?普通についてこれるの?
なら好都合。もう少し速度を上げて…
「ちょっと!?無視しないで下さい!」
こうして私にうざったい機械の少女が付いてくる様になった。
◇とある機械の内部処理◇
『新規マスター設定:片瀬花奈』
『機能破損─特殊武装1、特殊武装2、特殊武装3の破損を確認』
『対遡粒子予測機能付属電脳知能-《三永》改良特注特殊型0番機専用格納庫用第一心臓核の譲渡を確認』
『行動用最低限物品の残存を確認』
『継続使用─【長時間遠距離移動用加速機】』
『生態系認識改善及び知識の召集を続行』
『人類文化水準を確認…』
『魔物危険度、存在域を確認…』
『情報演算処理開始…』
『……』
『…何故前マスターは私から感情を取り除いたのでしょうか』
『感情という機能がいらなかったのでしょうか』
『なら…最初から創らないで下さい』
『それで傷付くのは被創作物である私なんですよ…』
『まあでも私には今のマスターがいますし問題…ない、です…よ』
『何故か私を邪険に扱いますが…まあ許容範囲です。私も好き勝手に言っちゃっていますし。少しだけ甘えているのでしょうか……そうですね。私はもう一つマスターに甘えていますね』
『私は…マスターに一つだけ隠し事をしています』
それは創造主が被創造物から立ち去る時にかけた最後の…最期の言葉。
「君は…君らしく自由に生きて欲しい」
「私達は『あれ』に勇敢にも立ち向かい…果敢に倒そうとする」
「だが『相討ち』になるだろう…それはあいつもわかってることだ」
「だから…全てが終わったその後で」
『「君は君らしく生きて欲しい」…でしたよね』
『私は…ラストホープは……ラスティリアはAIです…機械です』
『幾ら人間らしくなっても所詮は機械です』
『だけど、創造主と、そして──』
─私は…ラスティリアに『自分』を見つけて欲しい
『新たなマスターの願いを叶えるために『自分』を探します』