『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
何故か万全の体制が整えられ、模擬戦が始まろうとしている。
なんだろうこの違和感。
ラスティリア……じゃない。
どちらかというと、アリスとセリア、そして私がおかしい……?
何かが違う。
「3…」
アリスのカウントダウンが訓練所に響く。
「2…1…」
もやもやとした気持ちを振り払って、私は詠唱の準備をする。
「…開始!」
さあ、蹂躙していこう。
…って言っても一歩間違えたら蹂躙されるのは私なんだけどね。
「ラスティリア!頼んだ!」
「わかりました!【射出変形:防衛拳銃】…発射!!!」
拳銃とはいえ四方八方に撃てばマシンガンの代わりになる。
それマシンガンでよくね?とか言わないの。
因みにこれで使ってる弾丸は私の3np…もといmpで精製可能らしい。
しかも超低燃費で!
さて、ラスティリアが頑張って時間稼ぎしている間に私も準備をする。
空気中に呪祟を集める。
これで私の周囲5mは呪祟濃度4の空間になる。
じゃあ詠唱を始めよう。
「太古より築き上げた物を見よ」
太古からの遺物が銃を乱射しているのを背景に詠唱を始める。
「あらゆる場所での発展を見よ」
ラスティリアがいた巨大なロボット…《永鎮》を思いだしながら、そしてラスティリアとの出会いを回顧しながら詠唱する。
「現代にも残る才能を見よ!」
この世界の親友に目を少しだけ向けてから目の前に迫った剣を『
「【領域生成:防御陣営】!護りますよ!」
水色のバリアの様な物が張られ私はそれに護られる。
「それら全ては『人類』の残してきた足跡であり…」
外からの攻撃を意に介さず更に続ける。
「現代に生きる私達が敬うべき物である!」
アルカトスさん以外の団長が協力して一つの大技を放とうと準備する。
「原初の世界より眠りし未知よ…」
「【忠誠之術式】!」
「『属性決壊・一点突破』!」
「『剣劇突破術』!!」
「過去の偉人により解明されし既知よ…」
「すみません、耐えられませんでした!」
ラスティリアの張ったバリアが三人の協力により割られアルカトスさんを筆頭に雪崩れ込んでくる。
「今を以て此処こそが知識の披露宴の舞台である!」
ラスティリアは拳銃で牽制しつつそれでも飛んでくる剣を回避して時間を稼ぐ。
「無知蒙昧たる愚か者よ…」
呪祟濃度4の空間に無理矢理立ち入って私を仕留めようとする勇敢の者が出る。
「偉大なる歴史と無限の未知に溺れて沈め!」
その勇者を無詠唱で発動させた《三点再臨》…魔銅の手で凪ぎ払う。残りmp──5
「『
その条件を満たし叡知を詰め込みし書物が効力を発する。
私の頭上に禍々しい魔導書が浮かび上がり浮遊する。
『愚者』の効果は最大呪祟濃度+1と神域、呪域の範囲拡大、それにおまけとしてhp全回復。
私に魔法を使わせたこと。それ自体が警戒に値する事なのかあれだけ頑張って詰めてきた距離を自ら離していく。
でも今回に限りそれは悪手。
何故なら──
「天からもたらされる罰を知れ」
魔導書は一冊で完結するものではないからだ。
私がもう一度詠唱を始めた事に驚き、そして急いで距離を詰めようとするが…それは手遅れだ。
「地から這い出る罪を知れ」
私は自分の周りの空間の呪祟濃度を5にし…それらに立ち向かう。
「天の罰と地の罪を重ね…」
アルカトスさんが何か違和感に気付いたのか待避命令を出すが意味はない。
「私は天地を統べる!」
私は自身の周りの呪祟を分散させ騎士達にあてる。
アリスが呪祟濃度2で私に400ダメージあたえられたんだから呪祟濃度5なら単純計算で1000ダメージ。
それはどうみても大ダメージで無視できる物ではない。
次々と倒れていく騎士達。
それを気にせず私は真に注意するべき敵達に向けて、そして後方で待機している宮廷魔術師団員に向けて詠唱をする。
「『
二つ目の詠唱が終わる。
されどまだ二つ、有用な5つ目、そして真なるぶっ壊れである6つ目は使わないし使えないとして私が今回使おうとしている物は…
「地にて蠢く呪いよ」
私は地を蝕み、天を統べる様に3つ目の…魔導書としては4番目の詠唱を始める。
「天にて渦巻く呪いよ」
呪祟は集めるのに集中力と時間がいるためさっきの奴を連射は出来ない。でも団長達はそんな事わからないので警戒して近寄ってこない。
その代わり宮廷魔術師団員達が魔術を撃ってくる。
それらを…
「右です!」
「左です!」
ラスティリアの言うままに避けることで対処する。
「愚か者へと降りかかる災いよ」
『愚者』の魔導書が光を発し詠唱は最終部分に差し掛かる。それと共に突如光り始めた魔導書に警戒して思う様に動けない団長達。
平常時や普通の相手に対してなら問題ない、むしろ褒められるべき観察眼と行動。
でも相手と魔法が悪かった。
本来この光自体には警戒しても意味ない…なんならここを狙って壊せば私の魔法は不発に終わる。
まあ初見でそれに気付けるかと言われれば…まあアリスならワンチャン…位かな?
「代償を捧げ今、この世に顕現せし邪悪を見る!」
私は魔法名を───
「『
「『属性決壊・魔術空間』!」
「【近衛之太刀・第一条】」
─『邪悪』─』」
唱え終わりながら団長達の魔術と剣、そして宮廷魔術師団員達の魔術を大量に受ける。
「『
もはや慣れてきた復活に軽い恐怖を感じながらも、躊躇いもなく次への引き金を引く。
私は復活すると同時に呪祟濃度6の空間を半径50mに広げる。
「呪域『
そして、追い討ちの様に魔の法を否定する空間を半径50mに広げる。
…ここまでやればアルカトスさん以外は退場に追い込める。
逆に言えばここまでやってもアルカトスさんは退場にならないんだけどね。
この空間は魔術や魔法を許さない空間だ。それに単純計算が合っているなら継続して120ダメージずつ食らってる筈。
『邪悪』を発動し『
『
だからこの継続ダメージ+その他で倒れてくれれば良いんだけど……そうは問屋がおろしてくれない。
アルカトスさんは以前としたこの場で立って存在し、まだ模擬戦は終わっていないと言わんばかりに深呼吸をしてからこちらを見る。
本当にどうでもいい話になるけど、イケメンとか
そんな感じに気持ちの切り替えをしたところで、この割と絶望的な状況を振り返ろう。
私は万策尽きて、後出来ることは待つだけ。
アルカトスさんはまだ奥の手らしきなにかがありそう……ってところか。
さて、こんな状況をどうしたものか。
諦めて投降する……というのも勿論あり。
これば別に命を懸けた戦闘でも私の誇りを貫くための何かでもないただの模擬戦。
だからそんな肩肘はらなくてもいいわけで……
でも、なんか癪だよね。