『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
でもこの状況だから……だ。
確かに私は何も出来ない。
でも何もできないのは私だけだ。
なに、私は一人じゃない。そうでしょ?
「ラスティリア」
この状況だから。ここまで追い詰められ、そして必勝法すら使えないこの状況だからこそ。
私は最新の、そして最古の奥の手を切る。
呪いが集まり、混沌を作り出した世界を一人の近衛騎士が駆けてくる。
私は戦闘中もずっと持っていたバッグの中身を取り出し空中…具体的には私の真上に投げる。
「…【義体変形・
「【近衛之太刀・第二条】!」
…人類型】!」
「なっ…!?」
ラスティリアは自分の身を犠牲にして…アルカトスさんを停める。
突如として美少女(の形をした機械)が現れ、そしてそれをぶったぎってしまったという事に驚いたのかアルカトスさんは動揺して動きがとまる。
そしてその隙に私は手にラスティリアだった物を抱え後ろに待避する。
そして1秒も要らずに…
「簡易自己修復終わりました!」
「こっからは2対1で行きますよ!」
ラスティリアだった残骸はラスティリアに戻る。
私(の部屋の金庫)にラスティリアコアが有る限りラスティリアは不滅の存在。
幾ら壊されても幾ら壊されても無限に甦る悪夢の様な…
「何か失礼なことかんがえてません?」
「ソンナコトナイヨ」
「はぁ…まあいいです!それじゃあ行きますよ!」
正直この扱い方はラスティリアを人間だと思っている私からするとやりたくない。
でもラスティリアの方から推奨してきた…というかそういうコンセプトで創られた、ラスティリア本人からと言われたのと、アルカトスさん達が尋常じゃなく強いのと、私の『
まあ、うん。やっぱり使っていてあまり気持ちの良いものではないね。
さて、仕切り直しだ。
戦局自体はこちらの有利。
後は最悪逃げ回ってれば呪祟の継続ダメージで勝てる。
でもその逃げ回るという行動自体が難しい。
いくら呪祟でダメージを受けているとはいえ、いくら呪祟で行動を阻害されてるとしても、だ。
相手はこの国の騎士のトップ。
それに私はmpなし、神域使用不可、魔術及び魔法使用不能。
精々出来ることは遅い足でみっともなく逃げ回りながら呪祟と呪域で視界を遮ること位だ。
だから私は戦いの命運を相棒に託す。
私の相棒はなんてったってあのAIと戦うために創られた特注型。
だから…
「それじゃあお願いね、相棒!」
「ッ……!判りました、マスター!」
「【砲身展開1:科学武装全展開】!フルバーストです!!」
吹き荒れる弾、吹き荒ぶ鉄のカーテン。
その光景はここが剣と魔法に支配されたファンタジー世界だということを一瞬忘れさせてくれるものだった。
されどファンタジーも負けてはいない。
剣の斬撃が飛び、不思議な力で浮遊する剣を従え突撃させる。
それはまさしく魔術vs科学の様相であった。
ふと自分の頬に涙が流れ落ちるのを感じる。
それはこの光景への感動からだからだろうか。
それとも科学に元の世界…私の世界の片鱗を感じたからだろうか。
それとも魔術に今の世界…親友の世界の欠片を感じたからだろうか。
自分でも言語化できない感情がとめどなく溢れてくる。
今は模擬戦中。泣いてる場合じゃない。集中しなきゃ。ラスティリアの邪魔になっちゃう。
自分に言い聞かせてるのに涙腺は言うことを聞かない。
……ああ、私は自分の世界に…元の世界に帰りたいんだなぁ。
この世界は確かに良い所だ。アリスもいてセリアもいて、ラスティリアがいて、皆がいる。
でも私は…それでも私は元の世界に帰りたいんだ。
今までは何となく帰りたいとしか思ってなかった。
でも今確信する。
確かに無味乾燥な世界だったかもしれない。
確かに面白くもない、無駄も多い、つまらない世界かもしれない。
でも、いや、そんな世界は…確かに私の居場所だった。
全てがつまらない訳じゃない。全てが無駄な訳でもない。
だから……
「マスター!大丈夫ですか!?」
「ふふっ…もう大丈夫」
「ふふっ、ってなんですか!?気持ち悪いですよ!?」
「うるさい、じゃあ気ままに自由に私は動くから…」
「それに着いていけばいいんですよね!」
…相棒が全てを理解してくれるからやり易くて何より。
さて、感傷的な気分も元の世界への郷愁も一端忘れて目の前の戦いに集中しよう。
さて、使える物は全て使っていこう。
『
何故か使える物は使える。
だから原理とか構造とかは後にして使う。
「強き者には弱者への救済を」
この期に及んで私が魔法を使おうとするとは思ってなかったのか驚いた顔でこちらを見る…
この戦いで何回驚かせてるんだろうか。
「弱き者には強者への期待を」
この魔法はステータス強化がメイン。さて、何処を強化しようか…
……って言っても実はもう決まってる。
「立場を変え、世界を交えどもそれは付き纏う」
普段使わないステータスならその後の反動も全く怖くない。
だから実質単純な強化になる。
「代償にと適応される罪を見よ!」
アルカトスさんがこちらに向かって来るのをラスティリアが頑張って止めている。
「『
strとvitを100倍に、aglを5倍に。
36秒の超強化と引き換えに4日少しstrとvitがほぼ0
になる事が確定する。
でも全く後悔はしてない。
strとvitは普段から使わないっていうのも理由にはあるけど…
一番の理由は何があっても仲間、親友、相棒が支えてくれるからだ。
だから安心して4日を犠牲に出来る。
そして私は目を瞑る。
感覚を集中させて…いつ剣が振られるのかを風と呪祟で感知する。
aglがある程度あるお陰で避けられるだろう。
今…?いや、まだ。後少し。剣を振り下ろし始める。
今…?いや、違う。剣が触れるまで後0.──
今!!
私は感覚に従って右に飛び…避けきれずに左手に剣を受けるがvitの暴力とstrの暴力で剣を跳ね返す。
流石に素手で剣が弾き返せるとは思ってなかったのか剣が手から摺り落ちる。
私は足を使いその剣を全力で場外方向に蹴る。
strのおかげで剣が場外…訓練所の壁に突き刺さったのを横目に私は空いてる右手を握りしめ…
それでも近衛騎士のトップは流石だ。
この状況でも対応して何かの魔術を放とうとする。
私に対応できる策は一つもない。
だから…
「うおおおりゃぁぁ!!」
とても
そして私は握りしめた拳をアルカトスさんの脇腹に叩きつける!!
私の集中力が切れ周囲の呪祟濃度が0に戻り、また呪域が解除されたのとあのアルカトスさんが地に倒れ伏すのは同時だった。
私は思わず地に膝を付く。
今回の戦いは本気でヤバかった。
これが昨日でもダメだったし何ならアリスと呪祟についての実験する前でも負けてた。
本当に辛勝って感じ…でも達成感はある。
…あるどころか死ぬほどある。
思わず叫びたくなるけど最後の理性で抑え込───
「ラス、…ティリ…ア、勝て…た!!」
────めなかったわ。
最早体裁とか気にしてられない。
この模擬戦は今までで一番有意義な物かもしれない。
vsエネステラは基本的に相手が相手だからどちらかというと死の恐怖から逃げるために戦ってる感じが強い。
対して魔銅の…特に後半戦はセルグヌの弔いって感じが強いしなんともいえない。
そういうのに比べてこの模擬戦は全身全霊で戦ったしそれにお互い命が懸かってないのが良い方向に作用している。
技術の成長って意味でもラスティリアへの信用って意味でもよかった。
そのラスティリアは…一つずつ展開した砲身を自身の体の中に閉まっていた。
…それ自動収納機能とかついてないんだ。
意外と不便なんだね。