『少女世界攻略記録』   作:100110110011(2)の民

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135◇天は堕ち始め、世界は動き出す

 

訓練所はかくして静まり返る。

それは一人の少女が自身の十八番を封してなお国の主戦力を倒してみせたことによるモノなのか。

 

それともその少女の全力に恐れ(おのの)いたのか。

 

原因は判然とせずとも事実…少女の勝利は否応なしに突き付けられる。

それはこの世界一の大国でありそんな大国のエリートである騎士達の心を折るのには十分であった。

 

もし少女に制限がなかったら──

もし参加者がもっと少なければ──

彼らの心は折れなかったのかもしれない。

だが年若い少女に…多対一かつ少女側に制限が掛かっているという事実は変わらない。

 

もしも、仮の…そんな世界は存在しないのだ。

 

そんな静まり返った空気を廃するのは当事者ではない。

一見無関係に見えて…この模擬戦の提案者でもある王女だ。

 

「…ハナは強い。それは純然たる事実」

 

そう。確かに彼女は強い。

しかし事実には突き付けられずにいる方がいい事実もある。

この国のトップにも言われ実感せざるを得ない少女との差異。

私達、俺達、僕達の数十年に及ぶ努力はたかが10年も天才が努力すれば追い抜かれるものなのか。

そんな厭世感、諦感が訓練所を支配する。

とうの少女は漸く自分が何をしたのか…いや、何をやらかしたのかに気付き狼狽える。

しかしその狼狽えさえもが騎士達の苛立ちを、無力感を実感させるものだった。

 

「…ハナは強い。でも無敵じゃない」

 

その言葉に懐疑の念を抱く。

それは戦闘でない分野なのではないか。

戦闘においてはほぼ無敵に近いのではないか。

そう疑念を覚えるのは何もおかしくない。

 

「ハナは……後何年も生きられない」

 

その言葉に衝撃を覚える。

当たり前だ。

今こんなに健康そうなのに?

ここまで武勇を誇る彼女が数年も生きられない?

そして誰ともいわず声が上がる。

 

「それは…強さの弊害ですか?」

 

そうだ。

この異常な強さには理由がある。

人間にとって『理解できない物』とは生涯の天敵だ。

だからその未知を自身の既知に落とし込み心の安寧を築こうとする。

彼女の異常な戦闘力は極端な寿命を減らすことから来ている。

そうわかれば納得はいかないが理解はできる。

しかし第二王女は話をやめない。

 

「違う。ハナの戦闘力と余命は……ほぼ関係ない」

 

謎の言い淀みがあったが第二王女から紡がれる言葉は予想外のものであった。

そして騎士達は新たな疑問を抱く。

 

なら何故その話題をここで出す?

自分達が模擬戦で完敗し、その慰めとして彼女の寿命の話を切り出したのなら話の流れが掴める。

でもそうではないらしい。

なら何故?

 

この場の流れを支配する第二王女様は話を続ける。

 

「ハナは後数年も生きられない。だから…一回だけ」

 

「私がハナを戦争に、他国との争いに出すのは一回だけ」

 

それは第二王女の宣言だった。

これほど強い彼女だ。

態々一回に絞る必要はない。

戦闘と寿命が関係ないならその数年は何回でも…

そう考える人が多い…大半だろう。

 

だがそれを話す第二王女からは確固たる意思を感じる。

それは国のため…というよりは彼女の…ハナ個人のための宣言に思える。

彼女に何か理由が?

そう思い当の本人をちらりと見る人も多い。

だがそこにいるのは状況を全く理解できていない年相応の狼狽えを見せている少女だった。

 

そこでおかしいと思う人もいる。

今抱いた『年相応の』というのは庶民の『年相応』だ。

貴族や王族ともなれば彼女程の年齢でも狼狽える姿や感情を表にすることはほとんどない。

 

彼女は確かに少し前まで平民だった。しかし第二王女様は彼女のことを虎の子と明言している。

なら幼い内から貴族らしい、王族に近い者として相応しい『年相応』を身に付けさせる筈では?

態々平民らしく、庶民らしくするのは──

 

まるでいつかその立場に戻る時が来ると言っている様な物だ。

しかしそれはあり得ない。

これだけ武勇を誇り、そして数年で命が尽きる英雄ともあればその立場に戻れる訳がない。

それこそ新天地で0から始めるとかでもしない限り。

そしてそんなことは当然第二王女様は気づいている筈。

ならば何故?

そう疑問を抱く目敏い者もいる。

しかしそれは

『第二王女様のやる事だ、何か理由があるに決まっている』

という考えの下で記憶の彼方へと追いやられる。

 

「だからと言ってハナを戦わせずに温存なんて事はさせない」

 

「だから…君達、この国の守護者の訓練に利用しようと思う」

 

「…私は数年しか持たない強靭な体制よりも長く、永く続く安定した体制を好む…」

 

それが第二王女の本音かどうか伺い知れないが、ここでそう宣言した以上公の場ではそれを貫き通すのだろう。

 

勿論余命の問題が解決したらその限りではないけど。

そう付け加えながら第二王女様は虚空を見つめる。

その表情は何処か辛い事を我慢している様に…思えるものなのかもしれない。

 

そして第二王女様は解散の合図替わりに手を振り騎士達はそれぞれが元の場所に帰る。

 

 

何この空気…

いや、私が何をやらかしたかは十分に理解してる。

私が制限された状態で大立ち回りをしたのがどれだけ不味いのかはさっきまでの雰囲気と少しの論理で分からされた。

 

2人(と1機)だけになった訓練所でアリスが近付いてくる。

重要な話があるっぽい雰囲気を出してるので(いつの間にか帽子型に戻っている)ラスティリアをバッグの中にしまう。

何か文句を言われてるような幻聴が聞こえたけど気のせい気のせい。

 

この訓練所に2人…セルグヌの襲撃を思い出す。

そう思いちらっと周りを確認するがアリス以外は誰もいない。

ここ一応宮廷魔術師団員の訓練所なんだけど…

まあさっきの事件で居づらくなるのはわかるし原因は100%私なので文句は言わないし言えない。

今の私はvitもstrも普段の100分の1、aglも5分の1なくそ雑魚スペックなので早く部屋に戻りたい。

hp自体はもう『追憶の世界(ロスト・ワールド)』の制限も払われて1000ちょっとあるんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

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