『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇◆アリス・フォン・トラウィス視点◆◇
ハナの異常な模擬戦が終わる。
そう、間違いなく異常な模擬戦だ。
ハナはここに来てからまだ日が浅い…のに、これだ。
やっぱりおかしい、あり得ない、私の予想を軽々と越えてくる。
でも、それでも、まだ足りない。まだ私のじゃない。
これで、ようやく準備ができた。
「アリス───────
何気なく私に話しかけてきたハナ。
きっと、今後…突然模擬戦を始めた件について責める…というよりは文句を言われるのだろう。
まあ関係ない、あの様子をみればわかる通り、ハナは今、一番油断している。
だから────
「やっと、殺せる」
やっと、やっと私のモノに出来る。
王手、チェックメイト、詰み…言い方は何でも良いけれど、ハナを追い詰められた。
───え?」
ハナの驚く…心の底から驚く声を無視して、奥深くまで短剣を突き刺す。
万が一にも『汚れる』と嫌だから、普通の…至って普通の短剣だ。
動揺してハナが身動きがとれないのを良いことにそこに収まる臓器を短剣で蹂躙する。
もう戻れない。もう我慢しなくていい。
「な…んで?」
怯えが含まれた…理解出来ないものを直視したような声を発する。
…発するしかないのだろう、私が何らかの合理性を持った理由でハナを刺した、ということを信じたいのだろう。
それしかすがるものがないんだからしょうがない。
hpが0の状態から復帰する『
『
使うとしたら呪域、もしくは神域だけど神域はたいした効果を上げれず、呪域ぐらいなら私は逃げられる。
……唯一の懸念材料はあの『神すらも読めなかった』スキル……あの時。
『孤神の球体破片』の時に発揮されたものだけど、あれは今のハナが発動できる筈がない。
D.E.I.の《三点再臨》等ぐらいでは私を即座にころすことはできない。
だから、今度こそ正真正銘の詰み……っと、危ない。
そういえばラスティリアがいたんだった。
ハナが呼び掛けなきゃ出てこれないから……
「なんで?それは私の台詞」
私はそう言いながら、短剣を抜き、振り向きざまに腕の筋を丁寧に、貴重品を扱うように切る。
私はこのために、この時のために【剣術】をlv10まで上げたのかも知れない。
そんなことを思いながらもハナを見ないように目をつぶる。
……ハナが死ぬ瞬間なんて見たくないからね。
「ハナは全てを奪っていく」
私の心も、安定も、すべて。
誰にも奪われることのない筈のものまで全て奪っていく。この世界の略奪者だ。
「異世界転移?異世界の知識?異世界異世界…この世界は『異』なんかじゃない!」
そう、ハナは私を軽んじている。
私はこんなにもハナを私のモノにしようとしているのに、だ。
『私の世界』から出ずにいれば良いものを、ハナはその壁を貫き、壊し、作り替え、砕き、そして…広げる。
「…私にとっては!ハナの世界こそ『異世界』」
ハナの世界では、ハナのところでは、ハナの持っていた、……この世界で何で、どうしてそこまでハナの世界の話が出てくるの?
これじゃあまるでこの世界がハナのために用意されたモノ。
「なのに!ハナはいつもいつも口を開けば『異世界』の話ばっかり!」
もういっそ、それでもいい。この世界の端から端まで全てハナのための世界でもいい。
でも、そんな用意された世界なのに、ハナは帰ろうとする。
望みもしない不幸が待ち受ける地獄のような世界に。
この箱庭なら私の範疇なのに、私の管理下なのに、私が見ていられるのに。
「ハナはこの世界を軽んじてる!なのにハナはこの世界に愛されすぎている!」
……背後から聞こえる荒い息遣いでそれを再確認する。
計算上、既にhpは尽きて死んでいるはずだ。
その思いをそのまま口に出し、ほんの少しの時間を経過させてみる。そうすればもしかして。
「現にまだ生きてることがおかしい!」
「本来なら、計算通りならもうhpは尽きている筈」
「そうやってハナはいつも私の予想を超えてくる!」
ああ…ダメだった。
やっぱり私の予想を越えてくるんだ。
悲しいことなのに、嬉しいことなのに。
異常なことなのに、当たり前のことなのに。
そんなハナが愛おしくてたまらない。やっぱりハナだけだ。
これだけはセリアにも…つまり、誰にも真似できない。
「そんなハナの事が──」
ならば、これが最後。本当は見たくもない、したくもない。
でも感情とも論理とも矛盾した何かが私を突き動かす。
こんなことしちゃいけないのに。
こんなこと言いたくはないのに。
「大嫌い!」
………せめて。
せめて、私の予想を超えて、ハナが動くなら。
ハナが私を閉じ込めてくれたらいいのに。
それなら私も安心できるのに。
「ハナはこの世界にいるのが可笑しい存在。なのにこの世界に祝福を貰ってるかの様に全てがハナの都合良く進む!」
勿論そんなことは微塵も思っていない。ハナの苦労は私が一番見てきた。それを全てわかっている、なんて傲慢なことは言えないけれど、私が一番知っている。
「そんな…ことない!」
─────っ!
驚きの声を唇を噛むことで無理矢理抑える。
なんでっ!なんで。なんで……
こんな状況でも私に……すごい、すごすぎる。あり得ない。憧れる、どうして。
……違う、ダメ。
私が『あり得ない』なんて言ったらダメ。
私が『憧れる』なんて言うのはダメ。
あり得ない、というのは理解を拒む諦め、怠惰だ。
憧れ、というのは理解から最も遠い思考停止の……そしてハナの異常性を
だから、私だけはそんなことを考えちゃいけない。
それは私が一番わかっているはずなのに。
「そもそも私にとってはこの世界に来た事自体が一番上手く進んでない」
…うるさい、五月蝿い。
そこが私の好きなところでもあり、私の嫌いなところでもある。
「その言い方が私を苛立たせる!」
苛立たせ、苛酷で過激な感情を心の奥底から湧き出させる。
そしてそれを昇華させ、言語という形を得て、この世に生まれる。
その生まれ方はおかしくはあるものの、異常ではないはず。
「そうやって『別に私はこんなとこ来たくなかった』…そんな風に言いながらこの…私達の世界で平然と生き延びるハナが私を苛立たせる!」
私を、私の世界を、私達の世界を見てよ……
無限に堕ちていく心とは真逆に議論は……私の一方的な言いがかりは盛り上がる。
「何でそんなに軽く見れるの?」
『
追憶の世界はあくまで失われた世界だ。そんな世界にいつまでも思いを寄せているから、だからそんな名前になる。
「私達の世界だって何千年もの歴史がある!そっちみたいな『異世界』とはその歴史もその道筋も全く違うけど!」
「私達の世界だって生きている!」
息を切らしながら、それでも冷静に。
だけれども、感情を乗せて。
……本当に嫌になる。
だから私はいつまで経っても第二王女に縛られているし、この才能にも縛られている。
人と話す…『親友』と話すときですら、これだ。
私の本心を明かすことは私の脳が
それは【理断友】となっても何一つ変わらない。
友達が…『親友』ができたとしても、私から私のことを語ることはできない。
「でもその『主人公』がいなくとも異世界は本来回る筈だった」
……ハナは掠れた…それでもよく通る声で言う。
ここでの『主人公』はハナ自身のことだろう。
内容からしてさっきの私の発言への反論、もしくは文句、といったところ。ならその核心を探して反論、そして正当性を示さなきゃ。
……違う、それが目的じゃなかったはず。
私の目的はハナを私のモノにすること。
…なら、ハナを……違う。
おかしい、おかしくない。
ハナが私だけを見てくれるようにする、そう。
元の目的に立ち戻る。
「その『異世界』なりの発達の仕方で文明を発展させていった筈なんだ。
その過程こそが最重要であり結果はさして重要じゃない。
なのに『主人公』はその『異世界』特有の枠組みを、常識を壊し自分のいた世界の文明を正しいもの、効率的なもの、有用なものとして『異世界』に押し付ける」
…何が言いたいのかがわからない。
違う、私の才能の限界なんかじゃない。そんなものあるはずない。私が無能なわけがない。
違う。
私がハナを理解してあげられないなんて、ダメ、許せない、おかしい。
理解しなきゃ。
…………ああ、ハナはまだここを『異世界』だと思っている。
わかってしまう。異世界だと思っていないように見えても、心の底では異物だと思ってる。
…そう、私が無茶を言っているだけ。
そもそも、前提からしてそんなことは不可能。
「その結果従来の『異世界』は崩れ…人が代わり、場所が変わっただけの『元の世界』の焼き増しになる。
その世界に魔法や魔術、そんなファンタジー的な物があったとしても最終的な庶民の生活は元の世界と変わらなくなってしまい、唯のコピーになる。
だって手元に銃があったからといって人に向けて乱射する人は普通いない。
ましてや子供の頃から慣れ親しんだ魔法を人に向けて乱射しようなんて考えない筈だ。
例え日常的に電気が使われてるからといって人を感電させる人がいる?
そういうこと。
異世界転生や異世界転移で『彼達』がやっていることは文明の、文化の侵略に他ならない。
だから、そういう小説を読んできた私はこの世界に来て一つだけ気にしている事実がある。
それは私がその感染元にならないかということ。
だから…いや、それもあって私は早く帰ろうとしている。
勿論自分としても早く帰りたい。元の世界に帰れるってことは家族に会えるし元の生活に戻れるってことだから。
だけども、早く帰ることはこの世界に対しても影響が少なくて済むということでもある」
……そう、そうね。
ハナが私だけを見てくれることはない。
なら、せめてこの時、最期だけは私を見てほしい、と思うのは傲慢なのだろうか。
…正真正銘死にかけの今すらハナが見ているのは世界だけ。
……もう、私も疲れた。
「ところで」
ハナは確かにそう言った。
話題の転換を表すその言葉。
このタイミングでのそれは…もしかしたら。
そう期待してしまう。
今までが世界の話なのだから、次は個人の話でもいいだろう。
私の話でも……そう、何度も期待を裏切られたはずなのに、そう思ってしまう。
「以前アリスに『この世界に影響を及ぼし続けるか』という事について聞かれた。
その時私は…」
ああ、あの時。
こんなことになるなんて思ってなかったあの時。
確か───
「『傲慢にもこの世界と関わり続ける!』
『アリスや世界を巻き込んで私が望む物語を紡いでやる!』」
───そう、そう言っていた。
私は当時…そしてついさっきまで、それを信じていなかった。
そんなこと出来るわけないのに、そんなことあり得ないのに。
どうせハナは自分の望むままに世界を蹂躙してから────
「そう答えた。
勿論あの時の私に嘘はなかったし今もそう思ってる。
でも、だ。
与える影響は100よりは10、10よりは1の方がいいとも思ってる。
友達や親友を数人巻き込んで──それで百年後ぐらいには『片瀬花奈?そんな人そういえばいたね』みたいな感じになってくれればいい。
それが理想だし『異世界』との大人の付き合い方ってものだと思う」
……それが、ハナの本音?
私にはそうは思えない。
そう、まるで私みたいだ。
私みたいに隠している何かがある。
「でも、私は大人に成りきれない。
それが論理的にも感情的にも正しいのはわかる。
でも、それは私が嫌だ。
折角この世界に来たんだ。
だから…爪痕を残したい。
それが罪なことも、傲慢なことも、最低だってことも全て理解しているつもりだ。
でも私はまだ子供だから。
それを免罪符に私は自分に言い訳をする。
それが『免罪符』だってことも、それが唯の『言い訳』だってこともとっくに気付いてる。
でも大人に成りきれない。それは私の精神が幼いからなのか、それとも大人になることを自身で拒否しているからなのかは私にはわからない。
アリスに忘れられたくない」
……その言葉をどれだけ待ち望んだことか。
その言葉だけで全てを赦せる。
たったそれだけ、されどそれだけで私は救われる。
「セリアに忘れられたくない。
ラスティリアに忘れられたくない。
貴族達に、民衆に、騎士達に、宮廷魔術師団員達に、忘れられたくない」
……他の人に比べて最初に私の名前が出てきた。
それだけで私は暗い優越感に笑みを浮かべざるを得ない。
「100%私の我が儘だしエゴだ。でも、私は……」
そんなこと関係ない。
……っ、違う。
私は何を…だから───
───黙れ!
私は稼働し続けようとする脳を強制的に止め、感情の赴くままに口を回す。
もう止まらない、もう止められない、もう止めない。
「ハナ………ごめ、ん…」
周りの目も、今までの行動理念も全て捨て去り、私はハナを癒す。
過剰なくらい癒す。癒して、治して、私色に染める。
感情のままに動くことがこんなに楽なことだなんて。こんなのだったら最初からこうしていればよかった。
「私は…ハナが好き」
私を裏切ってくれるハナが好き。
私の才能を踏みにじるハナが好き。
「どうしようもないくらい、自分で自分を抑えられなくなる位好き」
だからこんなことになっている。
「でも私はこの世界の住人、ハナはあっちの世界の住人」
その差はとても埋めきれるものじゃない。
それが『
「2つの世界は交わる事はあっても直ぐに離れる」
今みたいに一次的に接していても、いずれは離れ、別れていく。
「だからこれ以上私が私じゃなくなる前に」
「ハナを元の世界に返したかった」
そう、こうすれば。ここまですれば、ハナは……
そうだ、それだ。
まって、ならおかしい。
突然発生した違和感に思考の一部を裂こうとするが、脳を停止させていたことを思いだし、余計なことをしないように考えごと封印する。
「あの時ハナは『確実に帰る方法』を見つけた筈」
「だから、精一杯私やこの世界を嫌って、それで…命の危機に瀕したら、帰ってくれる…」
でも、今のハナの様子を見る限りではその望みは達成できていなさそう。
「これ以上、ハナに迷惑は、かけたくない」
そして、私の醜態を見せたくない。
「だから、だから!私は…ハナを、」
昂る感情を抑え、墜落する論理を掬い上げる。
「なのに、ハナは『その手段』を使わなかった」
そう、それが私のためならば。
「それに、あんな事を言われたら…もう…だめ」
「『アリスに忘れられたくない』…その一言だけで用意していた建前も、何個も用意してた言い訳も、あれだけ準備してた計画も、全部なくなった」
「ほんとは、こんな事も言う予定じゃなかった!」
「自分のこの気持ちが抑えられる内に帰ってもらいたかった!」
「この世界に未練を持って欲しくなかった…」
「でも…でも…もう無理。もう、ダメ」
「ハナに迷惑をかけたくなかった!そのために色んな手を尽くした。あんまり褒められない様なことも沢山やった!でも……ッ!……ごめん。迷惑…忘れ──」
自分の失態、痴態、醜態に呆れ返る。
本当に私はどうしたんだろう……何が起きているのだろう。
でも、何かを考える、ということは自分の本心に蓋をすることと同義だからその疑問を解消する術はない。
おそらくハナのせいでもあり…そして、何よりも私のせい。
「迷惑なんかじゃないし忘れる訳ない!」
ハナのその力強い宣言で、失われたかけていた色彩が戻ってくる。
「例え元の世界に帰っても私は忘れない!」
その天にも昇る勅令で、私は……あっ、ちがう、だめ、まって、このながれは、返答、しな、ちがう。
「いま、へんじしなくていい、むしろ、しないで」
おねがい、わたしが私じゃなくなる。私が保てなくなる。
待ち望んでいた言葉を忌避し、望まぬ終わりを期待するけれど、現実はその言葉によって一つに定まる。
「アリスになら、『親友』の価値観を歪められてもいいかな」
─────違う、こんなのは夢。
そう、胡蝶の夢。
アリス────そう、名前を呼ばれるだけで私はこの名前を誇らしく感じてしまう。
今まではそんなことを思ったことなかったのに。
「何回か言ってる通り私は最初、この世界を遊びだと思ってた。だから少し遊んですぐ帰ろうと思ってた。でもそんな私がこの世界に愛着を抱いてほんの一瞬でも帰りたくなくなった。
そしてその内私は別の理由で帰りたくなった。私はこの世界の人達に悪影響を与えたくない」
「だから帰りたくなった、筈だった」
考えずとも先が見える。見えてしまう。
幸せの未来は…それは、安易に訪れていいものじゃないはず、なのに。
私なんかが幸せになれるはずないのに。
「でも、私は今帰る手段が一応はあるのにそれを躊躇って…先伸ばしにする位には帰りたくない。それはセリアのおかげだし、まだ会って1日も経ってないけどラスティリアのおかげでもある」
「それでもやっぱり1番の理由は…アリスだよ」
………ハナ…しか、いない。
でも、駄目、流されたら、そのまま。
「アリスがいるから、アリスがここに、この世界に存在してるから私はこの世界に本気になれる」
その言葉をそのまま返したい。
ハナがいるから、ハナがこの世界に来てくれたから、私はこの世界と向き合えた。
「ふとした時に考える事があるんだ」
ふとした時に、私は考えていた。
「私は今後どうなっていくのかって」
私は今後どうすればいいのか、ということを。
「もしこのまま無事に帰れたとして、今後どうなっちゃうのかなって」
このまま第二王女として、自分を殺して生き続けなきゃいけないのかって。
「そんな将来への漠然とした不安があった」
そんな決められた未来への絶望が有った。
「だから私は裏切らない人をこっちでも、あっちでも探し求めた」
だから私は理解してくれる人を手当たり次第に探した。
「探して、探して、異世界に来てまで探して…私は見つけた」
探して、探して、異世界から来た人すらも視野に入れて…私は見つけた。
「絶対に裏切らない。そう確信できるひとが見つかった」
絶対に理解してくれる、そう確信できるひとが見つかった。
「そうしたらボロボロだった石の塔が急に立派な宮殿に見える様になった。
今まではどこを見てもモノクロだった世界にカラフルな色が付いた」
そうしたら、今まで見落としていた輝きを世界から見いだせた。
今まではどこを見ても白黒だった世界が極彩色に染まった。
「それは、…間違いなくアリスのおかげ」
それは、間違いなくハナのおかげ。
「だから…」
だから。
「私もアリスが好き」
「わた、しもハナが、好き」
言ってしまった。言って、しまった。言われてしまった。
「こんなの、聞いてない、予測できない、わからない、なんて言えばいいの?これが…ハナの言ってた言葉の限界?もう、嬉しいとか、そういう次元じゃ、ない」
私が言葉で表せないなんて…違う、有限だから仕方ない、そう。
ハナも言っていた。
だからもう恥じない。
「こんな、夢みたいな、ファンタジーみたいな、魔法みたいな、物語みたいな、そんな展開が私に赦されるの?」
「私が赦すよ」
その瞬間、天使のような免罪符が目の前に垂れ下がる。その札はとても魅惑的で手を伸ばさざるを得ないものだった。
「他の誰が許さなくても私が赦してあげる」
でも、それでも私は汚れているから。
ハナみたいな人とは不釣り合いだから。
「夢でもファンタジーでも魔法でも物語でも、私は全てを許すよ」
「……ハナは…
「…私は……ハナを巻き込んで……」
「もしアリスが私を色んな『事件』に巻き込んでることを気にしてるなら…そんなことはどうでもいい、としか言えない。違う、どうでもいいわけない。私にとってはその全てが大事なアリスとの想い出だから。何で私は……」
思い出…記憶、記録…。
でも、私の過去は…それだけじゃない。
もう真っ黒な私を受け入れてくれる人なんているはずがない。
「…そう、もしそれをアリスが気にしているなら検討違い。そもそもアリスが私をどうしたってアリスが気に病むことはないの。私は既にアリスに『夢中』だから、例え私が私じゃなくなろうと私はそれにすら気付かない」
「……私、は……ハナは、自分を大切にして欲しい……今のその言葉は、すごく、嬉しいもので…」
「でも、嬉しいけれど。…それは貰っちゃいけない、もの。だから、お願い……」
それは、依存…離れられなくなって、二人とも幸せから遠ざかる…から。