『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇◆片瀬花奈視点◆◇
……待って、待って。待って!今気付いた!
私はこの状況で、こんなに私の事を好いてくれる人を残して、元の世界に帰らなきゃいけないの?
アリスも一緒に帰れる方法を…ダメ。
アリスだってこの世界から離れたくない筈。
それを無理矢理連れ出すのは違う。
例えアリスが私の世界に来たいと言っても……うん、ダメ。
故郷は大事にしなきゃ…それに私なんかに付き合わせるほうが悪い。
ならどうする?何とかして往復できる方法がある?
私は一人で、それも一回でも帰る方法が見つかればいいと思ってた。
でもこれからは目的変更。
何度でも、何人でも、何時でも帰れる様な方法を探す。
それがこれからの私の第一目標。
でもそんな方法あるのかな。こっちからあっちはいいとしてあっちからこっちってほぼ無理じゃ…まあ決め付けは良くないよね!
「ハナさん、アリス様、おわりま……」
あ、セリア。
きまずい雰囲気。
「あ、違いますよね。判ってますよ?」
…今回はあってる…とも言いにくい雰囲気。
なんだろう…この、うーん。
だって…あれじゃん?
有耶無耶なまま別れてしまった。
セリアはこれから仕事があるそうだしアリスは一回自室に戻るらしい。
という訳で私も自室に戻る。
何か微妙は雰囲気だけど…まあ…うん。
「もう出ていいですよね?」
そう言ってラスティリアが出てくる。
ん?ちょっと待てよ。
このタイミングで「もう出ていい?」…
「聞いてた?」
「はい、それはもう…全部聞いてました。はい」
「…」
「あの~これに関しては私、何も悪いことして…待って下さい!その、落ち着いて下さい!今私をその拳で殴っても意味ないですよ!?記憶は別に消えませんよ?」
「痛い、痛いです!無言で殴らないで下さい!」
「ちょっ!無言で殴るのはやめて下さい!精神的に来ますからぁぁ!!」
ラスティリアの命乞い虚しく誰にもとど…
「……ハナ?…わ─」
「ごめんなさい!誤解です!違うの!」
なんか今日こんな立ち回り多くない?気のせい?
「……」
部屋から無言で逃げてくラスティリアを横目に私はアリスと一対一で向き合う。
「…ハ─」「アリ─」
被った。仕切り直し。
「…ハナは帰りたい?」
「私は、帰りたい。でもアリスと一緒にもいたい」
「…それは……」
「難しいことは解ってる。でも私はどっちも叶えたい」
「…私達に『不可能』はない…でしょ?」
「うん、うん!そう!一緒に頑張─」
「…次の…そして最後の…」
私の言葉に被せてアリスが渡してきた紙には『メトメフ帝国宣戦布告書』と題されている。
「…これを以て『ハナ』は完成する。民衆の味方でこの国の英雄である『ハナ』が」
「だから…」
「それがどうしたの?私はアリスと一緒に居られる。それだけで十分」
「ハ、ハナ…あり、がとう」
そういえばアリスは褒められなれてないっぽい。
いや、天才だーとか優秀だーとかは散々言われてきたと思うけどね。
そういう褒める、じゃなくて何か…アリス自身について?みたいな。
今日は忙しい1日だった。朝っぱらか大規模戦闘もしたしアリスとは───って…
私は声のトーンを一つ落として告げる。
「アリス、」
アリスの肩がビクッと震える。テラかわゆす。違う。いや、違わないんだけどね?
「じ、じゃあ…」
「いい感じに終わらせようとしてるけど…」
アリスがドアノブに手をかけるのでいつの間にか戻ってきていたラスティリアにドアを封鎖させる。
アリスが裏切り者とか言ってるけど気にしない。
「私を刺したのは忘れないよ!」
そうである。この人、『私が好き!』とかいいながら普通に刺したんだよ。
いや、その後に弁解タイムみたいのはあったけどさ?
私自身も納得できる弁解ではあったけどさ?
それと刺したって事実は別じゃん?
ほら、刺されたんだよ?私、傷物(物理)にされたんだよ?
え、もう何回も
ナンノコトカナー
Q.やられたら?
A.やり返す
Q.いつやるの?
A今でしょ!!
「ラスティリア、拘束モード!!」
「そ、そんな物ありま…」
「…よかった…」
「あ、ありました!」
流石アンガラ・ジーンルットさん!そこに痺れる憧れ…ないわ。
「…何であるの?」
「ラスティリア、それはちょっと……」
「何で私が引かれるんですか!?言い出したのマスターですよね?」
「まあ、…とりあえず縛っといて」
「あ、スルーですか、そうですか…」
ぶつぶつ文句を言いながらアリスを縛っていくのは流石縛りプロといった所か。
「何か失礼な事考えてません?」
「ソンナコトナイヨ」
念のため自室に繋がる扉に「取り込み中」の札をぶらさげておく。
別にそういう意図ではない……ないよ?多分。
…アリスも(本気で)逃げようと思えば逃げれるはずなのに逃げないなんて…口ではそういってても体は正直…なんでもない。これだと唯のウス=イホンじゃん。
このままいくと私が逮捕されそう。
…今日なんかテンションおかしいかも。
「ふっふっふっ…アリス?覚悟は出来てる?」
…かも、どころじゃないや。絶対今日テンションおかしい。
何が原因?というか模擬戦の時から違和感がしっぱなしだ。
頭の中の真面目な思考とは真逆の……待てよ。
項垂れてるアリスを『弄り』ながら私は考える。
アリスに告白されたのは確かに嬉しかった。
それはいい。舞い上がるのはわかる。
でも…流石にバグって…
…そもそもアリスが告白してくることがおかしい?
そうだ。あのアリスが「気持ちが抑えられなくなる」ってあり得る?
いやまあアリスも人間だからあり得るかもしれないけど…
それに告白なんて政治的にも立場的にも不味いことをあの場所…誰に見られているかわからないあの場所でする?
もしするならアリスの部屋や私の部屋だと思う。
そこまで考えるとアリスも、そして私もどこかおかしい?
セリアは…普通っぽかったけどわからない。
騎士や宮廷魔術師団員達は…まあ普通だった…かな?
そうするとおかしくなってるのは私とアリスだけ。
共通点は何?
そして他の人との違いは何?
一応自分に『
……いつぞやの
私は
ちょっと待てよ。
確か、
それで今回はクールタイム、というよりは……何か制限っぽくない?
というかそもそも『
まあいいや、そんなことを
抵抗するアリスを押さえ付けながら私はそんなことを考える。
……一応やってみるか。
もし魔法や魔術が作用し続けるタイプのそれなら効果あるでしょ。
「神域『
……浮わついていた気分が元に戻るような気がした。
つまり、何か精神が落ち着いた気がした。
アリスへの依然として好意はあるけど、それは……じゃなくて。
確かに『落ち着いた』…なら何かしらの
誰から?何で?何の目的で?
…私一人で考えても答えは出ないだろう。
だから『親友』に頼る。
「神域『
だから私はアリスにそれをかける。
「………ありがとう?わか……」
それだけで『親友』には全部伝わったらしい。
恐らく神域『
だから質問を途中でやめて考え始めた…ってところだと思う?
相変わらずの思考速度。
さて、アリスに犯人がわかるかな?
もしわからなかったら…割りと詰みに近付く、というのはここだけの話だけども。
「お二人ともどうしたんですか?いきなり黙りこくって…」
突然テンションがダダ下がりして黙り始めた私たち二人を気にして、疎外感を覚えたのかラスティリアが話しかけてくる。
「後で説明するからちょっと待ってて」
「……」
私は私で考える。
どういう状態異常をくらった?
好意の捏造…?
違う。私はアリスのことが嫌いな訳じゃないしそれだとおかしい。
……感情の増幅…
あり得る。
────────
アリスが情緒不安定だ。
自分で自分を抑えられなくなる位…
アリスは不安と緊張で全身が震えている。
その独占感が堪らなく、その感情が波の様に押し寄せる。
その感情は私の中で燃え上がる。
死ぬほど緊張してる。
────────
確かに有り得る。今日だけでも思い当たる節は沢山ある。
じゃあ次の問題は『いつから』か。
アリスやセリア、そしてラスティリアがやった訳じゃないなら…私は昨日の夜抜け出してたからあり得ない。
そしてラスティリアを助けた時は…多分…だよね?
「ハナは、…なら、今日」
え?
掛けられたのは今日?何でわかるの?
どうやらアリスは毎晩寝る前に状態異常に罹患してるかを確かめてるらしい。
それで私が夜抜け出してたことから夜じゃない…つまり犯行が行われたのは今日、と推測したらしい。
「なら犯人は…」
「…騎士か宮廷魔術師団員……」
となる。そもそも私はその人達以外に会ってないからね。
……廊下ですれ違った、とかを除けばだけど。
どうする?あの中に犯人が?
「集める?」
「……集める」