『少女世界攻略記録』   作:100110110011(2)の民

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141◇『異世界探検隊』と壊れぬ理想郷

 

 

「朝日が眩しいですね……」

 

そんなセリアの言葉を合図に私は目を開ける。

というわけで起床。

朝ごはん…まあ、昨日の残りを食べ、バッグに入れておいた歯ブラシモドキで歯を磨いて…移動を始める。

 

…なんか悟りを開いた人みたいになってるけど、多分まだ眠いんだと思う。

外だっていうのに普段より安心してるのかな……?

まあアリスもセリアもいるからね。安心感が段違いですよ、ってね。 

ラスティリアは……番犬みたいな安心感と子犬っぽい安心感はあるね。

 

「マスター?なんか失礼なこと考えてません?」

 

そんなことないよー、と棒読み返答をしながらあくびをする。

なんだろう、健康的に眠い。

睡眠不足とか睡眠が浅いから眠い、とかじゃなくて満足感があって、十分な睡眠時間があった故の眠さ。

もしかしたらこの世界に来てから初めてかもしれない。というか転移前を含めてもそんなになかった気がする。

 

「そろそろ動く?」

 

「……セリアとラスティリアは?」

 

「私は問題ありません」

 

「いつでも出発できます!準備万全です!」

 

…平和ここに極まってるなぁ。

というわけでかれこれ数時間…どころか、雑談をしながらゆっくり歩いていたということも影響して日が沈みかけている。

まあでもようやく……

 

「あ、着きましたよ!ここが『無限迷宮』です…か?」

 

二回目の『無限迷宮』に到着。

それにしてもラスティリアの歯切れが悪い。

奥歯に物が詰まった…というよりは驚いてる?かな。

 

「あぁぁぁぁ!!これ!これですよ!マスター!!」

 

うるさい。

と思ったら急に周りを確認して小声で囁いてきた。

 

「これが《詠歴》ですよ」

 

知ってた。…なんて言うと拗ねそうだから言わないけど。

それでも心の中では言わせてもらう。

知ってた。

 

「…それじゃあ【勇者】呼んでくる…」 

 

アリスが流れるように別行動を始めようとしたので制止する。

 

「待って、私も行く。ラスティリアは待ってて」

 

え、何でラスティリアは置いてくのかって?

そりゃあ留守番よ留守番。あ、セリアは来てね。

 

「何で置いてこうとするんですか!私も付いて行きますよ!」

 

「わ、私も行きますよ…?」

 

それにしてもこのパーティー豪華だなぁ。

【大賢者】…から変わって【理断友】と【救聖女】、それに『科学文明時代の機械』に『異世界転移者』。

控えめに言っても個性の塊では?

 

そういえば他の王族にリルトンが脱走したって事と恐らく感情を増幅する魔術が使えるってことは伝えたらしい。

だから今の王都から出るのは割りと至難の技…って言っても最後に見てからまあまあ時間が経ってるからその間に逃げてたら意味ないけど。

まあアリス曰く絶対に王都にいるらしいので問題ないだろう。

 

…っていうかもう夜では?

何なら移動途中には日が沈んでたよ?

流石に夜中に他人(勇者)の家に行くのはマナーというか……

そんなことを気にせず突き進む我ら強行軍。

 

「…【勇者】、ロンメルト・アルファ…出てきて」

 

あ、いつの間にか恐らく勇者の部屋と思われる場所に…アリスがノックしつつ呼びつける。

 

「誰ですか?こんな夜遅くに…」

 

そう愚痴を溢しながら勇者がドアをあける。

ちなみにだけど、うちのイカれたメンバーを紹介しておこう。

セリアは何かの魔術の練習なのかバリアみたいのを張っては壊してる。

なんならアリスは手に先端が光ってる杖を持ってるし、ラスティリアは片手に銃を持ってる。

 

さて、そんな状況でドアを開けた勇者様は──

 

「だ、第二王女様!?…何で杖を…って、それは何ですか!?」

 

まあそうなるわな。後、銃って概念を知らなそうだから多分異世界転生者じゃない。テンプレならず。

 

「そ、その…状況を教えてほしいのだけど…」

 

そう言った勇者様と私の目が合う。

私が変な物を何も持っていないことに安心したのかホッと安堵の息を漏らす。

 

ここで魔法詠唱を始めたりラスティリアを変形させたり呪祟を出したらどういう反応になるんだろう…そんな好奇心を抑えて出来るだけ猫を被って答える。

 

「わかりました、勇者様。非力な私でよければ僭越ながら説明させてもらいます」

 

「誰ですか!?」

 

ラスティリアが何か騒いでるけど無視。

出来るだけローズさんの口調を思い出して…

あれ?どこまで言っていいんだっけ?

確かリルトンの存在は知ってるんだっけ?

まあ言ったら不味い話になったらアリスがとめてくれるからいいか。

 

「勇者様はリルトン元王女様をご存知ですよね?」

 

「ああ、知ってるけど…それがどうしたの?」

 

勇者様、若干素が出てない?

最初はですます口調だった気がしたんだけど。

 

「そのリルトン元王女様が…これは秘密ですよ?」

 

そう言って私は勇者様に一歩近付いて上目遣いで宣言する。

何で態々こんなことをしてるって?

それは私が勇者様に一目惚れした……わけではなく。

単純にこういう女性…深窓の令嬢って男性人気高いじゃん?だから頼みも聞いてくれやすくなるかなと思って。

それに私にはアリスっていう『親友』がいるからね。

 

「地下牢から脱走してしまったのです」

 

意図して悲しげな表情を浮かべ将来を憂うように空を…宿の天井だけど、の方向を仰ぐ。

ちなむところ実際に考えてることは?ってアリスとかに聞かれたら、多分迷わずに『どうやったらこれ【勇者】に依頼を受けさせようかを考えてる』って答える。

というか何ならリルトンが収容されていたのが地下牢かすら知らない。

 

「なので…」

 

私は小声で囁く様に勇者サマ…じゃなかった。勇者様に言う。

 

「勇者様の御力を、非力な私に貸してもらいたいのです…」

 

そういえば忘れかけてたけど先代勇者って『無限迷宮』30階層で苦戦してたんだっけ。そう考えると勇者ってたいしたことない?

もしかして勇者の方が非力?

口が裂けようともそんな本音は言えないので勇者様の目を見つめる。

 

…目を逸らしたくなってきた。

妙にイケメンだから腹立たしい。

それに性格も良さそうだし。

殴っていいかな。

今なら全男性代表としてこいつを殴っても許される気がする。

うん、男性の敵だね。私は女だけども。

というわけで敵じゃない。

むしろ味方…ではないか。

まあ利用するだけ利用して……

 

なんてね、…ちらっとアリスを見ると勇者を使い潰そうぜ!みたいな意志を感じる。

ラスティリアは私の態度に文句があるのか何か騒いでるしセリアは我関せずの(ハナさんに任せます)態度を貫く。

多分セリアは普通に人見知ってるんだと思う。…違うな。私に任せてくれているのか。信頼の証的なそれ。

 

「勇者様、御願い致します…」

 

精一杯儚そうな目をする。

ここまでの私の(半分無駄な)努力の成果は実るのか。

 

「そこまで頼まれたら仕方ない、部屋で詳しい話をしよう」

 

よし、言質はとった。

 

「深夜だっていうのに部屋に招かれてますよ!これは…そういうことですよ!」

 

なんかAIがほざいてる。もうそんなお年頃かぁ。

 

「な、人聞きの悪い。下心は全くないぞ!」

 

あ、勇者サマ完全に素が出てる。

君は信用してくれるよね。とも言いたげにこちらを見てくる。

もう言質取ったから素に戻ってもいいけど…折角だし了承もらうまで演技を続けよう。

 

「何を言っていらっしゃるのですか、ラスティリアさん。勇者様はそんな事をお考えになっていません」

 

どちらかというとこれローズさん、っていうよりセリアでは?

 

「な、頭でも打ったんですか!?マス──」

 

マスターなんて言われたら色々面倒なのでにっこりと笑いかける。うん、普通にね。

 

「マス…マス、升にでもぶつけたんですか!?」

 

無理矢理マスから繋げようとした弊害が出てるし。

まあ大丈夫でしょ。

うん、最悪でもラスティリアの印象が悪くなるだけだし。

 

「大丈夫ですよ、勇者様。私はわかっていますから」

 

そう言ってペコリと一礼して部屋に入らせてもらう。

…ふーん、キレイじゃん。

これくらいの男の部屋だから汚部屋を覚悟してたんだけどね。

 

「僕は今や『光の踏破者』のリーダーだ。昔みたいに一人で放浪している訳じゃない。それに気になっていることもあるしな」

 

すっかり素で話す勇者。

 

「気になってることってなんなんですか?」

 

ラスティリアは相変わらず遠慮せずに聞いていく。

 

「ああ、ついこの前『夢幻の叡知』っていうパーティーが出てね…」

 

アリスの方を見る。もしかして?

アリスが頷く。

あっ。やっぱりか。

 

「すいません、それ私達です」

 

「なっ!…なら話が早い」

 

そう言って勇者は私達に提案をする。

それは私達の依頼に応じる条件だった。

 

『『夢幻の叡知』と『光の踏破者』。そのどちらかが50階層に到達したら依頼を受ける』

 

それは破格の…もちろん悪い意味での破格の条件だった。

今まで歴代の人類が頑張って到達した階層が30階層。それを私達が31階層に更新はしたけど…

普通に考えて無理では?

そう思ったけどどうやら違うらしい。

 

「僕達『光の踏破者』は他の冒険者達に大差をつけない様に言い方は悪いが手加減をしてきた。だが君達がいるなら話は別だ」

 

「勿論50階層にどちらかが辿り着けたら僕だけでなく『光の踏破者』全員が協力することにしよう」

 

「…それは他の人…『光の踏破者』の人にも聞いた?」

 

「僕達は事前から50階層を区切りにしてもし辿り着けたら大型旅行でもするつもりだったんだ…その旅行先が王都になるだけだ。その点に関しては気にしなくていい」

 

これはある意味私達への挑戦状だ。

敢えてお題を出すことであたかも受ける気はあるんだけどね?みたいな雰囲気を出している。

言い方と視点を変えればイキってるとも言う。

 

「…わかった」

 

アリスはそう言ってラスティリアやセリアを部屋から出して帰らせる。

 

そして次はアリスが部屋から出る番。

その時にふと後ろを振り向いて言い残す。

 

「…注意した方がいい。貴方達が相手するのは…」

 

ひょこっと影の薄かったセリアが戻ってきて発言する。ちなみに今からの一連の流れの仕込みは事前からある程度は決めていた。

まあ要約すると、勇者達相手を去り際に煽ろう、ってね。

理由としては色々あるらしいけど…私には理解不可能(しようとしない)領域だったから…うん。

 

「【救聖女】と」

 

ラスティリアも続いて戻ってきて、捨て台詞を遺す。

 

「太古の遺物と」

 

そして私も──

 

「【大賢者】改め、【理断友】…そして、」

 

私が最後?なら格好つけた方がいいか。

 

「その3人を統べる…『夢幻空間』にして【不思議之住人】を含む『夢幻の叡知』。この世界最高のパーティー」

 

「……挑戦した事を後悔することになる…」

 

私達は捨て台詞を残して勇者の部屋から出る。

大分格好つけたけどいいの?

そう思ったけど私は心中に───

 

「マスター達…大分格好つけてましたよね!?あんな大見得切っちゃっても良かったんですか?」

 

心中にとどめる必要なかったわ。家のポンコツAIが全部言ってくれやがった。

 

「…あれぐらい発破かけないと【勇者】は動かない…けど、あれだけ言ったなら…明日の朝が楽しみ」

 

そう言ってアリスは事前に取っておいた宿の方向を目指す。

 

 

 

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