『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
戦闘開始と同時にラスティリアが斬られる。
……予想していたとはいえ、ここまで強いとは思ってもみなかった。
ラスティリアの自己修復が終わるのと同時にセリアは後ろに、アリスは左。私は右へと散開する。
「【射出変形:強撃威銃】!そして、【領域生成:防護要塞】です!」
さっき……ここまでの道中のふざけた雰囲気が霧散し、真面目なものへと刷り変わる。
銃弾が飛び跳ね、格子障壁が展開される。
けれども、この世界から魔術が失われたわけじゃない。
「…『
アリスも負けじと雷を墜とし、その胸を貫こうとする。
…もしあれが人間ならあの手段が使える。
それに今は魔導書を3冊召喚してる。
なら……この局面を多少無理してでも乗り切るしかない!
「二人共、少しだけ時間を稼いで!」
ここで
こうやって、『二人』と明確に宣言することで、相手にとっての脅威を二人と私に固定する。
回復役かつ真の司令塔でもあるセリアの負担はなるべく軽いほうが良いからね。
…要は相手を油断させるってこと。
まあ相手が人間じゃなかったら使えない手ではあるけれど。
「マスターの邪魔は誰にもさせません!【1型戦略兵器:爆撃連呼】!!」
頼もしい威勢と共に敵陣に爆撃が……鉄のカーテンが下ろされる。
一人の敵に対して使うならどうみても過剰な攻撃力。
でも……
「…『
それだけは終わらない。終わるわけがない。
ここまでの道中の経験と、そして扉に入る前のある意味警告でもある『境界』という言葉。
その2つの理由を以て終わるわけがない、という強い確信を得て、アリスも続けて攻撃する。
そして私もその『時間稼ぎ』を利用して準備をする。
「私は何者にも語りかけぬ」
二人の攻撃により
その影で私は詠唱を始める。
こうして安全に詠唱ができるのは一重に後ろから響くセリアの指揮のおかげだ。
そしてその詠唱は正真正銘初御披露目、本邦初公開の魔法のものだ。
「──『
あまり見たい物ではないけれど、ラスティリアの胴体がバリアごとひしゃげる。
だけれどもその犠牲のお蔭でアリス、そして私には全くダメージが入らず、今も魔術を撃ち続けられているのはいい証拠になっている。
そして
「私は何者にも明かされぬ」
詠唱の二行目。
私の、そして世界の秘匿性に重きを置いたその詠唱は音の振動を媒介に空間へ、世界へと広がる。
「──『
自己修復を始め回復し始めたラスティリア。
言い換えれば無防備なラスティリアに武者は追い討ちをかけ、その奥にいるアリスを狙う。
その大太刀を振り下ろし、血飛沫を上げるアリスを幻視するけれど……
「…『
されど、その剣は王女には届かず、その虚像にのみ届く。
虚しくも
「リスキルは嫌われますよ!【2型戦略兵器:戦車砲】!」
「…『
2人の超火力がその武者に注がれる。
ならばその武者はそれらを素で受けきるのか……
本来普通の人ならば、これだけの魔術と科学の真髄を集めた攻撃を喰らえば塵も残らないだろう。
しかし。
「──『
無傷の様に…いや、受けた傷を全て回復しきって、戦車砲の煙と氷の棺の中からそれは出てくる。
「万物は我が手中にあり!」
そのタイミングでそれは私の詠唱に気付く。
何か不味い物だとわかったのかこちらに狙いを定める。
不味い…けれど、ここで発動出来なければ今後は更に無理になる!
「世界こそが万物の真髄!」
慌てて詠唱を口ずさむ。
「マスターっ!【
「────『
8枚の結界状の防護壁が私の目の前に築かれ、それを壊さんと連撃が放たれる。
六つの死線を壁が隔て、残った2枚の壁の向こうから私はそれを宣言する。
これが初御披露目!私だけの魔法。
「『
『
その効果は至って単純。
『
その効果は単純にして強力。
特に消費mpの多い想像補完魔法に対してはね!
私は
イメージの核は……恐怖。
そして炎、氷、毒。
その4つ。今までに扱った想像補完魔法を、状態異常魔法を組み合わせイメージする。
命を、そして全てをを蝕む疫毒…
その病魔に犯され苦しむ模造の親友を思い出し、『
この世を凍てつかさんと拡がる氷の輪…
その世界に飲み込まれ凍り付く夢の中のセルグヌを思い出し、『
この世全てを燃やさんと欲す灼熱の意志…
その意志に呑まれ燃やされ消滅した魔銅塊を思い出し、『
銀河程度では物足りない、全宇宙ですら生温い。そんな神の恐怖のほんの一端…
されどその僅かな一滴に恐れ戦くギルマスを、
そして強大なるその神の意志を受け継ぎ、感じ、震えた私を思い出し……
『
その4つ全てを混ぜ合わせ新たな『魔の法』を創る。創り出す。創り変える。
「──『
防護壁が2枚割られ私に剣先が向く。
「あっ!【
「『
────通った。
私はその名を口にする。
「『
それは生きとし生ける者全てが平等に恐れる『死』という概念への畏怖、恐怖を根源に炎、氷、毒という異常を組み合わせ創られた魔法。
それはこの状況下においても消費mpが50000を記録する燃費効率は最悪の魔法。
されどその魔法の効果は絶大でありあれだけ屈強な、あれほど自由に動いていた武者は炎上し、凍り付き、毒に侵され、そして恐怖により膝をつく。
私はその場から離れアリスやラスティリアの近くへと逃げ…行く。
万全を期すためにラスティリアは【
その上からアリスが『
あの状態の武者に何か魔術を撃ったらそれを元手に何かしてきそう。
そしてあの状態異常が移りそう。
そんな2つの要因から4人とも遠くから見守ることしか出来なかった。
武士の心は不屈である。
ここは迷宮で、モンスターはリポップするというのに…それは、その気迫はまるで生身の人間の様だった。
毒に命を蝕まれ、全身が爛れ、凍り付き、想像を絶する恐怖で膝が笑い、体がすくもうともその武者は己が意志、そして己が使命を果たすために立ち上がる。
それは手負いの獣でもあり…死期を悟り覚悟を決めた老練の武士でもあった。
弛緩していた空気を吹き飛ばし、
「──『
復古を知らせる大号令と共に──
骨の騎士が、骨の兵士が、骨の弓兵が、至る所から湧いて出てくる。
それはまるで一騎士団の様に統率がとれている。
それはそれは生きている軍隊の様に。
生ける不死の兵士を連れ、自身をその恐るべき精神力で奮い立たせ、合戦は再度始まる。
「──
骨の兵士から赤いオーラが登り辺りを占領する。
……などという魔法的な異形的な事は起きず、その掛け声は見た目上は何の変化も及ぼさない。
されどその号令で、その指揮で、兵士達の『心』の持ちようは変化する。
『ステータス』は変わらずとも、数値は変わらずとも戦力は上がる。
それは他でもない彼等の心によって。
「…行きますよ!その文明は私の相手です!…【
戦場に銃弾が飛び交い雑兵を蹴散らさんと鉄の幕が降りる。
だがその雑兵も只ではやられまいと必至で、いや必死の覚悟で反抗する。
聞き手が折れれば逆の手で。
その逆の手すら折れたなら足を使う。
足すら破壊されればその口で、その歯で噛みきらんと近付いてくる。
未だ、戦場は揺るがず。