『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇◆◆◇
「呪域『
その言葉が放たれた瞬間、世界は克明に移ろう。
魔法や魔術なんていう子供騙しの
されど、覗き込んだ理が此方に姿を表すことはない。
時間と共に風化し、忘却の渦へと飲み込まれる懐かしき想い出の世界を作る魔の法は。
その風化から、喪失から、逃るるがために打ち込まれた楔を──世界を依り代に──顕現させる魔の法は。
何れも死を帯に纏い、それらすらも享楽と化す呪いと希望の塊の代償に封じられている。
故に今の彼女に出来ることは、
そしてそれを象徴するように世界は展開される。
渦巻く呪いは魔法を否定し、世界の根幹を否定し、この場に存在する自己以外全てを否定する。
それは当の昔に本人ですら制御出来ず、世界を灼いていく。
ゆっくりと、しかし順調に世界を蝕み、全てを壊して、壊して、壊して……
「もう、私が何をしたいかすらわからない」
その果てには何が残るのだろうか。
彼女を当初突き動かしていたものは帰郷の希が断たれたことからの逃避、或いは妄念ともいうべきものだろう。
この世界は現実であり、世界が動いている以上、彼女にとっての幸せで満ち溢れてる道理がない。
絶望を体現する試練があり、醜く目を離したくなるような惨状がある。
遠く離れた故郷とは異なる価値観、倫理、常識。
それらが一丸となって彼女を啄み、心を磨り減らしていく。
されど、彼女はいつかの未来に帰郷を信じ、
儚くも、残酷にも、無情にも。
当て嵌める言葉は星の数ほどもあるが、敢えて言うならこうだろう。
彼女の希望はたった一つ、他でもない彼女自身が望んだ情報により無為に帰す。
彼女の心の最後の
停滞も、逆流も、停止も、発進も、その全てが不可能になり…狂気の淵を覗き、そして彼女は自身の制御を放棄し、何ものでもない…
だが。
それでも、この世界は現実…そう、現実だからこそ。
幸せは存在し、何よりも数奇な運命が廻り、光の射し込む明るい場所は存在する。
そして───
「ハナさんは……すみません、
そう言い直したその間時にどれほどの感情が込められていたのだろうか。
そして、その本人すらもわかっていない深層心理での変化を雰囲気に還元しながら、魔法世界の住人である彼女は語る。
「ただ、私たちに着いてくればいいんです!花奈さんが何をしたいかなんて関係ありません!」
それは、ある意味での意趣返しである。
「いつもいつも花奈さんが主導権を握れるとは思わないで下さい!私にだって花奈さんを導けます!」
「私に着いてきて、それでこの世界にゆっくり慣れていけばいいんですよ」
そして、彼女は核心へと触れる。
「確かに故郷が失くなった、とわかったことは悲しいことです。ですが、それを一人で独占するなんて許しません!喜びも、悲しみも、喜怒哀楽全て、私たちで共有するべきですよ!」
「確かに私たち…とくに私はアリスさんみたいに察しがいいわけでもありませんから、花奈さんの気持ちを全部は理解できないかも知れません。それとも、
それでも、と繋げ【救聖女】はその役目を果たさんと……無意識的に、本心から思い、続ける。
「いつものように私に教えて下さい。数学や英語みたいに、私がわかるまで教えて下さい。私はしつこいですよ?」
「……五月蝿い、うるさくない、ありがどう。私は……」
一人だけの世界は気付けば狭まり、元の戦場がこの場に戻りつつある。
それは間違いなく彼女の心が氷解していることを指し示している。
「……私もセリアの意見に賛成。……片瀬 花奈 子爵、私…第二王女に、そして世界にその気持ちを伝えなさい」
世界が狭まり、全てを否定する効果が落ち着き、そのお陰で余裕が出来た彼女が会話に参加する。
普段の雰囲気とは違い、頭を垂らさずにはいられない威厳を込めた、けれども思いやり以外は感じられない口調で命令を下す。
「…私にも、家族はいた。未来はあった。希望も、進路も、道筋もあった」
それは紛れることなく、前の世界の話。
開かずの間は今、【救聖女】と【理断友】の協力のもとに開かれる。
「その全てをここに召喚されたことで、無理矢理断ち切られた」
異世界転移ではなく、同世界転移。
ただ、未来へと時間を跳躍させただけのこと。
それはあったかも知れない未来全てを引きちぎる強引な力であり、そして望まれたものでもない。
「……確かに、セリアやアリス、ラスティリアに会えて嬉しいけれど…それとこれとは話が別」
それは確かに、しっかりと残っている。
「セリアの言い分も勿論わかるよ…人間は絶対いつか死ぬから、それが『少し』早まっただけ。だから悲しくはなっても、必然事項なんだからそこまで気にすることはない。……わかってる」
「けれど、私は弱いから」
魔法を使いこなし、宮廷魔術師になり、子爵という地位を手に入れても人の本質は変わらない。
「忘れられない。引き摺り続けてしまう。だから……