『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
そういうハナさんはどこかすがるような目をしていました。
私たちに助けてほしい、といいますか、忘れさせてほしい…というような表情です。
「確かに」
私は
「確かに、私たちに着いてくれば、花奈さんの記憶を私たちだけに染められます」
花奈さんには帰る場所がない、とわかってしまった以上、これから先はこの世界でくらすことが決まったわけです。
なので、後数十年もここにいることになるのですから、十数年分しかない前の世界の記憶を塗りつぶすことはできます。
できますけれど……
「私は、花奈さんには元の記憶を大切にして欲しいです」
とても難しいことを要求しているのは、私もわかっています。
でも、それはとても大事なことですから。心を鬼にして花奈さんに要求します。
「私は私らしくあれ、ってこと?」
「そうともいいますね。自由に、そして誰にも縛られない……それが私の抱く花奈さんへの印象です」
「……」
「……私も、そう思う。私達に依存するハナなんてハナじゃない」
「なんか、気が抜けちゃったよ」
そういうハナさんはどこかとても重い荷物から解放された…そんな清々しい表情をしています。
「ほら、女子同士って基本、
ハナさんの世界……改め、昔はどれだけ酷い環境だったんですか。
見ていればわかるとおり、ハナさんはとてもいい人です。そんな人がここまで人間不信になるなんてどういうことなのでしょう。
「…本当に迷惑をかけたし…これからかけるのは今の内に謝っておくよ…最後、私を全力で殴ってくれない?罪滅ぼしがわりに、ね」
……ここで、『わかりました。罪滅ぼしにこれからも私たちに付き合ってくださいね。そうしたら考えてあげます』と言うのもいいですけれど……ここは譲りましょう。
「アリスさんはどうですか?」
「……私もその方向でいいと思う」
「アリスさん、それしか言わないですね。どうしたのですか?」
「こういうのは私にはできないことだから」
……一瞬当たりが静寂に包まれます。
それは、『天才』と評されてきたアリスさんができないことを
「なら、行きますよ?ハナさん、覚悟してくださいね?」
「危なっ!」
……なぜか避けられました、納得できません。自分からそう言ったじゃないですか。
「…何で避けるんですか」
「うわあ、セリアがヤンデレになったぁ…じゃなかった。そりゃ避けるよ?今右手に何を持ってるか確認して?」
……杖を持っていますね。
「杖を持っていますね。みたいな表情やめて?知ってる?人って鈍器で殴られたら重症になるんだよ?」
「でもハナさんは全力で殴れ、っておっしゃいましたよね?」
「そういことじゃないんだけど……まあいいや、私も女だ!覚悟決めたからそれで殴って……違うのアリス。さすがに短剣は死んじゃう。わかるでしょ?ほら、落ち着いて……」
アリスさんと目配せをします……今ですね!
「えいっ!」
「……!」
「ふぐはぁっ!死んじゃう死んじゃう!」
大丈夫です。アリスさんはきちんと峰を当てようとしてくれますから。
「はぁ……冗談だよ、冗談」
一度間を開けてから、ハナさんは自分を見つめ直すかの動作をします。
「……じゃあ、一回だけ。『戻る』から…殴ってね?」
あれだけ元に戻った雰囲気を出していたハナさんですが、突然笑みを消し、別の種類の笑みに変え……
「あはっ。それじゃあ始めよう!誰も特をしない、誰も利を得ない、そんな無意味 無駄 無価値な憂さ晴らしをね!」
「それじゃあ改めて──」
一層狂気を深めたような表情で、その名を唱えます。
「──呪域『
「私の理想郷はどこにもないの。私だけの理想郷はどこに消えたの?私のための理想郷はどこにあるの?」
……この状態のハナさんを『
「アリスさん!」
「私の予想が合ってるなら…『
何やら私が知らない魔法を使いますが……私も、です。
「『
ハナさんの作るこの『世界』はある意味では精神を強く蝕む状態異常です。
そして、状態異常なら私の『
さらに、もしハナさんが何か反撃手段を持っていたとしても、『
「これとかどう?呪祟解放!」
突然ハナさんを中心に呪いの突風が吹き荒れ、物理的に私たちは飛ばされます。
私は障壁で、アリスさんは土属性の魔術で転んだ衝撃を緩和します。
大体距離にすれば15m少し……
「……10mまで近づければ『あれ』が使える」
アリスさんは何か手があるようです。
私はそれを支援……やってみせましょう。
魔法世界出身の後衛として、この世界最強の
「ふうん、手があるんだ。呪竜咆哮!」
全体に吹き荒れていた呪暴風がアリスさん一方向に集中して放たれます。
「障壁です!アリスさんは気にしないで進んで下さい!」
「──ありがとう。『
高速で動き始めるアリスさん……後4mです。
「呪祟壁操」
「『
呪われた壁を雷と炎を纏う剣で突破します。
後……3mです。
「三呪剣劇」
剣の形をした呪塊がアリスさんに迫りますが……
「……操作が甘い。『
数日前にアリスさんが見せた剣劇に比べれば技量も精密さも足りていません。
軽々と魔術による方向転換で避けていきます。
……。
後、2mです。
「神域────」
「……っ!」
アリスさんの表情が歪みます。今のアリスさんの速度は魔術由来のものですから、それを否定する神域が来たら部が悪いです。
ですが───
「『
私は知っています。
私たちはハナさんのことを
だから────
「──なんてね」
神域は撃てませんよね?
「呪域『
最後の呪壁を私の聖壁で食い止め、アリスさんとハナさんの距離が10mを切ります───
「『
その言葉とともに淀み、歪んでいた空間が崩壊します。
そして───
私とアリスさんはゆっくりと、けれども真っ直ぐに歩いていきます。
「「
「ただいま、ふたりとも」