『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
158◇嫌な、事件だったね……
◇◆片瀬花奈視点◆◇
朝になった。
……私の世界に陽が昇る。
……昨日、いや、今日のごたごたをふと思い出す。
……もう吹っ切れたこと。気にしてなんかいられない。
私は部屋を出て、外に出てから戒めを込めて…
「そぉいっ!」
右手を
え?こういうときは顔だろって?ほら、怖いじゃん。
早朝の街に鋭い破裂音が鳴り響き……
「痛っっ、」
思わずそんな声が漏れてしまう。
でも、もう終わり。
暗い話や考えはそこら辺に置いといて、…っと。
「っ……」
私は流れ出る血を見てみぬふりをしながら宿へと戻る………
昨日はあの後の自然な流れからのダイレクト就寝だったので、皆ぐっすり寝てる。
さて、誰から起こしたものか…って私が寝不足にさせた様な物だからなぁ。
そう、半分くらい忘れてたけど昨日の一連の地獄は夜中も夜中、丑三つ時レベルの夜中に起きた事件だから。
というわけで寝なくても影響が出なそうな……
「ラスティリア起きて、朝だよ」
「…んんっ?…あ、マスター…」
私は赤くなった左腕を見せないように、後ろで手を組みながら起こす。
「おはよう?」
「何故に疑問形なんですか?…!まさか…またマスターの頭が…」
そう言って私の頭を撫でてくるラスティリア。凄く拒否したいけど…心配かけただろうし…
「あれれ?マスターっぽくないですねぇ?普段なら「何言ってるの」とか言いながら手を振りほどくんですけどねぇ…」
無駄に声真似が上手いのが腹立つ。震える手を押さえつつわ精一杯作り笑顔をする。
「あ、そういうことですか!昨日の事を申し訳なく思ってるんですかぁ。マスターにもそんな気持ちがあったなんて…これが成長って奴ですか…私!感動してます!」
ここぞとばかりに煽りおる。まあでも……
「ありがとね」
その『煽り』は私のためを思っての『煽り』だ。
私が引きずらない様にわざとおちゃらけて…もとい煽ってくれてる。
機械のくせに…空気なんて読まなくていいのに。
「な、なな、なんのことですか?」
「ラスティリア、人の気持ちを理解出来る様になるなんて…貴女成長したのね…昔はあんなに苦労してたのに…」
でも煽られたなら返さなくちゃあ女が廃る。
はいそこ、そんな女なら廃れてしまえとか言わない。
「な、なんですか!…ってそんな時ありませんですしたよ!私は最初から完璧でパーフェクトです!」
辞書検索:完璧
意味:一つも欠点がなく、完全なこと。完全無欠。
このポンコツ幼稚園児AIは何を言っていらっしゃるのでしょうか。もう少し教養を高めた方が宜しいのではなくて?(お嬢様風)
そんなコントを繰り広げて
「あ、ごめん。起こしちゃった?うちのラスティリアが五月蝿くてごめんね」
どこからか「うちのって何ですか!うちのって!」っていう幻聴が聞こえてくる。
ああ、まだ昨日の幻聴が抜けてないだけか。気にしないでいいや。
「…そんなことない、元々これくらいに起きる予定だった…」
「それならいいけど…」
「今日の予定は決まってる?」
「…今日は休養日。…戦闘とかはダメ……」
「もしかして私の──」
「違う。…元々の予定」
元々の予定だったとしても有難い。世界が私に対して優しい…優しすぎる。
これは絶対何かが起こる前触れか何かの筈。
…なんて緊張しててもダメな時はどうせダメなんだから平常心でいよう。(諦め)
さて、この暇な日だけど…何をしよう。
…流石に1日中部屋で駄弁るのはかなり理想的な生活だけど…ダメ人間へのはじめの一歩にもなりそうだから辞めておく。
『昔の世界』ならまだしも『現代』にそんなのは合わないからね。
…あ、いいこと思い付いた。
今日やる事を考えつつ身支度をしてるとセリアも起きてきた。
丁度いいね。
「アリス、『戦闘』じゃなくて『休養』になればいいんでしょ?」
「…ひっかかるけど……そう」
「『作業』はいいでしょ?」
「『作業』…何をするんですか?内職的な物ですか?私はあんまりそういうのをやったことがないのですけれど……」
「違う違う。私の言う『作業』っていうのは──」
「あ!マスター、判っちゃいましたよ!」
「違う。私が言いたかったのは『レベリング』」
「まだ私何も…って『れべりんぐ』…ですか?」
「……『レベリング』…まあ許容範囲…かな。場所次第だけど…」
「お、アリスは判るんだ」
「ちょっと待って下さい、私に
「まず『れべりんぐ』が何か判らなければ話にならないので──」
五分後。
「──という事は格下か同格の敵を何回も倒してレベルを上げる…って事で合ってますか?」
ふつうにすごい。『レベリング』についての情報0から正解にまで持ってけるなんて。
こういう所で優等生みを発揮してくる。流石。
え?アリス?…まあ別枠でしょ。所謂裏ボス的な。
「そうそう、完璧…で、今回の相手だけど…昨日戦ったあのデュラハンみたいな…」
「…却下」
「やっぱりか…じゃああの30階層の機械は?」
「…ならいい…」
というわけで、全会一致にてレベリングが決まりました。
「それじゃあ準備は……」
ちらっと、三人の様子を確認すると、さっきの方針決定会議のうちに最低限の準備は終わってる。
……まあセリアだけは推測の時間が多かったから完全に終わってるか、って言われたら怪しいけど。
「あ、みなさんを待たせるわけにはいかないので、先に朝ごはんを食べに行ってていいですよ」
セリアらしい気遣いをされたわ。
「あー、じゃあ私もトイレ行ってくるから先言ってて、すぐ追いかけるから」
そんな感じでアリスとラスティリアが朝ごはん会場へと向かう。
そういえばラスティリアって名前にア リ スって入ってるよね。
というか、セリアとアリスも名前二文字被ってるし……名前が似てるなぁ。
まあ性格とかは全然違うけど。
さて、アイドルはトイレに行かないので、もちろん私もトイレに行かない……わけじゃないけど、今回は行かない。
髪型を丁寧にセットしてるセリア……何これだじゃれっぽい……じゃなかった。
ヘアーセッティングセリアに話しかける。
「今大丈夫?あっ、全然それ続けてていいんだけど」
あ、大丈夫ですよ。どうしましたか?、と返しつつも私のほうを向く。
「いや……ちょっと、あ、そう。驚かないで欲しいんだけどね?そう、別に精神不安定とか情緒崩壊中とか事件発生とかじゃなくてね?」
「……また何かしましたか?」
「やらかしたわけでは……今回はやらかしてたわ」
そう言って私は現在進行形で千切れかけの左腕を見せる。
「……っ!これどうしたん──」
大声を出せないようにハンカチで口をふさぐ……のは申し訳なかったので、やめよう。
「──ですか!?」
さて、どうしたのかって?
「今朝あるじゃん」
「ありますね」
「まだ誰も起きてないし外でて気分転換しようかなって思うじゃん?」
「だから着替え終わってたんですね」
そうそう。
「
「大丈夫ですか?辛くありません?」
それは本当に大丈夫。
そんな返しを入れてあらぬ疑いをかけられないようにする。
というか現状は辛いっていうより痛い。
「そのモヤっとした雰囲気を断ち切ろうと思うじゃん?」
「思いますね」
「全力で殴るじゃん?」
「…………ギリギリわからなくもないです」
「で、腕が千切れた、ってわけ」
「?……どういうことですか?」
「ちょーっと全力でやり過ぎてね」
「いやそうは……って痛いですよね!?『
おお、やってもらってあれだけど、気持ち悪い感じで再生していく。
何かむずむずするなぁ。
なんだろう……細胞と細胞が無理矢理繋ぎ合わせられるような……人間の自然治癒を極限まで速くしたような……まあそんな感じ。
と、まあ今までこんな落ち着いた状況で回復してもらったことはなかったから、回復レポをしてみた。
「おお?おおお??」
「ハナさん……意外と余裕ですか?」
いやまあ余裕も何も自分でやったものだし……
まあ異常な痛さはそりゃあ、あったけどさ。
何か……うん、言っちゃえば慣れた。
もちろん痛いよ?Mでもないから痛いのが続いてほしい!とかじゃないけど……ああ、あれよ。
紙で手を切る感じ。痛っ、てなるし、くそう…ともなるけど、まあ我慢できるレベルだから。