『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
「…ハナ…ハナは…異世界から来た?」
その言葉を聞いた瞬間、私の根幹が揺さぶられる様な強い衝撃を受けた。
…?は?何で?アリス様がそれを?
…私何か情報漏らしてた?
これは不味い事態になった。
バレたらどう考えても不味い。
私の世界の技術はこの世界に対しては毒にしかならない。
私の性でここの文明を壊したくない。
…やっぱり王族…ひいては貴族と関わるんじゃなかった。
王族や貴族は持ってる知識や情報が多い分私の秘密がバレるリスクも上がるっていうのはわかってた。けど、それにしてもバレるのが早すぎる。
…このままここに居ると面倒なことになる。
なら…ここから逃走してそのままこの国から逃げるのが正解かな。
そして別の国で今度は貴族なんかに関わらず平民として生きていこう。
そしてアリス様は…ほっといたら絶対私を見つける程度の能力は持ってるから……どうしよう。
呪域『
アリス様に恨み…ではないけど、この国に対しての強い感情…不信感みたいなものはある。
なら後は『死帯享楽《ファイナル・リゾート》』の発動だけ。
幸いにもギリギリ前回の使用より24時間経ってる。そして多分あれはhpが0にさえ成れば発動する。
なら…私がすることは一つ。
クレルモンも含めたmpを『
そして呪域『
「『
からの…クレルモンで力の限り手を突き刺して…strが低いから一撃では減らないけど、このaglで何度も突き刺したのでhpが0になる。
《呪域『死帯享楽《ファイナル・リゾート》』が発動…最大hpの5%まで回復…呪詛親和力が一定値を越えたため1日間魔術等の使用不可能…》
よし、最後に…
「呪域『
「……っ!『魔術神の祝福』!!」
…昨日も見たアリス様のオーラ。でも昨日と同じように、いや、それ以上のスピードで削れて…腐食されて…黒くなっていく。
「…『
「…『
《防衛機能発動:…error…》
アリス様も大概ヤバい人だった。
よくわからない二つ…三つ?の魔術で今まで凄い勢いで腐食?されてたオーラ…『魔術神の祝福』が削れなくなった。
でもアリス様は無事でも周りの壁や床は無事じゃない。
それに前回と違って私が抑えようとしてないからこの範囲はどんどん広がる。
それこそ放っとけばこの国が覆いつくされるほどに。
その上アリス様のその魔術見た感じはmpを常時消費するタイプの魔術。
そして私のは(恐らく)半永久的に使える呪法。
これが続けばアリス様はじり貧になるつまり…私の勝ち。
アリス様がいなくなれば私の情報を知る…知ってしまった人はいなくなる。
そうすれば文明のすれ違いによる悲劇は起こり得ない。
アリス様を口封じするのがベストではあるけど、それは立場の関係上、そして私の力不足により不可能な話だ。
だからこうするしかない筈。
「……ハナ………何で?…」
「何で?…それはこっちのセリフです。」
「私の出自に関する秘密が判ったらあなた達は必ず私を利用しようとする。例えアリス様や国王がしなくても他の利に聡い他の強欲な貴族が利用したがる。私の…この際だから言ってしまうと日本の現代知識は全て伝えるとこっちの世界で情報を巡って国を分裂させ、戦争を引き起こし、戦乱の時代へと変化させ…そして文明を崩壊させるような物です。原子爆弾や水素爆弾…これらはまだ良い方です。一番不味いのはあっちでは人工的に作れなかった物…例えば太陽やブラックホール。こういった物をこの世界特有の『魔法』で再現されたら最後、この国どころかこの星が滅びます。それも意識できない一瞬の内に。だから…ここでアリス様を殺して私が何処かの間者だったことにする。そうすれば国は幾つか滅びるかもしれないけど…星は残る。つまり私が元の世界に戻る機会は失われない。だからこうします。これで答えになりましたか?アリス様」
私は自分の率直な意見を、そして私の文明のここでの異端さを伝える。
伝わらない部分があるかもしれないけど構わない。
どうせ……
「………甘い。…確かにこうすれば確実に私を殺せる。…けれど……ハナは私を…絶対に殺せない!…私の事をアリス『様』と呼んでいる内は。…舐めないでほしい。…私を……いや、この世界を!」
「…これは父上にも隠してたけど…私は【大賢者】。
…そして称号には『稀代の大天才』や『叡智の結晶』。
職業には『叡智の伝導者』なんて御大層な物を神様から貰ってる!
私自身はそう思わない…でも証があるなら代行者として言わせて貰う。
だから…この世界最高の頭脳の持ち主でもある私が…『叡智の伝導者』が!【大賢者】が!宣言する。
この世界は確かにハナの居た世界より文明が劣ってるかもしれない。
様々な仕組みがハナの居た世界と違うかもしれない。でも、この世界にも特徴はある!
ハナの世界が幾ら発展していたとしてもハナは只の一般人。
たかが一人の知識で世界を壊せると思うな!
…あえてこの言い方で言わして貰う。
…………あまり異世界を舐めるな!」
────っ。
「……もし…これでもこの世界を信用できないと言うなら…私を…アリスを…ハナの友達である私を信用して…私はハナを友達だと思ってる!だから信頼してる。だから…ハナも私を信用して!」
『友達』…『トモダチ』、か。
信用…なら出来るかもしれない。
『トモダチ』『友達』『ともだち』──
……………たしかに、わたしはこっちの世界を低く評価しすぎていたのかもしれない。
いきなり知らない世界に跳ばされて元の世界について過剰に反応しすぎていたのかもしれない。
だから……わたしは『
…それで良い筈。
勿論これだけで完全にこの世界の事を、そしてアリス様のことを信じられるわけじゃない。
でも今のアリス様の言葉で落ち着きを少し取り戻した。
…これだけ色々やらかしといて都合の良い話かもしれないけど…友達が、アリス様が…信頼してくれてるから…。
心の中の不穏の霧が薄まり何処かへと押しやられる。
────了解、それが『良い』のね。
よし!もう吹っ切れた!
この世界のことは低く考えない!
こっちの世界には魔術がある!魔法がある!
あっちの世界にはなかった物も概念も沢山ある。
だから…人類の辿ってきた歴史が違うだけで中身は変わってない。
むしろ私だけこんな体験出来ていいのだろうか。そう思おう!
そもそも世界を比べて優劣を付けようだなんて間違ってたんだ。
ほら、よく言う言葉だよ。『皆違って皆良い』ってやつ。
安っぽく思われるかもしれないけど…
「呪詛よ!そして私の傲慢さよ!祓われ給え!」
私の周りを漂っていた黒い粒子が白く光ながら昇っていく。
《呪域『
《進化:呪域『
よく分からない表示が大量に出るがそんなことはどうでもいい。
それよりも私にはやらなきゃいけないことがある。
アリス様に多大…というのでも足りない位膨大な迷惑をかけた。
それはアリス様の命がというのも含まれるしこの部屋の被害も含まれている。
だから誠心誠意、軽薄に思われるかもしれないけどそれでもいい。
もしかしたら私の自己満足にしかならないかもしれない。アリス様は許してくれないかもしれない。
それでも、それでも私は…
「…アリス様…ごめん。ごめんなさい。本当にごめ」
そこまで言うとアリス様は手で私の発言を遮る。
やっぱり許してはくれないのだろうか。
そう考えたけどアリス様の言い分は全く違った。
「…謝罪はいらない。後、非公式の時は『アリス』で良い。…改めてこれからも宜しく、私の親友、ハナ」
私は
まず単純に自分が殺されそうになった相手に対して『親友』と言えるその寛大さ。
それに私達は会ってまだ数日。
そんなに深い間柄でも親密な関係でもない。
なのに私を『親友』と認めてくれる。
それがアリスの寛大さの凄いところ。
そして他にもアリスは『第二王女様』…つまり王族である。
そんな生まれながらの特権階級にいながらもその特権に古座をかかずに、私みたいな平民の事情を、そして心情を理解できる。
更に、私が異世界転移したことをあの情報量の少なさで感付いて、しかもそんな荒唐無稽なことを起点に物事を考えられる。
そして当の異世界転移した私の気持ちと意見を汲みながら私が納得するような考えを言える。
そんな私に釣り合うか怪しいどころか、私が100人いても釣り合わないと断言出来るこの世界最高の…それは『学問が』という意味でも『生活力が』という意味でも『性格が』という意味でもない。
紛れもなくこの世界最高の総合力を持った『天才』だ。
そんなアリス様が、アリスが私の『親友』になってくれるなら断る理由なんて何処にもない。
私は上から目線を自覚しながらも、そんな風にしか評せない私自身のことを恨む。
もっとアリスには適切な表現があるはず。
でも今の私にはとてもではないけど語彙力も表現力も…そして何よりも『才能』がない。
だから、そんな私から言えることは唯一つ。
「うん、こっちこそ宜しくお願いします。私の『親友』、アリス」
私は気持ちを切り替えつつ考える。
…というか、だ。
「気付いたら『友達』から『親友』にランクアップしてるし…」
「……まあ…その場のノリ…ってやつ……」
そう言うとアリス様の…アリスの顔がりんごみたいに赤くなった。
「あ、照れてる」
「……照れてない。急に暑くなってきただけ…」
「それにアリスって呼んで良いのは非公式の時だけですか」
「…まあ立場とか…問題あるし…」
「でもなんかしまらないですね…」
「……それも私達らしいってことで…」
「…ごほん。…話を戻す」
そう言って
「…まず、…ハナは…ニホン出身…つまり、異世界出身?」
「そうです。日本の東京出身です」
「…トウキョウ?…まあいいや、それじゃあ…天整統霧生とは…どんな関係?」
「関係者って訳じゃなくて…職業決める水晶みたいのってありますよね?それで…」
「……親友に敬語はいらない…」
なら遠慮はいらないか。
まあ王族だし、私が道を間違えない様にしてくれた恩人だから敬意は最大限に払うけど。
敬語を使わなくても私の心の中ではアリスのことを尊敬してる。
「あー、ごほん。その水晶に触れたときに変な天整統さんの遺言を聞かされて…」
「……成る程…わかった。…じゃあこの城にある天整統が作ったと思われる物がある所に行こう…」
あ、良かった。あるんだ。
…アリスが一向に動かない。もしかして場所忘れたとか?
「アリス?」
「……着いた」
「え?」
「…ここにある」
そう言うとアリスは何処からか出したボタンを押した。
そうすると何かこの世界に似合わない音が…つまり機械音がして壁から何か出てきた。
…アリスの部屋は忍者屋敷か何かなの?
それはともかく、これが「小型発電機」らしいから…あの遺言が確かなら…