『少女世界攻略記録』   作:100110110011(2)の民

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魔術よ!魔法よ!世界を喰らい、其の身を表せ!
28◇夢見の世界、空想の概念、待ち受けるは現実のみ


◇◆片瀬花奈視点◆◇

 

…アリスのお陰で助かった。

どうも、周りの人に助けられる系の一般異世界転移者です。

アリス曰く『魔銅』っていうのがどうやらかなり不味いものらしい。

まあ、詳細と今までの私の様子を聞いた今申し訳ない気持ちが先行してそれどころじゃないけど。

アリスが言うにはセルグヌ領にいる人をどうにかすれば解決するらしい…そのためには後数日引きこもればいい…らしい。

アリス様…なんか隠してない?

アリスらしからぬ歯切れの悪さ…というよりも何かを隠してる感じがする。

多分だけど、それは嘘を付いてる感じじゃなく、唯『話していない』だけ。

探りを入れてみても普通に返答するけど、その返答がおかしい。

本来なら「……問題ない」とか「…終わった」とか言ってくれるのに今回は「時間が解決してくれる。気にする事は何もない」って答えら(誤魔化さ)れている。

それに、だ。

アリスによくある話す前の考えてる時間?みたいなのもない。セリフで表現するなら『…』って奴。

やっぱり怪しい…。

と、いうわけで。

異世界脳内会議第三回『アリスの隠してる事を予測する会』を開催!

 

手掛かりを何にするか…っていう所やっぱり不自然な行動しか手掛かりにならない。

というわけで…

 

手掛かり①昼夜問わずここまで走って戻ってきた

手掛かり②私を治す薬は作れたのにセルグヌ領の人は『時間が解決する』って言って放置してる。

手掛かり③私が治ったのにも関わらずここに監禁されてる。

手掛かり④アリスもここから出ない

 

…こんなとこかな。さて、考えて行こう!

まず①、最初は私の状況がヤバそうだったから急いだ…という事で感謝してたけど…

それだけなはずがない。

もし、私の状況がヤバそうっていうのだけが理由なら態々ここ(・・)まで戻ってくる必要はない。

それこそ人の来る可能性がある王城に戻らなくても…セルグヌの領地の近くにある家を借りるなり王族所有の何かしらを借りればいい。

それに他の兵士は訓練所?みたいな所に行ってるらしいから私達もそこでよかったはず。

アリスは自分の部屋じゃなきゃ嫌って言うほど我が儘じゃないだろうし。

 

そして③④、ここに私が治ったのにも関わらず出れない理由があると思う。

まず考えられる事として、ひょっとしたらアリスも感染(うつ)ってた?とか思ったけどそんな様子はない。

この魔銅病とも言える病気が感染(うつ)ると無意識的に魔銅中毒みたいな感じになる上に魔銅信奉者らしき事を口走る。

だからアリスは多分違うと思う。

それにあの病気地味に思考力まで奪ってくるから、色々と考えたり私をここまで運ぶという事を考えたり出来たアリスが罹っているとは思えない。

罹った状態でそこまで頭が回る…って言われたら終わりだけど。

つまり、アリスは罹ってない可能性が高い。

私だけが感染のキャリア持ちならそれこそ私だけを隔離して閉じ込めておけばいいのに、アリスはここから出ようとしない。

…これと①③④から『この部屋の中なら(私達が)迷惑を(他人に)かけない』ではなく『この部屋の中なら(私達は)安全である』だと言う可能性が出てくる。

そして①の兵士達は訓練所に行かせた事から考えると、まずその訓練所は安全と思われる。

で、次に私(とその近くにずっといたアリス)は魔銅の影響を強く受けたリスクが高く、それは周りに伝染する可能性も高くなるから…?

かはわからないけどそんな理由でここに籠った。

そして、訓練所は安全…ここも今は安全…そして、外…つまり王都には出ない。

そこから導かれる結論は、まさか王都が危ない…の?

アリスは父親…つまりは国王とも態々(わざわざ)無線?みたいので話してる訳だし本格的に王都は危険な可能性が出てきた。

つまり、私達が隔離されてるのではなく、私達以外を隔離している…

アリスはそのことを隠してた?いや、それだけなら私に言う筈。

態々隠す程の事じゃない。

…じゃあ何を…使ってない手掛かりは②。

私よりセルグヌの人の方が重症…兵士は退却…そして…放置……まさか?…まさかだよね。

そういうこと?…アリスはセルグヌの人を全員見殺しにして…この騒ぎを収めようとしてる?

確かに病人をまとめて隔離して死ぬまで待てば行き場を失くした病原菌…もとい病原金属が死ぬ可能性も高い。

でもそれなら…セルグヌだけの話。

今までの話を総合すると、その隔離放置戦術を王都でもやろうとしている?

そう考えると…王都は…何故危険?

私やアリス以外に感染経路はない。

それにアリスがそんな初歩的な所でミスをするわけないし、もししたとしても別の手段を講じてる筈。

この状況だからそりゃあ魔銅関連。

…でもセルグヌと…王都の繋がりなんて……

…アリスの襲撃の時!

襲撃して来た間者(あれ)はセルグヌの人…なら、魔銅を持ち込んでてもおかしくない。なら…王都に魔銅の影響を受けた人がいる?

…そしてアリスがここで静観してる以上、その人ら──アリスは注意する必要があるけど──国としては無事に終息させられる人、つまり替えが利く人だ。

でもあの間者の影響を受け得る人…なら、その影響を受けた人…感染者は、王城によく出入りできる程偉い人。

つまりある程度権威があるが、国の中枢にはいない。

下級官人か中級官人の可能性が高い。

さっきの事をふまえると…アリスはセルグヌの人とその感染してる偉い人が死んで騒ぎが終息するまで……?

 

「アリス!何で見殺しになんか!」

 

私は今気付いたその事実をアリスに指摘する。

 

「!?……ハナは…やっぱり…流石」

 

そう言うとアリスはその『理由』を話し出す。

 

「…今回の事件は…まだ…誰も『魔銅』という…重要な…ファクターを…知らない。だから…見殺しにしても…原因なんて…わからないし…私やハナ…そして…国の責任にはならない。…特に…セルグヌ領の人は…反逆者として…扱われてる…それが…魔銅の洗脳のせいだとわかれば…非難が出る…なら…敢えて…民衆に知らせない。それも…政治の方法の一つ…」

 

「でも…それでも気付く人はいる!そんな頭の回る人に後ろ指をさされるよ!」

 

「…後ろ指をさされたって何も問題ない…そういう人は…大抵貴族…だから…私に…王族に…反抗する愚かさを知ってる…だから…反抗なんて馬鹿な真似はしない…」

 

「アリス!そんな冷たいこと言わないで!アリスは辛くないの?」

 

「…ハナ…私は…王族。これ位…問題ない…」

 

そう言って微笑むアリスはどこまでも冷徹で…残酷で…実存主義で……そして、感情を殺してる様に見えた。その作り物の微笑みの裏に…仮面を被った…その裏で苦しんでるアリスが重なって見えた。

気のせいかもしれないけど。

私はそれを見過ごすことは出来ない。

 

「アリス、少しだけ『私』の話をさせて…」

 

「最初、ここに…異世界に来たって解った時…そして、剣と魔法のファンタジー世界だってわかった時…」

 

ここに飛ばされた直後…だと少し語弊があるけど、ここに飛ばされて2、3日目。

私は『冒険者』や『職業』なんて概念を叩き付けられて、感動…いや、興奮した。

何故ならば。

 

「私は…夢見てた。きっと子供の頃読んだ絵本の…空想の物語みたいに綺麗な世界なんだろうと…」

 

けれども、こんなのでも私は子供と言い張るのが怪しい年齢だ。

だからこそ、それ故に絵本みたいに、童話みたいに綺麗な世界なんてあり得ないとも考えていた。

 

「でも一方で…そんなことない、と思う私もいた。子供の妄想物語じゃないんだから…そんな小綺麗な世界なわけない。戦争だってあるし…前の世界よりも命が軽い…っていう風にね」

 

されど、現実は逆説を連続で突きつけてくる。

その片鱗はもしかして初日から見えていたのかもしれない。

 

「でも実際はそれでも甘かった。こう言ってもわからないかもしれないけど…ファンタジー定番の雑魚敵、ゴブリンに友達は殺されかけ…人間を組み合わせた醜悪な化物に襲われ…巨大な岩石に潰されて死んで…『魔銅』なんて言う害悪が存在してて…その上昔、転生者のせいで文明は滅ぶし…」

 

そう、現実には平和で綺麗な世界なんて存在しなかった。

剣と魔法が台頭すれば、その代償に人間の命の価値が軽くなる。

武力が全てを定めるなら、知力の活躍場所は自然に淘汰されていく。

 

「…想像を裏切って世界は残酷だった。異世界とは言え…現実は現実だった。何処まで言っても最終的には…辛い現実しか残っていなかった…」

 

それを私が一番始めに実感したのはセリアの事件だ。

あれで私は『命が失われる』という事を実感し、その意味を知った。

日本では唐突な失命なんてほぼあり得ない。

それを起こしうる存在は、『事故』と評される…つまり確率の低い事情であり私とは無縁な話だった。

でもこの世界での絶命は『事故』ではなく『偶然』や『悲運』で片付けられる。

それは一見同じに見えて、実情が違う。

ここでは私の認知しない内に戦争で街が潰れ、人が死に、そして忘れ去られる。

日本(あっち)では、いや。

地球ではそんなことはなかった。

私が仕入れていなかった情報は大量に有るだろうけど、私が仕入れられない…つまり入手不可能な情報はほぼない。

勿論各国の機密情報や軍事機密は知りようがないが、そういう話ではない。

内戦が起きた。紛争が発生した。戦争が勃発した。

そんな『大きな出来事』をあの情報化社会が取り逃す筈がない。

それに対して、この世界ではそれらは『大きな出来事』ではない。

 

「…そんな私に…異世界に色んな意味で失望してた…そして絶望してた私に…色を取り戻し…魅力を与えてくれたのが…夢をくれたのが…アリスだった…」

 

武力が国を治める世界にて、その知性を以て存在を証明する人。

本来であれば『些細な出来事』を『大きな出来事』の中に組み込み、自身の演算(しこう)に反映させる人。

 

「…アリスは私なんかよりよっぽど頭が回るし…本当に異世界の人?って思う位に元の世界の知識を吸収する…」

 

原子の話についてもそう。

セルグヌ行きの馬車内で教えた物理化学数学もそう。

 

「そして…私が…あれだけ裏切られてなお…『異世界』だから…『ファンタジー』だから…『夢の剣と魔法の世界』だから私は大丈夫だと思ってた私の目を正真正銘覚ましてくれたのはアリスだった」

 

ここは夢の世界なんかじゃない。

ここは現実に存在する『並行世界』とも言える場所。

例え悪趣味な創造主(台本家)が設計してたとしても。

例え万物を司り、未来を覗き得る『神』が存在していたとしても。

間違いなくここは実在する世界。

だから『あの時』と同じ。

矛盾し、背反する言葉を以て説得に臨む。

 

「…アリスの言葉を借りて…敢えて!私はこう言う!

私の世界の『夢の世界』を舐めるな!」

 

そして。

私の『夢の世界』の創作物語は単純な勝利のみの英雄譚も、そして不可能な終幕(バットエンド)も求めていない。

あの物語群には、ああいう英雄譚には。

必ず『それ』が起こる。

 

「私のいた世界では『剣と魔法の世界』って言うのはこんなに夢のない世界じゃなかった!確かに苦渋を舐めさせられる物語もあったし沢山苦労する話も星の数程あった!でも…それらは…その苦労は…必ず報われ…ハッピーエンドになってた!」

 

万人に望まれた英雄はやがてその人生に終幕を迎える。

されどその終幕は悲劇(バットエンド)ではなく、必ず望まれた幕引き(ハッピーエンド)になる。

その道中に数多の試練が、星の数程、艱難辛苦があろうとも。

それだけはあの世界(ものがたり)の絶対不変のルール。

 

「この世界をそんな夢物語の世界と一緒にするなと言うかもしれない…でも私に…アリスが…この世界に色を…夢を…付け足した以上…」

 

私の視る『この世界』を彩り、世界をパレットにした(アリス)盤面(そこ)から下りる事を私は傲慢にも許さない。

 

「私に…もう少しだけ夢を見させて…ね、アリス」

 

そしてここからも、あの時の再現。

論理的説得、合理的説明、論証責任を果たしたならば──

 

「これも…アリスの言葉を借りることになるけど…」

 

「それでも無理なら…私を信じて…私の特殊技能(ユニークスキル)は【御伽之城主(ミッシング・エリア)】。この世界で得られた初めての物がこれなら…『お伽噺の主人』なら…この世界を…お伽噺に…夢物語の世界に…変えてみせるから!」

 

アリスと私の間にある『それ』を頼みの綱に例えそれが蜘蛛の糸より細く、複雑な繋がりだとしても私は手繰り寄せる。

 

「だから…アリスも一緒に頑張ろ」

 

「それでも上手くいかなかったら…その時は私の負けでいいから…ね…」

 

だけど。

人間一人には、独りではどうしても限界がある。

超えられない壁がある。

それは物理的障害、精神的障害、時間的障害問わず様々な場面に聳え立つ。

一騎当千を誇り蛮勇ではなく英雄として君臨する名だたる将軍でさえ一人では少し優秀な案山子である。

一方、平々凡々たる私は一人で万能足り得るか、といえば考えるまでもなく否。

ならば英雄も賢者も、善人も悪人も、凡人も天才も等しく無力であれば良いのか。

その答えもまた、否。

協力して、助け合って、関係を繋いでいく。

…1+1は2であることは自明の理であってもそれは『数』という記号上の話でしかない。

記号から逸脱したこの世界では1+1は3にも4にも1000にも成りうる。

更に言えばそもそも1が突然変異して50になることもある。

つまり、だ。

 

「私はアリスが居れば千人力だと思う。だって王族だよ?あのファンタジー世界の頂点の。主人公とかが最終的になるポジションだよ?そして天才だよ?元の世界の小説でも主人公は何かしらの天才な事が多いのにアリスは何でも出来るんだよ?」

 

私が言いたい事は本当に単純な話。

 

「そして…アリスは…アリスだよ?」

 

「私の…親友である…アリスだよ?」

 

「そんなアリスと一緒にやれば不可能なんて何もない!」

 

使い古された希望論。

『皆仲良く手を取り合う、さすれば全ての道は切り開かれん』だ。

太古より幾度となく使われ磨り減らされてきた典型論であれど、『使われている』という事実はその場面において有効であることを示す。

それが『幾度となく』『太古より』使われている物ならその効力は私が示す必要もなく、自明な物。

 

「そういえばね…私があの天整統霧生の作った物に言った『ナポレオン』ってね…天才的な軍人で…彼の辞書に『不可能』って文字はなかったんだって…でも…天才だった彼は常に孤高だった…相談相手も親友もいなかった…だから最期には民衆に裏切られた…」

 

どんな天才で有っても、単独での限界はある。

全てを得意分野とする天才だからこそ。

 

「私はアリスはナポレオン並の…いや、それ以上の『大天才』だと思ってる。だから…相談相手として…『親友』として…アリスの横に居たい!」

 

「孤高でなく『親友』がいる大天才には…それこそ『不可能』はないと私は思ってる!」

 

「アリスはどう思う?」

 

「……」

 

「…ふふっ…話が…散らかってる…よ?」

 

「…でも…私は『大天才』で…『親友がいて』…『不可能がないから』…言いたいことは…」

 

「…全部判る…」

 

「…初めての対等な親友のために…私は…」

 

「…世界すら変えてあげる」

 

「ハナを夢の世界に連れて行ってあげる」

 

「…手始めに…この災悪を…終わらせよう…」

 

「だから…ハナ…手伝って…」

 

「勿論!私が言い出したんだし手伝う。何すれば良い?」

 

「…『魔銅』の影響はセルグヌ領の人と…大臣数人が受けてるらしい。…でもその大臣は替えがある…つまり…そんなに立場は高くない」

 

「…しかも、軽症だから多少放置しても問題ない……父上が仕事してれば…だけど…」

 

「…だから優先すべきは…セルグヌ領の人達」

 

「そして……そうね…ハナ、朗報。」

 

アリスは悪戯っぽく微笑みこちらを見る。

 

「『夢の世界』らしい解決方法だよ?」

 

「…魔道具…を使う」

 

「…mpを消費して…物を複製する魔道具」

 

「そのために…無限迷宮に行く…」

 

『迷宮』『魔道具』…『夢の世界』らしい方法って言われたからどんな方法かと思ったけどここまでファンタジーな方法だとは思わなかった。

 

「その無限迷宮のどこにその魔道具があるの?」

 

「…30層のボス部屋で極低確率で排出される…らしい」

 

「もしかしなくても運次第?」

 

「…そう。でも努力すればハッピーエンドだよ?」

 

「そうだね。よし、早く行こう」

 

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