『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
窓から漏れる光に
ふぁぁ、と欠伸をして伸びをすることで骨のこり、とでも呼べるものをほぐしていく。
微睡んでいた意識も徐々に覚醒し、よしっと気合いを入れてから起き上がる。
ここまで数行ほど御大層に説明したわけだけれど、要約するならば一行で片付いてしまう。
──朝になった。
ただ、それだけのこと。
折角異世界に来たんだし、それっぽい表現とか使って『異世界風味』みたいなのを出したほうがいいのかなぁ、と勝手に半分寝ている大脳君が考えただけの産物。
窓から入る日の光が気持ちいいなぁ。
清々しいなぁ、朝ご飯どうしよ。
実際のところ考えていることなんてそんなもの。
普通に考えればわかることだけど、本来朝起きたタイミングで『わぁ!素晴らしい朝日!毎日訪れる太陽さんに感謝!』なんて祝勝なことをする人類はほっとんどいないと思う。
しかも素顔……誰もいないところで、なんて条件でも増やした暁にはレッドデータブック入り間違いなしってレベル。今時幼稚園児とかでもやらないと思う。
そんな意味のない思考を脳内でくるくるくるくると回しながら、朝の支度なんて呼ばれるものを済ませていく。
朝の支度。まあ化粧品をそんなご丁寧に持ち歩いていたりしなかった私にとっては、数分で終わるもの。
じゃあ何か異世界特有の支度があるのか、と言えば精々見慣れないベッドの材質に思いを馳せるくらいで──
……まあ、なんとなくだけど。
これは別に他意があるわけじゃないんだけども。
誰に向けるでもない言い訳を重ねる。
とりあえずmp確認の意味でもステータス確認しよっかな。
異世界無双チートが叶うなら、朝起きたら全ステータスが五千兆倍になっててもおかしくはない。
~~~~
名前:?
種族:人類種
lv1(ボーナスポイント:+0)
職業:無職
hp…10/10
mp…10/10
str…5
vit…5
dex…5
agl…15(+10)
luc…2
「
【
「称号」
『唯一之取得者』
「固有魔術」
『
所有武器:クレルモン
mp貯蔵(1/1000)
~~~~
……変わらない。いや変わってはいるのよ。
微動だにしてないかって意味では
ただちょっと期待通りにはなってなかっただけ。
ちょっと真面目に見るなら、ちゃんとmpは回復している。
しているはしているけど……ペースが遅くない?
──合計11しか回復してない。
これが戦闘終了から数分、とかならわからなくはない。まあ数分しか経ってないしね!って感じになる。
でもこちとらすやっすや快眠に快眠を重ねて、何なら微妙に寝坊までするくらいには睡眠時間を稼いでいたはず。
すなわち数時間どころか十時間以上寝てると思われる。
……時計ないから正確なところはわからないけど。
それをふまえて、11という回復量。
11、素数、最大値は10。
突然クレルモン優秀説が浮上してきたな。
昨日の時点では、ギルマスの言い方から考えて『貯められるmpは多くて100程度でしょ』なーんて思って確認しなかったけど、1,000も貯められるのか。
1,000でしょ。つまり100
なるほどこれは便利かもしれない。案外優秀なのでは?
同じ材質と製法で杖作ったら、貯蔵量が増えるんじゃないか……なんて発想からは現実逃避する。多分2,000は行けそう。下手したら5,000とかになるのかも。
いやいやいや、杖なんてもらっても老人の真似事しか出来ない。
私は最初っから剣一筋!ファンタジー異世界の申し子になるんだ!
と、とりあえず暫くは肌身離さず持っておこう。
一応は唯一の生命線ではあるからね。
『あのギルドマスターから下賜されたクレルモンを持ってるんだぞー!』みたいな脅しに使えるかもしれないし。
支度を終え、部屋から出る。
部屋から出て、そのまま宿屋からも出る。
あ、朝ごはん抜きでギルドに行くなんて私はなんて働きものなんだろうなーっ!
まっさか寝坊したせいで朝ごはんの時間が終わってるっぽかった、なんてことは関係あるはずもないし。
……お腹がなってるのも当然気のせい。気のせいったら気のせい。
聞こえてる人がいたら、その人は多分幻聴持ちなのではやめの受診をオススメしたくなっちゃうなーっ!
……我ながら吐き気がしてきた。やめよう、精神が磨り減る気がする。
さて、外に出ると道に人が溢れていた。
ちなみに比較対象は言うまでもなく昨日。
昨日は祝日かなんかだったのかな、って感じ。
単純に深夜だったから説ってのも当然あるけど、まあどっちでもいいことよ。
八百屋なんてもの、こっちの世界にあるんだぁなんて不毛なことをしている内に目的地へと到着する。
そう、朝ごはんを抜いてまで来たかったギルドってやつ。
ツンフトとかはあるのかな。
「おはようございます、ギルマス」
丁度 (都合良く)ギルマスがいたので、挨拶をしておく。
ここもやっぱり昨日よりは人多いなぁ。
まあこっちは本当に夜だからって可能性がたか……いけど。
一瞬脳裏に過った『深夜に街徘徊してたら犯罪者とかに拐われてた可能性もあったよな』という思考を追い払う。
「おお、ハナじゃないか。こんな朝早くからどうした?」
「何か依頼でも受けようかと、それと
「そりゃあギルドマスターだもの王都の冒険者の名前くらい覚えてるぜ」
良い人類アピールだ……というかちゃんとギルドマスターしてるんだ。ただ最上階の奥にある椅子で書類整理してるだけ、とかじゃないんだ。
「そうだなぁ……依頼なら少し早すぎるんじゃないか?実力的に考えて。暫くは他の奴と模擬戦でもしたらどうだ?それか昨日の奴でもいいだろうし」
んまあそれはそう。実力なんてものは四捨五入するでもなく0みたいなところはある。
でもそれ以前の問題として、金欠なのよね。
異世界に来てから二日目にして体は売りたくない、流石に。いや何日目でも嫌だけれど。
「どっちもお金なくて頼めないから、適当な依頼だけ受ける」
「でも、この周辺で受けられる依頼なんてハナにはないぞ?」
「えっ?」
えっ?
ちょっとそれは予想外というか予定が狂うからマジで止めてほしかった。
「王都で冒険者をやろうって奴は基本的に他の街で冒険者をやってランクを上げてから来る奴が多いんだ。だからここのギルドには低ランク向けの依頼なんて雑用くらいしかないぞ?」
なるほど?まあでも考えてみればそっか。
王都周りにガンガン危険な獲物出てたら、それは治安が終了してることになってしまう。合理的だし納得だね。
まあその納得の代償として、今後の私の予定がかなり大幅にとち狂ったんだけど。
「じゃあその雑用します。私のランクでも受けられるやつを見せてくれる?」
「じゃあこれとかどうだ?」
ーーーーーーーー
教会の掃除
対象:ランク:F以上
報酬:銀貨2枚~(要相談)
場所:王都の庶民3区の教会
時間:昼間ならいつでも
ーーーーーーーー
そう言って見せられた用紙には、そんなことが書いてある。
教会の掃除……悪くないでしょ。別に掃除は異世界だろうとやることは共通だからね。
行って『じゃ、
「じゃあ、これにします」
「わかった、俺が登録しとくから早く行ってこい」
そう言われたので、ギルマスに別れを告げてから昨日行った教会のほうへと向かう。
にしても、人の歩く速度が全般的に私より基本的に速い。
全員が全員競歩でもしてんのか、って感じ。そんなに生き急いで何が楽しいんだろう……まあ私もとっとと生活基盤安定異世界チート無双とかしてみたいから、あれだけど。
……歩くのはやいのって、もしかしてここの住民って平均レベルかなり高い?
はやくレベルを上げなきゃなぁ……そんなどうでもよさそうで、まあまあ重要っぽいことを考えてる内に昨日の教会に到着。
昨日とは違い、教会の周りで子供が数人遊んでいる。賑やかかつ元気そうでよろしい!って感じ。
異世界孤児院あるあるの痩せ細った死にかけ子供が沢山、とかだったら色々と考えちゃってたかもしれない。
もしかして保育園の代わりとかになってたりするのかな?
とりあえず中の人に依頼を受けて来た旨を伝えようっと。
「失礼します。冒険者ギルドで依頼を受けてきた者ですが……誰かいらっしゃいませんか?」
「あ、ありがとうございます冒険者さん。初めまして、私はここの教会の司祭のロンラと申します」
そういいながら出てきたのは銀髪ロングのお姉さんだった。
司祭。司祭、司祭……どれぐらいの地位にのポジションなんだっけ。なんかあった気がするんだけど、あんまりわからない。
「私はハナと申します。ギルドで依頼を見て来たのですが……どこを掃除すればよろしいですか?」
私はモップかげのジェスチャーをしながら、意欲を見せる。こういうのは
◇
そんなこんなでロンラさんが指示した場所の掃除の手伝いをすること2時間位経過し、粗方掃除が終わった頃。
世間話とばかりに、ロンラさんから話しかけてきた。
「ハナさんって商人なんですか?」
「いえ、違いますよ。ただの冒険者ですよ。どうしてそう思われたのですか?」
「いえ、言葉遣いが丁寧なもので商人かと思いました」
……今後初対面の人にガチガチの敬語使うの、やめといたほうがいいかな。あっ、貴族とか以外には、ね。
そうだ、昨日いなかったよね。
「そういえば昨日は何をしていたのですか?昨日の夕方もここにお伺いしたのですが、いらっしゃらなかったので……」
「え?普通にここにいましたよ?」
「え?じゃあ子供達はいませんでしたよね?」
「?普通にいましたよ?どうしたんですか?」
どういうこと?
確かに昨日はここに人がいなかったはず……いなかった記録がある。
《強制執行: 溘譏�◼️溘�により称号『廻遡宙の観測者』を強◼️縺与されま◼️た
Now Lording……該当事項の遭遇まで記憶の封印、偽造…称号の効果偽造のため『称号偽造』『称号◼️◼️』を用いて称号に効果:「『重複魔術』『◼️◼️◼️◼️』の取得」を付与……再表示実行》
《称号『廻遡宙の観測者』を取得》
ん?あれ?何か称号獲得した?
『廻遡宙の観測者』っていかめしい名前から考えると、普通は取れなさそうな称号だけど……
私何かやらかした?
一応効果は確認しておこう。
~~~~~
『廻遡宙の観測者』
効果:番外技能《エクストラスキル》【重複魔術《マルチスペル》】
特殊技能《ユニークスキル》【■■■■】の習得
【重複魔術《マルチスペル》】lv1
mp+100
魔術を同時発動可能、但し消費mpは、普通に個数分魔術を使った時の消費mp×発動個数
【■■■■】
条件を満たしていないため効果が発動しません
~~~~~
…………おっ、mpが100も上がったということはステも大分変わったかな?
それと条件を満たしてなくて、効果が発動しないなら表示しなくてよくない?
まあいいや。存在を教えてくれるだけありがたいとしておこう!
うん、ぜっったいに何かろくでもないことな雰囲気はしてるけど、そうしておこう!
きっと恐らくヤバヤバになった時に覚醒してくれるチートスキルでしょう!
そんな雰囲気はしないけど。
~~~~
名前:?
種族:人類種
lv1(ボーナスポイント:+0)
職業:無職
hp…10/10
mp…10/110
str…5
vit…5
dex…5
agl…15(+10)
luc…2
「
…【重複魔術《マルチスペル》】lv1
「
…【御伽之城主《ミッシング・エリア》】lv2
…【■■■■】lv1
「称号」
『唯一之取得者』
『廻遡宙の観測者』
「固有魔術」
『
所有武器:クレルモン
mp貯蔵(4/1000)
~~~~
やっぱり、大分mpが上がってる。
これから異世界で生きていくなら、どう育てたほうがいいとか考えないとダメだよね……
「大丈夫ですかー?ハナさん?大丈夫ですか?」
「……!?」
思考が完全に、沼ってたせいで現実のほうを疎かにしてた。危ない危ない。依頼主の印象が悪いと報酬も減っちゃうかもしれないからね。
「急に黙ってしまって……どうしたんですか?」
「いえ、ちょっと称号が増えて……」
やばい、混乱と焦りの相乗効果で事実を言ってしまった。
この称号、明らかにおかしいし説明したくない──
「よかったじゃないですか。悪い称号ではないのでしょう?」
「はい、そうですけど……聞かないんですか?」
「称号というものは、冒険者にとって基本的に名誉な物ですから、自分から言うことが多いです。しかし、言わないということは理由が何かあるはずですから。それに無闇に人の個人情報を探るのは人としてもあんまりよくないですからね」
この人凄い良い人だ。正直心のなかで適当にいいかんびに丁寧に接してたら騙せそう、とか思っててごめんなさい。
聖職者の鑑である。
「お気遣い頂きありがとうごさいます」
「さて、概ね掃除も終わりましたし、そろそろ終わりにしちゃっていいですね。ところで報酬の話ですが……」
む、その言い出し方ってことは少なくなるのかな?
まあ楽な仕事だったし無料とかじゃなければ良いけど……
それに一応とはいえ迷惑?のようなこともかけちゃったことだし。
「すみません、報酬は金貨1枚にしてください!」
……あれ?
私は記憶の奥底に眠ってる依頼用紙を思い出す。
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教会の掃除
対象:ランク:F以上
報酬:銀貨2枚~(要相談)
場所:王都の庶民3区の教会
時間:昼間ならいつでも
ーーーーーーーー
まさか銀貨2枚で金貨1枚、なんてレートではないはず。
「……??どういうことですか?」
「え?依頼書に報酬は金貨2枚
おっと認識齟齬。
「え?銀貨2枚から、つて書いてありましたよ?」
私がそう言うと、
「……そういうことですか。普段は依頼を出した日には冒険者の方がいらっしゃるのですが、今回はなかなかいらっしゃらないのでどうしたのかと思いました」
あー……理解。そういうことね。
金貨の相場はさておき、普段は金貨くらいの内容を銀貨でってなればやる人も少ないはず。
「それは災難でしたね。だから金貨1枚でも全然気にしませんよ。むしろ依頼書通り銀貨2枚でも良いんですよ」
「それは申し訳ないので金貨1枚はお支払します。後これが達成報告書です。報酬の件も書いておいたのでギルドに持っていって下さい」
……普通に優しい人だなぁ。
私はほんのりとした優しさを抱えながら、教会を後にする。