『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
あれ?私は『早く』行こうって言っただけで『速く』行こうとは言ってなかったはずなんだけど…
「アリス…まだ着かない?」
「…着いた…ここが無限迷宮の入り口…」
何か妙にメカメカしくない?これ天整統さん関わってそうなんだけど…それか同じ時代の人。
私がそんな感想を抱くのも仕方ないと思う。
何故ならば迷宮の入り口に聳えるその門は明らかにSF世界出身の物であり、決して剣と魔法の世界に在って良い風貌をしていない。
「ここの30層まで行くんだよね?」
「…そう…地図もある…15層までだけど…」
「それ以降の地図は?」
「…売ってない…現在の最前線のパーティーが…20層…だから…」
今明かされる衝撃の事実。
この王女様は何をほざいていらっしゃるのか。
「えっ?」
「…30層突破の報告は…先代の勇者パーティーだけ…因みにそのパーティーも…ここが限度だった」
あ、良かった。前人未到って訳じゃないのか。
良かった、良かった…ってなると思う?
え?
「私とアリスが行くのは?」
「…30層だけど?」
「行けるの?」
「…さあ?…でも私達には『不可能』がないらしい…から…」
うーん、私の意図が三回位
まあどうみても意図的な三回転だけど。
「………パーティー登録…するよ」
「どんな名前で?」
「……秘密」
そう言ってアリスは教えてくれなかった。
パーティー名ぐらい教えてくれてもいいと思うんだ。
そうじゃないと自己紹介すら出来ないことになるんだけど。
◇◇
アリスと自分自身に『
1~5層は楽勝だった。ここの道中でアリスからこの迷宮について色々説明された。
まず、10層毎に帰るための転移陣があってそれで帰る…か、普通に1層から出口にでるしか帰る方法はないらしい。
そして重要なのが次に入るときは最後に使った…つまり帰還時にに使った転移陣からスタートになる。
よくあるダンジョンと違ってそこまでなら何処でも選べる…とかじゃない。
それで10層毎にボスがいる。
まあこれは定番だしこれ以上説明しなくてもいいよね?
これ位まで話した時9層を突破して10層に…最初のボス戦に挑む所だったと思う。
◇
「…というわけで10層…」
「ここのボスは何?」
「イリーガルゴブリンかハイウルフ…レア枠でで…レッサーゴーレム…」
「イリーガルゴブリンかぁ…」
「…何か嫌な思い出がある?」
「…友達が(自分も)殺されかけた」
いやぁ、中々のトラウマですね。
セリアが生きていたから良いもののもし死んでたら…うん。
確実に鬱ってたし病んでいた自信がある。
それに今でもあの時の自分自身の心情を思い返せる。
…憎悪、憤怒、絶望、無力感。
今もその全てを鮮明に思い出せる。
セリアは『謝らなくていい』と言ってくれたけど私は今も全力で謝りたい。
「……出ないといい…ね…」
何故かフラグが建築された気がする。
「…ドア…開ける…」
そうして私の目に飛び込んできたのは…案の定イリーガルゴブリンだった。知ってた。
でもあの時とは全てが違う。
aglは実質14500だし(やろうと思えば)分身も作れる。
名前何だっけ…(ステータスちらっ)…ああ、そうそう、『
あ、イリーガルゴブリン死んでる。
そういえばこの迷宮の魔物?モンスター?って倒すと『ポリゴンになって消滅していく』からどうしても現実って言うよりゲームに見える。
そのせいか倒すのにも忌避感があんま出てこないし。
あ、レベル上がった。
18か…まあmp…いや、たまにはaglにしよう。
100倍の影響で急に上がった感覚がする。何コレ楽しい。
今思い出したけど(私が飲まされていた)ポーションってこの10層のボスが50%で落とすんだって。
ちなみに今回はドロップしなかった。
mpが1000回復するポーション(200ml)…正式名称は王家の秘密らしいけど特別に、とアリスが教えてくれた。
『対AI用最下級飲料』…アリス曰く長年『AI』の意味がわからなかったらしい。
AI…Artificial Intelligence…人工知能…言い方はどれでも変わらないけど…元の世界で昔から何回も問題になってる技術だ。
とっくに民間にも普及してるし皆当たり前の様に使ってたけど…
シンギュラリティ問題や2040年問題と言われる『その内人工知能が人類の知能を上回る』かもしれないと言う問題だ。
そうなった時…AIが産みの親である人類に反逆するのか…はたまたそれまでと一向に変わらない日常を過ごせるのか…そんな話を聞く度に怖いと思ったし怖いと思った事がある人も多いだろう。
けどそれが本当に起こるとは思わない…一種の都市伝説や怪談話として扱われていたのだろう。
都市伝説や怪談話というのは日常でもあり得そうなシチュエーションでの話が主なのは自分にもあり得そうで怖い、というのを誘うためなのだから。
まさにそれと同じ扱いだったわけだ。
…しかし、この世界では天整統霧生という転生者のせいでその『都市伝説』が『現実』になってしまった。
楽観視して…恐らく今までの私と同じ様に『都市伝説』だとしか思ってなかった人は死に…
危惧していた通り…まさに都市伝説の通りに…AIは人類に反逆を起こした。
そしてその結果…これは推測だけど…文明がほぼ崩壊した。しかも天整統さんの言うことを信じればたかが一つのAIで…だ。
そしてこの事で一つ確信できた。
この『無限迷宮』は…本来はAI対策のための大型訓練所みたいな物なのだろう。
そうじゃなければこのポーションみたいな名前にならないし…そもそもこんな『ドロップアイテム』みたいなシステムは作らない。
そしてこれだけ大がかりなシステムを作り…迷宮を建設する…そんな技術力があった頃の世界でも滅亡寸前…それこそ転生者が全力で対応し、ほぼ全ての国が滅びる…というレベルまで追い込まれた。
そこから…その『AI』の恐ろしさがわかる。
そんな事を思いながらアリスを見るとアリスもほぼ同じ考えに至った様でお互い頷いた。
そしてその時私は一つの疑問を抱いた。
『本当にAIは壊せたのか』
天整統さんの遺言を聞いても肝心の壊せたかどうかは言われてない。
今までは今も人類が存続してるからギリギリで倒せたんだなぁ…って思ってたけどもしかしたら倒されたふりをしているのでは?
これはアリスにはわかり得ないし持ちようのない疑問だ。
何故なら私はAIが人工知能であり…自ら学習する仮初めの知能を持ってる存在だと知っているけどアリスは恐らく何かとてつもなく強大な魔物…としか認識していないだろうから。
逆にこれで「…え?…人工知能?…知ってた…」
とか言われたら驚き。
まあこの一連の不安が杞憂ならいいんだけど。
私がまだ考えてることに疑問を抱いたのかアリスがこっちを見てくるから何でもないと返して先を急ぐ。
◇
11層から19層はさっきの10層までに比べれば大分辛かった。…と言ってもagl15000以上ある私達は思いっきり色々すっ飛ばしたんだけど。その影響でレベルが19になった。ボスで20になるかな?因みにボーナスポイントは全部mpに振った。本来は宝探しとか罠の解除とかしなきゃいけないけど罠を踏んでから発動までの間に圧倒的agl力で進んでる。迷宮とは?ダンジョンとは?まあいいや。
はい、20層です。
「アリス?ここのボスは?」
「……最前線パーティーが秘匿してるから…わからない…」
いざ、扉を開いて中に入ると…
そこには地竜?っぽいのがいた。強くなるスピード速くない?さっきはゴブリンだよ?
地竜が突進してきたので素早く避ける。その隙に私は慣性の法則キック(パンチは痛そう)を…アリスは何か強そうな魔術を放った。
それだけやっても地竜はそんなにダメージを受けてないっぽい。どう見ても合計2000ダメージ入ってたのになぁ。
…なら少なく見積もっても20000位?
「アリス!呪域は…」
「ダメ…まだ取っとく…30層もあるから…」
そうじゃん。ここがゴールじゃないんだった。
そこからちまちまと数分間慣性キックとアリスの魔術で削った。
多分hp80000位はあった。
たしか昔(そんな昔じゃない)に戦ったエネステラのhpは88888だっけ。もしかしたらアリスと一緒ならあれも倒せるかも?
…まあもう戦いたいとは思えないけど。主にあの見た目のせいで。
地竜がポリゴンになって消えた場所に何か落ちてた。これがドロップアイテム?
「アリス、これ何?」
「…多分……ポーションの一種…珍しい固形型の…売ったら金貨10~15枚位…」
金銭感覚狂いそう。最近金貨~枚みたいなのしか聞いてない。なのに所持金は……あ、意外とあった。そっか宮廷魔術師としての初任給貰ってた。mp回復量は変わらず1000らしい。正式名称は『対AI用最下級固形飲料』こういうのとか見ると天整統さんって漢字の羅列好き?もしかして厨二病だった?
…そんなことはさておき21層~29層だけど…今までとは比べ物にならなかった。
でもまだ少し余裕がある。所々に割りとえげつない罠…例えば…強制的にmpを減らす奴とか液状スライムのせいで滑るし床が見えない中での戦闘とか。
まあ無事(一回転んでスライムにまみれた)に30層の前に着いたわけだけど…これから私達は…先代勇者パーティーでも苦戦した30層に挑戦する。
個人的に疑問に思った事としては『何で皆20層付近で止まってるのか』ということ。
私なんかでも初見でここまで来れたんだ。
この迷宮に年単位で時間を懸けている人なら余裕でここまでこれると思う。
なら考えられる可能性は3つ。
一、アリス&私のペアがチート過ぎて感覚がバグってる。
でもこの可能性はほぼない。
確かに私はまあまあ強い。…正確には弱いとは思わない。
そしてアリスも強いは強いけど、『チート』って程じゃない。
二、誰かが結託して21階層よりも先に行かせない様にしている。
まあ唯の妄想の域を出ないけどあり得るかもね、って奴。
もしこれが本当なら私達が通る時に妨害される筈だから違うと思うけどね。
三、21階層からが死ぬほど効率が悪い、とか。
この場合30階層は敵がかなり強いかそれともドロップアイテムがゴミかだけど…
アリスの情報が確かならドロップアイテムはゴミではないから…
つまり中々にこの中の敵が強い、ってパターン。
「アリス、敵はわから…ないよね」
「…勿論…ごめん…」
いざ、先代勇者と力比べだ!
扉を開けて入ると中に居たのは…機械?
そう考えた瞬間副砲らしき物をこっちに向けてきた!
「アリス!遠距離攻撃が来る!」
「…ハナ…『
つまりそれは神域は解禁ってことだね!
「なら…神域『
…
…
……効果が…ない?ダメージを受けたけど損傷が少ないとかならわかる。でも無傷なのか全く意に介せずこっちに副砲を撃ってきた。
aglは高いから避けられる…でもどういうこと?
…アリスが魔術で攻撃してるけどそれは効果がある…ならあっちじゃなくて…こっちに問題がある?何故?
『
今までこれを私が使った相手は…魔銅憑きセルグヌ…神の居た空間…その二回だけ…
『魔』…『神』…『科学』…
もしかしてこれ…非科学的な物にしか効果ない?
でも一応確かめてみるか。
「アリス!少し離れてて」
「神域『
…?今度は効いてる?余計わからなくなってくる。
…少し経ったら全く効かなくなった。もう意味わからない。
さて、神域が使えなかった以上地道に削るしかない。
地竜でも割りと時間かかったからどんだけかかるかなぁ。
…とか思ってたら以外と早く倒せた。
なんで?
まあ30分以上必要だったけど。
ドロップアイテムは……?
「アリス、これなに?」
「…hpの回復ポーション……初めて見た…」
え?アリスで初めてなら相当とかいうレベルを超えて珍しいのでは?
「でもお目当ての魔道具じゃないよ?」
「…周回する」
「30分を?」
「…そう」
おおう、かなり大変な作業になるんじゃない?