『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
もしこれが悪戯だとしたら流石に質が悪すぎる。
さて、どうした物か…こんなよくあるホラー小説みたいな…?
──そこに有ったのは洞窟でもよく小説かなんかで見る『大きな街にある闇の地下街』でもなく───
また違和感?
この違和感は何だろう?
…まあそれよりも、どうやってここから出よう?
仮に教室のドアに鍵がかかってると仮定しよう。
なら鍵を開けなきゃいけないわけだけど…どうしよう
。
…何かピンセット的な何か…そう、鍵穴の中に入れて回せば…弾丸みたいに回転させれば…ん?
──発動する瞬間──めっちゃ──────鍵を抉じ──る。
さっきからするこの違和感は何?
私、ピッキングみたいな犯罪すれすれの行為をやった記憶がないんだけど…
うーん、女子力が後50ぐらいあれば髪の留め金とかあったんだろうなぁ。
…何か道具を探さなきゃ。
そう思って教室を探してると教卓の裏に一枚の紙が落ちてる事に気付いた。
「なになに…?」
ゲームとかだと、こういう所に落ちてるアイテムが世界を救う鍵になったりするんだよねっと。
えーと?
「『貴女の望む世界を提示せよ』…どういうこと?」
念のため裏を見てみたけど、紙にはそれしか書いていなかった。
実は裏に隠されたレモン文字があって、炙ったたら出てくる…的なのないよね?
レモン持ち歩く人なんていないだろうし…
いや、唐揚げに絶対レモン汁かけるマンなら日常的に持ち歩いてる可能性もある。
まあそんな冗談はさておき、紙の内容についてだ。
…で、どういうこと?
望む世界…望む世界ねぇ…今みたいな何もない平和な世界…かなぁ。それ以上は望み様がないしね。
昔はファンタジーの世界に行ってみたいな、とか思ってた時期もあるけど、この年齢じゃあ流石に痛い…
──例え悪趣味な
例え万物を司り、未来を覗き得る『神』が存在していたとしても。
間違いなくここは実在する世界───
……違和感だ。
何だろうこの違和感。
私の感覚が訴えかけて来るというより理性が訴えかけてくる。現実を見て!…と。
現実も何もここ以外ないのに。
ファンタジーなんて幻想の産物は存在し得ない。
こんなとこに閉じ込められてるからまともな思考回路じゃなくなってるんだろう。
はぁ、一応開いてるか確かめてみるか。
しょうがないのでドアに戻る。
諦め気味にドアが押すと当たり前の様に開く。
「おっと」
予想とは違うことがおき、思わず転びかける。
…空いている。
恐る恐るドアの向こうへと潜る。
そこに広がっていたのは至って普通の下校風景。
はっと思い後ろを振り返るといつもの教室に戻っている。
数人が机の上に座り、雑談をしている。
うん、いつも通り。
そして月明かりは消え、元の煌々と照らす太陽が復古している。
…つまり、普段の午後1時頃に戻った。
さっきまでのは…私の幻覚?
そう思い手元を見ると、確かに紙は残っている。
…なら幻覚じゃない?
わかんなくなってきた。…アリスとセリアさんに相談してみるか。
ん?もしかして時間が戻っているなら…
帰り道…もしかして急げばアリス達に追い付けるんじゃない?
なら…急がなきゃ。
「『
何…それ。
──えーっと…mpは10しかないから、mを3、aを1、nを3にして……発動!
──『
またノイズ。
試験勉強のし過ぎで疲れたのかな。
まあいいや、普通に走ろっと。
頑張って走ったら何とか駅で落ち合えた。
「というわけで電車内」
「誰に向かって話してるんですか?」
「さあ?」
強いていうなら自分だと思う。
色々不可解なことが押し寄せ過ぎて自分の状況を客観視出来なくなってるからね。
「所で、さっきこんな事が有ったんだけど…」
二人にここまでのあらましを説明する。
幸いにも二人共、私の話を信じてくれた。
持つべきものは『友達』だなぁ。
アリスは色々確認してくれるらしいし、セリアはなるべく近くにいてくれるって言ってくれた。
アリスは兎も角、セリア…うん。
普通に違うクラスだから学校中は一緒に居るっていうのは不可能だと思うよ?
それに明日から学年末だし。
そんな感じで話は一段落した。
そしてその後は雑談をしつつ、普通に家に帰った。明日は試験だから少し勉強して普通に寝る。
今日も一日お疲れ様でした。からの…おやすみさない。
──今日の私、お疲れ様でした。それじゃあお休みなさい…
──それじゃあ今日もお疲れ様でした。お休みなさい。
──夜ご飯も食べて、お疲れ様でした。お休みなさい。
──それじゃあお疲れ様でした?お休みなさい。
──それじゃあ今日もお疲れ様でした。お休みなさい…
──それじゃあお疲れ様でした。………おやすみなさい。
──と言うわけでお休みなさい。お疲れ様でした!
──それではお疲れ様でした。お休みなさい。
──それじゃあ、今日も1日お疲れ様でした!それではお休みなさい。
──何か、お疲れ様でした。お休みなさい。
──お疲れ様でした。お休みなさい。
──はい、まあ…お疲れ様でした。お休みなさい。
──…お疲れ様でした。お休みなさい。
◇
む…朝。つまり…テスト当日。
昨日と同じ様に登校してテストを受ける。
最初は…そういえば数学だったな。
それにしても昨日はうなされたなぁ。
何だったんだろう。
今までにもあったノイズの強化版というか…そんな感じ。
先行き悪いなぁ…
まあいいや。取り敢えず目の前のテストに集中しないと!
…最初は最大値最小値問題か。
それにしても『最大値最小値問題』って漢字が並んでて読みづらいなあ。
実際に口に出して言うと、これ以上ないくらいわかりやすいんだけど…
本当はベクトル使ってゴリ押ししたいんだけど…一応未修範囲だし自重するか。
むー、普段は便利だけど、こういう時『数学の予習』って不利になるなぁ。
──まあベクトルは未習範囲だから当たり前。寧ろ理解してる勢が怖い。
ノイズが脳内で走るけど、テスト中だから邪魔なだけ。
◇
早めに終わったから暇だなぁ。
そう思って窓の外をちらっと見ると普段通りに生徒が走り回って…うん?今日は全学年テストだったはず
…じゃあ何で?
そう思ってもう一度見るとそこには誰もいなかった。
首をかしげていると試験監督のマルケス先生がこっちを見てるのに気付いた。
ヤバ、カンニングと思われたかな?
しょうがないのでトイレに行きたかった事にして目線で訴えかける。頷いたので廊下に出て…
やっぱ辞めた。
流石におかし過ぎる。
…一つ気になった事ができたから屋上に行こう。
何だかんだこの学校には3年いるけど…屋上は初めて来た。
まあ普段は使えない様に封鎖されてるからね。
私は屋上に着き、鍵を閉めながら考える。
それと、思ったより大分高い。
この学校自体4階立てだからかなぁ…
さて、早速気になっていることを試そう。
普段私が使ってる道…つまり登下校時に使う道とは反対側、私が見たことない景色を見ようと振り向くと…
…そこは何とも形容し難い空間が広がっていた。
一見するとあまり違和感がないけれど、遠くを見れば見るほどゲームの様に描写が荒くなる…ポリゴンチック?な感じになってるし、何より不気味なのは普段私が使ってる方面と全く一緒の風景が写っていることだ。
つまり私は今、前を向いても後ろを向いても全く同じ景色が見える。
流石におかしい。
そもそもここ二日はおかしい事が続きすぎてる。
まず一つ目は昨日の一連の出来事。
そして二つ目はこの景色。
そして最後のピース、3番目は…
……こんなに時間が経ってるのに誰一人ここに来ないこと。
それにこの時間なのに私の周りが無音なこと。
幾ら昼間とはいえ…いや、昼間だからこそおかしい。
普通は鳴り響く都会の喧騒も、耳に残る大声もしない。
かといって木々のせせらぎの音や波の爽やかな音が聞こえるかと言われれはそんなことはない。
つまり、私の周りは無音だ。
それに、『私の知識』では屋上は15分に一回位人が見回りに来るらしい。
そして今この瞬間…この屋上に入ってから15分が経過し…そしてありえない事象その4が同時に起きた。
「……ハナ?どうして…ここに?」
そう、見回りに来たのが『アリス』なのである。
普通に考えればアリスも今は試験中だ。
そして普通の人なら試験中にここには来ない。
更に言えば、私は確かに鍵を掛けた筈。
流石に幾らアリスと言えども、音を一切立てずにピッキングは出来ないだろうし。
そしてこの一連の狂った出来事をふまえると…
──私はとある確信を得る。
それと同時にふと思い校舎の外を見やると、そこには何もなかった。
まるで空間そのものが抜け落ちたかの様に、そこには何も存在していなかった。
──やっぱり。
「アリス、ちょっとこっちに来て」
崩壊しつつある学校を尻目に私はアリスを呼び寄せる。
「……いいよ…」
──ああ、やっぱり違うな。
そうして何の警戒もせず、私に全幅の信頼を置いてくれてるであろうアリスを…
…私は掴んで屋上から落とした。
「……何で?…」
そんな幻聴が聞こえ、そこから数秒遅れて『何か』が潰れた音がした気がする。
…これは確実に夢だ。いや、少なくとも現実ではない。
証拠なんて山ほどある。
まず第一に、アリスはあんな無警戒に私に近寄ってこないし、そもそも私がやろうとしてること位なら直ぐに気付く。
だから本物なら一番良くても『何するの?』と聞いてくるだろうし、最悪のケースは私を昏倒させる…だと思う。
そんな理由で少なくとも『あの』アリスは偽物。
そしてこんだけ可笑しな事が連続してる以上…この空間も偽物なんだろう。
それこそ夢幻の世界だ。
…折角の夢幻の世界なんだ。
昨日の紙の答えを今ここで堂々と宣言しよう。
あの大量のノイズの正体は未だに
でも、あれらは現実ではないこと位はわかる。
あれも幻覚の、夢の一種なのだろう。
「私が望むのはこんな変な継ぎはぎの幸せ空間ではなく…」
「現実味のある、魔法や魔術なんてない…科学に支配された…地球だ!」
崩壊する屋上を背景に、私は言い切る。
宣言から数秒、言い切った姿勢のまま瞑目する。
太陽も、街も、山々も、海も、川も、学校もなくなった虚空の世界を前に、私は確信する。
どこからか困惑した雰囲気と同時に…大きな鐘の音が聞こえ……
───全ての記憶が戻る。
『安息の世界は崩れ去り、夢幻の楼閣は砂と化す』
『試練の答えは未だ出ず、記憶は現実を凌駕する』