『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
私が目を覚ますと…そこは異世界だった。
いや、訂正しよう。ま…
「…ハナ!どうしたの?」
「あ、アリス…」
ああぁぁぁぁぁぁ~何で忘れてたんだろ。
まあそういうコンセプトの試練だったんだろうけど。
それにしてもあんまりじゃない?
というか記憶を操作するって、この『試練』作成者やばくね?
いや、作成者とかいるのか知らないけど。
「ごめんアリス、レベル上がった」
気の動転から主語とか助詞が抜ける。
正確には『ごめんアリス、
「…試練は?」
…『記憶の試練』。
中々に外道外道してる試練だったけど、まあ一つだけ言えるとするならば。
──ありがとう。
…かな。
多少形が違うとはいえ一時的に元の世界に戻してくれたからね。
まあ二度とお断りではあるけれども。
「勿論成功した」
口が裂けてもこんな世界は嫌だって言ったとか言えないしアリスを突き落としたなんて言えない。
あれ間違ってたら普通に犯罪だし不敬罪だし殺人罪だし…
軽めに見ても処刑案件なんだよなぁ。
いやー、本当に試練で良かった良かった。
えーと、レベルが6になったことで使える技が増えたんだろう。
さて、肝心の魔術は…
─────
『
相手を強制的に半径a[m]の空間に自分と供に収容する。
空間の中は自分の記憶にある場所を再現でき、ある程度ならば改変できる。
相手がこの魔法を破る際は使用者が消費したmp分を消費する必要がある。
また作り出す空間は使用者がよく見知った空間でなければいけなく、そうでない空間を作ろうとすると作成されない。
またこの魔法に適した詠唱をすることで威力や作る世界の詳細を再現できる。
一端空間を構築してから新しく構成物を増やす際は追加でmp50を消費。
※使用時は最大hpの50%を消費。
※使用中は経験値の取得量が激減する
※使用中はmpの自動回復がなくなる
※解除後3時間【
※解除後6時間mp以外の全ステータス半減
※解除後12時間最大mpが4分の1になる
※解除後24時間で再使用可能
消費mp:a^3÷10
─────
いや、大量に言いたいことはあるのよ。
魔術じゃなくて魔法じゃん、とか…何で魔法を使うだけでhpと減るの?とかね。
それに死ぬほどデメリットあるし。
これ解除しない方がむしろいいのでは?…いや、mpの自動回復なくなるから…でもポーション飲めばいいのか。
あ、でも流石に取得経験値が激減するのは不味い。
…どれぐらい減るんだろう。半減とか4分の1位なら許容範囲ではあるけど…10分の1とかだと辛い。
まあ色々言いたいことはあるけど、要はだ。
…ラッキー。1対多に使える魔術…魔法じゃん。
まあそれ以前に色々問題がありそうだけど。
これもしかして1vs640の謎試合に勝てる可能性が…ないな。
でもこの魔法の内容を要約すると…
①mpを使って物を生み出すよ。
②生み出す物は私がよく知ってるものじゃないとダメだよ。
③他にもデメリットが色々あるよ。
っていうもの。
中々にハイリスクハイリターンなそれだ。
まあでも…うん。
「アリス、私、魔法使いになった」
「……よかった…ね?」
あ、その反応はもしかして『
◇
あの後は大事を取って王宮(のアリスの部屋)で一晩過ごした。
割と話が盛り上がった。
そう、女子が二人集まれば自然と話題も湧いて出てくるわけですよ。
…そう、恋バナ!
『恋情に翻弄された過誤を起こすバカな貴族の
情緒もへったくれもありゃあしない。
…まあ一人は自由に恋愛も結婚も出来ない第二王女でもう一人は異世界転移してきたばっかの人だからしょうがないか。
あ、ちなみに『恋バナ』自体はかなり盛り上がった。
何で上級貴族の令嬢が侍女として沢山いる王城の王族居住区域に入り込む一般貴族男性がいるのか…とかね。
アリスが昔、現行犯の人に直接聞いてみたところ、背徳感とかスリルが原因だって言ってたらしい。
…その後は私達が女だからか共感出来ないよね、っていう話になった筈。
それでそこから…ああ、確か立場を変えて見ればわかるかも、みたいな話になって…
うん、知ってたけど不毛だね。
さて、こんな感じで昔を振り返ってるのも目の前の現実から逃避したいからなわけだけども。
まあつまりだ。
…いよいよ公開処刑の時間が来た。
着替えやら準備やらも終わり、処刑舞台なう。
…うわ、滅茶苦茶人いるし。まあまあ沢山ある席が全部埋まってるよ。
元の世界でプロのスポーツ選手とかってこんな緊張の中で試合してたの?
素直に尊敬だわ。今まで心の中で脳筋じゃんとかバカにしててごめん。
ほら、言い訳させてもらうと…ってアリスが何か喋ってる?
「集まってくれた諸君…この度は…と、面倒臭い挨拶はなしにしよう」
「それでは選手に…いや、今回の主役達に入場して貰おう」
アリスがノリノリで何か言ってる。
昨日、夜聞いたから知ってるよ、私。
ああいう痛い事言うと数時間後に羞恥で悶えてるんでしょ。
その光景が容易に想像出来る。
…私の予想では今日の夜かそこら辺に顔を赤くしてベッドにうずまると見た。
…でもアリスばっかりに恥をかかせるわけにもいかないよね。
一人は皆のために、皆は一人のために。
アリスが皆のために盛り上げてくれたんだから、『皆』の一員である私もアリスのために恥をかこう。
死なば諸共ってことだね。それが『友達』…いや、『親友』ってものでしょ?
「それでは…諸君は今から奇跡を見ることになるだろう!…さあ、1対640の絶望的な試合を始めよう!」
さて、アリスが後で恥ずか死ぬことが確定したと同時に私は覚えたての魔法を世間にその詠唱と共に披露しよう。
折角だしアリスに合わせて調子に乗ってる感じで。武器に貯まったmp100000全てを使い、半径100mを変えてみせる!
「私の実力に疑いを持つ者よ」
少なめに見積もっても大量にいるであろう人達への牽制。
そりゃあね、わかるよ?
ぽっと出の私が宮廷魔術師なんて映えある職業についたら批判も飛んでくるでしょう。
それに私自身も昨日までは魔術師…?って思ってたし。
でも今の私は違う。
「今から見せるは理を超えた奇跡の一端であり」
魔術だの魔法だのそんな非科学的な物はいらない。
私のそんな願望を叶えるための魔法。
非科学的な物を排除するために非科学的な物を使ってるけど…まあそれはしょうがない。
「普通は見るも叶わない世界である…」
そう前置きして私は詠唱を始める。
ここまでは前座…というより挑発。
対戦相手の騎士達は生憎魔銅によって頭があまり動かなくなっている。
普段の騎士達なら私の勝機は全くない。
でも今ならば。
「此処は私の望む世界ではない…」
煽る様に右手を空に掲げ、握りしめる。
「ならば此処を我が世界へと変化させる…」
瞑目し、掲げた空を胸の前に持っていきながらゆっくりと開く。
一見無駄な動作に見えるだろうし、実際無駄な動作だ。
でもその無駄さから、観客はこれを詠唱だとは思わず、演出だと思っている。
…この魔法を発動させる時のデメリットは大きく分けて2つ。
1つは大量のmp&hp消費。
でもこれは『そういうもの』だから仕方ない部分はあるし、避けられないものでもある。
だから許容出来るデメリット。
そして問題は2つ目。
圧倒的なまでの詠唱の長さだ。
魔法名を含めてその長さは9行。
『
それに比べて『
とてもじゃないけど戦闘中には使えない。
だからこうして演出風に仕立てあげる。
「科学よ!論理よ!私のために…」
私の世界の理でこの世界の理を塗り替える様に意識する。
…実際はこんなことする必要はないんだけどね。
それでもこうした方が集中出来るし、この後に出来る『それ』の出来映えが変わる。
だから私は目を瞑ったまま詠唱を続ける。
「
両手を広げ、目を開けてアリスに合図をする。
その合図をキチンと受けとったアリスは私以外の選手達…つまり兵士640人を舞台に招き入れる。
そんなに出入口は広くないから少し時間がかかる筈。
…私は少しだけ詠唱のペースを落としつつ、入場ペースを見ながら調整する。
「そして今を以て此処こそが…」
自身を漲らせて、威風堂々と宣言してやる。
「欺瞞でも仮初めでもない…正真正銘私の世界!」
相手側の準備もそろそろ整ったかな?
「
よし、なら───
「科学と狂気に紐解かれる
「模擬戦、開始!」
「『