『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
───ふと、目が覚める。
窓から見える太陽の位置と昨日の日付から今の時刻を推定する。
……時間通り。
軽く伸びをしてからいつもの作業に入る。
用意された朝食を取り、積み上がった書類を片付け、昼食を摂取し、貴族達と『交渉』して、夕飯を食べ、軽く仕事をして、睡眠時間になる。
こんな変わらない日を数年以上続けているけれど。
最近、はっきりと自覚していることがある。
私の心は徐々に壊れている。
世間の常識と照らし合わせるならば、私の年齢でこれだけ責任のある仕事を任せられるのは異常であり、そして『名誉』でもあるのだろう。
現に私は1年程前から『天才』だとか『賢者』だとか呼ばれることも増えてきた。
でも、その影に隠れる様にして『弊害』が発生する。
名声や名誉と反比例する様に私個人を見てくれる人は減っていく。
私の仕事の結果や能力に目を向けてくる人はこの数年で大幅に増加した。
でも『私自身』を見てくれる人はいなくなっていく。
私が今でも貴族と『交渉』するのはそんな人を見つけるためでもある。
老練で、狡猾な貴族当主なら私の本心を読んで、判ってくれるのではないかと。
その『弱み』に漬け込まれて交渉が不利に進む、なんてこともあるかもしれない。
でも私はそれを期待していた。
『天才』と褒め称えられた私の『猫被り』を見破る人が出ないかと。
しかしそれは日を追う事に『反証』されていく。
イメシオン公爵が一番『惜しい』ところまで行ったけれど、それでも駄目だった。
もしかしたらこの世界に私を理解してくれる人はいないのだろうか。
自分のステータスに目を向けながらそんなことを考える。
こんなことを考えるのも何回目だろうか。
…態々疑問の体を取らなくても判る。
この事について考えるのは257回目。
そして今までの傾向と心の疲労具合から次、これについて考えるのは明後日。
何も考えずに動ければどんなに楽だろうか。
何も考えずに動くことはどんなに辛いのだろうか。
私はステータスに依然として残り続ける『称号』を見ながら考える。
その答えは256回の
私は自分で自分を嘲笑しながら、257回目の試行に入る。
『天涯孤独の賢者』はこうして日常を繰り返す。
──この国の体制というのは、ある種
言い換えれば、歪だからこそ成立しているということ。
トラウィス王国という王国は、根本的に王国ではない。
王族が存在し、貴族が存在し、身分秩序が形成されているものの存在理由が──それこそ、人類の保護にある。
貴族や王族の保護でも、王国の保護でもなく、
それは帝国や法国という枠組みから逸脱した、人類文明の守護者を担っている。
確かにトラウィス王国は覇権国家であり、歴史を辿れば──ルナエン王国時代も含めれば──数千年では桁が足りないほどに存続している。
王族に伝えられる歴史書を見る限り、この王国は元々人類を滅亡《・・・・・》させることに目的があったはずである。
なのに、その為に与えられた手段というのが全て
『四大呪』、『三禁呪』、『星暦戦争』──この王国が秘している歴史ははっきり言って異常である。
そして、それらの存在を後世の王族に伝えながらも詳細を隠匿しているということ。
『宇宙観測部隊』という神話時代において存在していた──そう、語られているものが実在しているという話もその一例。
あまりにも、この王国は不可解な秘匿が多すぎる。