『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
──朝になった。
いや、正確には10時頃になった。
そもそも朝ってのは文字の成り立ち的に明け方を表すって説があった気がするから、正確には昼なのかもしれない……なんて現実逃避はさておき。
「また、朝ごはん抜きかぁ……今日は何しようかな?」
私から早寝早起きという健康的習慣が欠落していたせいで、毎回毎回朝ごはんが叶わぬ夢のポジションから見下ろしてくる。
ささっと支度をして本日の行動予定を脳内で組み立てる準備をする。
聞くだけで心が小躍りを始めそうな文言だけれど……この世界って普通の魔術ってあるよね?
生憎と言うべきか、私は『
もっと一般的な……それこそ「ファイヤーボール」とか「ヒール」とか、そういうのはないんだろうか。
全員が全員『
まあさすがにあるだろうし、それをどっかに聞きに行くか。
──以上が、脳内会議で確定した今日の予定。
そして、残念ながら宿の中でぬくぬくをキメている私には『
というわけで、気づいたら何故かギルドにいた。まあここにしか来る場所ないからね。
仕方ない仕方ない、と誰に向けたわけでも言い訳をしながら扉をあける。
……ギルマスは探すまでもなく普通に突っ立ってた。
もしかしなくても相当な暇人なのかもしれない。
「なんで受付してるの?新人冒険者逃げない?」
「どうせここにはあんま人来ねぇし、来たとしても俺のことを知ってる奴らだけだろ。それにヒルデのやつも休暇が欲しいだろうからな。」
ヒルデって
…ってことはこのギルド今この人しかいない?
「今日はどうした?あの機械か?それとも依頼か?」
「いや、魔法を教えてもらおうと」
「それは…さすがに無理だな」
ケチくさ。魔法の1個や2個位教えても減るもんじゃないのに。
…ベ○マ!マヒャ○!…なんてね?
「なんで?ギルマスは怪我を治せるんでしょ?じゃあ魔ほ…」
「なんだ、魔術のことか。言っておくがな『魔法』と『魔術』は別物だぞ」
ああ、『魔術』は『魔法』の劣化版っていうパターンか。
まあよくあるやつだなぁ。
そういえば属性の適性とかあるんだろうか?
あったら全属性使える珍しい人とかになれるのかな?その方面でのチー…
「その前におまえどうせ自分の属性適性知らないだろ」
おっ来た!これは…ワンチャンあるのでは?全属性魔術無双の開始!
結果は…全属性だった!全属性とは火属性、水属性、風属性、土属性の四つらしい。
一応補足。ここでいう全属性の他にも氷と雷属性があるらしい。
でも4属性が使える時点でそれらも使える事が確約されてるからその4つで全(素質がある)属性…っていう意味らしい。
「お、全属性か、よかったな」
ん?扱い軽くない?もっと持て囃されるものじゃないの?
すごい!!全属性なんて1024年ぶりの快挙だよ!ゆくゆくは天才魔法使いだね!!
…みたいに。
まあされない、っていうことなら……
「全属性って珍しくないの?」
「珍しいかと言えばたしかに100人に1人位しかいないから珍しいんだが、結局使うのは一か二属性なんだなぁ…まあ全部を熟練しようとすると大体器用貧乏になるからな。ハナも気を付けろよ。」
そういうことか…っていうか100人に1人か…意外と多いな。
それに器用貧乏ねぇ…ん?待てよ。
なんで器用貧乏になるんだ?全部使えば……あ。
恐らく四属性も魔術を使えるmpがないんじゃない?
だから1か2属性に統一して個々を強くした方が結果的に強くなる…と。
じゃあ不思議之住人か何かでmpが増えやすいだろう私は全部使えるのでは?おっ、まだ魔術無双の未来は潰えていなかった。
じゃあ次のステップは……
「どうやって魔術使えばいいの?」
「使ったことないのか?まず体外の……」
ギルマスの丁寧な説明を要約すると、自分の体の中にある魔法だか魔術を願う部分?っていうよくわからないものを「詠唱」っていうこれまたよくわからない理由で作動させて「魔術」を使う。
つまり『詠唱して魔術を発動する』らしい。
本音を今言わせてもらえば、元の世界でもそんな仕組みあったらよかったなぁ…
「で、『詠唱』では何て言えばいいの?」
「そこの本に全属性の下級魔術の詠唱は書いてある。適当に持ってっていいぞ。…勿論ちゃんと返すならな」
そりゃあ返すよ。当たり前じゃん。
ギルドを出てどっかで詠唱の練習しようかなって思ったけどギルドの訓練所で使えばよくね。
───と、いうわけなので訓練所に移動した。
え~と、この本によると…
「燃え盛る根源よ!我が意のままに従いて、敵を穿て!ファイヤーボール!」
《
…炎が出たけど小さいし少し進んだら消えてしまった。
これで敵を穿つとか不可能では?まあ、他も習得しとくか。
「押し流す根源よ!我が意のままに従いて、我が身を癒せ!ヒール!」
「吹き荒れる根源よ!我が意のままに従いて、我が身を包含せよ!ウィンド!」
「聳え立つ根源よ!我が意のままに従いて、我が身を護れ!ウォール!」
《技能《スキル》:【水属性魔術】【風属性魔術】【土属性魔術】を獲得》
《条件の達成を確認したため『
~~~
『限定空間制御《マルチ・ディ・オービス》』
空気中に漂うマナと地面に浸透しているマナと体内に存在するマナを用いて最大半径25m程の様子を把握する。
mpを秒間10消費
~~~
……何か出てきたけどパスで。
とりあえずこれで全属性の下級魔術を習得できたらしいから、ステータスを見るか……っていうか毎回全部読みなおすの面倒なんだよなぁ……mpと《スキル》だけ表示!とかできないの?
あ、出来そう。
~~~~
mp…651/654
「
…【火属性魔術】lv1
…【水属性魔術】lv1
…【風属性魔術】lv1
…【土属性魔術】lv1
「
…【重複魔術《マルチスペル》】lv1
「
…【
…【◼️◼️◼️◼️】lv1
~~~~
ん?mpが3しか消費してないし、最大値も654になってる?
後者は
まあいいや、今日は帰ろっかな……
宿に帰ってきてから気付いたけど【
ファイヤーボールやウォールは宿内だから使えないとしてヒール使うか…ってそういえばそれぞれの魔術ってあれで効果固定?
~~~~
「ファイヤーボール」
目の前に火球を生み出し敵に向かって秒速5m程度で進む
消費mp=(飛距離m^2)×(直撃ダメージ)×(直径÷10m) (全て1以上)
「ヒール」
味方、もしくは自身を回復させる
消費mp=(3×回復値) (1以上)
「ウィンド」
味方、もしくは自身の移動速度を上昇させる
消費mp=(持続時間s)× (agl上昇倍率^3) (全て1以上)
「ウォール」
目の前に土の壁を作る
消費mp=(持続時間s)×(耐えられるダメージ) (全て1以上)
~~~~
うん、ヒールとウィンドはここで全部1で使えば大丈夫そうだね。
っていうか「ウィンド」……『
まあいいか。じゃあ今日は休養日ってことで、もうここから出ない事に……いや、その前に日持ちするご飯を買いにいこう。
どうせ明日以降も朝ご飯食べれないんだろうし。
そういえば落ち着いてこの商店街もどきを通るのは初めてな気がする。
最初は宿探してたし、その次は教会への行き帰りだったし…なんか面白い店かつ今の所持金(銀貨5枚)で買える物ないかなぁ……宿代とご飯代で大分残金も少なくなったなぁ…
……そうだ!
ギルドの依頼掲示板に『新職業の報告』ってあったじゃん!
あれで予測者とか既死者とかをギルマスに報告すればよくね?
まず予測者のことを話してそれでダメだったら既死者を言えばよくね?
それでもダメだったら……その時に考えるか。
よし、善は急げって言うしギルドに行こう!
「ギルマスいる?」
「お、ハナか。どうした?俺に直接用事なんて」
「いや、ちょっとこっちきて」
「お、どうした?」
「ちょっとあの『新職業の報告』っていう依頼受けたいんだけど…」
「ホントにいいのか?職業は重要な情報なんだぞ?それにその職業が新しいものかわからないんだぞ?」
「大丈夫大丈夫。ダメだったらその時はその時であるから」
そんなものない。口から出任せである。
「で『予測者』って新しい職業?」
「……本当に言っても良かったのか?それ新職業だぞ」
「ほんとに?報酬はどれくらい貰えるの?」
「その前に何かこの職業を獲得する心当たりはあるか?」
「……完全にない、わけでもない。ゴブリンの動きを見切ろうとしたからかも」
「さすがにないだろ。だったら一定以上の実力があるやつなら誰でも『予測者』を得られるだろうからな。何か別の要因があるんだろ。なんか他にあるか?」
「何もない」
「まあいいか、取り敢えず報酬を出さないとな。ほい、これが報酬の金貨20枚だ」
「新しい職業が見つかったにしては安くない?もっと沢山くれてもいいのよ?金貨200枚どーん…みたいに」
「そうか?新職業が見つかったって言っても条件が判らないからな…条件も判ってたら報酬は多分10倍から物によっては100倍位にはなるぞ。そういえハナは『予測者』になったのか?」
少なくとも本当の職業は言わないとして、どうしようか。
『予測者』って事にするかそれか何か別の職業になったって事にして誤魔化すか……
まあでも別の職業に成ったって言ったら、どうせその職業について聞かれそうだし。
『予測者』ってことにしておこう。幸いにも私には『
「勿論『予測者』に成ったわ。っていうか面白そうな職業があったら普通それにするでしょ」
「いや、これまでの行動から「なんとなく『軽戦士』選んだ」みたいな事をいいかねないからな」
「私ってそんなに信用ない?」
「どこに自分の職業適性も魔術の属性適性も知らない人を信用するギルドマスターがいるんだよ……まあ半分冗談だ。ハナの事は高く見てるぞ。いずれかなりの高ランクに成るんじゃないか?」
「お世辞ありがと。それじゃあ明日以降のご飯買わなきゃいけないから」
そういってギルドから商店街に戻ってきて、ついでに昼ごはんもたべた。
明日以降の朝ごはんどこで買おうかな?
……まあ定番のパンでいいか…いや、パンだと消費期限まで大体2日程度しか持たないだろうなぁ…
もっと長持ちするやつじゃないと…じゃあ果物類と野菜、後あれば豆を買おうっと…
「すみません。この辺りにある果物屋を知りませんか?私は余りここに来る機会がないもので」
突然私と同年代位の令嬢に話しかけられた…身分の高そうな服着てるなぁ。いいなぁ可愛いなぁ……って私に聞かれてるのか!
「私もここには初め来ましたけれど、果物屋の場所は判りますので案内しましょうか?」
やばっ、噛んだ。
まあこういうのは勢いで誤魔化せばいいんだよ!
「是非ともお願いします。所でこの辺りに初めて来たということは貴女も貴族令嬢ですか?すみませんが貴女をサロンなどで見たことがないもので…」
「私はただ王都に来たのが最近なだけで貴族などではない一般市民ですよ」
「そうなんですか…あっ!そういえばまだ名乗っていませんでした。私はティーミール伯爵家のセリアと申します」
ホントに貴族令嬢だったよ。
私みたいな一般市民が話していいのかな無礼だとか言われて、気付いたら首飛んでないかな?
それに貴族ってあんまいい印象がないしなぁ…よくある小説みたいにこの子の親が横暴だったりするのかな。
それか実はこの子も傍若無人だったりして……まあその時はその時に考えよう。
とりあえず全力で敬語使うか。
いざとなったら技能『靴なめ』と『賄賂』を使おう。
「すいません、申し遅れました。私は名乗る程の者でもないのですが…ハナと申します。それでは私に付いてきて下さいますか?」
「そんなに堅苦しくなくていいですよ。それでは案内をお願いしてもいいですか?」
まあ何となくそんな感じではなさそうだけどね。