『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
それだけ言い残してセリアの家を出た。
私があんな恥ずかしい問い掛けを残したのには理由がある。
勿論アリスには要求されたりはしてないけど…まあ私のためでもある。
一つ目は今も言った通り私のため。
二つ目はセリアのため。
そして最後にセリアのお父さんのため。
まあ私のためっていうのは良いとして。
実はセリアのためっていうのとセリアのお父さんのためっていうのはほぼ同じ。
私が『課題』を出すことで適当な口約束で済ませたわけじゃないことをアピールするっていう名目。
ちなみにセリアがどう答えても『合格』にはするつもり。
それに一つに正解が定まる様な問題でもないしね。
あ、でも自分が用意した答え…というか意見はある。
…そう、あの有名な名言そのまま。
『我思う、故に我あり』
自分を疑う自分の存在がある以上その存在は確かであるという哲学者デカルトの言葉だ。
でも別にセリアにデカルトとかそんな事を覚えて欲しい訳じゃなくて…私が言いたい事、伝えたい事は自分の存在を見失わないで欲しいということ。
私の側にずっといるという事は…『異世界』もとい元の世界についてもいつか触れるということ。
その際に科学文明に触れたり文化の違いを感じたりしても…確実にこの世界は世界として…そしてセリアはセリアとして存在してるし計り知れない価値があるということを知って欲しい。
ちなみに、この質問は私の父方のお爺ちゃんが私に昔投げ掛けた物をそのまま
当時の私は必死に考えた結果は…まあ誰も興味ないと思うけどこんな感じ。
『他者が自分を見ているから…お互いがお互いの存在を証明し合う』
そういう結論に至り、そして私は最後までその考えをお爺ちゃんに言わなかった。
いや、理由があるのよ。
1つ目は…この理論は『誰か一人が存在してた時に連鎖的に全員の存在が確約される』という論理で構成されてるが故に『実は誰も存在しない』という可能性を否定しきれなかったこと。
2つ目は…単純に私がこの考えに反吐が出たから。
他者に頼らなきゃ生きていけないし存在価値も認められない…そんな人間は弱い存在ではないと思いたかったからだ。
まあ当時はまだ幼かったからね。
中学も(実質)卒業した今なら他人に頼らなきゃ人生やってられない、という事は理解してるが…それでも自己の存在すらも他人の評価が必要だとは思いたくない。
この事について真面目に考えた事が一回だけある。
その時は日本や世界のシステムが悪いという結論になった。会社の昇進も
そんな世界だからこそ他人に頼らざるを得ないのでは?という結論になった。
では例え自分が世界を変える物を発明しても他者から見て貰えずに埋もれてったらその発明品はただの残骸か?いや、違うだろう。
自分で使えばその優秀さに感動し震えるだろう。
誰かに見せびらかして優越感に浸ったり慌てふためく不様を見て面白がるのも楽しいかもしれないが…私はそれがないと生けていけないとは思わない。
さて、誰も興味ない私の価値観を適当に垂れ流しといてあれだけど、これはあくまで私一個人の意見。
セリアの意見やアリスの意見が私と違ったって変じゃないし私の意見に合わせるべきとも思わない。
人には人の、自分には自分の信念や考え、意見が在るべきだと思う。
さっきセリアには自己の存在について知って欲しい、と思って質問したと思ってたけど本当はそういう事を考えるいい契機になればと思ったんだと思う。
私もこの質問をお爺ちゃんからされてから自分の芯の部分というか根底というかそんな感じの物が定まった様な気がするし。
…自分の行動を自分なりに分析するのも難しい物だなぁ。
そんな感じことに思いを馳せながら王城の自分の部屋に着いた。
幸いにもローズさんは居なかったので思う存分だらけられる。
…微妙な時間。最近こんな感じの事多いなぁ。
…流れに乗ってもう少し哲学するか。
まあ軽い感じでね。
人間の本性とは何だろうか。
これは昔から言い争われてる命題で…その結論は大きく分けて性善説と性悪説の2つがある。
つまり人間は本来全員良い人だ!という考えと根本では悪い人だ!という考えの2つあるわけで…
そしてそもそもその『悪い』とか『良い』っていう事の基準が何処にあるのかっていう話。
スポーツが出来たら『良い』?勉強が出来たら『良い』?
逆に家にずっと居るのは『悪い』?喧嘩が弱い事は『悪い』?
性格を基準にするなら何も考えず信用してくれる人は本当に『良い』人?それは盲信ではないの?
逆に全てに疑ってかかる人は本当に『悪い』人?それはもしかしたらあなたのためを思ってるかもしれないのに?
そう、こんな感じでその『良い』『悪い』の基準すら簡単にはわからない。
さて、ここで先人の意見を提示してみよう。
例えば昔の中国の荀子という人は性悪説をこんな物だって言ってる。
人間は皆弱いし楽な方に流されがちである(=悪い)
しかしその悪が善になる方法もあり、それは本人の努力である…ってね。
私としては努力出来たら苦労してないとか言いたい事は沢山あるけど…それは置いておくとして。
他にもキリスト教は人間は産まれながらにして罪を背負ってる、と言っててこれは性悪説側の考え。
色々考えれば考える程ごちゃごちゃする。
じゃあここでは戦争や犯罪を『悪』とする。
ここではそれが定義だから詳しくは突っ込まない。
私は勿論やった方が良い…とは言わないけれど、やってもしょうがないとされる戦争や犯罪があることは判ってる。
まあ色々な事情やら環境やらがあるだろうしね。
じゃあここで疑問…というか問題。
ちなみに私は今3つ理由を思い付いた。
1つ目は面倒くさいから。私もしょっちゅう面倒とか何となくやだ、みたいな事を言ってる気がするしね。
例えば戦争は一から自国を開発するのが面倒だから。犯罪は物によるだろうけど…例えば万引きはお金を払うのが面倒だからだし殺人は他に恨みを晴らす方法を探すのが面倒だからだ。
2つ目は人の一生は有限だから。
さっきの例を挙げると戦争は一から自国を発展させるのには時間が掛かるから。万引きはお金を稼ぐ時間を他に使いたいから。殺人はそれが一番時間が掛からないから。
3つ目は自分の利益が至上の物と考えるから。
これもさっきの例を参照すると、戦争は自国…牽いては自分の利益になるから。万引きはお金という対価を支払わずに利益を貰えるから。殺人は自分の利益を損失させるだろう(もしくは損失させた)相手を処分して利益を得る。
…取り敢えず3つ思い付いたけど…どれが正しい、間違いだとは一概には言えない。さっきも言った通り人によって意見は違うだろうし。
でも私は3つ目だと思う。何故なら……
「カタセ男爵様。お帰りになってましたか」
「ロ、ローズさん。驚かせないでください」
「すみません、以後気を付けます。それで何か熱心に考えていらっしゃった様ですがどうかされましたか?」
「いや、ちょっとどうやったら戦争や犯罪を無くせる物かと」
最初考えてた事と微妙に変わってる気がするけどまあいいや。
大体そんなとこでしょ。
「宮廷魔術師になったばかりだと言うのにもうそんな悩みを……」
そういうとローズさんは私に若干哀れみの目を向けながら言う。
「カタセ男爵様は宮廷魔術師ではありますがそれ以前に一人の子供です。その様な事は我々大人が考えますのでお気にならずにいて下さい」
子供じゃないもん。大人…でもないけど。
まさにその狭間に存在する、まさに私は『
あ、冗談です。
ところでそんなこと言えるって、ローズさん何歳?
セリアの姉ってことと今の感じから20~25位かな?
「とは言っても男爵の上宮廷魔術師という職務に就いている以上仕方の無い事…職業病みたいな物なの。気にしないで」
本当は職業病なんかじゃないし、ただ頭が少しおかしくなってた…訳でもないけど深夜(言うほど深夜じゃない)テンションって奴だよ。
「私はもう寝るからローズさんも早く寝なさい」
多少高圧的になっちゃうけど夜ご飯をティーミール家で食べて来た罪悪感があるから、ローズさんの仕事を早めに終わらせる。
「ああ、それと…たまには家に帰ったらどう?」
それだけ言って私は寝室に向かった。
ありがとうごさいますって聞こえた気がするけど気のせい気のせい。
そもそも私が悪いんだしね。
『悪い』かぁ…ふふっ、タイミングが完璧。
それじゃあお疲れ様でした。それではお休みなさい。