『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
さてさて、セリアの家で勉強が一通り終わる。
といっても本当に終わった訳じゃなくて、まあ一段落ってところ。
伸びをしながら声を出してるとセリアに注意される。
「ハナさん、少しはしたないですよ」
むう…まあ貴族的には、はしたないのか。
普段だったら無視してたけどこれからは私も貴族だからなぁ…
「そうだったね、ごめん」
「私も言い過ぎたかもしれません」
そんなことない…って、やばい。会話内容がない。
どうしよう…ん?
「そういえばハナさんって第二王女様と良く会ってますよね」
「そうね、最近…といってもここ1週間ちょっとはアリスと半同棲状態だったね」
うん、特にセルグヌの所に行くときとかは半どころか全同棲だった。
それ以降もかなりのペースで会ってたし。
「第二王女様って国一番の賢者って呼ばれてるじゃないですか」
そうなのか、やっぱり私の異世界転移をほぼ0の情報から見抜くだけあるのか。
うんうん、と知ったかぶりをしながら頷く。
「もしかして何か教えて貰ってたりするんですか?」
ぬ、普段なら『するのですか?』とか言いそうなのに『するんですか?』って言ってる所からセリアのテンションが少し上がってるのがわかる。
あれかな、プロスポーツ選手と1週間同棲してたから何かコツみたいの掴めた?みたいなそれ。
実際、アリスといて何か増えたかな…
…まあ貴族との接し方と交渉方法とかかな?
でもそれはセリア、知ってる筈だからつまらないだろうし…
「ごめ……じゃなかった」
断ろうとしたけどセリアのつぶらな瞳に負けてしまった。
セリアってそんなに知識欲みたいのがあったのか。
まあかなりの優等生だから当然…なのかな?
いやでも優等生だからって…まあいいや。
ともかくセリアが私に期待してくれてるんだ、何か良い感じに話をしないと…!
「うん、化学を教えて貰った」
歴史雑学はそもそも世界が違うから意味ないし、同じ理由で英語は無意味。
それに数学は小話でするものじゃないから…まあ理科になる。
生物やら地学やらは残念ながらあまり覚えてないから物理か化学かな。
物理は…小話みたいのがないから化学かな。
「『カガク』…ですか?」
「そう、化学」
「それ、私にも教えてくれませんか?」
マジですか。完全に小話だけで終わらせるつもりだったんだけど…
セリアが望むなら、片瀬花奈・教師モードに変身しよう!
そんな風にして、私とセリアの化学講義が始まった。
◇◇◇
「はい、というわけで化学の講義を始めたいと思いまーす…って何でノート用意してるの?」
「教えて貰ったことを記録しておくためですけど…もしかして門外不出の知識でしたか?」
「いや、そんなことないけど…」
たかが一介の中高生に何を求めてるんだか。
…まあ祖母の仕事関係上、他の同年代よりは化学得意だけど…
それでも高校範囲…は網羅できてない筈。
精々高校1年か高めに見積って高校2年ってところ。
これで大学受験までノーストップ!…とかだったら良かったんだけどね。
そうね…あ、そもそも原子やら分子やらの話すら知らないのか。
じゃあそこからだね。
「まず、あらゆるものはどんどん小さく分けていける…ってわかる?」
「…なんとなくはわかります」
「でも無限に切り分けてったらいつか切れなくなる時が来るの。それが『原子』、もしくは『分子』って奴」
「その『原子』と『分子』って何が違うのですか?」
「『原子』っていうのは多めに見て150種類しかないわけ」
「え、でも物は150どころか万も億もありますよ?」
「そうだよね、だからその『原子』同士がくっついて『分子』になるの」
「なるほど…でもそれだと精々10000少ししかできませんよ?」
精々10000少し…ああ、(150C2)=150×149÷2=11175ってことか。
つまり、セリアは2つでしか結びつかないと思ってるわけか。
「残念ながら分子は原子2つから出来る訳じゃないの…例えばそこにある水は
実際には硫酸みたいに
変な例を挙げるなら、
「成る程…『原子』と『分子』の違いは大雑把ではありますが、わかりました」
それなら僥倖。
「…そういえばその『原子』ってどれくらいの大きさなのですか?」
「10のマイナス10乗mm位…って言ってもわからないよね」
10^-10[mm]って書いたら余計わからなくなりそう。
「そうね…髪の毛あるじゃん?」
そういって私は一本だけ髪の毛を抜く。
髪は女の命…!とか言われるけど私的には1本や2本で騒ぐものじゃないから『友達』のためなら余裕で投げ捨てられる。
…で、それはおいといて。
「この髪の毛の断面を100万等分した時くらいの大きさだね」
…わかりずらい、というかそもそも原子の大きさなんて比較対象があるはずない。
0.1
まあ実際、原子は原子核と電子ってのに分けられて…みたいな話は後で。
「さて、じゃあ100少しある『原子』を少しずつ見ていこうか」
「…今から全てやるのですか?」
「残念ながら、というべきか私も精々20かそこら辺しか知らないから…まあ取り敢えず今日はその一部だね」
正確…というか括り的には水素、貴ガス、ハロゲンの3つ。
全部話す気力が私に残ってるかは別だけど。
それに覚えてるかどうかも謎だけど。
「じゃあまず水素から。水素は『原子』の中で一番軽いやつだね」
6.02×10^23個集まっても1gにしかならない。
6.02×10^23個といえば、宇宙にある星の数よりも多い。
むしろそのレベルで集まらないと『重さ』が体感出来るレベルにならない。
「基本的には2つ集まって
「何で2つじゃないといけないの?思うかも知れないけどそれは深謀遠慮が関係してて…まあ要はまた今度だね」
実際はオクテット則なるものが関係してる。
原子はそもそも『原子核』と『電子』でできてて…って話。
長いからカットだカット!
「他の特徴といえば、水に溶けにくいとか軽いから空気中でも上に浮かんでくっていう特徴があるね」
水に溶ける溶けないっていうのは極性があるとかないとかが関係あるんだけど、そこらへんの諸々は後…というより又の機会で。
だから今は『そういうもの』として覚えればいいと思う。
…個人的には、化学のそういうところは嫌い。
背景にある理論が高度過ぎて、私みたいな中高生には手も出せない領域だから、その結果『そんなものだから覚えて』みたいなのが多い。
…どうにかなんないのかな。
こういうのだと忘れたりうろ覚えだと詰むからね…
まあ愚痴愚痴言っててもしょうがないか。
何の話をしてたんだっけ…ああ、
…そういえば水素水ってなんだろ?
水素が水に解けるのは超高温とか超高圧の時だけ…悪寒がしてきた。
この話はやめとこう。
そうね…あ、次はあれとかでいいんじゃない?
「水素は空気より軽いから……」
◇◇◇
「だからフッ素はガラスで保管しないの」
…っと、そろそろ良い時間か。
夜ご飯に巻き込まれる前に逃げなきゃ。
「ここまで色々解説したけどわかった?」
「流石に全部はわかりませんでしたが…少しはわかった、と思います。それにしても凄いですね!」
すごい…?何のことだろうか。
「第二王女様から教えて貰ったことをもうそんなに理解しているなんて凄いです!」
…そういえばそんな設定だったなぁ。
アリスに死ぬほど負債が増えていく…まあいいや。
「そんなこと…それよりも!ならセリアも理解出来たんだから凄い
「私が…ですか?」
「そうだよ!セリアは凄いよ!」
だって初学習で化学があそこまで出来るって…うん、凄いでしょ。
普通に私より理解力がつよつよだよ。
「私が…すごい…『すごい』ってあの『すごい』ですよね?」
その凄い以外にどんな『凄い』があるんだか。
そもそも成績やら何やらから見ても優等生だしこんなの抜きでもセリアは凄いと思うんだけど…
「セリアは本当にすごいと思うよ」
「ありがとう…ございます……」
セリアの琴線に触れたらしく、セリアらしく断ってから顔を背けられる。
…この世界最初の「私の『友達』にして最初の仲間。
『親友』の座はアリスが座っちゃったけど…仲間の枠はセリアが独占してる。
アリスだとどうしても『
だから気軽に頼みにくいというか…何か遠慮しちゃう。
一方セリアは朋友というか仲間というか…言語化しにくいけどそんな感じ。
気の置けない友人って言うべきなんだろうか。
最早
「ハナ、さん…全部、声、出てます…」
えー、え?
全部出てた…?
「じゃ、じゃあ私は帰るね」
恥ずかしさといたたまれなさのダブルコンボで一発K.O.された私は急いでセリアの部屋から出る。
何かセリアが言ってた気がするけど…今はそれどころじゃない!
慌ただしく客人が出ていった部屋でその主はぽつりと呟きを漏らす。
「ハナさん…私のこと、仲間って、言ってくれました…」
◇
そして家(王城)に帰宅。
からの流れる様な就寝…にしようかと思ったけど流石に早すぎるか。
それに夜ご飯も食べなかったし──
その時目に入ったのはこないだローズさんに頼んで持ってきて貰ったバイオリンだった。
暇だし練習しよう。
とりあえずこないだ弾いたメヌエットときらきら星…後G線上のアリアを弾ける…というか人に聴かせられるレベルにしよう。
後G線上のアリアは譜面を覚えてないから思い出しながらね。
3曲位持ち曲あれば凌げるよね?
部屋に置いてあった葡萄ジュースを飲みながら、時々ご飯を食べる。
そんな軽い感じで30分位練習していたところ、ノックもせずにドアを開ける音が響く。
「誰ですか?」