『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
アリスが魔術を撃ち込み、塞がれていた壁を壊して中に…入るまでもなかったか。
壁が崩れる轟音と共に私達の前に出て来たのは銅でのみ構成された蜘蛛の様な化物。
よし!行動開始!
そう思った瞬間に今回で二度目となる、けたたましい音が鳴り響く!
一度目は醜悪な融合人形で。
二度目は────
『
『避難命令!危険度───Disaster』
『討伐対象───』
『──変質合金ラプコズミック!!』
警報と共に化物のいた地下からもう一匹、化け物が飛び出てきた。
警告のあった名前の通りなら…!
不味…!
「《タイプシフト:魔銅》」
そう機械音声が聞こえ…
三度目の警報が、辺りに騒音を撒き散らす。
『
『緊急避難!危険度───Keter』
『討伐対象───』
『──古代呪怨コズミックグラウンド!!』
──明らかに相対する相手の危険度が上昇する警報が聞こえたのは紛うことなき不運でしかない。
そういう星の下に生まれたのかなぁ…
そんな呑気な事を考えながらも視線は一切、目の前の煙から逸らさない。
この短い
鉱山内にいた魔銅生物と地下から出てきたエネステラが
たったそれだけだ。
エネステラが魔銅を取り込みさっきまでの蜘蛛の様な形状が崩れ、そして人型へと変わっていく。
しかし、それは人ではない。
四肢や胴体は鈍く光る銅で作られ、作り替えられる崔に飛び散る血の様な物は銅色を示す。
そして3mを越える身長が、
住民は既に避難させた。ここから最悪の場合1km位なら被害を出して良いと了承も取った。
さあ、無駄に長かった魔銅との因縁はこの戦いで正真正銘終わりにする!
「アリス!セリア!あれの詠唱するから時間稼いでて!」
アリスが壁を掘る直前に『
このagl、そして二人がいれば詠唱時間位は余裕で稼げる筈!
「此処は私の望む世界ではない…」
魔銅の化物もといエネステラが私に向かって右手に持っていた銅剣から斬撃を飛ばす。
それを少し体をずらしながら対応し…そしてこちらに向かおうとするエネステラにアリスが氷の槍を放ち、ターゲットを変更させる。
「ならば此処を我が世界へと変化させる…」
アリスがエネステラの相手している間、私はセリアに視線と手で指示を出してアリスが見えやすい位置に移動させる。
「科学よ!論理よ!私のために…」
流石のアリスと言えども魔銅とエネステラの混合した劇物と一人でやりあえる訳がなく限界が来て、押し負ける。
そのタイミングでセリアが風属性魔術で一瞬だけアリスのaglを上げる。
そうすればアリスなら────
「…っ!『
急なaglの上昇に一瞬足りとも足を綻ばせることなく対応し、その稼いだ時間で足場生成の魔術を使ってエネステラと距離を取る。
端から見ると曲芸に見えなくもない動きでそれの猛攻を避わす。
「
一見安定している様に見える戦場だけどアリスやセリアのmpが有限である以上、このmp消費の激しい戦法は限界が来る。
それに見れば判るけど、アリスはさっきの足場生成の魔術とは違い、詠唱せずに放ってる魔術も沢山ある。
こんな事を考えてる今も、見るからに消費の重そうな白銀の槍を盾にしてセリアと共に自分を逃がしてる。
あの警報で緊急避難と表示され更に
二人のmpが切れるまでに私の詠唱は恐らく終わらない。そこからが勝負の分かれ目だろう。
前回はそこまで長いと感じなかったこの詠唱時間が途方もなく長く感じる。
「そして今を以て此処こそが…」
mpの都合で後退することをアリスが目で教えてくれる。
それを追撃しようとエネステラが二人の方に向かうけど…
そのタイミングで敢えてエネステラに近付き、わざとらしく詠唱を大声で叫びヘイトを奪取する。
「欺瞞でも仮初めでもない!正真正銘私の世界!」
そして想定通りエネステラは私に剣を向ける。
ここから私がすることは単純明快。
後10秒程度この化物の視線を私に釘付けにしつつ逃げるだけ。
そのために遠すぎず近すぎずの距離を保つ。
…勿論それは相手の双銅剣の間合いに入り続けることも同時に意味する。
それに神域『
そう、呪域や神域の唯一とも言える欠点は技名詠唱が必要なこと。
『
「
何処からともなく出現した、相手の左手に収まる銅製のよくしなる鞭を避け、その回避隙を狙ったであろう右剣は『
私の剣の実力は言うまでもなくゴミみたいな物だから、この剣裁はaglの暴力で初めて成立してる。
まあ相手も剣術っていうよりはstrって感じだからイーブンってことで良いでしょ…っと!
後1節で時間を稼ぐ必要はなくなる。
そもそも私がこんな接近戦をしてるのはアリスとセリアの戦線離脱及びmp回復のためだ。
後ろを見る余裕はないけど、今頃あのそんなに美味しくないポーションを飲んでるだろうね。
「科学と狂気に紐解かれる私の世界《いせかい》を存分に楽しめ!」
さあ、ここまで詠唱出来たら全力で後ろに逃げ相手を待ち構える。
後やることはたった一つ!
詠唱の最終部分にして魔法名を宣言し相手を倒す!
「『
その魔法の宣言と共に世界は塗り替えられる。
まるで子供が無地のパレットに絵の具を垂らす様に。
荒野に囲まれ、山が聳える地形はそのままに──
高層ビルが乱立する。
今となってはこの世界にその伝承を知る者が1人しかいない
彼女はその2つの神話を混ぜ──
更に現代の筆を取り、塗り絵を続ける。
粉塵と霧に包まれた空想の大都会の遥か、遥か上空に。
この世界には存在し得ない色彩が創造される。
それは遥か遠く、36万キロメートルの果てに辿り着ける
しかし、その幻の月は現実と瓜二つの物ではない。
それが誇る色彩は青よりも蒼く、
全てを呑み込む様に上空に投影されたその影にして
世界を包含せし塗り絵が終わり、世界は魔力に包まれる。
とある彼女は世界を巻き込む塗り絵に対して、純粋なる帰郷の念を感じる。
並々ならぬその熱意を直に感じ、身を焦がす様な想いに包まれる。
とある彼女はそれを為した本人に対して、危うさと揺らぎを感じる。
秘めたる狂気と揺れ歪むその心意気、それがこの世界に反映されている、と感じる。
ならば、それを為した本人は────