『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
この街で一番豪華な宿、『木漏れ日の大地』に無事到着した。
無事…無事…まあ無事だね。
『何事も無い』という意味の無事ではなかったけど。
エネステラと激戦を繰り広げ…これ自分で言うことか?…まあいいや。
エネステラと勇猛果敢に激戦を繰り広げて、満身創痍になってる私たち三人がゆっくりと宿に向かってる最中の話。
─────
「ハナさん、大丈夫ですか?」
セリアが私の事を気遣って心配してくれる…
こんないい人と親しくなれて私は果報者だな──
「爆発に自分から巻き込まれるなんて…心配させないで下さい」
実際にはあれ以外の方法も有ったかもしれないし…
何なら無傷で倒す方法も有ったんだろうけど…まあそれは結果論か。
でも心配させちゃったのは事実だから謝らなきゃ。
「…それはごめん。でもそれしか方法がなか…」
「それは判っていましたが…それでも、です」
セリアが私の事を凄く理解してくれる。
…異世界に来ても理解者がいるってかなり運が良いんじゃない?
恵まれた環境にいるんだな…
いや、待てよ。
そもそも異世界に飛ばされたこと自体は運が悪い気が…
でもそのお蔭でアリスやセリアに出会えたし…
うーん、微妙な所。
「…気付かなかった。失敗…」
『失敗』、『気付かない』…どういうこと?
アリスの言葉を疑問に思って訊こうと思ったのも一瞬。
すぐにその意味がわかった…というよりも判らされた。
「そこの別嬪な嬢ちゃん達、ちょいと俺達と遊んでいかないか」
うん、これは失敗だわ。
というかわからないのかな。
ここにいるのは一応、伯爵令嬢と宮廷魔術師と第二王女様なんだけど…
まあ伯爵令嬢はまあまあいるからわかんなくてもしょうがない、そして宮廷魔術師もこないだなったばかりだからしょうがない…
でも第二王女様は判ると思うんだけどなぁ…
まあ要は…一言に纏められる。
「頭大じょ…「すみませんがお引き取り下さい」」
まあ?
暴言なんて言って挑発させる必要はないからね。
まさかこの場面で『頭大丈夫?』とか言って煽る知能指数の低い宮廷魔術師なんていないよね。
さて、セリアが丁寧にお断りしたんだ。
伯爵令嬢の『拒否』なんだから暫定平民の皆様には立ち退く以外の選択肢はない…
というかそれ以前の問題として、こんな美少女が『拒否』してるんだから身分とか関係なくお引き取って欲しいんだけど。
ちなみにちなむと、私は今mpがほぼないのと『
まあそんなこちら側の事情を汲んでくれる筈もなくその男…訂正。
「ちょっと付き合ってくれるだけでいいから、な?」
よくあるテンプレだけど、今起こらなくてもよくない?
こういうのってもうちょっと平和な時に起きて欲しい…いや、起きなくていいわ。
というかアリスの極寒の視線にそろそろ気付けよ。
…気付けないからこんな事してるんだろうけど。
このままだと唯女子三人に突っかかっただけで不敬罪で処刑ルートだよ?
…最初に『別嬪な嬢ちゃん達』って言われたことに免じて助けてあげよう。
「すまません、私達急いでいるので…まあちょっと話すだけなら良いですよね」
なるべく穏便に、穏便に。
出来る限り刺激しないように…
そう、私は聖母。慈愛の心に満ち溢れた聖なる母なのです…
「おう、話がわかるじゃねぇか。名前は何て言うんだ?」
「ドゥルジと言います」
突発開催!何故なになあにのコーナー!
ドゥルジってなあに?教えてお母さん!
わかったわ、娘よ。
ドゥルジというのはゾロアスター教の悪神で疫病を司る権能よ。
なるほど!!こんな奴らに本名を使う必要もないってことだね!
脳内一人茶番を適当に簡潔させつつ、私はアリスとセリアに視線を向けて先に帰って貰う様頼む。
勿論こんな
色々終わって気分がいいし、多少はね?
「おお、ドゥルジっていうのか。良い名前だな」
ドゥルジ:ゾロアスター教の悪神の名前。
イイナマエ、ソウデスネー。
…というかこいつら女性の扱いに少し慣れてない?
気のせいか?
「貴方達の名前を聞いてもいいですか?」
「俺達はCランクパーティー『遠望の旅人』で…俺がリーダーのガスロだ」
ああ、ナンパ野郎じゃないのか。
…いや、まだ決まった訳じゃない。
何か他の人達も自己紹介してるけど、まだナンパ野郎の可能性はある。
お、一通り自己紹介終わった?
「どうして私達に声をかけたのですか?」
敬語だとセリアと被るなぁ…でもしょうがない。
ほぼ確で冒険者だとしてもまだ無限の距離にナンパ野郎の可能性がある限り私は敬語を使い続ける…!
「いやぁ…こう言うのも悪いが、嬢ちゃん達ボロボロだろ?だから気になってな」
あ、普通にいい人じゃん。
そうね…あ、これで説得、というか納得させられるんじゃない?
「お気持ちは有難いのですが…」
そう言って私は:『変質魔金の懐中時計』と『不死融壊の衣』を見せる。
どっちもエネステラ
「それどっちもD.E.I.か?…すまんな、見くびってたわ」
D.E.I.って意外と有名なのか…エネステラをMVPで倒さなきゃいけないから知らない人も多いと思ってた…
…でも冒険者、それもCランクなら知ってるか。
私がこっちに来てから変なルート取りすぎて普通がわからない…
まあいっか。
そう思った時に、今度は本物が来た。
「ようよう、そこの嬢ちゃん。ちょっと遊んで行かないか?」
まだ無限の彼方に冒険者の可能性が…
「俺達と遊ぶのは楽しいぜ…まあ嬢ちゃんも楽しいかは別だがな!」
あ、駄目みたいですね。
そういうとチンピラは私に向かって剣で斬りかかってくる。
はー、あんだけエネステラの剣筋を見たあとだから止まって見え…はしないけど、避けられるかな。
というか──
「危ないっ!」
ガスロさん…だっけか。
折角守ってくれる人がいるんだ、何も問題ないでしょ。
これでガスロさん達がシロだって大方確定した。
つまり、敵はこいつ…もといその後ろにいるであろう数人かな。
「お前っ!指名手配の──」
「お察しの通りだよ!っと」
へぇ、指名手配犯なんだ。
「ガスロさんガスロさん、訊きたい事があるんですけど良いですか?」
「嬢ちゃん達は疲れてるだろ、ここは俺達に任せて先に逃げてくれ」
いやいや、そうじゃなくてね。
「この人達ってどういう犯罪したの?」
「確か…殺人、強盗、強姦…」
…それは───駄目だわ。
それに私が現に横から出てきた奴らに殴りかけられてる以上、正当防衛が発動するよね?
「ありがとね、ガスロさん。」
さて、それじゃあやりますか。
女の敵…もとい人類の敵には神の裁きを…ってね。
「呪域『
やっぱりガスロさん達に使わなくて良かった。
そしたら
…5秒位で解除したから死んではない。
精々手足の末端が腐り落ちただけだと思う。
まあほっとけば死ぬとは思うけどね。
生憎ここに君らを庇う人はいないからわからないけど……おっ、よかったじゃん。
死からは逃れられそうだね。
私は駆けつけてきた衛兵を見ながらそんなことを考える。
─────
…と、まあそんな感じ。
うん、無事だね。
ちなみにその後ガスロさん達『遠望の旅人』に滅茶滅茶感謝された。
…何で?
まあ人助けしたってことで気分がいいね。
それはそれ、これはこれとして…宿の話だけど…アリスが予め3人分で予約してたらしい。
アリス…なんて優秀な子なの。
へぇー、202号室。
202…202…101×2だ…もしかして私疲れてる?
いや、疲れてはいるだろうけど脳が腐り落ちてない?
202号室202号室…あ、あった。
…?横の201号室とか203号室より広くない?
ちらっとアリスやセリアを見ても特に気にしてる様子はなく、アリスに至っては何で入らないんだろうみたいな顔してる。
この王族貴族達め。金銭感覚だけじゃなくて住む場所の価値観も違ったか。
くっ、これが出自の違いパワーというやつか…!
こんなん