『少女世界攻略記録』   作:100110110011(2)の民

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64◇地を震わせ、地に眠るは金属の祖

 

朝だ!…朝です。朝?

セリアやアリスは既に起きて身支度をしている。

金と銀の髪が部屋の中にあって綺麗。

私は普通に黒髪だしなぁ。

かといって金や銀色に染めても何か下品な感じというか…何か汚い感じになる。

他の色ならもう目も当てられない。

…本当にSANチェック案件になる。

なんならためしてみる?…って私は誰に向けて言ってるんだろう。

髪が綺麗っていいなぁ。

まだ元の世界にいた頃のシャンプーやリンスの効果が少しだけ残ってるからアリス達に髪のサラサラさでは勝ってると思う。

もしこれで負けてたら悲しみの念から恨みがましい目で二人を見ると思う。

あれ?これ町で並んで歩く時…

 (アリス) (わたし) (セリア)

みたいに並んでる訳でしょ?

これ私が美少女二人の引き立て役では?

…そんな下らない事を考えながら半分寝てた頭を動かしつつ身支度をする。

 

それから1時間後。

朝ごはんも食べて身支度も整ったので宿を出発した。

まだあれから1日経ってないので魔術は使えない。

 

じゃあまだ行くなよって話だけど肝心の制限も1時間位で外れる。

それにこの状況の方が気軽に呪域を使えるからある意味では楽。

ほら、魔術やら魔法やらってどうしてもmp消費するから使いにくいじゃん。

残念ながら私は軽度エリクサー症候群(貴重品使えない人)だからね。

 

まあそれに、もし何かあったらアリスが守ってくれるでしょ。

という訳で鉱山に到着です。

 

昨日はアリスが封鎖を崩したところであれが出てきたから…っと意外と寒い?

 

 

鉱山の中は湿っぽくてひんやりとした涼しさがある。

なんだろう…何処かで体感した事が…

…あ、あれだ。鍾乳洞、そんな感じ。

山口県とかにあるよね?何とかかんとかみたいな奴…

 

そんなこんなで中を進んでいく。

 

…そういえば私、最近水飲んでないな。

ほぼ全部ポーションになってる。

あの絶妙に美味しくはない味が癖になって…って訳ではなく、私のmpの消費具合の問題からだ。

安い方…まあそれでも金貨5枚するけど…ともかく、そっちだとmpが1000しか回復しない。

いや、1000って聞くと多く聞こえるじゃん?

 

でも(ウチ)の『純白の十字教会(イノセンス・クレルモン)』は10万の大食いだから必然的に大量にポーションを飲むことになるわけで。

 

「ぷにぷに?ぷにぷにぷに?」

 

何処かから煽りにしか思えない言葉が…

…うん、大丈夫だよね。

私は改めて確認する。…許容範囲許容範囲。

多分ね。

 

…っていうか今の声アリスかぁ…うん?

何をどうしたらそんな言葉が出るの?

 

ちらりと…というか普通にアリスの方を見ると何とも形容しずらい表情をされる。

 

これは……

嘲笑と哀れみとドヤ顔と煽りが混じった…微妙な表情ね、って…これは心読まれてますわ。

悟り妖怪かな?

確かに心配になったからお腹を触っていた私も私だよ?

でもそれだけで……って言っても無駄か。

 

私とアリスが無言でやり取り…というか私が一方的にボコされてるのを見てセリアが困惑の表情を浮かべる。

 

チャンス…!

 

「セリアぁー、アリスが苛めてくるー」

 

片瀬花奈、15歳。

恥も外見もあった物じゃない行動で助けを求める。

 

まあ助けを求めた相手も同年代だしギリギリ問題ないよね。

限りなくセーフに近いアウトって奴よ。

 

はいそこ、それアウトじゃね?とか言わない。

 

そんなこんなで暫く歩き、トロッコやツルハシが散乱しているエリアに来た。

The採掘跡地みたいな所だなぁ…

そういえば元の世界だと廃墟マニアみたいな人っていたけどこっちだと息してるのかな。

廃墟とか謎魔術で綺麗になりそうだし…まあこっちにはこっちの楽しみ方がきっとある筈…!

 

まあ私には無関係だけども。

 

さて…この鉱山だか採掘場だかよくわからん場所に入ってからここまでに割と曲がったりしてるけど…

というより割と進んでるけど…

 

「どうするの?」

 

「…最深部まで行く」

 

まあそうだよね。

空気感からか、それとも単純に話すことがなくなっただけなのか徐々に口数が少なくなりながらも最深部を目指して進んでいく。

 

英雄譚となだとこういうとこで何かしら起こるんだろうなぁ…

でも普通に考えて、ここら辺には銅がなくなったから、先へと掘り進めるわけだ。

だから何かやばいのが出てくるなら最深部だろうな。

 

そんな予想通りに、特に何か異変が起こる訳でもなく30分程歩き、最深部と思われる所に到着した。

 

「行き止まりですね」

 

壁全体が今までの色合いとは違う。

まあこれが何かっていう予想はついてるけど一応ね。

 

「…ちょっと待ってて…」

 

そういうとアリスが態々丁寧に宣言しながら鑑定魔術を使う。

多分こっちの方がmp消費が少ないのかな?

こういうときのmp節約は大事だからね。

 

「…『魔術式保管書庫(マジックライブラリ)』『鑑定の心眼』…これは魔銅の塊…」

 

まあ予想通りの結果だわな。

むしろこれで魔銅じゃなくて…魔銀とか魔金とかだったらどうするって話。

 

…魔銀ってもしかしなくても『ミスリル』って奴では?

あのファンタジーご用達謎金属群が一つの。

ちなみに他はヒヒイロカネとかオリハルコンとかアンダマイト…だっけ?がある模様。

 

もしそうなら魔銀(ミスリル)は大歓迎なんだけど…そもそもこの世界にあるんだろうか。

まあいいや。

そんなこと気にするよりも目の前の魔銅だ。

 

まあこんなもん残しても録なことにはならないだろうし、その証拠にアリスが何かしようとしてる。

 

いや、何かしようもなにも壊そうとしてるだけか。

 

「…『魔術-4-5-4(圧縮壁壊)』」

 

アリスの魔術詠唱終了と同時に、そこに聳えていた魔銅の壁が崩れ…て…?

崩れきらない?というかもぞもぞと動いてない?この魔銅。

何?金属って動く物なの?

…ん?体が揺れてる?痙攣か何か……なわけない!

…壁や天井、つまりここら一体の魔銅全てが揺れてる!

 

セリアに目配せして逃げる準備をする。

さて、それだけだと追い付かれる…もとい補食?されるだろうから…というか取り込まれる、が正しい表現な?

まあポイントはそこじゃない。

 

「アリス!」

 

判ってたとも言いたげな目でこちらを見て、視線で先に逃げる様指示する。

 

普通ならこんなとこでアリスを見捨てられない…!みたいな感じになるのだろうけど、アリスが死ぬところとか想像出来ないから普通に逃げる。

 

ちなみに別の視点から考えると、信頼の裏返しとも言う。

 

「…『魔術-35-5-1(絶対零度)』…『魔術-36-5-1(暴風圏内)』…『魔術-5-4-1(氷壁)』…『魔術-4-4-2(土壁)』」

 

アリスが大量に魔術を撃つ。

詠唱の終わりを皮切りに、付近の気温が氷点下を下回る凍える寒さになって、その上更に急に暴風が吹き荒れる。

そしてその氷と土で壁や床、そして天井を補強する。

 

アリスも判っててやったと思うけど、温度を下げるのは有効打な筈。

万物は温度を下げられることで強制的に運動能力が低下する。

それは物質内部のエネルギー値が減るから──

 

「…急いで逃げる…!」

 

アリスの一声で私達は全力疾走する。

つまるところ、私達は今歩いて来た道を逆走することになった。

aglの関係上本来はアリス、私、セリアの順番になるけどアリスが魔術をちょくちょく使うせいでだいたい3人共同じ位の速度になる。

え、なんで私がセリアと同じ位なのって?

…体力切れ。aglの数値とスタミナは比例しないから…

 

そんなこんなでなんとかツルハシとかが散乱しているエリアまで戻ってきた…けどこんな感じだったっけ?何か模様変えしてない?

 

「アリス!道が変わってる!」

 

「…元の通路のあった場所覚えてる?」

 

アリスなら覚えているだろうと思って聞くけど、その返答から覚えてないだろうことが発覚する。

 

「私はわからない。セリアは?」

 

「こっちだったと思います!記憶力には自信があるので多分合ってると思います!」

 

セリアがいて本当に(アルティメット)助かった。

いなかったら総当たりゲームが始まるところだった。

 

「…わかった。ちょっと下がって…」

 

多分使うのはさっきの魔術と同じ。

だから少しの爆発が起きるわけで…そりゃあ少しは下がる。

 

まあ下がり過ぎると見るのもおぞましい魔の手に飲み込まれる訳だけど。

 

「…『魔術-4-5-4(圧縮壁壊)』」

 

「道が出てきた…これが本来の道……」

 

その先でも何回か道が塞がれるor変わってる事があったけど、セリアが元の道を覚えていたお陰で順調に出口に近付いていく。

この場面で一番お荷物なのは間違いなく私です。

 

「どっち?」

 

「右です!」

 

「…『魔術-4-5-4(圧縮壁壊)』」

 

こんな事を繰り返して十数回。

進むに連れて道が塞がれる頻度がかなり上がってきた。

でもそれは出口(ゴール)が近いことも同時に示してあるから止まりかけていた足を無理矢理動かす。

後ろからは魔銅の津波が押し寄せて来ている。もしここで立ち止まろうものなら私達はここに墓標を建てることになるだろう。

墓標すら建てさせて貰えない可能性が高いけどね。

 

「アリス、残りmpは?」

 

「…後3回分」

 

「ここは左です!」

 

「…『魔術-4-5-4(圧縮壁壊)』」

 

「次は正面の壁をお願いします!」

 

「…『魔術-4-5-4(圧縮壁壊)』」

 

「ここは右でお願いします!」

 

「…『魔術-4-5-4(圧縮壁壊)』」

 

これで3回。もうアリスはさっきの魔術を…

……ぼんやりと暗かった鉱山に一筋の光明が射す。

これは……!

 

「出口が見えました!後少し…」

 

そうセリアが言った瞬間に出口が魔銅で封鎖されるのが見えた。

どうしよう。アリスのmpはもうない。

セリアは魔銅の壁を破壊できる程威力のある魔術を使えない。

そして私はそもそも魔術の使用制限中。

こうして考えている最中にも魔銅は後ろから押し寄せてくる。後10秒って所。

どうしよう、何か出来ることは…それこそ私が今できる事なんて神域か呪域しかない。

そしてそのどちらも銅という科学的な物には…いや、魔銅の『魔』の部分は打ち消せるんじゃないか?

でもそれでも銅の壁は残る…じゃああの津波にぶつけるのは…それは無駄っぽいなぁ…多分銅に変わった部分を無視して後ろから大量の魔銅が来る。これやって本当に意味あるのかな?…でもやらないよりはマシだよね!

やらずに死ぬよりはやって死んでやる!

 

「神域『科学支配世界(オーバーロジック)』!」

 

これで目の前に塞がる壁は恐らく魔銅の壁から銅の壁に変わった。

 

「これでこれはただの銅壁だよ!」

 

残り5秒。

 

「燃え盛る根源よ!…」

 

セリアが詠唱を始めた。これは…火属性魔術?

セリアはまだmpが満タンだから全mpを使えば壊れるかも?

 

「我が意のままに従いて、敵を穿て!」

 

残り2秒。

 

「ファイヤーボール!!」

 

残り1秒。

ギリギリで放たれた火球は銅の壁に直撃した。

…が銅の壁には穴が空いたもののそれは到底人の入れる穴の大きさではない。

それこそ直径30cm位の…

 

残り0─

 

「神呪『絶対混沌世界(カースド・ディヴァイン)』!!」

 

追加で呪域を発動!

制限時間が足りないなら無理矢理伸ばせばいいんだよ!

これで2,3秒は稼げるはず。その間に何か…

 

「…『異次元への穴(エクテル・スォウム)』」

 

アリスがそう言った瞬間その穴が広がった。

 

「…飛び込んで!」

 

「そう言われなくても!」

 

そうしてその穴から鉱山の外に出て─

 

 

一拍子にも満たない合間を挟み────

 

 

地を揺るがす巨大な轟音がした。

 

恐らくあの津波が銅壁にぶつかったんだろう。

魔銅が銅を変質させるのが一瞬じゃなくて良かった。もしそうなら完全に詰んでたからね。

っていうかセリアかアリス、どっちかがいなかったら死んでたじゃん。

二人とも、よく頑張ったね。

 

…本当に私いる?

 

…でも状況は予断を許さない。恐らく数分の内にあの壁は突き破られる。

どれくらいかかるか判らないからここに留まってその時を待つ。

 

出てくるその時には魔術使用制限が解除されてればいいけど……

 

 

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